自分を古龍と思い込んでる田舎者   作:横電池

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あの方にお世話になっていた方はごめんなさい。先に謝っておきます。
けどこれカプ○ンも謝るべきだと思うの。


孤高の鬼

 シー・タンジニャを堪能、したこと、だし……、不完全燃焼状態だけどもまぁ堪能した、ということにして。

 さてさて、どうしようかな。宿に戻るには早すぎる。

 

 小物類のお店でも探そうかな。でもこれから古塔へ行くからあまり荷物は増やしたくはないしなぁ。うーん。

 見るだけ見てみようかな。

 

 行動方針を決めて席を立つ。お会計をしようとしたら、すでにあの自称美食家が払っていてくれたようだ。さすが自称美食家、太っ腹である。

 そしてシー・タンジニャを後にした。しようとした。

 見えた光景に思わず立ち止まってしまった。

 

 

 シー・タンジニャの隣にある、ハンターずぎるどで

 

 

 それはもう、すごい綺麗な土下座をしている人がいるのだ。

 

 

 こういう場所で土下座する人初めて見た。

 都会はこういうことが多いのだろうか。っていうかなんであの人は土下座してるんだろう。

 

 ハンターずぎるどで土下座をする理由……。

 

 ハンターを怒らせてしまったのだろうか。あの土下座をしている男の人は、カウンターにいる女性にひたすら頭を下げている。きっとあの女性ハンターを怒らせてしまったのだろう。

 

 どうなってしまうのだろうあの男は。怖いけど興味がある。

 他人事とは感じられないのだ。

 

 観光が終わり次第、私とテオルもハンターずぎるどに来ることになる。つまりあの女性と話すことになるだろうし、どうして怒らせてしまったのか知っておきたい。態度や口調とかで怒った、とかなら今日から全力でテオルを指導しなくちゃならない。

 

 よし、今後のためにも少し調査だ。

 

 調査と言ったけどやることはただの盗み聞きである。なるべく不自然にならないように、さりげなーく近づいてどういう話をしているか聞くのだ。

 わー、あの灯台すごいなー綺麗だなーって感じで近づけば大丈夫だろう。なんだっけあの灯台。テオルが熱心に解説してたあれ……、あれ……。黒龍破壊の灯台!

 

 これでもし何か聞かれたら、黒龍破壊の灯台を眺めてるんですってごまかせる。今回ばかりはテオルに感謝だ。いや、でもテオルが普通にしてくれてたら怒らせるかもって不安ないし、やっぱり感謝はいいや。

 

 完璧な言い訳も用意できたことだし、顔を灯台に向けてじわじわ近づいていく。

 

「お願いします! どうか何卒! 何卒!」

「何度頼まれても、申し訳ありませんが決まりなので……」

 

 うん? 怒らせたわけじゃないのかな。何か必死に頼んでる?

 ハンターに頼むようなこと……。モンスターの狩猟とか調査だよね、たしか。

 そしてハンター側が承諾しないってのはなんだろう。

 

 そこまで考えてひとつ思い当たった。お金が足りないのだきっと。

 

「どうか、どうかお願いします!」

 

 土下座で必死に懇願している姿を見ていると胸が痛む。なんだか可愛そうに見える。

 あそこまで必死なのだ。きっととんでもない危機的状況なのかもしれない。村が襲われて助けを求めてやってきたけどお金がなく、ハンターを雇えないとかだろうか。

 

 決まりは大事だろうけど、人命は優先するべきじゃないだろうか。部外者ではあるが、このまま放置するのは気分がよろしくない。私の手元にはお金がある。3万zまでなら使っても旅の予定に問題はない。ここはやらない善よりやる偽善だ。

 

「ですから、契約金をお支払いできないことには……」

「いったいいくらなんですか」

 

 言ってしまった。入ってしまった。

 

 だけど見てられないもん。村の危機的状況を打破するためにここまでやってきたこの人がかわいそうだよ。ハンターをひとりくらいなら3万zあれば雇えるはず。古塔までに2万といくらかだったし。

 

「え、えっと」

「この人の代わりに払います。いくらなんですか」

 

 すごいドキドキする。緊張がすごい。自分がやってることが間違いなんじゃないかって不安にもなってくる。

 女性は突然私が話に入ってきて、戸惑ってるようだ。

 

「み、見ず知らずの少女よ! 我輩感謝! 本当に我輩感謝!」

「それで、いくらなんです」

 

 2万か、それとも3万か、少しくらいなら予算を超えてもいい。土下座の人がちょっと暑苦しいけど、それだけ必死なんだろう。

 

「1200zですが……」

「え、安っ」

 

 思わず言っちゃった。

 え、っていうか1200って。土下座の人を見る。財布とか普段持ち歩いてないんだろうか。1200zくらいなら持ち歩いててもいいと思うんだけど。っていうかハンター雇う金額じゃないよね? それともタンジアじゃこれが適正なの? ゴードンは宿代といいハンター代といいぼったくりなの?

 

「えと、ハンターを雇う金額、ですよね?」

「え? いえ、依頼の受諾契約金です」

 

 依頼の受諾契約金? なんだか難しそうな単語が出てきた。依頼を受けるのに契約金がいるってこと、かな。

 

「えっと、うん? あれ? ってことは、この人が依頼を受ける人?」

 

 土下座をしたままの男の人を指さす。村の危機を救うために依頼を出しに来た人じゃないの?

 

「はい、ですが契約金をお支払いいただける資金をお持ちじゃないようで……」

「うむ。我輩、少し前に事業を失敗したのだからお金がないのだ……。生活するための金がないから金を稼ごうにも、稼ぐための金がないのだ!」

 

 なんか思ってた展開と違ってた。村の危機じゃなくて破産者の危機だった。土下座しながらも説明されたけどなんだろうこの感じ。肩透かしをくらったこの感じ。

 

「では、えっと、1200zお願いできますか?」

 

 女の人に催促されてしまった。私が。

 いや、まぁ代わりに払いますって言っちゃったしなぁ。なんだろう、釈然としない。

 

「は、はい」

「はい、確かに」

 

 1200zを支払う。タンジア鍋で使うはずだった代金がここで使われただけだ……、そう、思うことにした。

 

「ヌハハハハハ! 我輩、人の優しさに心が洗われるようだ! いやー、優しさっていいものですね!」

 

 何この人。

 

「それじゃあこちらの依頼お願いしますね。今度は失敗しないようにお願いしますよっ」

「ヌハハハハ! 我輩、これでもかつては鬼教官と呼ばれた身! もう道に迷って失敗などはしないぞ!」

「この間は泳いでる最中に足をつって溺れたって聞きましたよ。出発はいつごろにします?」

「今すぐに! と言いたいところだか、我輩恩義に厚い男である! この少女と少し話がしたいので今日の夕方にお願いします!」

 

 何この人すごいうるさい。暑苦しさだけじゃなく煩さがすごい。この人も変人だわ。都会って変人ばっかりだわ。卵、虫、と続いて次は暑苦しい破産者って。

 

 

 

 

 

「改めて、感謝感激である! 感謝の印に我輩の、ためになる話を聞かせてやろう!」

 

 えぇぇ……、全然嬉しくない提案された。

 まぁでも少しだけ興味がある。話し方とか声量がアレだけど、内容は興味がある。

 なぜなら、テオルが私のことを騙されやすそう、と言っていたからだ。事業に失敗した人の話を聞いて、耳だけでも経験が豊富になれば、きっと私のことをそうは評価しないはず。

 

「ためになる話って、どんな話です?」

 

 とはいえ、勘違いで実は全然関係ないどうでもいい話でした、ということもあり得る。そうはならないためにも先手はうっておく。事業関係、もしくは破産した理由であればいいんだけど。

 

「うむ。ためになる話とは、我輩がどうして白昼堂々と土下座をするほどの貧乏になったのか、という理由なのだ。貴様は我輩と似ている部分がある。放っておいたら我輩と同じ道を辿りそうだからな!」

 

 これは聞いておきたいという思いがますます高まった。そして私とこの人が似てるってなんだろう。私はこんなに煩くはないと思うけど。あと暑苦しくもないと思うけど。

 

「是非聞いてみたいです。ところで、私とあなたが似てるってどういった部分がです?」

「我輩も事業が波に乗っていた時はウハウハでな。貧乏人に金を恵んだりしていたのだ……」

 

 恵まれない人にお金を渡していたのか。暑苦しい人の意外な優しい一面に驚きだ。なるほど、私のさっきの行いも似たような感じだ。

 

「なるほど……」

「貧乏人に金を恵んだり、暗くて道が見えないと誰かが言えば100z札を燃やして灯りをつけてやったり……。我輩のあの頃は凄まじかった」

「ん?」

 

 今変なこと言ってなかった?

 

「ロックラックには10億はくだらん豪邸を建て、歯はすべて金歯に変えたのもその時である。店に入ればその店の一番高いものをすべて持ってこい! と言い放った時など人生薔薇色に見えたぞ!」

 

 あ、この人あれだ。絶対破産理由は自業自得だ。

 

「貴様も我輩と同じことをしてしまうだろう! あの頃の我輩くらいに金があれば!」

「はい、たぶんしません」

 

 そんなことしないわ。私はちゃんと色々考えて行動するって。持ってるお金の遊んでいい金額もちゃんと定めてるから。

 

「ヌフフ、まぁ今はそういうことにしておこう!」

「はぁ、ところでなんか急激に疲れたんでお話終わってもらってもいいですか」

「遠慮することはないぞ! 我輩の有難い話に恐縮してしまうだろうが、聞けばたちまちアナタの人生ビッグウェーブに早変わり!」

 

 

 なんでこの人の話を聞いてみたいって言っちゃったんだろう。

 付き合うのもめんどくさいし札束で頬っぺたでも叩いたら引き下がるかな。引き下がりそう。お金に飢えてそうだしね。100z札を灯りに使ってた人だ。100z札の仇討ちだ。100z札の束でたたいてやる。

 

「ほら、これあげますからもう終わっときましょう? ほしいでしょこれ?」

「ぬおっ、札束ビンタだと!」

 

 100z札の束でぺちぺち叩く、なんかこう、不思議な感じだけどもべしべし叩く。貴様が燃やした100z札の復讐を、代わりに私がやってるだけだ。スカっとするというかちょっとした快感だねこれ。

 

「くっ! 屈辱と同時になんだろう、我輩開いてはいけない扉を開きそうになってしまうぞ!」

「ほら、これ受け取って早く依頼をこなして来たらどうです? ほらほら」

「何してるんだナナリ……」

「へ?」

「くっ、我輩は屈したりはしない!」

 

 名前を呼ばれたので、そちらを向いたらテオルがいた。困惑してるような感じの顔でテオルがいた。

 

「あ、テオル。何してるって見ての通りだけど」

 

 見てのとおり100z札の仇討ちだ。お金の大事さと重みを理解していなかった男に100z札で罰を下しているのだ。

 

「見てわからないから聞いているんだ。とにかくやめろ。やめろ、その男が目覚めたりしたら俺もどうしたらいいかわからなくなるからやめろ」

 

 目覚める? この場合目覚めるって言ったらなんだろう。眠りから、ではないね。あとは……、マゾに目覚める!? いや、でも札束攻撃は痛くないしマゾに目覚めるなんてないだろう。

 

 悩みながら叩いていたらテオルが手をつかんで止めてきた。仕方がない。結構叩いたのだ。燃やされた100z札も浮かばれるだろう。

 

「それで、いったいどうしてこんな珍事が起きてるんだ……。この人間が何かしたのか?」

「この人が昔100z札燃やしたっていうから、仇討ちのつもりで……」

「訳がわからん……」

「我輩もわからん……」

 

 まぁ100z札の復讐は建前に近いけど、実際は話の切り上げにお金の力を借りようとしただけだけども。

 

「それで、お前は何者だ?」

 

 テオルが貧乏人を睨みながら尋ねた。

 

「うむ。我輩はかつて鬼教官、孤高の教官と呼ばれ、今は少しばかり家計が火の車な一介のハンターだ! どうぞよろしくお願いします」

「え、ハンターだったの?」

「我輩をなんだと思っていたのだ貴様!」

 

 予想外だ。モンスターに対抗できる存在がこんな人だったとは。そういえば依頼を受けるってことはハンターだもんね。そしてハンターが抵抗できない状態にする札束攻撃の威力も予想外だ。

 

「ほう、お前がハンターとはな。ハンターも十人十色というわけか」

 

 テオルの憧れのハンターの中にはこんな貧乏人もいるんだね。テオルもちょっと驚いているようだ。

 

「あまりのノーマネーっぷりで金を稼ぐための金がないところ、そこの少女に助けてもらったのだ。そのあと何故か札束ビンタされたがな」

「……、本当になんでだ」

「……、我輩が聞きたい」

 

 まるで私を変人扱いする流れになっている。失敬な。変人はお前らだよ。

 

「いや、ちょっとその人の話聞くの疲れそうだったから、切り上げようとしただけだから」

「それでどうして札束ビンタになるんだ」

「100z札の仇討ちも兼て」

「訳が分からん」

「うむ、わからん」

 

 どうあってもこの変人二人は、私を変人扱いしたいようだ。もういい。変人にどう思われたって構うものか。訂正しようとしたって、どうせこのまま繰り返しになっちゃう。話をさっさと進めよう。

 

「もう貧乏人はこのお金早く受け取って、さっさと依頼行ってきたらどうです」

 

 そう言って無理やりお金を握らす。1000zだ。

 

「う、うむ。感謝する」

「ナナリ、妙な金の使い方はするな……」

 

 今回が特別なだけだから。今回が例外なだけだから。

 

「しかしずいぶんと金に余裕があるのだな。我輩がそれくらいの歳のころはもっとカツカツだったぞ」

「まぁちょっと卵でお金が入りましたから」

「卵で? なにやら気になる、我輩とっても気になります! 我輩の返り咲きチャンスになる予感がするので聞かせてほしいぞ!」

「面倒なのでお断りします」

「そうか。ヌハハハハ! 卵というヒントを聞けただけでもよしとしよう! 我輩、今回の仕事が終わったら、卵のことを調べるんだ……。フラグをあえて立てて、我輩、クエストへいざゆかん!」

 

 テオルが面倒くさそうな表情を浮かべている。私もきっと浮かべていることだろう。この人暑苦しいよ色々。

 

「では行ってくる! 感謝するぞ! 我輩恩義に厚いからな! 恩返しに期待しておくのだ!」

「一切期待してないんで気にせず行ってらっしゃいですはい」

 

 ヌハハハハ、ヌハハハハ。と変な笑い声をあげて去って行った。今日だけで強烈な人たちと会い過ぎだ。二人だけだけども疲れる。

 

「私ちょっと疲れたしもう宿に戻るよ」

「そうか、では俺も戻ろう」

「あれ? ハンターずぎるどを見に来たんじゃないの? それか黒龍破壊の灯台」

「黒龍祓いの灯台だ。ここに着たのはナナリを探していたんだ」

「何? なんか見つけたの?」

「我らの翼を休めるための部屋の鍵を持ったままだろう。ナナリが」

 

 まっさかー。と思ってポケットに手を入れると鍵があった。

 鍵をしっかり閉めたけどそういや宿屋さんに渡すの忘れていた。

 

 少しだけうっかりしてしまったようだ。まぁ失敗は誰にだってあるのだ。仕方がないのだ。大事なのはこれからだ。

 

「ごめんごめん。ちょっとだけうっかりしてた」

「俺とナナリで、ちょっと、の意味が違うのかもしれんな……」

 

 今のは嫌味ってわかるぞこの厨二病め。

 

 テオルを睨みながらハンターずぎるどを後にした。宿に戻ってゆっくりしよう。モロ見えの海の景色を見ながら横になるんだ私。

 

 




MH2やMHP2Gのころの教官にはお世話になりました。
まさか3Gや4Gであんな姿になるとは思ってませんでした。
その流れに悪のりして本当にごめんなさいですはい。


頼りになる教官も好きです。
調子に乗りやすい愉快な教官も好きです。
でも、ジンオウEX女剣士装備はもっと好きです。
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