P2Gや3G、4とか塔のフィールドそれぞれ違うからほら……
人は空を飛べるようにできてはいない。
「クク、人間の造ったものにしてはなかなかどうして、空を駆けるのはいいものだな」
大地から離れてはいけないのだ。大地の逞しさから離れた人はかよわいものなのだ。
大地に足をつけていれば、この風も心地よく感じれたかもしれない。
「ナナリ、見ろ。島の形がよく見えるぞ」
滅茶苦茶怖い。風めっちゃこわい。景色も怖い。
遠くを見てる分はよかったけど一度高さを確認したら超こわい。
現在、飛行船に乗ってます。古塔に向けて、と言っても直接古塔にではなく、少し離れたところで降ろしてもらって、そこらか徒歩だとか。
「やはり飛ぶのはいいものだ。俺も真の力を思いだせれば飛べるのだが……」
船内室に行こうにも、テオルが私を掴んで離さない。
外の景色見たいならひとりで見て? こんな高いところにいられるか! 私は部屋にこもる!
「私は船内に行くから……、景色はテオルだけで楽しんでおいて……」
「何を言っている。船内は息苦しいといって出てきたばかりではないか」
ぐぬ。
確かにそうだ。
船室ではあのハンターが武具の手入れをしているのだ。それはもうすごい真剣に。
話しかけたら気が散ると怒られたほどだ。
護衛のために集中してくれてるのだから文句は言えないが、息が詰まりそうなくらい重いのだ。
「あー、そういえば中もあれかぁ……」
そう考えるとここのほうがいい、かな? あまり端の方へは行かずにじっとしてたらいいか。ああ、早く地面につきたい。地面が恋しい。
思えば遠くまで来たものである。地面が本当に遠い。地面だけじゃなく里からももうずいぶんと離れたものだ。
里長からのふわふわな内容の任でこんなところまで来るとは。
今更ながら本当に古代衣装を置いてこいって内容だったのだろうか。ちゃんとした解読じゃなくてなんとなく、というか直感での解読だしなぁ。
まぁどうでもいいか。私たちはただ課せられた任を全うするだけなのだ。
そのためにもどうかこの飛行船が堕ちませんように。
飛行船から降ろされたころにはもうすっかり夜になっていた。降ろされた場所は自然の景色とは言い難いものだった。
「確かに、これは古代文明と関係のある土地だな」
テオルが感想を言う。その言葉の通り、明らかに人の手で作られたであろう壁の模様、石畳、崩れた柱、階段。ただどれも長い年月でぼろぼろである。苔生した遺跡の一部のようだ。
「ずっと昔に作られた建物の残骸だぜ。もうちょっと歩けば塔が見える。残骸でなく、しっかりと塔の形をしたやつだ」
ほうき頭さんが補足で説明した。とりあえず塔の中に服を置いていけばいいだろうか。それにしてもこういう場所はなんだろう、わくわくする。
冒険という感じがすごいするのだ。だがはしゃいではいけない。危険な場所でもあるのだから。
「ところで確認したいことがある」
テオルが真面目な顔をして言いだした。
真面目な顔をしているがくだらない内容の確率が高い。
「今回の依頼目的を確認したいのだが……」
未だに把握できてなかったのかこいつは。そういえば飛行船に乗ってからじっくり説明しようと思ってたけど、あまりのはしゃぎっぷりで忘れてたか。
「そりゃ私たちの安全のためだよ」
「ああ、あいつにはオメーらに一切手を出させねぇぜ。だから安心しな」
心強いことだ。気合十分だこのハンターさんは。
「つまり、護衛、だよな?」
「まぁそうとも言えるな。ついでだしオメーらを近くの村までの護衛もしてやるよ」
「近くの村?」
「この辺に住んでるんだろ? だからって塔でサヨナラじゃあ味気ねーしな。せっかくの機会をくれたんだ。そこまでやらしてくれよ。それにおれもこの大陸の街にちょっと行ってみたくてな」
「な……、ちょっと待て……」
テオルが待ったをかけた。私もなんだか理解できない。 ん? え?
この辺に住んでるって、え? 私たちが?
「ん? 違うのか? 目的達成後現地で解散って聞いてるけどよ」
え、ちょっと待ってちょっと待って。解散?
ひょっとして、紹介状なしでも安い理由って、往復代金がなかったからってこと? 片道だけ? え。
「あ、あの、タンジアに帰る飛行船に私たちも乗りたいんですけど……」
「え、まじで?」
「まじですマジマジ」
安かった理由がわかった。今更わかってしまった。とはいえこのまま流されちゃだめだ。タンジアについたら土下座でも雑用でもなんでもして許してもらわないと。ここで解散とかのたれ死ぬ。
「……、大マジで?」
「大マジです」
「……あー、その、帰りの飛行船、ねぇんだわ」
「なんで!?」
「……、どういうことだ」
真面目になんでだよ。
テオルと私だけじゃなく、このほうき頭もいるのに帰りの飛行船がないっておかしいでしょ。
「この大陸のギルドに顔を出しに行こうと思ってよ……、この依頼をこなすついでにってことでギルドに伝えてあってよ」
「だが狩猟依頼という形だぞこれは。狩猟した竜の回収にギルド側から飛行船が再度来るんじゃないのか」
なにこのほうき頭は仕事ついでに観光しようとしてるんだ。そういう気持ちがいろいろとダメにするというのに全く! まったく!!
「それなんだけどよ。ど~も今回の対象が不明すぎるから、モンスターは古龍観測隊に引き渡すらしくてよ。その観測隊が回収にくるんだってよ。報酬も観測隊から受け取ってくれってなっててよ」
「ならその観測隊の飛行船に!」
「いや、この大陸のやつららしくてよォ。飛行船じゃなく陸路で回収する手はずなんだわ」
「つまり飛行船はこの地には……」
「来ないな……」
この世界は残酷だ。いつだって、こんなはずじゃないのに、で溢れている。
「……、どうしよテオル」
「……、俺が聞きたい」
「あ、あれだ! おれと街まで行こうぜ! 街にいって飛行船に乗せてもらえばいいじゃねぇか!」
……、それしかないだろうか。
金銭面の不安がやはり私たちに付きまとう。街にいっても飛行船代がどれほどになるか……。
「とにかく行こうぜ! 考えてたってしょーがねぇぜ!」
「そっすね……」
いつの間にか、この胸にわくわく感はなくなっていた。
「夜霧か……」
古塔に近づいてくると、だんだんと霧が出てきた。
なんとなく神秘的な場所で霧が出始めると神秘さ倍増である。
「あいつが現れた時もこんな霧の夜だったぜ……」
こんな霧の夜に突然襲われたら、錯乱して相手が消えたと錯覚するのも頷ける気がする。
けどそれを言ったら怒られそうだよね。空気の読める私は何も言わないよ。それに危険性が高そうだからね今は。あまりふざけてられない。
霧のせいで若干視界が悪いけど、全然見えないわけじゃない。ここは平たい場所だし見渡しもいい。モンスターがいてもすぐ気づけそうだけど、そんな油断が命取りなのだろう。
慎重に歩みを進める。
数分ほど歩いていたらハンターの男が立ち止まった。
「…………、このまま真っ直ぐ行きな。そうすれば塔に着く。中には大型は入ってこれねぇはずだ」
「はい?」
突然どうしたのだろう。周囲にはモンスターらしき影はない。
ひょっとして緊張からお腹が痛いのだろうか。
「どうしたんだ」
「……、ハンターにはよ、なんとなく、でけぇ敵に見られてるっつー雰囲気とか感じれるんだわ」
「それをいま感じてる、と?」
「ああ……、確実に居やがるぜ」
周囲にはやっぱりそれらしき影はない。
湯あみの最中に視線を感じたけど気のせいだった。とかそういう勘違いではなかろうか。
「でも周囲には何もいなさそうですけど」
「言っただろ、あいつは姿を消せるってな。守りながら戦うのはちょいとばかりつれぇからよ。だから行きな」
護衛する人を何もないところに置いていくのはさすがに困る。たとえお腹が痛いと言われても困る。
ここにはそんなモンスターいないのだから、厠なんてないから少し離れたところでやってきなさい。ちゃんと待っててあげるから。
そんな考えを、どう丁寧に言い繕うか考えていたら男が何か球状のものを取り出し、何もない方角に投げた。
そして球から響く高音。
突然の行為にびっくりして耳鳴りがひどいんですが。
文句を言おうとしたらでかいのがいた。
めっちゃ近くにでかいのがいた。
「えっ」
「なっ……!」
「走れ! おれがこいつをやる!」
言われてすぐに全力で走りだす。
なにあれ。なにあれ。いきなり目の前に現れたんですけど。
ありのままに起こったことを話すと、ほうき頭ハンターが大きな音を出す玉を投げたと思ったら、すぐ近くにでかいモンスターがいた。何を言ってるんだか私でもわからない。
お腹が痛いと思い込んでごめんなさい足止め本当にお願いします。
とにかく今はひたすら走るだけである。
「ここなら、大丈夫、だよね……」
「たぶん、な……」
テオルも私も息が切れきれだ。洞窟、ではなく天井が残ってる建物の中に入りこんだ。
階段とかあるよ。大昔のここの生活を想像すると何とも言えない気持ちになったかもしれない。今はちょっと疲れてるのでそんな余裕はない。
「本当に、姿が消えてた、ね」
古塔は危険というハンターずぎるどの情報は正しかった。すごく正しかった。
古塔は楽園という電波少女の情報は完全に間違っている。
「ナナリ、ここも危険だ」
「え、なんで?」
水場があるけど水場も浅い。柱とか倒れてるけどこれ以上崩れる感じには見えない。安全そうだけど。っていうかさっきからキラキラ綺麗だ。光る玉がふよふよしている。
……なんだろあれ。
「大雷光虫だ」
「なにそれ?」
「言ってしまえば巨大な虫の集合体だ」
「まじ? そう思うと綺麗なのに気持ち悪く思えてきた」
「ちなみに攻撃性が高い。赤い光を放ってるやつは特に危険だ。放電しながら纏わりついてくるぞ。中には死に至るほどの爆発をするやつもいるらしい」
「まじ? 落ち着いて聞いてほしいんだけど、なんか1つ赤く発光しながら近づいてるんだけど。テオルの後ろのほうに」
「マジか」
「まじで」
「走る」
「うん」
テオルが走り出した。
続いて私も走り出した。
古塔危険すぎるんですけど。
後ろを確認する。光の玉は来ていない。
左右を確認する。謎の模様の壁があるだけだ。
前を確認する。どっかに繋がってるっぽいけど光の玉とかはない。
「なんか、どんどん奥に入っちゃってるよね私たち……」
「一応目的地ではあったし、な……」
目的地がこんなにも危険だなんて。
というか護衛の人ともはぐれた今ってかなりヤバイ気がする。足止めはもういいんで早く来てくれないだろうか。ここまで幸い一本道だったし。
「しかし、さすがは古き時代の建造物だな。どこを見ても心が躍る」
「元気だね……」
さっきまで疲れてたのに、壁画や模様を見てワクワクテオル君状態になってしまったようだ。
「とりあえずこの辺に古代衣装を置いといたらいいかな」
「何を言ってるんだナナリ。俺たちの里の宝をこんな場所に置くというのか」
何を言ってるんだ。こんな場所に置くためにここまで来たんじゃないか。
「塔の頂に置くべきだ。というわけで行こう、ナナリ」
「何を言ってるんだ」
なんで頂上目指すのさ。
こんな危険な塔でこれ以上冒険をしたくないよ。
「頂上がどれくらいなのかわかってないんだしもうここで……、っていないし」
先に行ったようだ。古龍設定の血が騒いでるせいか活発になってるのだろうか。
ここで待っておこうか。そのうち戻ってくるだろう。
テオルにも困ったものだ。いつものことになっているけども、困ったものだ。
こんな危険な場所でワクワクして奥へ奥へ行くのはどうかと思うんだ。
あとね、幼馴染をね。
こんな危険な場所に置いていくのはどうかと思うんだ。
結構時間たってるのに戻ってこねぇ。
テオルに何かあったのだろうか、という不安が湧き出る。だがそれよりも、私のこの状況、危険すぎない?
独りだよ。この状態で変なモンスターが出たらどうすればいいの。
あのほうき頭ハンターが来ても危険だよ。下心ハンターと二人きりとか貞操の危機だよ。
そういえばあのハンターは無事だろうか。足止めでいいってことはわかってると思うから無理はしてないと思うけど。別にあいつを倒してしまって構わないだろう、とか考えて挑んでなきゃいいけど。
今の状況を考えると私のやれることは、大きく分けて3つ。
1つ目、塔の奥へ進み、テオルと合流する。戦力的には危険は変わらないかもだけど、合流可能性は高いし、モンスターの知識については豊富なため、遭遇しても安全策を見つけるかもしれない。
2つ目、このままこの場所で待機。今のところはここが安全だ。いつまで安全なのかは不明だし、もしものとき、戦力的にも知識的にも危険。
3つ目、塔の入口に戻り、ハンターと合流する。合流できれば戦力的に超安心である。だが合流するまでが超危険である。あと貞操にも危険である。
一番の理想は2つ目で、そこに加えて、テオルが戻ってきて、ハンターとも合流ができるという状態。
しかし私のここまでの旅路によって培われた勘が告げている。絶対そんな都合よくいかない、と。
この旅路で都合よく進んだことなどあっただろうか。いや、ない。
なので1つ目か3つ目を選ぶべきだ。
というわけで私は奥へ行きます。
戦力とか知識とか色々考えたけど、幼馴染か下心狩人か、と考えたら幼馴染一択でした。
「この塔、造ったやつは、絶対バカだよ……」
進むんじゃなかった。
何この段差。1段1段上るの超苦労するんだけど。全身運動しまくりなんだけど。今日は息切れしまくりである。
これひょっとして古代時代の階段だったりするの? どんだけ古代人は足長なの?
そしてテオルとはまだ合流できていない。
まさか中央の吹き抜けに落ちてたりしてないよね、と恐る恐る覗き込んだが悲惨なものはない。あと高すぎてクラっときた。
「絶対、この塔、人間が住む場所じゃ、ない……。巨人でもいたの……」
入口のほうは普通の階段だったのに、なんで中はこうなったのか。
それとも長年の月日で本当の階段が崩れて、ここは階段ではなくただの模様的な何かなのか。
建築についてはさっぱりだからわからない。私にわかることなんて、ガーグァの卵の取り方と特産キノコの見つけ方くらいだ。
とりとめのないことを考えながら登っているけど、しんどい。だからといって、今更戻るのもきつそうだ。
しんどいのを我慢しながら、どうにかこうにかすべての段差を登り切った。平坦な道がこれほど愛おしいとは。
廊下っぽいところを抜けるといくつかの普通の階段。そしてまた廊下。普通の階段があったことにもまた感動である。そして再び現れる大きな段差。そして中央の吹き抜け。
ここはきっと修行僧とかのための塔なのではないでしょうか。
しかしさっきと明らかに違うものがあった。上のほうにテオルがいたのだ。
無事だったようだ。
「テオルー!」
大声でテオルを呼ぶ。こちらに気づいたようだ。そして慌てた表情で顔の前に手をもってき、指を一本立てていた。
「なにー! よく見えないー! それより戻ろうよー!」
結構離れてるんだからそんなポーズされてもわからないよ。そんなことより戻ろうよ。もう私疲れたよテオル。
テオルは先ほどのポーズのままだ。口の前に指を立てて……、ひょっとしてあれって静かにしろってことだろうか。
危険な塔で大声は確かにヤバイ。これは本当に申し訳ない。両手を合わせて謝るポーズをした。もう大声出さないので許してください。だから帰ろう? という意味をこめて。
その意味が通じたのか、テオルが階段もどきを下りだした。
以心伝心できるほど私とテオルの仲が進展していたようだ。ひょっとしてタンジアで厨二口調を使ったため、親しみが上がったのだろうか。だとしたら嬉しくない。
4段ほど降りたあたりで、テオルが最初にいた場所に、バカでかい赤い竜が壁を壊しながら現れた。
なにあれ。絶対やばい気がするよ。またもやばい気がすごいするよ。大雷光虫とかいうのよりはるかにやばい気がするよ。
「ちょ、テオル! うしろ! やばい! なんか!!」
「分かってる!! ナナリも走れ!!」
なんだあのでかいの。すぐに今まで来た道を戻る。あの巨体ならこの通路の入口は通れまい。けどさっき壁壊してましたよねあいつ……。
この通路で一安心、とか一息ついたら酷い惨劇が起きそうだ。
「テオル! この入口も壊して入ってくるかも! だからもっと戻るよ!」
「ああ!」
テオルに忠告するため振り向いたら結構近くまで来ていた。あのでかいのも。
バタバタ走りながら吹き抜けに落ちないとは、器用さを褒めるべきか、この塔の頑丈さを褒めるべきか。ここは空気を読んで落下してほしかった。
急いで走る走る。最近走ってばっかりだ。
後ろを振り向いたらいる、とかになったら怖いので無我夢中で走り、最初の吹き抜け大階段の元まで戻ってきた。
もう今日だけで一生分は走った気がする。もう本当に疲れたよ。私なんだかとっても横になりたいんだ。
「追いかけては、きてない?」
「そのよう、だ」
今日の逃亡走りの中で今のが一番危機感を感じた。最初の消えるやつは驚きが大きかったけど、足止めしてもらえたし、大雷光虫は動き自体は早くなかった。
だけど今の赤いでかいのはダメだ。あの走り方の圧迫感とか、壁を壊してた力とか、走ってる最中何度も轟音が聞えたし、命の危機すぎた。
「あんな大声を出すからだ……」
「それは悪かったって思うけど、そもそも塔を登ったテオルだって悪いと思う……」
「責任転嫁というやつだそれは。最初あいつは眠っていたのだぞ。ナナリの大声で目覚めたのだ」
「あんなのがいた時点でそこをすぐに離れなさいよ。そしたら私だって大声出す必要なかったかもじゃない」
「だからそれは責任転嫁と言ってるだろう」
ぐぬう。そりゃ大声出したのは悪かったけどさ。けどさ。私が全体的に悪い、みたいな言い方やめてほしいよ。いや、まぁそうかもだけど。ぐぬうう。
「……、ごめんなさい」
「あまりにも気を抜き過ぎだ。ここだけでなく、街でもだぞ」
「悪かったって言ってるじゃない。それに街では鍵を持ち歩いたままだっただけで大したことないじゃない」
小姑かこいつは。
なにかうだうだと言いだしたテオルの小言は聞き流すことにした。
さすがにテオルももう上に登ろうとはしないだろう。あんなのがいたのだから。
そう思い上を見上げると、なんかいっぱいいた。
5、6? 結構な数のなんかが飛んでいる。
「て、テオル……」
「なんだ。まだ話は終わらんぞ。だいたい公衆の面前で人を札束で叩くなんて何をどう考えたら……」
「上、上。なんかいるんだけど、いっぱい」
テオルが上を見上げる前に、そばにベシャっと何かが落ちてきた。
明らかに体に悪そうな雰囲気がする。紫のけむりっぽいのが一瞬見えた気がするこの液。
「……、絶対毒だよ」
「毒だな……。ガブラスか。あいつら程度なら今の俺でも問題ない」
ダメだこいつ。さっきのやつのせいで感覚がおかしくなっている。
そりゃさっきのよりかは弱く見えるけど、毒と翼をもつ相手に何ができるというのだ。
「テオル、バカ言ってないで逃げるよ」
「大丈夫だ、毒にさえ気を付けていれば」
「いいから逃げる!」
「なっ……! 引っ張らなくても走れる!」
こんな時でもうだうだと妄想を述べられても、聞いてやる余裕など一切ない。無理やり手を掴んで引っ張ると、文句を言いながらも走り出してくれた。
バカみたいなことを言って死にました。とか迷惑すぎるのだから、ちゃんと逃げてもらわないと困る。そうこうしている間もぺしゃぺしゃとあの毒液が落とされていく。
「確実に私たちを狙ってるよね」
「……、そうだな」
さっきのと違って小さいやつらだ。この吹き抜け場の入口も普通に通れてしまうだろう。願わくばしつこい性格じゃありませんように。
「やはり迎え撃つべきだ。あいつらはしつこい性質があるはずだ」
私の心の中の願い事をあっさり壊す情報をありがとう。
「無理だってば。飛んでるやつ相手に何ができるの」
「天井の低い場所にいけば、あるいは……」
そんな場所はここにはない。通路の天井もかなり高かった。やっぱりここは人間の住む場所じゃないよ。巨人とか竜の居住区だよ。
っていうか天井が低くても勝てないよあんなの。小さめだけどそれでも人よりは大きいよ。
少なくとも一般人じゃ勝てないよ。自称古龍でも無理だよ。
それにしても、全く振り切れない。相手のほうが速いし、私たちの体力も限界が来てる。
足の感覚も若干怪しくなってきた。
もうやつらの息遣いが聞えるのではという距離まで来ている。
あの毒液吐くときの動作がよく見えるほどだ。なんかおじさんとかがタンを吐く動作に似ている。あんなのに当たると絶対気分悪い。毒がなくても気分が悪くて意識を失いそうだ。
モンスターにもそんな精神的攻撃をする知識があるとは、やっぱり古塔は異常だ。
「耳を塞げ!」
「ほぁっ?」
突然の声に思わず間抜けな声をあげてしまった。
その声はほうき頭もといハンターの声だった。
いきなりそんなこと言われてもとっさに体が動くわけないよね。それにもの凄く疲れていたからね。
ものすっごい大きく高い音が近くで発生したのは覚えている。
気づいたら、知らない天井だった。
タンジア編終了です。はい。