自分を古龍と思い込んでる田舎者   作:横電池

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コラボクエではないけどコラボしてそうなくらいのネタキャラなので、あのフランス人に似せてみました。


不可視の情報

 宿に逃げ込んでからしばらくして、テオルが戻ってきた。

 

 こいつには言いたいことがわんさかある。

 なんであんなデタラメを言ったのか、護衛依頼はどこへいったのか、いろいろと文句を言おうとしたが

 

「すまない」

 

 開口一番に謝られた。テオルに。

 その表情は真剣だった。真剣に反省しているようだった。

 

 まさかあのテオルが謝るなんて、しかも反省をしているだなんて。

 ちゃんと自分の落ち度もわかっているとは、子の成長とは早いものである。同い年だけど。

 

 反省しているのならば、先ほどまで言おうとした文句は言わないでいてあげよう。

 

 ちょっと強がった結果、引くに引けなくなっただけだもんね。仕方ないか。

 あとで一緒に謝りにいこうか。恥をかくことはただ恥ずかしいだけじゃなく、成長につながるのだ。

 

 

「いいよ、テオル」

「……、金がなくなった」

 

 

 

 は?

 

 

 

「は?」

「本当にすまない……」

「え? いや、ちょっと待って? なんて?」

 

 なんて言ったの今? もう一回お願いしていい?

 

「…………、金がなくなった」

「はぁ!?」

「本当に悪いと思っている……」

 

 悪いと思っている、じゃないから。なんで? ハンターずぎるどで苦し紛れの発言して、それでどうしてお金なくなったの? は? なんで? 私がいない間に何やらかしたの?

 

「冗談とかなら笑えないんだけど、どういうことか言ってくれる?」

「本当にすまない……」

 

 すまない、じゃないから。理由を聞いてるんだけど?

 

「冥界竜の狩猟の依頼が正式に受理されて、依頼金として2万2200zがなくなった……」

「……」

 

 あのデタラメ依頼のせいか……。2万2200って……、でもテオルに持たせていた3万で大丈夫じゃない。テオルの、遊ぶお金が減っただけだ。テオルの、だ。

 

「そのあと色々あってその結果、財布から4万4400zがなくなった」

「は?」

 

 は?

 

「なんで4万4400って膨れ上がってんの? え? なんで?」

「依頼のための書類にサインを色々していたら、こうなっていた……」

「は? 色々って何? ねぇ? 色々ってなに?」

 

 何? 詐欺にあったの? よく読みもせずサインしていったの? しかも旅の資金から減らさないといけないほどの出費なの? バカ? あ、バカだったね。

 理由を問い詰めようとしていると、テオルがだんまりになってしまった。そして頭を掻いた後

 

「俺だって知りたい!」

「はぁ!? 急に逆ギレ!? ふざけてんの!? よく読みもせずに書類にサインしたからでしょ!?」

「ちゃんと読んだわ!」

「じゃあなんで金額が倍になってんのよ!」

「…………運だ」

 

 なんだって? 小声に急になるでない。急に大声出したと思ったら今度は急に小声だなんて。よく聞き取れないじゃないか。

 

 

 

「招き猫の金運だとかいうわけのわからない事情で、倍になったんだ……」

 

「……、いや、全然意味がわからないんだけど」

 

 

 招き猫の金運ってなんだ。

 

「狩猟に出るハンターへの特別賞与だとかで、今回の依頼を受諾したハンターが、そういうものを受け取る必要がある状態らしく、それを招き猫の金運と呼んでいた……」

「全く意味がわからない。わかりたくないってのもあるけど本当に意味がわからない」

「そのため報酬が倍にしないといけないらしく、それで本来の2万2200の倍の4万4400に……」

「いやいや、ねえ? なんで依頼主の負担膨れ上がるの? 特別賞与とかって私ら関係なくない? ハンターずぎるどで負担するものじゃないの?」

「俺もそう思う……。だが気づいたら断りづらく……、そしてサインをしてしまった」

 

 なんでだよ。気づいたのなら断れよ。サインするんじゃないよ。

 

「仕方ないだろう……、古代文明に深くかかわってそうな、重要人物のような雰囲気を出しておいて金がないなんて言えないだろう!?」

「見栄を優先しないでくれる?」

 

 塔への移動費および護衛費がどれだけになるかもわからないのに、見栄を優先してお金がなくなるって本気で何やってるんだ。

 紹介状がなくなった後にこんなことになるなんて。今残金いくらだっけ……、駄目だ考えたくない。考えたくないけど、考えないといけない。つらい。

 

 タンジアに着いた時が17万。そこから本来の予定では8万で護衛依頼料だったけど、紹介状がなくなったので8万以上の出費が確定。そして今テオルのやらかしで4万4000が飛んで……、滞在費や食費、準備費用などを3万と考えてたけど、えっとえっと。ダメだ、護衛依頼料がわからなすぎて未来が見えない。

 

 思考が悪いほうに行ってしまう。こんな時はよかった探しをするのだ。悪い部分ではなく今回の件で得られたいい部分を探すのだ。現実逃避ではない。強く生きる術なのだきっと。

 

 1つ。雰囲気に流されたらダメだということを学べた。

 2つ。適当にサインしてはいけない。

 3つ。断る勇気は大事だと気づいた。

 

 得られたものがこれだけとは。

 思わずため息が出る。テオルによく聞こえるように大きめにため息が出る。

 

「だ、だが、今回の件で俺たちが特別な存在だとやつらに示せたはずだ……」

「そうだね、特別騙されやすそうな田舎者って感じが示せたね」

 

 これで海底に本当に明海竜ってやつがいれば、騙されやすい田舎者であり、古代文明関係者って思ってくれるだろうけど、どんな確率なんだろうそれは。

 

「テオル、ハンターずぎるどへ行くよ」

「今更依頼は取り下げれないと思うぞ……」

「もうそっちはいいよ。全然よくないけど、いいよ。全くと言っていいほど良くないけど」

 

 古文書がどうとか言ってたし、まだ明海竜の真偽は確認できてないだろう。少しでも優先的に回してもらう可能性が高い今のうちに依頼を頼みに行こう。滞在期間が伸びるとまずいしね。

 

「今なら古代文明の関係者って勘違いされてるだろうから、勢いで乗り切るしかないだろうしね」

「それでハンターズギルドへ行くのか」

「あ、テオルはあまり口出さないでね。また騙されるかもだし」

「ナナリに任せるのは不安なんだが……」

「4万4400zの損害を出した方に言われたくないのですが」

「……」

「まぁただの田舎の小娘じゃない雰囲気を出しながら話せばいいんでしょ。恥ずかしいけど、この際背に腹は代えられぬ……」

 

 いつも通りではなく、どこか偉い人って思えるように振る舞えばいいのだきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日二度目のハンターずぎるどである。

 朝に来た時よりは人も減っている。それでも昨日よりは多く感じるが。

 

 依頼を頼むのはきっとあのカウンターの女性に言えばいいのだろう。テオルがそうしてたし。

 相手の勘違いを利用するためにも、下手に出てはいけない。強気で行くのだ!

 

「こんにちはっ。どういったご用件でしょうかっ。ってあなたは……」

「す、少し伺いたいことがあるん、だけども」

「はいっ、なんでしょう」

 

 意外に難しく感じるこういうの。頼む立場なのに下手に出ないってなんかこう、難しい。

 

「塔に……、ああ、古塔に行くのにはどれくらいの資金が必要、かの」

「古塔に、ですか……」

 

 あ、いけないいけない。このままじゃただの旅行者みたいだ。ハンターも必要なのだ。それを伝えないと。

 

「うむ、ハンターを伴って古塔へ行こうと思って、の」

「えっと……、護衛の依頼ってことでしょうか」

「うむ、その必要資金がどれくらいか知りたくてじゃ」

 

 今気づいた。やばい私年寄り口調だ。でもしょうがないんだ。偉い人を想像したら、長とか、今朝みた竜人のお爺ちゃんとか、お年寄りばっかりだもん。でもなんだかしゃべりやすい。なんていうか、ノリノリになってしまいそうだこの話し方。

 

「護衛ですと、距離やその土地の危険度、連れていくハンターの能力で依頼料が変わってきますので、一言では難しいですが……」

「ふむ……、ざっくりとした数字でもよい」

「古塔なので、飛行船を使いますし、危険度も高いためハンターの質も高くなるので……、だいたいですが」

 

 ゴードンでは8万って言われていた。高くても10万で止まってほしい。ほんとうにお願いします。

 

「4万から5万zだと思います」

 

 え。

 

「高くても、5万と?」

「はいっ、ちょうど今塔に出発しているハンターさんがおりまして、その人の報告次第では金額が上下しますがそれでも5万までかと。たぶんそろそろ戻ってくるはずですが」

 

 あれ? 何? 私の中でゴードンの人々は隙あらばだましてくる危険な人って認識がどんどん強まってくるんだけど。紹介状あったら8万だったんだよね? なかったら5万? え? 無くて本当によかった。あとは優先度の問題だけど、ぶっちゃけ滞在費に余裕が出るならこの程度ってなりそう。

 

「それは真実かの。ああ、金額のほうじゃ」

「は、はい……。あ、ですが今言った費用は優先度が低い状態での話です」

 

 ほうほう。なるほどなるほど。優先的に回してほしければ追加料金なのね。

 

「ギルド側で緊急性が高いと判断できる理由の依頼であればあまり関係ありませんが」

「ちなみに、優先度を金銭であげる場合はいくらくらいになるのじゃ」

「そうですね~、2万から10万って、結構幅があって一概には言えないですね……」

 

 たっけぇ……。今の所持金は12万ちょい。優先度をあげてもらおうとして15万必要ですって言われたら困るしなぁ。かといって中途半端なお金じゃ本当に優先度が上がってるのかわからない……。

 

「ふむ、参考になった。後でまた来るのじゃ」

「は、はいっ」

 

 勢いが大事だが慌てすぎもダメだ。一度落ち着いて考えて、そして依頼を出そう。このまま追加料金なしだと優先はされなさそうだしね。古代衣装を着てるだけじゃこれはきっとダメだろう。

 そう思い、カウンターから離れた。シー・タンジニャでテオルとご飯を食べながら少し考えよう。

 

「あの女の子、イメチェンでもしたんでしょうか……」

 

 カウンターの女性が何か呟いてた。……、そういやあの女性とはすでに何度も顔を合わせてた。顔を覚えられて、いたのだろうか……。

 

 

 忘れよう。今の女性のつぶやきを。

 忘れよう。考えだしたら、きっと私は動けなくなってしまう。だから忘れよう。

 

 

 

 

 

 

 

「タンジア鍋を2つ頼みますー!」

「かしこまりましたニャ~」

「俺はモガモ貝とマトンの火山カレーがよかったんだが……」

「タンジア鍋がおすすめだから、一度食べたほうがいいから」

 

 テオルと共にシー・タンジニャである。できるだけハンターずぎるどから離れた席を座っている。今回こそタンジア鍋を味わえるぞう。

 

「火山カレー……」

「そんなことよりどうしよ」

「……、何がだ」

「塔への依頼の優先度の話。追加料金かそれとも依頼を受けてもらうのを待つかってことよ」

「……、俺たち古りゅ、古代文明関係者が古塔へ急いでいる、という旨でいけそうじゃないか?」

「無理でしょ。そんなんだからお金なくなるのよ」

「くっ……」

 

 テオルが最初に言ってた特別な人物は優先的に回してもらえるって、きっとお金を特別に払う人物ってことだったのだろうあの感じだと。

 

「しかし、他にどうしようもなくないか?」

「なんかないの? 古塔にすごい危険なやつがいるかも、みたいな情報ないの? 明海竜のときみたいなそれっぽい情報とかさ」

「古塔はあまり知られてない場所だと言っただろう。そう簡単に情報があるわけがない」

 

 本の知識からそんな情報がでないだろうか。そう、テオルに期待したのだがなさそうだ。

 

「うーん、古塔の情報がちょっとでもあればなぁ」

 

 その情報からテオルにいそうな竜を予想してもらって、それっぽい理由を考えてもらって、そして古塔へいく依頼を出してもらうっていう作戦に持って行けるのに。

 今ある古塔の情報は、ハンターずぎるどが言うには危険な場所。あとは……、電波少女いわく楽園。電波少女の情報はいらないか。古代文明となんらかの関わりがある、だっけほかは。

 

「お待たせしましたニャ。タンジア鍋だニャー」

「ありがとうございます」

「……、火山カレー」

「あ、こいつのことは気にしないでください」

 

 タンジア鍋がきた。お腹がすいてたら名案もでないだろうし今は食べるのだ。

 鍋に心躍らせていたら隣にすごい髪型の男の人が座った。

 

「すまねぇ、火山カレーを頼む……」

「かしこまりましたニャ~」

 

 テオルが羨ましそうに男の人を見始めた。

 タンジア鍋美味しいから、あとで一緒にタンジア鍋のおいしさを語り合う相手がほしかったって理由で勝手に注文決めたわけじゃないから。純粋な善意だから。だから火山カレーを頼んだ男性をそんな羨ましそうに見ないで。

 

「ほら、テオル。鍋に集中する」

「……、火山カレー……」

 

 子供かこいつは。

 

 それにしても隣の席の男性はなんとも目立つ。銀色の髪で、なんというか、柱みたいに逆立っているのだ。銀の柱の髪だ。ほうき頭ともいえる。

 火山カレー抜きにして思わず注目してしまいそうだ。

 

「テオル、冷める前に食べよう。あ、やけどには気を付けるんだよ」

「……、ああ」

 

 

 

 

 鍋を堪能していたのだが、途中から鍋より気になるものができて集中できなかった。

 隣から漂うカレーの香りが凄まじい。

 

 鍋美味しいよ。美味しいけど、カレーのにおいで、嗅覚と味覚のズレが……! くっ……!!

 誰も悪くない。悪くはないのだ。ただ、運が悪いだけなんだろう。けども……! おのれ! 火山カレー!!

 

 鍋を食べ終わったが、なんだか悔しい。だめだ、切り替えよう。カレーへの恨みは捨てるのだ。今は古塔へ行く作戦を立てないとなのだ。

 移動はせずにシー・タンジニャのまま、テオルと相談だ。

 

「食べ終わったことだし、お腹いっぱいになったところで何か古塔について思い出した情報とかない?」

「だからないと言ってるだろう……」

 

 むぅ。そう都合よくはいかないか。

 

「……、何か用か」

 

 およ? 誰かきたの? テオルの目線の先を見る。というかこの向きは

 

「今、古塔つったか……?」

 

 銀のほうき頭の持ち主、もといすごい髪型の男性だ。しかしこの反応、もしや古塔について知ってるのだろうか。思わぬところで情報がきたということか。

 

「それがどうした」

「なにか古塔について知ってるんですか?」

 

 テオルは知らない人にすぐに敵意を向けるのはやめたほうがいいと思うよ。せっかくの情報源だよ。そりゃ変な頭だけど。

 

「いや……、俺は知らねェ……、いや……、今ならわかる……」

 

 知らないと言った直後に今ならわかるって何言ってるんだこの人。

 

 しかし、この感じ……、きっとこの人も変人だ。もう私は悟ってるよ。都会で会う人はみんな変人なんだって。

 

「要領を得ない言い方をするな。知ってることがあるなら話せ」

「あ~~? なーんでおれが話さないといけねぇんだあ~?」

 

 ってなんかすごい険悪な雰囲気になってる!

 

「す、すみません! こいつちょっと礼儀知らずなだけで! 私たち古塔についての情報がほしいんです! 些細なことでもいいから教えてくれないでしょうか……?」

 

 何か知ってそうだけど怖い。テオルが今まで会った人たちは偶然優しい人たちばっかりで、この人の反応がきっと普通なのだろう。だけどもやっぱり怖い。

 聞いてはみたがただでは教えてもらえないだろうな、と心の中で諦めていた。

 

「お嬢さん、怖がらせて申し訳ない。だからそんなに怯えねーでくれねーか」

 

 予想外に紳士的な言葉が飛び出してきた。すごい髪型だけど失礼なことしなければ普通な人なのだろうか。

 

「それよりお嬢さんには笑顔が似合うぜ。おれに素敵な笑顔を見せてくれねーか? 古塔のことなんて忘れてよ……」

 

 鳥肌たった。

 

 何このほうき頭。ナンパってやつだよね今の。突然のナンパに普通に鳥肌たった。

 それより古塔だよ。やっぱり何か知ってるよ。

 

「古塔についてやはり知ってるようだな。気色の悪い言葉を吐いてないで古塔について言え」

 

 テオル、気色の悪い言葉ってのは同意だけどさ。喧嘩腰はやめよう? この人絶対沸点低いよ。

 

「あ、あの古塔について教えてください」

 

 意識をこっちに向けさせなきゃ。そう思って発言した。

 

「……、おれは古塔についてはホントーに知らねーよ」

 

 あれだけ意味深な雰囲気漂わせてそれはないと思うけど。

 

「だが、あそこにいた奴についてはわかる……。ついさっき古塔から戻ったところだからな……」

「え、そうなんですか? ってことはハンターの方?」

「ああ……」

 

 古塔に行ってきた人とは、情報がぜひとも欲しい。気持ち悪くて怖い人だけど、情報が欲しい。

 

「本当にどんな情報でもいいんで教えてください」

 

 ほうき頭の男の表情は暗い。どこか怯えているようだった。

 

「……、どんな目にあったのかはわかりません。なんでもいいので教えてくれませんか」

 

 この強面ほうき頭は古塔で恐ろしい目にあったのだろう。

 

「……、誰も信じなかったことだけどな。だがまぁ、ありのままに起こったことを話すぜ」

「お願いします」

 

 怯えた様子のまま、男は言った。

 

「あいつが、ふっと突然目の前から消えたと思ったら、俺はやられていた……。何が起こったのか、把握すらできなかった……だが、今なら分かる。あいつは、姿を消す力を持っているんだってなッ!」

 

 

 あいつって誰だよ。




怯えた様子のハンター
MH3GのG級クエスト「不可視の迅竜」の依頼主
実際の依頼文
あいつが、ふっと突然目の前から消えたと思ったら、俺はやられていた…。何が起こったのか、把握すらできなかった…だが、今なら分かる。あいつは、姿を消す力を持っているんだ!

ジョジョの奇妙な冒険に出てくるキャラに似ている、と一部で話題の依頼主です。
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