DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
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最後のは『ぼかして書いてたのに33話の閲覧数が上がってる!そんなにバレバレだったのか!?』という思いのもと、聞いてみたくなったわけですが、気がついてない方も結構いらっしゃるようで安心しました(笑
「待って!
それを許したらわたしは今度は、ロンに叱られるくらいじゃ済まないわ!
何より、わたし達は敵の本拠地に乗り込もうとしているのよ。
あなたはキルバーンに狙われているだけじゃなく、ミストバーンにも危険視されている事は自覚していて?
いくらなんでも無謀すぎる!!」
「うちの師匠は説得しときます。
完璧ではないにせよ、キルバーン対策のシミュレーションも済んでいますし、ハドラーは恐らく、あたしに危害は加えないでしょう」
「……そう言える根拠は?」
「ありません。
まあ強いて言うなら、あたしはあのひとの『女』だそうですから」
「…そう聞くと尚の事、頷くわけにはいかないのだけれど…」
「まあそこは呑み込んで頷いてください。
……あたしの口から言う事は出来ませんが、それが必要になる事は間違いないんです。
あたしは確かに、武器を取って戦う事はできません。
それでも地上に暮らす民の1人として、この戦いに関わった時点で、考えうるあらゆる状況のすべてに覚悟はできてます。
あたしにしか出来ない、あたしの戦いを行う覚悟が。
…けど、あたしはひとりじゃ戦えない。
だからお願いです、グエンさん。
あたしに、力を貸してください!
グエンさんとあたしの力があれば、最悪の事態は回避できる…!」
☆☆☆
カール王国に構えられた作戦基地は、一時的に野戦病院と化していたものの、わたしやマァム、レオナ姫、エイミ、メルルといった回復呪文の使い手達による奮闘が功を奏して、サババの戦いで倒れたほぼ全員が、朝には歩けるところまで回復していた。
死者がひとりも出なかったのを奇跡と見るべきか、はたまた奴らにとっては殺すまでもないザコと侮られた結果と見るべきなのかは、判断に困るところだけれど。
ちなみにわたしが『金持ちの邸の地下倉庫?』と思っていたこの場所は、どうやら王城の別棟だったらしい。
王城にはよくある造りらしいのだが、今普通に出入り口として使っている階段は、本来は動く本棚に隠されていたもので、お城の中から割とややこしいルートでここを通り、最後にこの階段を登れば城壁の外に出るという、非常時に王族を避難させる為の隠し通路的な場所であったようだ。
主棟からは少し離れてる上に、なぜかこの辺だけ城壁自体が完全に破壊されていたから、完全にお城の敷地外だと思っていた。
わたしはこの国には図書館以外に見るものはないという認識でいたし、お城の近くの大きな道を通るとやたらと初対面の男性に話しかけられて、本来10分足らずで通り過ぎることの出来る道なのに、そのせいで20分以上かけても半分ほどしか進めないということが数度あったから、遠回りになっても出来るだけ近寄るのは避けるようにしていたので、お城の大きさをいまいち把握していなかったのだ。
割とメインの街道に旅の尼僧が通ることなんか珍しくもないだろうに、どうしてあの道だけそんな事が起きていたのか、今考えても不思議だ。
多分服装や言動からすると、お城に常駐する騎士さん達だったのだと思うが。
ちなみに、わたしとヒュンケルが以前、バランに倒された騎士団長という人の亡骸を葬ったのは、基地とは反対側の正門前だった筈だ。
閑話休題。
あの後、リリィの『頼み事』にひどく驚いたものの結局は頷いて、彼女をおうちに送り届けたら、若干戻るのが遅くなってしまった。
とりあえず説教はくらう覚悟で、ヒュンケルよりはまだ優しいだろうクロコダインに、リリルーラでこっそり合流したところ、顔を合わせた次の瞬間に、
「…どこへ行っていたかは知らんが、この状況で黙って行くのは感心せんな」
とやはりちょっと小言を言われた。
やはり姿が見えないとみんなに探されていたらしい。
が、クロコダインは言うだけ言ったところでそれ以上は何も訊かず、わたしをひょいと肩に担ぐ。
「…こっそり行ったという事は、戻るのに着地音で判るルーラは使わんだろうし、ヒュンケルに小言を言われるのも避けたいだろうから、おまえはオレのところに戻ってくるだろうと思っていた。
だからダイ達と顔を合わせる前に、ここで待機していたのだ……当たりだったな」
と言われて、改めて周囲を見れば、確か王城の裏手にある森の中だった。
わたしが、上手いこと彼とだけ合流できるよう、考えてくれていたらしい。
「…ありがとう。心配をかけて、ごめんなさい」
色々思うところをふたつの言葉に集約すると、クロコダインは微かに笑った。
そしてわたしを担いだまま作戦基地の方へ歩いていき、こちらに気がついて駆け寄ってきたダイの前でわたしを下ろすと、
「最近あまりグエンとくだけた話ができなかったので、オレが引き止めてしまっていたのだ。
騒ぎにしてしまったようで、済まなかった」
と行って、わたしの不在をあたかも自分のせいであったかのようにして誤魔化してくれた。
いつもながら
「これから作戦会議をしないといけないんだって!」
とダイがわたしの手を掴んで、早く早くと引っ張ったので、慌ててそれについていく。
他のメンバーもそれに続いて、全員でようやく作戦基地に集合したのだが、既に中心の円卓に就いていたレオナ姫が、手を繋いだわたしとダイを見て、なんとも言えない表情を浮かべたのは見なかった事にした。
・・・
「海底の…魔宮の門か…」
大魔王の居城の入口は海底にあったとは、ポップ達が連れ帰ってきたチウが持ってきた情報だ。
ちなみに、チウ達の危機を教えてくれた2匹のモンスターは現在クロコダインの管理下で、おとなしく指示を待っているのだそう。
「おまえにも、リーダーとしての器はあるとオレは思う。
だが、群れを率いるにはまだまだ力不足だ。
獣の主たるもの、常に力を示していかねば、己より強い者には、あっという間に取って代わられる。
上の者が弱ければ群れを守りきれぬからだ。
だから、おまえがそれに見合うだけの力をつけるまでは、部下はオレに預けておけ。
心配するな、奴らはおまえを慕っているから、おまえのことを待っていてくれるさ」
とクロコダインが目を覚ましたチウを諭し、
「わかりました…立派な次期獣王となるべく、今後も更なる努力をします!!」
というやりとりがあった事を、『別にまだ後継として任命したわけではないのだがな…』と後になって苦笑交じりにクロコダインが話してくれたのだが、まあ今はそれはいい。
「やっぱり、おれが壊すしかないと思うな。
みんなに地上で、親衛騎団を引きつけてもらってる間に…!!!」
と、勇ましい意見を述べるのは勿論、我らが勇者・ダイ。
それに対してレオナ姫が、一人では無茶だと反対意見を口にする。
そもそもチウによればその魔宮の門とやら、大魔王の魔力によって永きに渡りずっと閉ざされており、魔王軍の者だけがルーラで外界と行き来するというシステムだそうで、つまりは門としての役割を果たしていない、単なる丈夫な壁扱いらしい。
だがその頑丈さは、それをチウに語ったフェンブレン曰く、
…やはりバランが一緒に行ってくれるのが、最良の策だった気がするのだけど、『彼を丸腰で戦わせる気ではないでしょう?』とちょっとだけ厳しい目で見上げてきたリリィの顔を思い浮かべて、その考えを即座に自身の内側で却下した。
なんだろう、ああいう時のリリィには、妙に逆らいがたい何かがある。
まだつきあいの浅いわたしがそう感じるくらいだから、兄であるポップはもう何度となくそれを感じてきた事に違いない。
ともあれ、今その策が取れないというのであれば、やはりまだバランの事は伝えない方がいい気がする。
だからといって、バランの剣が直るのを待つという選択も、この流れではできそうにない。
というか、決行を待つべきとの意見を出せば、何故と必ず聞かれてしまうだろうし、そうなるとバランの事を話さざるを得なくなる。
元々死の大地へ攻め込むこの計画は、一気呵成に全員倒そうなどという大それたものではなかった筈だ。
なら、無理だと判れば撤退してもいい。
死んでしまったら終わりなのだから。
「お、おれが行くっ!!おれに任せなっ!!」
「ポップは、対親衛騎団の切り札でしょ!!
私が行くわ!!!」
と、わたしが考えている間にも、目に決意を漲らせたポップがそう申し出、それをマァムに一蹴される。
確かに親衛騎団の存在さえなければ、ポップの
「…それを言うならマァムとヒュンケルも同じだわ。
空の技を、奴らのオリハルコンの外甲を砕いて急所に届けるだけの攻撃力で放てるのは、ダイ以外ではあなた方2人だけなんですからね」
わたしがそう口を挟むと、ヒュンケルが一瞬ハッとしたようにわたしを見て、それからマァムと顔を見合わせた。
多分だがマァムの次に『いや、オレが行く』的なことを言おうとしていたに違いない。
昨日の事を根に持っていたわけでは決してないが、仕返しができたようでちょっとだけスッとした。
けど、そこに何故かノヴァが『ならば、ボクが!』とか言ってきたけど、それはとりあえず無視する。
申し訳ないが、この段階でこの子が付き添っても、ダイの補佐にすらならないだろう。
「…そして、ポップがあの呪文を使う為には、
同じ手が通用するとは思わないけど、やはり成功例のあるクロコダインの存在も必要だわ。
…だとすれば、残るはわたしだと思うのだけれど?」
そう言ってわたしが右手を上げると、驚いたような全員の視線が集中して、些か居心地が悪かった。
……苦しい理屈だと自分でも判ってるわよ!!
けどこの役目、なんとしてでも勝ち取らねばならないのだ。
……リリィとの約束だから。
…と、意気込んでこの話し合いに臨んだ割には、そうわたしが言った直後、パッと笑顔になったダイの、
「うん!グエンが一緒に来てくれたらおれは安心だし、頑張れるよ!!」
の一言で、割とあっさりわたしの案が通った。
もう少し揉めるかと思ったのに拍子抜けだが、まあ余計な言い訳をせずに済んで助かった。
…てゆーか、だからそんな目で見ないでください、レオナ姫。
それが移ったのかなんか知らないけど、隣でエイミまでおんなじような顔してるし。
まあそんなわけでメンバー割が決定し、細かな打ち合わせを済ませた後、今日1日はしっかり休んで、翌日決行という運びになった。
・・・
そして、一晩休んだ早朝。
昨日クロコダインと会った森に、きれいな水の湧いている泉があるのを見つけていたので、今朝は1人でそこまで行き、その水を汲んで、呪文をかけた。
「ニフラム」
大地から湧いた冷たい水に、邪を退ける力が宿る。
周りに誰もいないのを確認して、わたしは服を脱いで下着だけになると、その水に浸した布で、脇腹を優しく拭った。
…そこにはフェンブレンから受けた傷がまだ残っている。
ベホマで治癒できなかったそれは、明らかに暗黒闘気ならぬ魔力による影響だ。
この傷から身体に入り込んだそれが回復を妨げており、この即席の聖水で拭って、少しでも取り去ろうとしているわけだが、どうやらこの程度では焼け石に水のようだ。
これならば直接ニフラムを自分にかけた方がいいと思うだろうが、実はあれ、邪なる力に対しては容赦なく暴力的な呪文なので、身体に入った暗黒魔力
下手をすると傷のある部分の組織ごと消し去る事にもなりかねないと判断して、こんな消極的な手段に頼ったわけであるが。
正直これならばリリィの作ってくれたスープの方が遥かに効果が高いことに気づいて、思わず苦笑が漏れる。
図々しいのは百も承知で、朝御飯をご馳走になりに行こうかしら。
そんなしょうもない事を考えていたら、
「グエンさん…!」
と、背後から女性の声がわたしの名を呼んだ。
振り返ると姫さまの護衛の女性賢者が、何か難しい顔をしてわたしを見つめていた。
「…おはよう、エイミ。随分早起きなのね」
誰にも見つからぬように出てきたのにと、心の中で舌打ちをしつつ、その内心に気付かれないよう笑いながら、さりげなくマントで肌を隠す。
女同士だから別に恥ずかしくはないが、脇腹の傷は、あまり女性に見せたいものではない。
だがエイミはわたしに駆け寄ってくると、傷を覆ったマントを跳ね除けてそこに触れ、ベホイミをかける。
温かい感覚が一瞬当たったがそれだけで、治癒は一向に始まらず、傷は変わらずそこにあった。
「こんな…こんな傷を隠して、戦いに行くつもりなんですか…?」
それを見て、エイミは絶望したような表情を浮かべた。
「ちょっと、そんな顔しないでよ。
見た目はアレだけど、たいした傷じゃないんだから。
……けど、心配してくれてありがとう」
言いながら、今日はこのままダイと共に出撃することになるなと考えて、わたしはこっそりため息をつく。
まあ実際これ以上やったところで大した効果もなかったし…と、わたしは服を身につけると、彼女に向かって笑いかけた。
「一緒に戻りましょうか、エイミ。
朝食を済ませたら、身支度を…」
「…あなたの槍は、私が捨てました」
……一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「……どういう事なの?」
思わず問い詰めるような口調になるのを抑えきれずわたしが問うと、エイミは一瞬ビクッと肩を震わせた。
ああ悪い、目の周りの
そのせいで睨むと割と迫力があるらしい。
いつもならそれを知ってるからやらないけど、今のわたしには、そんな気を使う余裕すらなかった。
だがエイミは、一度はわたしから目を逸らしたものの、気の強そうな黒い瞳で、真っ直ぐにわたしを見返す。
「武器がなければ、戦えませんよね?
諦めて、今は休んでください……!!」
そう言って触れてくる手を、わたしは苛立ち紛れに払う。
「冗談はやめて、エイミ」
「冗談なんかじゃありません…私、あなたが好きです!」
……その爆弾発言に、今度こそわたしは固まった。
…………隙?鋤?空き?数寄?
……………………………好、き?
誰が、誰を?エイミが、わたしを?
ああいやうん、好きにも色々あるよね。
たとえばわたしは、蒸したジャガイモにマヨネーズをかけただけの料理とも言えない食べ方が実は一番好き。
あ、マヨネーズっていうのはパプニカの大衆料理店が最初に作り始めた、卵と油と酢を混ぜて作るソースで…え、知ってる?
「…ずっと憧れていたんです。
だから、あなたがこれ以上傷つくのは耐えられない…!!」
ああいかん、少し現実逃避をしていた。
そうじゃない。
とりあえずジャガイモとマヨネーズは頭から追い出そう。
「エイミ…?」
「ヒュンケルや、他の誰かが、あなたを幸せにしてくれるなら、それを見守るだけでいいと思っていました。
でも、誰もあなたが戦うのを止められない。
むしろその誰かの為に、あなたは戦って、傷ついていく。
そんなあなたを見ていると、とても不安になるんです。
あなたは誰かを守る為ならば、いつか自分の命すら、喜んで投げ出してしまうって。
私は……そんな事、耐えられない」
エイミはそう言って泣き崩れる。
…いやその傾向は勇者パーティー全員にあるような気がするけど。
ただ、僧侶という職業は割と自己犠牲の精神に価値を認める職業なので、とくにその傾向が強いのは認めるけれど、わたしは中でも俗物に近いと大魔導士のお墨付きも…ってやかましいわ。
…けどまあ、なんにせよとんでもなく心配されていることだけはよく判った。
弟の形見の槍を捨てられた事はアレだけど、やはり若い女の子が泣いているのをただ見てるのは精神的にキツイ。
わたしはヒュンケルのような朴念仁とは違う。
目指すならむしろクロコダインのような
目指す方向性がそもそもおかしいとか言うな。
とにかく、心配するようなことではないと、言葉を尽くして判ってもらわなければならない。
「…やあね。喜んでるわけないじゃない。
わたしは痛いのも苦しいのも嫌い。
…だからこそ、戦うのよ」
そして気がつけば、そんな言葉をわたしは口にしていた。
「えっ……?」
「今、あなたが感じてくれてる気持ちと同じ。
傷ついているわたしに、あなたが心を痛めてくれているように、わたしも仲間が傷つくのが怖いし、痛いし、苦しいの。
わたしが戦うことでそうならずに済むなら、当たり前にそうするわよね。それに……」
続けようとした言葉を、意志の力で止める。
これは本来僧侶として、決して言ってはいけない事だ。けど。
「……エイミ、これから言うことは、わたしの懺悔として聞いてくれないかしら?」
自分のことを、心配して涙まで流してくれたひとなど、考えてみたらアルキードのシスター達以外では初めてだ。
だからだろう、こんな甘えた事を、この子に話す気になったのは。
「……懺悔?」
「そう、懺悔。
…わたしはね、エイミ。
修道院で育てられて、今日まで尼僧として、神の教えを説いて生きてきたわ。
けど、それは生きていく為。
…正直なところ、本気で神様なんて信じてはいないのよ」
わたしの告白にエイミは目を瞠った。
目尻に溜まっていた涙が、またひとしずく溢れて落ちる。
それは、掌で受け止めたくなるくらい、今までに見たどんなに豪華な宝石よりも綺麗に見えた。
「誤解しないで欲しいのだけれど、神という存在は間違いなくあるわ。
けれど、この世における神の奇跡と呼ばれるものは、実際には殆どがこの世界に生きる者が、自身の力で引き起こしているものよ。
神は奇跡を起こしたりも、わたし達を助けたりもしない。
そういう存在では、ないのよ。
だからわたしは、神の力など、信じない。
それでも祈るのは、それが確かに、力を発動させる手段となり得るから。
とりあえず魔力集中さえ可能であれば、別にそれが祈りじゃなくたって構わないの。
信仰なんて、その程度のものでいいと思うわ。
あくまで、わたしの私見だけれど」
さすがに僧侶の『神信じない発言』は、 聞いてしまうとショックだったのだろう。
エイミは呆然とした顔でわたしを見つめて、固まっている。
…なんていうか、多分だがわたしに対して、ものすごく崇高なイメージを抱いてたっぽいし。
「…わたしを産んだ母親は、生まれたばかりのわたしを殺そうとした。
わたしを育ててくれた修道院は、わたしが原因で迫害を受けた。
わたしはこの世界には、歓迎されない存在だった。
けど、尼僧として旅をして、誰かに必要とされる喜びを知ることができた。
祈ることにより発現する力を、誰かの為に使うことで、自分がこの世界にとって、要らない存在なんかじゃないと、証明することができた。
……今も、同じよ。
誰かの為に戦ってるわけじゃない。
わたしは、わたしの為に戦っているの。
わたしが辛い思いをしないために。
結局、わたしはただのエゴイストなのよ。
今はその手段が、魔王軍との戦いであるというだけだわ」
そう言って、わたしを見上げるエイミの肩に手を置いて、笑ってみせる。
さっきまでは確かに怒ってたし、彼女のした事は許せる事じゃないけど、こうして心配された事は、純粋に嬉しかった。
と、何となく見つめ合っていたわたしとエイミを、何か不自然な光が照らす。
なにかと思って光の方を振り返ると、エイミが確かに『捨てた』と言った鎧の魔槍が、光を放って、地面に突き立っていた。
「……彼も、わたしを呼んでいるわ」
ラーハルトが、わたしを守る為に託してくれた、己の鎧。
わたしはそれを手に取り、抱きしめるように抱えた。
やはり大人ラーハルトの幻影が頭に浮かんだが、もうそれにも抵抗はなかった。
「……こんな話を誰かにしたのは初めてよ。
ありがとう、エイミ。
でも、あなたはあなたの幸せを見つけた方がいい。
その涙が、幸せの涙に変わるのを、いつか見せて貰えたら、きっと、わたしは嬉しいわ」
「グエンさん……」
「さ、戻りましょう……それとも、ここで一緒に水浴びでもしてから行く?」
………そして。
2人して殊更にふざけて水をかけあって、全身ビッショビショで戻ってきたわたし達を見て、レオナ姫は呆れたような目を向けて、言った。
「…ねえ。あなた達、いくつだったかしら?」
その泉の水より冷たい視線に耐えた後、別室を与えられて身体を拭いて着替えをしていたら、エイミがこっそり耳打ちした。
「ああ仰ってますが、こういったおふざけは、姫さまの方がお好きなんですよ。
次があったら誘ってさしあげたら、喜んで参加されると思います」
…いや、なんぼなんでも一国の王女を水浸しにするわけにはいかないでしょうよ。
・・・
そして。
わたし達は武装を終えて、カールの岬に立っている。
「朝早く、エイミさんと遊んでたんだって?
おれも誘ってくれれば良かったのに」
「女の子同士の交流だったから、男の子は禁止。
それに大事な戦いの前だから、ダイにはギリギリまで休んでいて欲しかったのよ」
「ちぇ〜。
…まぁ、いいや!行こうグエン!!」
言って、ダイが自然に手を差し伸べてくる。
わたしは頷いてその手を取ると、呪文をひとつ発動させた。
「
……てゆーか、よく考えたら一度海に飛び込まなきゃいけないんだし、着替える必要なかったんじゃない?
マァム「私が行くわ!!!」
ノヴァ「いや、ボクがっ…!!」
グエン「なら、わたしが…」
全員「どうぞ、どうぞどうぞ」
一応念の為、ココ読んでくれたら嬉しい。
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…それはさておき、みんながみんなではないにせよ、10代の女の子が年上の同性に恋愛めいた感情を抱くのって、割と普通にある事だと思います。
同性愛というのとはまた違うくくりなのです。
目の前のかっこいいお姉さんが、周囲のイケメンなんぞより魅力的に見えるだけなのです。
そういう感じを出したくて、告白の後で敢えて2人に水遊びをしてもらい、子供っぽくはしゃがせてみました。
そしてこのシーンを入れた事で、エイミの気持ちから悲壮感を取り除いたつもりなのですが、伝わってくれたでしょうか。
多分ヒュンケルに惚れて地獄に堕ちる決意を固めるより、ずっと幸せだと思いますが。
何よりこの世界に貴みが欲しかっt……がふんげふん