DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 神が投げた小石たち 作:大岡 ひじき
そもそもグエンが無事にこの砦に来ていた場合、アバン流殺法を授けられていた関係上、恐らくはレオナから『5人目』の立場を奪うことになってたんでね。
ポップの覗きイベントでのおっぱい祭りを期待された皆様には申し訳ありません(爆
結局、鎧の魔槍の仕込み剣は通常のものに戻された。
父さんも協力して、鎧の魔剣と魔槍はかつてのそれより強化され、
「以前のものより装着感と取り回しが格段に良くなった」
という言も貰っている。
ちなみにその光景を見ていた父さんは、
「…実際に身につけて動いてるのを見るとまた違うもんなんだな。
あんた、いっぺんうちの店で、うちの商品身につけて実演販売してくれんか?」
とラーハルトをモデルスカウトしようとしたので後頭部をはたいておいた。
確かに細マッチョの長身というモデル体型だけども!
…けど、実際に商品を身につけた店員を客に見せるというのは、アイディアとしてはアリかもしれない。
つか、前世では普通に行われていた事で、アパレル店員は古くはマヌカンとも呼ばれ、これはマネキンと語源を同じくする言葉だ。
今までは自分は父の後を継げる男を婿に取らなければならないと思っていたが、それだと選択肢が非常に狭まることも覚悟していた。
けど最悪、顔と身体だけの男を婿にしてマネキン業務だけしてもらえば、それでも商売は成り立つんじゃないだろうか。
あたしが武器を打てない以上、父にはできる限り現役を続けてもらわなければならないけど。
元々恋愛結婚をするつもりはないのだから、とりあえず最後の選択肢には入れておこう。
勿論ラーハルト以外で。
そのラーハルトだが、ヒュンケルさんがグエンさんと一緒に魔王軍に囚われている状況が不快であるらしく、
「あいつを信用して託したというのに…!」
と怒り心頭であったが、そこはバランに宥めてもらった。まあ途中、
「…私は正直、グエナヴィアはおまえには相応しくないと思っている。
女のくせに慎みが足りないし、気も強い。
しかも無自覚な人誑しだ。
わざとでないだけに始末が悪い。
あれと一緒になどなったら、苦労するぞ」
とか物凄い脱線していてちょっと険悪な雰囲気になりかけてたけど。
てゆーかこれ意訳すると、
『
もっと甘えてくれなきゃパパン拗ねちゃうぞ、ラーハルト』(低音イケボ)
だよねと生ぬるく見守りながら思っていたら、何故かバランが一瞬で死んだ目になった。
「…おまえ、心の声だだ漏れだぞ……」
とラーハルトに呆れたような声で言われ、初めて口に出して言ってたことに気がついたが、それを境に2人とも落ち着いて、最後には穏やかに話をしていてくれたので良しとする。
「…ラーハルト。おまえの気持ちも考えずに無神経な事を言って、済まなかった」
「…いいえ、バラン様。
彼女を諦める選択肢は元よりありませんが、バラン様がオレを思って言って下さった事は、素直に嬉しく思います」
「そうか…!
な、ならば…私のことは、その……と、父さん、と…」
「………は?」
「……………いや、なんでもない…」
…それはさておき、修復されたダイの剣には魔法剣の呪文レベルを最高位まで増幅できる機能をつけた新たな鞘を作っている。
ダイの剣はそれ以上の強化ができない為の苦肉の策だが、バランが戦えない以上、ダイのライデインをギガデインにまで増幅できるこの鞘は、かなり有効な武器となる。
バランが紋章の力をダイに移した時、そこに宿るバランの記憶含めた戦いの歴史もまた、原作通り今はダイの裡にあるのだろうから。
一番最初に着手していたマァムの武器は鎧化機能のついた手甲型で、本来の武器にあたる部分は肩当てに収納されたナックルである。
その名、【魔甲拳】。
マァムはヒュンケル以上にあまり器用なタイプではない筈なので、魔槍のような仕込み武器的なものは入れていない。
そもそも俊敏性を削がずに守備力を上げなければならない為、余計なものを付けて重くするわけにはいかなかった。
ポップの杖【ブラックロッド】は大魔王の光魔の杖に対し、『今のオレならばこう作る』という先生のこだわりの、一番詰まった一品であると言える。
機能的には同じだがその反省点を考慮し、使う魔法力は杖自身が吸うのではなく、使用者が任意で好きなだけの魔法力を込める事ができる仕様となっている。
更に形状をも思い通りに変化させられ、戦いの状況に臨機応変に対応できるのは、光魔の杖にはなかった新しい機能だ。
ちなみにこの機能はグエンさんの為に新しく作られた棍【
欲しいと思えば槍にも多節棍にもなるし、勿論ソードブレイカーの形状にだってできる。
あのひと
あとクロコダインの斧について、先生は最初は『…必要か?』と渋っていた。
なんでクロコダインにそんなに冷たいんだと思ったのだがそうではなく、どうもクロコダインの武器であるあの『真空の斧』、ロン先生の視点から見ると、相当完成度の高い武器であるらしい。
多分飾り物じゃなく実際に戦闘に使用されていた歴史が長いからだろうけど。
「伝説の武器なんて、大概は骨董品のナマクラだと思ってたが、あれを見て少し考えを改める気になったぞ。
形状のセンスはあまり良くないし、勿論オレの作るものには及ばんがな」
とかぬかしやがりましたけど、デザインのセンスはそんなに変わらないじゃんとか思ったのは秘密だ。
とりあえず刃の部分はバランとの戦いで一度破損したものをパプニカの金属で打ち直したものらしいと教えたら、
「…パプニカ鋼か。なるほど、いい選択だ。
ミスリルを目指した合金で若干硬度は劣るものの、魔力との相性の良さは並ぶと言われているな。
何より軽く取り回しがしやすいのが長所だが、まあ使用者がそもそも力の強い獣人なのだから、そこは関係ないか。
アクセサリーの台座に使われるほどの、輝きの美しさも然り。
…しかしインストールされた呪文が
あの武器のポテンシャルはあんなもんじゃない筈だ。う〜む…」
と、何か考え始めてしまった。
それはさておき、勿論言えるわけもないが原作知識で、大魔王戦敗北の際にその真空の斧が失われている事を、あたしは知っている。
代わりに、処刑の場から解放されたクロコダインに届けられるのが、ロン・ベルク特製【グレイトアックス】なわけだが、原作ではなんの抵抗もなしに作ってくれた筈のそれの作成を、先生がここで渋るのはどういうわけだと少し考えて、ひょっとして原作と違いクロコダインが先生と顔を合わせ、なまじ実物の真空の斧を見る機会があったから起きた弊害じゃなかろうかという事に思い至った。
確か最初にパプニカで顔を合わせたのは、ダイを時空扉で送ったあたしがうっかり一緒に扉をくぐっちゃったのを、先生が連れ戻しに来たからだし、2度目に先生の小屋で会ったのは、チウ達を死の大地に迎えに行ってそちらに取り残されただろうあたしを、グエンさんがクロコダインを連れて転移呪文で連れ戻しに来たからだ。
つまり、あたしが居なければ先生には、真空の斧を直接見る機会はなく、話に聞いただけのそれを、伝説の武器=骨董品と侮ったままだったから、クロコダインの斧の代わりを抵抗なく作れたんだと思う。
て事はあたしのせいでクロコダインが武器無しになっちゃう!?と焦ったが、
「ふむ……つまり、先生ならばあれ以上のものを作れると…!?」
と持ち上げると『当たり前だ』と割と簡単に作る方向に持っていけた。チョロい。
…あたし達のやり取りを聞いていたバランとうちの父さんが、顔を見合わせて物凄く微妙な顔をしていたのは見なかった事にする。
同世代の子供を持つ父親同士という事で、はたから見てもわからないが、互い同士には何かわかり合えるものがあるに違いない。
そんなこんなで急ピッチで進められた武器作成と修復作業が全て終了し、再びラーハルトが使うことになる魔槍と、捕らえられてる人たちの分以外の武器の説明書を先生の指示であたしが書き上げたのは、陽が沈み始めた時刻だった。
ちなみにこの世界、地上で主に使われる文字は何故か日本語の漢字・ひらがな・カタカナで構成されている。
魔界では別の独特の文字が使われており、一応それを訳する為の辞書的なものも存在する。
ダイ達がここに滞在していた5日間、それほど時間は取れなかったが、字が読めないというダイが将来騙されないようにと、あたしも少し文字を教えていた。
その時に知った事だが、ダイはひらがなとカタカナは辛うじて読めるが漢字がほぼ駄目で、また同じ読みのひらがなとカタカナをどういう状況で使い分けるかも、今ひとつわかっていなかった。
ダイは故郷の島にいた頃、育ての親である鬼面道士のブラス老に魔法の勉強をさせられていた筈で、それには間違いなく書物の助けが要る筈なのだが、そう言うあたしにダイが答えて曰く『じいちゃんの本の字はこれとは全然違うもん。ここで普通に見る字は、アバン先生が島に来た時に初めて見た』とのことだった。
…魔王ハドラーの軍の中で結構な重鎮の地位にいたであろうブラス老の、持っていた魔術書が魔界のものだったであろう事は、考えてみれば当然だ。
恐らくは、ダイは魔界文字はそこそこ読めるんだと思う。
ちなみにグエンさんは旅をしていた時は各地の図書館には必ず行くようにしていたといい、どこの図書館にも魔界文字で書かれた古い書物が幾つかあったらしいが『勉強したこともない文字なのになぜか読めた』と言っていた。
多分それ…いや、なんでもない。
あたしは見たことすらないので断言は出来ないが『みる』を使えば恐らく意味はわかると思う。
けど、見たことのない魔界文字を書いてあげる事は不可能なので、ダイの剣の説明書は、簡単な漢字以外はひらがなとカタカナで書いた。
多分だが原作では先生が口頭で言ったことを、うちの父さんかバダックさんが聞き取って書いたのだと思うので、そういう配慮はできていなかったのだろう。
つかそもそもダイの剣の説明書だけは先生に自分で書いてもらえば良かったんじゃないかと、後になってから気がついた。
☆☆☆
父さんが家から荷車を取ってきてくれて、完成したものを積んだそれをラーハルトに引かせ、武器と一緒にラーハルトもあちらに置いてくる事にした。
元々、バランの代わりの戦力となってもらうべく、原作より早く起こして連れてきたのだし。
バランには先生の小屋で待機してもらって、タイミングを見て迎えにいき、こっそりダイに会わせてやるつもりだ。
何せ、あちらにはカールとリンガイアのトップが居る。
その二国まとめて滅ぼした男を、連れていくわけにはいかなかった。
将来的にいずれは会ってもらうつもりではいるけど、今は駄目。
まあ、それを言うならその部下だったラーハルトも同様だろうけど、竜騎衆は配下のドラゴン達とは別格ゆえ、魔王軍としての襲撃には使っていなかったぽいし、多分セーフだろう。
準備を整えて時空扉をカールの砦に向けて開くと、なんか森みたいな場所に出た。
「…こいつが主張するに、目的地はこの奥だ」
何故かダイの剣だけ自分で背負ったロン先生が、獣道のようなほっそい道を歩いていくのを、慌てて荷車と一緒に追う。
背の高い男ふたりとの歩幅の違いに、少し遅れ気味になったところで、何故かフードつきのマントを纏ってすっぽり頭まで隠した怪しさ満点のラーハルトに、ひょいと抱き上げられたかと思うと、荷車の上に乗せられた。
ラーハルトって強いけどたくましいって感じじゃないのでちょっと意外だったが、それはそれとして荷物扱いされた事に気分を害して、偶然を装って背中を蹴っておいた。
「え……?」
少し進んだところで、木立ちの間から声が聞こえて、そちらに目をやる。
…あたしの兄が、そこにいた。
「…ポップ!?」
「リリィ?それにロン・ベルクも…?」
駆け寄ってくるポップを見て、荷車を引いていたラーハルトが、マントのフードを更に深く被る。
どうやらポップを驚かせないようにと配慮してくれたらしい。
ラーハルトは一度ポップの目の前で死んでるからね。
この場で騒ぎにされるのは出来れば避けたいから、その判断は有り難い。
あたしも荷車から降りて、ポップに駆け寄った。
「ちょうどよかった。
いきなりで悪いんだけど、あたし達が来た事、作戦基地の方に伝えてくれないかな?」
確か原作ではロン先生の魔族の容姿が、モブ兵士のかた達に警戒されていた筈だ。
先触れさえ出しておけば、そんな騒ぎにはなるまい。
「ほんとにいきなりだな!
大魔王に挑んで負けて、命からがら戻ってきた実の兄に、なんか言うことねえのかよ!!」
「おかえり」
「おれの妹が冷たい!!」
…なんか父とおんなじようなこと言った気がするが気にしないことにする。
「まあまあ。ロン先生が作ってくれた新しい杖あげるから、お願いしますよお兄様〜」
言って荷車からポップの杖を取って、後でちゃんと読んでねーと説明書きと一緒に手渡すと、兄はちょっと目を瞠ってから、ため息をついて言った。
「……ちょっと待ってろ」
仕方なくといったように砦の方へ走る兄の背中を眺めていたら、先生が少し不機嫌に呟いた。
「…オレの武器を、おつかいの御褒美がわりにするな」
むー。どうせ渡すことになるんだから今だって別にいいじゃん。
…既に薄暗い中、森の中にひとりで居たって事は、恐らくアバンのしるしから光が出ない事で悩んでたタイミングだったんだろう。
けどその答えは、こんなふうにひとりで悩んでても絶対に出ない。
ポップの心の力は『勇気』。
それに気がついた時、ポップの中に燻っていた本当の力が目を覚ます。
…そこに気付く為に、メルルが死ぬ目に遭わなきゃいけないってのはどうかと思わないこともないわけだが。
女の子の身体に万が一傷が残ったらとか、そういう事を考えたら、ポップが責任取らなきゃいけない案件だと思う。
…たとえ本当に残ってなくてもだぞ!
それはさておき兄が戻ってくるのを待っていると、兄だけでなくダイやマァム、レオナ姫にノヴァまでが、あたし達を迎えに現れた。
「ロン・ベルクさん!!」
「リリィも……!!」
「こんばんわ、皆さん。
我々は武器職人ロン・ベルクと、その弟子です。
勇者パーティーの皆さんの武器を、納めにまいりました」
ロン先生に付き添いながら挨拶すると、何故か先生の大きな手を頭の上に置かれた。
「…なんですか?」
「……ん?いや別に。
手を置くのにちょうどいい位置だったから」
…殴っちゃ駄目だろうか。だめだな、うん。
悟った感じになったあたりで、何故か中途半端な距離で固まってるノヴァと目が合い、なんか知らんけど不機嫌そうな顔された。
なんでだ。
それはさておき女性陣が肌も透けそうなお揃いのヒラヒラドレスを着てるところを見ると、まだ破邪の洞窟から出てきて間もないタイミングであると見える。
…てかこれ、男性がたには目の毒じゃなかろうか。
実際モブ兵士さん達の、チラッと見ては慌てて目を逸らすといった怪しい行動がそこかしこに。
マァムなんか相変わらずけしからん太ももどころか下着まで丸見えだし。
意図せず反応しちゃうのは仕方ないけど、少なくともその対象に知られたくはないよね、若人たちよ!
「マァム!無事で何より〜」
と駆け寄って女の子同士の特権とばかりに抱きつくと、優しいマァムはあたしの抱擁を受け止めてくれた。
のですかさず腰で結んでるドレスの裾を、さりげなく解いて元どおり下ろしといた。
ちょっとシワになってるのは仕方ない。
これで基地内の男性の皆様の尊厳も保たれる筈である。いいことをした。
以前から思っていたがこの子は自分の魅力に対する自覚と羞恥心が足りない。
そこはグエンさんも似たようなものだが、あのひとは露出度高めでいながら、見えそうで見えないあたりのラインを上手いこと保ってる気がする。
…あと、同じ服装の大人の女性がひとり居る。
この方が現在は魔王軍に対抗するレジスタンスを率いるリーダー、カール王国のフローラ女王だろう。
はっきり言ってものくそ美人だ。
スタイルもいい。
おっぱいのサイズと身長はグエンさんが上回るが、とにかくバランスが素晴らしい。
凛とした雰囲気はレオナ姫と似た感じだが、その上位互換って言ってもおかしくない。
そうか!確かこのひと14歳の時に魔王だったハドラーに拐われかけたんだよね!
魔界の神への生贄にするとかいう名目で、実は魔王に対抗しようとする人間達の士気を下げる目的だったとか言ってた筈だけど、実際に拐われてたらどうだったかわかんないよね!!
……どうでもいいことだと思うけど、若干面白くない。
そんなどうでもいい事に胸の痛みを覚える事にも、自分にムカつく。
「…
と、あたしがしょうもない事を考えていたら、進み出てきたダイに先生が話しかけたところだった。
問われたダイが頷く。
「……光魔の杖。
ロン・ベルクさんが作ったって本当なの…?」
「……ああ。
あれを出してこられりゃ、まずおまえらじゃ勝ち目はない。
だが、オレにも意地があるんでな。
最高傑作がここにあるのに、過去の試作品如きに負けるのは我慢ならん。
だから、こうしてわざわざ来てやったんだ」
ロン先生はそう言うと、背負っていた剣を包みごと、何故かあたしに手渡した。
反射的に受け取ると、あたしに持たせた状態から、包みの端に手をかける。
ああ、そういうこと。
つまりは、主役を劇的に登場させる演出なわけだな。
ならば、あたしも演じてやろう。
「まっ…まさかっ!!?」
「そうだ!こいつはオレ達のもとに帰ってきていた。
鎧の魔剣や魔槍とともに、より強い力を求めて…!!」
芝居がかったロン先生の台詞に合わせ、あたしは呆然とする勇者の前に、その剣を両手に捧げ持った。
「…これが、新たに蘇ったダイの剣だっ!!!」
声も高らかにロン先生が宣言すると同時に、その手が包みを剥ぎ取る。
直接掌に触れたその鞘が、一瞬震えた気がした。
…ううん、間違いなく。
ダイの剣は、主との再会を、全身で喜んでいる。
どうやら戦いを通じて、精神波長の合一化も無事完了していたようだ。
実のところ、少し心配していた。
本来のルートでは、これは魔宮の扉を破壊する直前、フェンブレンとの戦いでバランが危うくその刃にかかりそうになったところで、父を救う為に無意識に剣を抜いた、その瞬間に完了する筈だった。
その場面でバランとの共闘どころか、門番よろしく現われるフェンブレンも主にあたしのせいで居ない状況、しかも門ではなく天井を破壊させたあの時点で、ダイと剣の心はまだ、合一化を終えていなかったから。
恐らくはあの後、バーンとの戦いの中で、その問題は無事クリアしたのだろう。
今ならば、以前よりもずっと、この剣は彼の手に馴染むに違いない。
「……さあ、また手に取ってあげて。
この剣はあなたのもとに、一刻も早く帰りたがっていたのだから」
あたしがそう言うと、剣の
あたしに促され、ダイの手が剣の
そして。
「姿を見せてくれ…!おれの剣よっ!!」
主の願い通り、鞘の封印を自ら外して顕した刀身の、以前と変わらぬ輝きに、少年勇者の唇に、その時ようやく笑みが灯った。
「…キズひとつないっ…!!完全に蘇ってる…!!!
無事でよかった…!!
また一緒に戦えるんだね、おまえと…!!!」
それは武器というより、共に戦う同士に対するような言葉だった。
・・・
剣の、正確には鞘の新しい機能を軽く説明して、明朝までに読んでおくようにと説明書も手渡すと、ダイはすぐにそれを広げて少し目を通し、一旦あたしの方を見てニコリと笑った。
どうやらあたしが書いたものと判ったらしい。
とりあえずサムズアップで返したら、横から覗き込んだレオナ姫に『ひらがなとカタカナばっかりじゃないの。逆に読み辛いわ!』とつっこまれた。
☆☆☆
「勇者パーティーの武器を、とおっしゃいましたね。
勇者ダイの剣だけではなく……?」
と、カール女王とおぼしき美人さんが、あたしと先生に向かって話しかけてきて、それに答えようとしたとき、その声は響いた。
「あいつだ……間違いない!
おれの兄さんを殺したやつだ!!」
多分二十歳そこそこの若い兵士が、青ざめた顔で指差す方向に、反射的に目をやると、被っていたフード付きマントを外した、先生の小屋に待機させていた筈の、口ひげをたくわえた黒髪で長身の中年男性がいた。
「バラン様……!!?」
え、ちょっと待って。なんでここにいるの。
一瞬混乱したが、そういえば出発してから、マントをすっぽり被った『ラーハルト』が、一度も口をきかなかった事に、ようやく気がついて愕然とする。
つまり、さっきあたしがラーハルトだと思って背中を蹴ったのは、出発前に入れ替わっていたバランだったということだ…ってそれは今はいい!
ここ、あなたが姿を見せるには、最悪の場面だからね!なんで来た!!
結構しょうもない部分で文字数使ってて、書きたいところまで書ききれませんでした(爆