自分を古龍と思い込んでる田舎者   作:横電池

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新しい道

 タンジアに向けて、アプトノスが牽引する荷車にゆーらゆら。

 

 街から街への移動に専用の荷車があるってすごいね。合理的と言うやつだろうか。難しい単語を使ってみました正直よくわかってない。

 

 ゴードンへ行くときのように、進路が同じな行商人さんに乗せてもらうということが今回はかないませんでした。

 最初はそれを狙っていたのだが

 

「タンジア行くならアプトノスの定期便使いなよ。一般の方はみんなそっち使ってるよ」

 

 と行商人の方に言われてしまい、今回はこちらを利用しているのだ。

 

 運賃はばっちしとられました。ちくしょう……、2000z……。

 格安のアプトノス車を頼んでもこのお値段。都会の人間はきっとみんな心はお金でできているんだ。暖かい心なんてないんだ。

 

 所持金自体はまだまだあるけども、減っていくお金には心までもすり減らされる。

 今の所持金は17万7800z。ゴードンでは紹介状を書いてもらった。その紹介状をもってタンジアのハンターずぎるどで8万zの出費を行うのだ。なので実際は9万7800z

 食事代や宿代などにもお金は使うのだから、その分を考えると……、6万zくらいだろうか。遊べるお金。

 

 ……、結構あるじゃない。

 

 物事を整理するのって大事だね。不安が一気に消えたよ。

 

「テオル、タンジアについたらちょっと観光しない?」

 

 隣に座っているテオルに提案する。タンジアについてすぐにハンターずぎるどに向かっては勿体ない。護衛を着けて塔へ出発なんて、都会を堪能する暇もなくなってしまう。

 

「……、ゴードンを出るときも散々観光しただろう」

「ゴードンの観光はしたけどタンジアはしてないじゃない。行ったことないんだし」

「人間の街にそう違いがあるとは思えん」

 

 相変わらずの痛さだ。私たち以外にもお客さんいるんだから、そういう発言はマジでやめてほしい。

 

「だが、まぁタンジアには興味がある。ゴードンのハンターズギルドの本部はタンジアの港だからな。いったいどんな奴らがいるのか……、楽しみだ」

「卵愛好家集団じゃなければいいね」

「……、あんな珍奇なやつがいてたまるか」

 

 素直じゃない幼馴染だ。観光には賛成ということだろう。

 

「それじゃ、タンジアについたらまずは宿をとろっか。紹介状は宿に置いて観光しよう」

 

 海の幸の本場だ。期待が高まる。きっと美味しいに違いない。それにハンターずぎるどの本部とやらだ。竜のお肉とかも扱ってるかもしれない。これまた美味しいに違いない。ガーグァも鳥竜っていう竜らしいね。

 

「そうだな、ナナリが紹介状を持っていたらそのうち無くしそうだ」

 

 何を言うかこいつは。こんな大事なもの無くすわけにはいかないのだ。無くすわけがない。

 

 古代文明と関係があるかもしれない里の、任であること、目的地にいく理由、等々を紹介状に書いてもらったのだ。これをタンジアのハンターずぎるどに渡せば優先的に護衛を回してくれるとか。

 これをなくした場合を尋ねたら、再度色々事情説明、古代衣装であることの証明、なんでかよくわからなかったけど移動費の増加、とよくないことばかりだそうで。最後の移動費の増加があれだよね。なかなかきな臭いってやつだね。

 

 まぁとにかく大事な紙切れだ。無くしたり、落としたりしては大変だ。なので部屋に置いていく。観光には邪魔な紙切れだ。

 こんなものを持ち歩きながら観光なんて気が気じゃないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおー」

「ほう……」

 

 タンジアについて出たのは感嘆の声だった。

 

「すごいこう、道っていうか細長いっていうか、スラっとした? 街だね?」

「街並みなどよりもっと見るべきところがあるだろう」

「え? 海とか?」

「あの灯台だ」

 

 灯台? まぁ港なんだし灯台くらいあるでしょ。むしろ灯台のない港ってあるの?

 

「あの灯台は黒龍祓いの灯台と呼ばれてるものだ」

 

 あー……。厨二心を刺激されたんですね。

 

「黒龍は我ら古龍よりもはるかに強大な存在。人間たちにとって、触れてはいけない禁忌の存在。その存在と対峙し、生き延びた後に建てられたのがあの灯台だ」

 

 わー、テオル君詳しいー。たぶん黒龍祓いじゃなくてピンク龍祓いの灯台とかって名前なら興味持たなかったでしょ絶対。響きのかっこよさから覚えただけでしょ。

 

「そんなことより美味しいお店探そうよ」

「そんなこととはなんだ。かの黒龍の記録でもあるのだぞ」

「そんな伝承なんかより美味しいものの方が大事よ」

「伝承などではない。少し前にも再び黒龍がこの海に出たそうだ」

「へー」

「本来なら、この港は滅びてたのだろう。だが、その黒龍を撃退したハンターがこの港にいたらしい。そのため今もこの街は人間が住んでいるのだ」

 

 いつから観光案内人になったのだろうテオルは。

 

「とにかく宿を探そっか。できるだけ安いところ」

「ふん……、まぁいい」

 

 宿を忘れて買い物をして、そして紹介状を無くすとかになったら悲惨だからね。

 

 

 

 宿はどこだろう、と悩んでいたら街の人が教えてくれた。都会にも優しさはあるんだって思ったよ。

 格安の宿を探してます、と伝えて教えてもらった場所はその通り、格安だった。600zって。ゴードンの宿選び適当すぎたの? 値段の差すっごい。いや、まぁ快適な宿だったけどさ。

 その点、一泊600zの宿はというと……、開放的である。

 

 すさまじく開放的である。屋根はある。雨は凌げるよ。風は凌げないよ。窓っていうか壁がねぇ。

 丸見えじゃんこれ。外から丸見えじゃん。まぁ海側から丸見え状態なだけだし、覗き見とかはいないだろうけどもこうも丸見えだと……。ひょっとしてタンジアって言うほど都会じゃないの?

 

「……、実はタンジアって都会じゃないとか?」

「この宿が特別なだけだろう。それかこの解放さがここの住民にとって当然なのか、だ」

「まぁいいけどさ……」

 

 壁がないと言っても海側だけだし、扉には鍵もついてる。数日だけなら寝るときも案外新鮮で心地よいかもしれない。

 荷物を下ろし、部屋を出ようとしたところでふと思う。

 

 観光なんだし、この古代衣装じゃなくてもよくない?

 

 そうだよ、なんでいつまでも何百年もの古着を着てるんだ私は。

 だからいつまでも田舎者の雰囲気が抜けないんだ。

 

「ナナリ? どうした? 街を巡らないのか?」

 

 突然止まった私に疑問を持ったテオルが声をかけてきた。

 

 テオルの姿を見る。やっぱりというか、古代衣装のままだ。

 

「観光なんだしさ、普通の恰好しない? この服じゃなくて」

 

 テオルにも普通の恰好をさせたいけども……

 

「断る。この服はいずれ手放すとしてもまだその時ではない」

 

 まぁ断ると思ってた。

 

「あっそ。私は着替えてから観光するわ。鍵は宿屋さんに渡しておくから、もし先に戻ったら宿屋さんから受け取って」

「ナナリは着替えるのか?」

「うん、たまには違う服着たいじゃない」

「……、そうか。好きにすればいい」

 

 そう言ってテオルは出ていった。今回の観光は別行動である。タンジアの街が細長いから迷うこともそうないしね。それにたまにはひとりになりたいときもあるのだ。

 

 お金は自由に使っていい金額として私もテオルも3万zずつ持っている。が、だからといって残りの14万zを部屋に置いていくのはさすがに怖いので、この14万zも私が持とう。もちろん使いませんとも。

 

 服を着替えて私も外へ。もちろん鍵はちゃんとかけますとも。待っててください都会の美味。

 

 

 

 

 

 

 

 シー・タンジニャである!!

 優しい街の人におすすめのお店を聞いたところ、シー・タンジニャという素晴らしいお店があるらしい。思わず高揚するほどに。

 世界中の食材が集まる三つ星レストラン、シー・タンジニャである!!

 安いものから高いものまで取り揃えてるとかなんとか。そして味は超すごい。これは行かないわけにはいかんですよ。

 

 街の奥にあるらしいのでどんどん進む進む。普通の恰好の人だらけだと思ったら、いかにも戦いますと言わんばかりの鎧の人やピンクの熊の着ぐるみ? みたいなのを着てる人など、変わった人がいるところについた。少し広い区画だ。香ばしい香りが漂ってくる。ここがひょっとしてシー・タンジニャ……!

 すぐそばにはハンターずぎるどがある。しかしやっぱり開放的である。雨風の強い日とかどうするんだろ? もと大きいテントでも張るのかな。

 

 まぁ今はどうでもいい。晴れだしね。晴天だしね。

 重要なのはシー・タンジニャがやってるかどうかだしね。

 お昼の時間にしては少し遅い時間だったので、お客さんはそれほどいないようだ。だが0と言うわけではない。

 

 さっそく、シー・タンジニャの席に着いた。給仕さんにおすすめを聞く。

 なんかお店の人におすすめを聞くっておしゃれな気がする。また一歩、都会に染まっていく。

 

 おすすめはタンジア鍋と言われる料理らしい。とりあえず1人前を頼む。屋根にあるあの巨大鍋のことじゃないよね、とちょっとだけ不安になった。

 隣に座った人もタンジア鍋を頼んだ。同じような観光客だろうか。なんだか裕福そうなおじさんだ。経済的にも、お肉的にもという意味で。

 

 にしても、ここで働いてるのってアイルーだけ? 見ていて和むけど不安だ。食器とか落としたりしないかと。

 

「お嬢ちゃん、君はこの街の人かね?」

 

 ぼへーっと待っていると隣のおじさんに話しかけられた。待ってる間退屈だったのだろう。私も同じ気持ちだ。

 

「いえ、ちょっと地方から来たんですよ。この辺りは今日来たばかりでいろいろと新鮮ですね」

 

 ド田舎から来た、というのは恥ずかしかったので、地方と言った。何も間違ってないから問題ない。

 

「ほう、ということはこのあたりの食文化とは違った土地の出身かね?」

 

 しまった、田舎者とバレ気味だ。いやいいけど、なんかしまった。まぁいいか。

 

「まぁ山奥の小さな里でしたからね。基本山で採れるものや獣肉とかですねぇ」

「ほうほう、何か珍しい食材とかはなかったかね」

 

 珍しい食材? 田舎とはいえ別に普通だ。と、思う。

 しかし普通の食材です、と答えるのも面白味がない。おそらくこの人は待ってる間の退屈しのぎの会話をしたいのだ。退屈しのぎとはいえ少しは面白い話をしなくちゃ。

 

「私は食べたことないんですけど、里長の世代は捕まえた虫を煮込んで食べてたそうです。なんの虫だったかまでは聞いてませんけど」

 

 私は食べたことない。もちろんない。食べたくない。

 話してからこの話題は失敗だったかなと後悔した。これから美味しい料理を食べようというのに、虫料理の話って……、選択としては最悪なのではなかろうか。

 おじさんも思わずだんまりだよ。これは申し訳ないことをしてしまった。

 謝ろうとしたところ

 

「……、なるほど、虫か。そうか、虫か! ワシの探求心が刺激される! 気になるな! 実に気になるな!」

「え、あ、はぁ……」

 

 めっちゃくちゃ目を煌めかしてらっしゃる。

 何この人? 変人? 卵信者に続いて今度はなに? 虫信者?

 

「あ、あの~、お待たせしましたニャ~。タンジア鍋ですニャ~」

 

 唖然としてると、給仕さんがタンジア鍋を運んできてくれた。よかった、巨大じゃない。

 私の分と、隣の変人の分を置いていった。

 

「あ、ありがとうございます」

「お、おお。ありがとう」

 

 こんな変人でも普通にお礼は言えるのね。テオルにも見習ってほしいものだ。

 

「ところで先ほどの話の続きなのじゃが、その虫の煮込みは美味しかったか知っておるか?」

「い、いえ……、あ、あのお話よりこの料理を食べましょう?」

「そうじゃな、出された料理はしっかりと頂かなくてはじゃな」

 

 なんだこいつ。なんだこの虫信者。っていうか虫食べる気なの? いや、そういう文化はまだあるらしいけど。

 いかんいかん、今はお鍋に集虫だ。違う、集中だ。

 

 

 

 

 美味しかったよ。うん、お鍋美味しかったよ。だけど脳裏になぜか虫の姿がチラついてあまり集中できなかった。美味しかったんだけど、さっきの会話のせいで……、ちくしょう。

 

「やはりタンジア鍋は美味であるな。君もそう思うじゃろ」

「そうですね……、おいしかったです……」

 

 この変人はとても満足そうだ。私もあなたがいなければ同じような満足した表情を浮かべれたはずなのに。

 

「それでさっきの話なんじゃが……」

 

 うぇぇ、まだ虫に興味あるの? ドン引きってやつだよこれ。

 

「さっきも言ったように私はなんの虫かは知りませんよ。美味しかったかどうかも聞いてませんし」

「ああ、それはいいんじゃ」

「じゃあなんです?」

「実はワシはこれでも美食家、と呼ばれておってな」

「はぁ……」

 

 唐突な自己紹介ですね。しかし美食家、かぁ。さぞ美味しいものを食べ歩いてるのだろう。

 思わずおじさんのお腹を見た私は悪くないと思う。

 

「実はこのところ、どうにも物足りなくてな」

「はぁ……」

「そこでお嬢ちゃんから虫を食べたという話を聞いて、少し興奮してしもうたんじゃ」

「私は食べてませんからね! 誤解を招く言い方やめてくださいね!?」

 

 私は食べてないっての。その言い方だと私が食べたみたいじゃん。

 

「やはり未知の食材と言うのは刺激的じゃ。想像が広がる」

「それはよかったですね。ですが何度も言うように私はその虫料理は知らないんですよ」

「もちろん虫料理に興味はある。あるが、話したいことはちと違うんじゃ」

「なんなんです……」

「ブナハブラって、美味しそうに思わんかね?」

「思わないです」

 

 ブナハブラって、でかい虫じゃん。それも害虫じゃん。毒もつ虫じゃん。

 山でやたらと見たよ。あんなの絶対美味しくないよ。里長たちも食べようと思ったことないよきっと。

 

「ワシも少し前まではそう思っておった。だがお嬢ちゃんの話のおかげでそんな先入観などくそくらえじゃ!」

「いや、先入観も何も、ブナハブラが食用になるなんて聞いたことないですよたぶん」

「それはまだ誰も試しておらんだけかもしれん! 何事も最初は未知なのじゃ!」

「そっすか……」

 

 どんどん熱くなってきてるよこの変人自称美食家。

 

「で、でも大きい虫ですけど、食べれる部分は少ないと思いますよ?」

「そうじゃろうか?」

「そうですよ。あの虫は毒を持ってますし、やばい液体も出しますから」

「その部分以外は美味の可能性があるということじゃな」

 

 何が何でも食べる気なのねこいつ。

 

「そういえば、ここから離れた土地では徹甲虫や重甲虫という巨大な虫のモンスターがおるらしい。それらなら食い出もあるかもしれんな!」

 

 悪食じゃねぇか。

 美食どこいったの。

 

「ありがとうお嬢ちゃん! ワシに新たな道を示してくれて!」

「えぇー……」

 

 私は何も示してませんよ。その道は明らかに間違った道ですよ。早く元の道に戻ったほうがいいよ。

 

「もはやいてもたってもおれん! 早速行動に移らねばな!」

「あ、あの、美食家、なんですよね?」

「うむ? おお、そうじゃ! ワシとしたことが少し慌てすぎたな」

 

 おお、よかった。正気に戻ったみたいだ。

 うんうん、美食家としての誇りって大事だよ。悪食になったらダメだよ。

 

「ブナハブラだけを食すなど失礼というものじゃな! 何か合いそうなものと共に食わねばなるまい。場所も大事じゃな。お嬢ちゃん、何から何までありがとうな」

 

 やめて。感謝やめて。

 私が道を踏み外させたみたいな感じになる流れやめて。

 

「ブナハブラの煮込みを温泉につかりながら食す。うむ、これじゃ! ユクモ村でハンターに依頼を出すとしよう!」

「そっすか……」

 

 私とは関係ない。関係ないったらないんだ。

 

「それじゃあの、お嬢ちゃん! 本当に感謝する!」

「さようなら……、さようなら……」

 

 さようなら、元美食家さん。

 もう絶対美食家じゃないよ。名乗れても酔狂とかが頭につくよ。

 

 世の中変人ばっかりなのかもしれない。

 タンジアの空が妙にむかつくほど青く感じれた。




酔狂な美食家。
MHでは以下のクエストの依頼主。

MH3rdにて
『美味との遭遇?』 ブナハブラの討伐
『砂原を泳ぐ珍味!?』 モンスターのキモの納品

MH4Gにて
『美味との遭遇?』 アルセルタスの狩猟
『高難度:最も危険な晩餐』 ゲネル・セルタスの狩猟
『高難度:重厚で重甲な晩餐?』 ゲネル・セルタスの狩猟
『鬼達も恐れる晩餐?』 テツカブラ2頭の狩猟

 すべて食用としての依頼である。
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