自分を古龍と思い込んでる田舎者   作:横電池

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膨らむお財布

 ゴードンを出て、街道から離れて森の中。

 地図を片手に2人で歩いていた。目指すはガーグァの卵。

 

「美味しい話だと思ったけど、やっぱり美味しいだけじゃないね……」

「……、当然だろう」

 

 ガーグァの卵をとってくる。それだけなら美味しいだけだったのに……

 

 あの後、あのおじさんとこの仕事について少し話した内容。その時に聞かされた条件が厄介なのだ。

 誰にも見つからずに、という条件だ。

 

 なんでもあのおじさんのいる組織は大きいが、この辺りではあまり力がないだとか。どこでも力ないんじゃないの? と思わなくもないが、そうらしい。

 何はともあれ、普段ならハンターずぎるどにこっそり依頼をしてるそうだけどここではダメだそうな。イマイチ意味がわからなかった。

 

 とにかく、誰にも見つからずに、ということで夜に森である。密猟というやつじゃないのか、ってテオルがおじさんに文句を言ってたが、とってくるガーグァの卵は無精卵だから生態系に影響を与えないだとかなんだとか。バカみたいな仕事内容に難しい単語を持ち出すのはやめてほしいところである。

 

「でもさ、ガーグァの卵ってそんな2万もの価値ってつくもんなのかな」

「つかないだろう普通」

「だよねぇ」

 

 夜の森というのはこわい。今の時期は竜などはいないから大丈夫、と聞かされてはいるがこわい。こわいのでとにかく会話する。人の声と言うのは安心を与えてくれる、って誰かが言ってたから。

 

「なんで2万も約束したのかな。馬鹿なのかな」

「馬鹿なんだろう」

 

 テオルはいまだに不満気なようだ。さっきから返事が適当な感じがするし。

 

 まぁ、組織だの例のアレだの他とは違うだの、彼の心の琴線にふれる単語が出まくって正体は卵でした。とか肩透かしだったんだろうけど切り替えてほしいものだ。

 

「テオル、もっとやる気出してよ」

「こんなわけのわからぬことに、どうやってやる気を出せばいいのだ」

「楽に儲けれて万歳って思ってやる気出しなさい」

「いずれナナリが下界でだまされるんじゃないかと不安に思えてきたぞ……」

 

 田舎者は騙されやすいとでも言いたいのか。

 

「どういう意味よ……、あ、あれが卵入れる箱かな」

「そのままの意味だが……、確かにこれだな。訳の分からん卵の絵が彫られてあるしこれだろうな」

「あのおじさんの組織ってバカしかいないのかもね」

「馬鹿しかいないんだろうな」

 

 卵の掘りがすごい箱を見てしみじみ言ってしまった。卵だけ異様に気合いの入った掘り具合なのに、その周りは適当もいいとこだ。人間っぽいのなんか棒だ。棒人間だ。

 これは怪しい宗教染みてきた。この仕事終わったら絶対関わりたくないなぁ。

 

「んじゃこの場所から黄色の場所はそう離れてないね」

「さっさと終わらせるか……」

 

 早く終わらせて街でご飯をお腹いっぱい食べたい。今度は卵料理以外で。

 そう意気込んで森の奥へ向かう。

 

 

 

 

 目的地だと思われる場所にはガーグァが複数いた。おじさんの情報の精度はなかなかすごいようだ。

 あとは驚かせて卵を産み落とさせるのだ。驚かせるにはコツがいる。そのコツとは、バレずに近づいて驚かす、だ。

 何度もガーグァを驚かせてきた私なら余裕である。里では一番のガーグァの卵取り名人と言われるほどだ。ナナリちゃん存在感薄いよね、とか言われたこともあるけど自信はある。

 

 まずは茂みに隠れながらこっそり移動だ。ガーグァたちの後ろをとるように……。

 

 うまくいくと思っていた。

 

 姿が見られてないのにあっさりこちらの存在に感づかれた。気づいたやつが周りに知らせるようにグァグァ鳴きだした。そして全員逃げていく。

 勘がいいやつだ。仕方ない、別の場所のガーグァを探そう。

 まだまだ地図にはガーグァの目安の印が残されているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 意味がわかんない。

 うまくいかないのだ。どうしても気づかれてしまう。

 

「なんでー……、里だったらもう20個くらいは集めれてるのに……」

「ガーグァも俺たちの力を感じ取っているのだろう。野生に生きるものとして当然の本能だ」

「はいはいそーですねー」

 

 テオルの戯言は流すとして、これはどうしたものか。里周辺のガーグァが間抜けだっただけなの? それともここらへんのガーグァが異常に鋭いの? どっちにしろ卵取りの名人という肩書に自信を無くす。いや、誇りとかには思ってないけどね。

 

「このままじゃ報酬もらえないよ……」

 

 なんとしてでも卵を手に入れなければ。なんのために夜の森にきたのかって話になってしまう。

 

「……、もしかしたらこの服、俺たちの服が殊更に存在感を強くしているんじゃないか?」

「はぁ? 服が私たちを強くしてる? ちょっと意味がわかりませんね大丈夫?」

「もともと俺たち古龍の存在感は強いが、今は人間の身。だが古代の衣装で俺たちの古の血が刺激され、その存在を世界に示そうとしている、ということだ」

「ますます意味がわかりませんね、大丈夫? いろいろと」

 

 周りに人がいないからか、最近なりを潜めていた自分古龍説を大いに述べてきた。

 

 まぁでも、今までの卵取りと違う点と言えば場所だけじゃなく服装もあるにはあるか。

 

 古龍云々は置いといて、実際この服は訳の分からないものだし。何百年と置いといて解れも崩れもしないってなんなのって話だしね。

 案外不思議な力があるのかもしれない。

 

「ちょっとこの服脱いでみるね」

「え……、あ、ああ」

 

 物は試しだ。替えの服に即座に着替えて挑戦だ。

 着替えてから再び歩き出して、またもガーグァを2頭見つけた。今はこの森が平和というのは本当のようだ。ガーグァいっぱいだね。

 テオルには待機してもらってこっそり再び回り込む。

 

 後ろをとれた。

 

 後ろをとれても安心できない。毛づくろいをするために首だけを後ろに向けることもあるのだ。こればっかりは感覚でいつも挑んでいる。

 

 音を立てないように、だけど素早く近づく。右手には石ころを持ちながら。左手はパーの形だ。

 

 背後に立てたら、もう1頭の位置を確認。そして全力で左手で、そのお尻をビンタする。そしてすぐさま右手の石ころをもう1頭にめがけて投げつけた。

 

 驚きの余り身体が伸びる、と言わんばかりの反応が本当に愛らしい。間抜けな顔した君たちがいけないんだよ。可愛すぎていじめたくなるんだよ。あ、あと卵ほしくてだよ。

 

 うっとりしそうではあるが、忘れずに顔を両腕で庇う。怒ったガーグァにつつかれてもいいようにだ。痛いけど顔は守らないと。目に当たったりしたら一大事だから。

 

 ……?

 

 つついてこない。恐る恐る様子を見たら逃げていくお尻が見えた。かわいい。

 

「今のやつらはちゃんと卵を産み落としていったようだな」

 

 テオルがそばに来ていた。そして言われた通り、卵が2つ落ちてある。

 それにしてもまさか本当に服が原因だったとは。テオルの戯言もたまには役に立つものだ。

 

「それじゃ運ぼうか。あ、服返して。なんだかんだで獣避けにもなりそうだし」

「ああ、やはりこの衣装のほうがナナリには似合うからな」

 

 褒め言葉に感じれないのは私が素直じゃないからだろうか。いや、違う。

 古龍という設定の仲間がいるほうがいい、みたいな感じなんだろう。本当に厨二病の完治が望まれる。独りでその病と闘うならいいけど人を巻き込むのなら早いこと完治してください。

 

「……、え? なにこれ」

 

 テオルを無視して卵を抱えようと思ったらちょっと変だこれ。

 なんだこの卵。今まで見た卵と全然違う。

 

「え、ねぇ、これってガーグァの卵なの?」

「……、そう、なんじゃないか? やつらから産み落とされたものだし」

 

 金色である。派手な金色である。もう片方は見慣れた白いやつである。

 質によっては10万zってこれのことだろうか? こんな卵を産み落とすのか都会は。都会すごい。

 

「ひょっとしてすごい幸運なんじゃない? これ」

「かもしれないな。とにかく早く運ぶとしよう」

「うん!」

 

 金の卵はテオルに持たせて、私は白い卵を持つ。旅の資金だけじゃなく少しは遊ぶお金にも回せそうだ、と考えながら、赤い箱の場所まで歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 約束の卵の店に入るとあのおじさんが待っていた。

 

「ヘッヘッヘ……、やっぱり俺の目に狂いはなかったな!」

「……、迷惑な目だと思うがな」

 

 テオルは未だに肩透かしにあったことを引きづってるようだ。箱に収めた後ちゃんと回収してもらえるか不安だったがこの様子なら心配はいらなさそうだ。

 

「ちゃんと収めたもの、見てくれましたか?」

「ああ! すげぇぜアンタら! 同志たちがみんなあの卵を見てざわめいたくらいだぜ!」

「じゃあ報酬は期待してもいいですよね?」

 

 ふふ、当然だろう。意味のわからない卵愛好家集団にあの金の卵はさぞまぶしいものだろう。ふっふふふ、駄目だ、まだ笑うでない私。

 

「もちろんだ! 最高にいいフォルムの卵だったからな! 2つ合わせて12万zだ!」

「まぁあんな金色の卵ですからね、いい値段にはなると思いました」

「いや? 金色のほうは2万だな」

「え」

「金の卵は珍しいっちゃ珍しいが、俺たちはそんな珍しさより形、愛らしさを大事に思う。あの白い卵はもう完璧よ……。っとっと。いかんいかん、ほら、12万zだ受け取りな!」

 

 おおおう、こんなポンと渡されるとは。金の卵より普通の卵のほうがいいとか言っちゃう頭のおかしい組織だけど、お金はあるようだ。

 

「ありがとうございます。それじゃ私たちはこれでー。あの卵美味しく召し上がってくださいね」

「え? おいおい何言ってんだ嬢ちゃん」

 

 え? 今何か変なこと言った?

 ひょっとしてまだやってほしいことあったとか? さすがにまた卵とりにいくのは嫌だ。お金手に入ったし、また困ったときにでいいよ。

 

「何か?」

「卵は飾るものだろう!?」

 

 

 あー、うん。そうだった。よくわからない人たちなんだこの人の組織は。

 

「あ、そうですか」

「あんな美しいフォルムの卵だ……。思わず頬ずりしたくなったぜ……」

「そーですか。もういーですか」

 

 目がヤバイよこの人。もう早く離れたい。

 

「やっぱりアンタら最高の逸材だぜ。どうだ? 俺たちの組織に入らないか? この出張支部のやつらはみんな喜んで迎え入れてくれるぜ。本部に強く推薦してやっても」

「気持ち悪いんでお断りしますねー。テオルいこ」

「ああ、疲れるなこの手のやつは……」

「まぁ仕方ねえか。けどきっと気が変わるだろう! その時は来い! いつでも俺たちは迎え入れてやるぜ!」

「テオルもたいがい疲れさせる原因だからね?」

「無視は寂しいぞ無視は」

「ナナリもたいがいだからな……」

「おーい、寂しいぞー? は、入りたくならなくてもいつでも俺たちを頼れよ! 俺たち、卵シンジケートをな! 本部にもアンタらのことしっかり伝えておいてやるからよ!」

「私はちょっと都会について知らないだけだから」

 

 お店を出るまでずっと後ろで変な人がやいやい言ってたけど気のせいだろう。思いっきり組織名出してた気がするけど気のせいだろう。もう関わることもない。

 

「それじゃハンターずぎるどへ行こうか!」

「ハンターズギルドだな」

 

 ひょっとして私の発音は何か変なのだろうか。妙にテオルがハンターずぎるどを強調してくる。意味が通じれば問題ないだろうしまぁいいか。

 

 所持金も12万増えたおかげで18万zを超えた。これでもう何の心配もなくなった。

 

 いざ行かん、フォンロンへ。

 さっさと任を終えてテオルから離れてやるんだ。痛々しいやつから離れるためにも頑張るぞう。

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