幼馴染は変だ。
私の幼馴染はすごく変だ。
一緒にいるとすごく恥ずかしいことが多々ある。正直距離を置きたいという気持ちがないことはない。
なのに一緒にいる理由は里長に厄介ごとを押し付けられたからだ。
私たちのいた里には2着、古代の衣装がある。ただの古着だけども。
何年も、何百年も経っても綺麗なままの古着である。
そんなある意味里の貴重なお宝。そのお宝を本来の場所に戻してこい、と言いつけられた。
里長が蔵の片づけをしていたら古代文字で書かれた紙が見つかったらしく、解読、というより里長の直感「なんとなく古代衣装を元の場所に戻してほしい、的なことが書いてある気がする」というふわっとした感覚で読み取り、その役目を私と幼馴染のアイツに任命してきたのだ。
手掛かりもなくそんなこと出来るわけがない、と反対したのだが
「この古代衣装を着て各地を巡れ。この衣装について知ってそうなものを探せばよい」
行き当たりばったり過ぎる作戦を言われた。里長の命とはいえ、いい断り方を考えていたら
「ククク……、その任、しかと引き受けよう」
変な幼馴染が引き受けてしまった。
「さあ、準備を急ぐぞ。我が同胞よ」
同胞とか言われた。いや同じ里出身だし同胞っちゃ同胞だろうけど。イタイ人の同類みたいな扱い受けそうだからやめてほしい。というかひとりで行ってきなよ。
「頼んだぞ。テオル、ナナリ」
私が呆然としている間に、長が話がまとまったと言わんばかりに締めくくった。そしてその話も里全体にあっという間に広まり、あれよあれよと里を出ることとなった。
長の命だ、仕方ない。衣装が2着あるから2人。それも仕方ない。けども
「どうした、ナナリ? 下界を好ましく思わんのはわかるが、高貴なものとして堂々ふるまわんか」
こいつは里に置いていきたい。イタイ。
あきらかに里の恥だよこいつ。青年ともいえる年齢になってなんでそんな言葉出てくるのだろう。
二人で山道を歩きながら、今後のことを考えるとこいつを早いこと矯正した方がよいと判断した。
「テオル……」
「なんだ?」
「ふっつうの話し方してくれない?」
「俺は至って正常に話しているが……。ナナリこそ里を出たのだから威厳のある話し方をしたらどうだ?」
「威厳のあるってどんなよ……」
「以前の話し方だ。まさか、忘れてしまったのか?」
こいつは何を言ってるんだろう。以前ってなんだ。こいつの言う以前ってなんだ。前世か? 電波というやつかこいつ。
「3年ほど前はよく夜になると……、このナナリと対等にいたいのであれば、相応の威厳を身に着けるのじゃな。と言っていたではないか」
「黙れぇ!!」
「ど、どうしたナナリ!?」
黒歴史だ。闇の歴史だ。あの頃は若気の至りというかあれなんだちょっとおかしかったんだ。厨二病全盛期だったんだやめて言わないで忘れてっていうかそうかこいつあれだ厨二病だ、もう青年と言われるような年齢で厨二病だっていうかあれか私の黒歴史を知ってるから私のことを同胞って言ってたのかくたばれくそったれ。
うん、あれだ。そうだよ、そうだよ。厨二病のころ年寄りめいた口調で喋ってたよ。自分のこと「わし」とか言っちゃって語尾は「~じゃ」とかつけちゃってたさ。
もちろん今はそんなことはない。だから本当忘れてくれませんでしょうか。
「私はもう普通に生きるって決めてるから! 人の黒歴史を掘り起こさないで!?」
「何を……。そうか、黒歴史……。たしかに我らの力は闇に隠したほうがよいか。下界で騒がれるのも面倒だ」
「あーもうそれでいいよ。下界で騒がれるのは厄介でしょ? 私みたいに普通の口調になろ?」
「だが下等なやつらと立場を同じにするなど……」
「あんた今日の夕飯の具キノコだけにするわよ?」
「やめろ!! やめるんだ!!!」
「いやなら普通にしなさい」
「だが俺の普通はこの口調であって……」
「昔は素直だったのになー……、ナナリナナリ! ボク、お母さんに今日褒められた! とか言っちゃって」
「黙れぇ!!!」
あの頃は普通の子だったのになー。ご飯を作るのを手伝って褒められたーとか嬉しそうに言ってたのになー。
「テオル、声が大きい。静かにしてよね」
「お前が! お前がぁぁ!!」
「本当にキノコのみにするわよ?」
「くっ……」
普段里の人が使っている道だから、滅多にモンスターは出ないとは思うけどうるさくし過ぎるのはよくない。早いところふもとの村に着いてゆっくりしたい。
そしてこの古代服を関係者に押し付けたい。いるのかわからないけど。
このご時世に二人旅ってどうかしている。私もテオルも戦う力はないに等しいのだから。
まぁ、里のみんなもモンスターと戦う力がないからこそ、テオルが今回の任に選ばれたのだろう。私はそのついでで。
キノコは……、キノコだけは……。とぶつぶつ呟いているテオルを横目に見る。こんなのでも案外頼りになるのだ。戦う力はない。ないが、知識はあるのだテオルは。ハンターに憧れてたのか、よく行商人にハンターやモンスター関連の本を頼んでいた。一時期は引きこもって夢中で本を読んでたほどだ。
思えばそれまでは普通だった気がする……。外の知識でこんなのになってしまったのか……。
「ナナリ、ため息なんてついてどうした?」
「なんでもないわ……」
「そうか」
気づかぬうちにため息が出てしまったようだ。いけない、幸せが逃げる。
「下界への不安はあるだろうが、楽しみでもあるぞ俺は」
「はぁ? なに突然」
「不安からため息をついたんだろう?」
いやあんたのことを考えて、ため息をついたんです。
「あー、もうそれでいいわ」
「ナナリも楽しんだらいいではないか」
「そりゃあいろんな土地を見れるのは楽しみだけどさ……、危険が多すぎる……」
「竜どもか。何、俺とお前がいればとるに足らん相手だ」
「はいはい」
竜にとって、私たちがとるに足らん相手ですねよくわかります。
「だが下界にはハンターという、竜どもに対抗する者がいるそうだ。そいつらの力を見るのも悪くはない。むしろそれこそが一番の楽しみだ」
回りくどいなぁこいつ。要するにハンターを雇おうってことだろう。里を出るときに渡されたお金で足りるのだろうか。無理な気がする。10万zだ二人合わせて手持ち。普通に旅する分には十分すぎるが、ハンターを雇うとなると厳しいんじゃないだろうかこれ。
ハンターについてはテオルのほうが詳しいだろうし、その辺はテオルに任せよう。
「ハンターを雇ったりは任せるわー。でもどれくらいの旅になるかは全然わからないんだから節約はしてよ?」
「今だけでなく、未来を見据えるとはさすが同胞よ」
村の宿についたら食事はキノコスープにしよう。
この幼馴染に再度ため息をつきながら、村の灯りへ歩く。
再度思ってしまう。
なんでこんな幼馴染と一緒にいなきゃいけないんだろう。
「それにしても、テオルの自信ってどこからきてんの?」
「うん? 己のことを理解してから自然とついたぞ?」
「はぁ?」
「俺もかつては自身の力を、本来の力を忘れていた。だがある書物に俺の同族のことが書いてあってな」
「あーはいはい、すごいねー」
「俺は本来は古龍なのだ。テオ・テスカトル、と呼ばれている、な」
「うわぁ……」
「ナナリ。君もその書物に書いてあった」
「え、やめてよ巻き込まないでよ」
「君もまた古龍、ナナ・テスカトリだ」
「うっわぁ…………」
「つまり俺はテオ・テスカトルの化身。君はナナ・テスカトリの化身だ!」
「痛々しいから他の人がいるときは絶対そういうの言わないでね?」
「ふんっ、俺とてわきまえている。面倒ごとはごめんだからな」
なんでこんなのと一緒にいなきゃいけないんだろう。
あのNPCが好きな人に再度謝ります。ごめんなさい。厨二病の一般人にしてごめんなさい。