ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「お兄ちゃん!!」
「兵夜さん!!」
「兵夜!!」
街から距離を取ったところで、装甲車から三人が飛び出してきた。
「ああ、心配かけてすまなかった―」
「喰らいなさい!!」
ぐぁあああ魔力弾!?
「貴方馬鹿なの!? あなたが消滅すると私にも悪影響があるんだけど!?」
「あ、忘れてた」
さらに攻撃が入った。
「待て待て待て待て! 偽聖剣を体に使っている以上、お前のフィジカルスペックはサーヴァント換算でBランクは―」
「誰か! 効果的な関節技を教えなさい!!」
『了解です所長。さて、こういう時こそネットの力だ、ネットアイドルマギ・マリの力を―』
「借りるな止めろぉおおおお!!!」
お前何してくれてんの!?
『流石に今回は君が悪いよ。……ハーロットにエルトリアの側面を出させて聞いたよ? 君、ことあるごとにうっかりでピンチになってるじゃないか。しかも激戦に限ってすごい頻度で』
「失礼な。大抵何とかリカバリーしてるぞ」
「そういう問題じゃないのよ!! そんな奴を軍師に据えたらこっちが大ピンチじゃない!! 誰よこんな奴を軍師に据えるような奴!!」
「仕方がないだろ!! 基本的に馬鹿正直か脳筋だから狡い策略できるの俺だけなんだから!!」
オルガがあまりに酷いこと言ってるので、流石に文句を言わせてもらう。
これでも策でも評価されてるんだぞ!
「誰によ!!」
「マスコミの評論家にだよ!!」
「なんでマスコミに魔術師が評価されてんのよ!!」
仕方ないだろ、異形社会はそういうの意外とやってるんだから。
「……そろそろ話してもいいかな? っていうか、彼らの追撃を気にするべきなんだろうけど」
む? モーツァルトの言う通りだ。
『それなら大丈夫。今のところ反応はロストしてるから小休止しても大丈夫だよ。あともうちょっとで近くの霊脈が見つかるから、それまでマリーはお仕置きしているといいさ』
「あら? 私?」
「いえ、所長の名前はオルガマリーと言いまして、愛称がマリーなんです」
そういえばあなたもマリーだったよね、王妃。そして説明ありがとうマシュ。
だけど、今は俺を助けてくれないかな?
「さあ覚悟しなさい!! この体の使い方を貴方の体で調べさせてもらうわ!!」
「やっちゃえ所長!! 令呪で動きを封じ込めます!!」
貴重な令呪を無駄遣いするなぁああああ!!! 三回しか使えないんだから!!
「よろしく、マリーさん!」
「はい! 初めまして、マリーさんですっ」
いつの間にやら仲良くなっているようで何よりだ。
「とりあえず、食事の時間ですお嬢様達」
まったく。罰ゲームとして料理当番なのは別にいいんだが、なに会話を勝手に進めてるかな。
「それで、マリーさん? 大体の状況は理解してくれたかな?」
「ええ、よくわかりました。……つまり、こっちのジャンヌはいい子だってことね!」
うん、それは確かにわかってほしい情報だけどそうじゃない。
「しかし、マスターのいないサーヴァントねぇ……?」
俺は正直首をかしげる。
ルーラーであるジャンヌはいい。ルーラーはそもそも聖杯が召喚するサーヴァントだからだ。
ジャンヌがマスターになっているバーサーク・サーヴァントもまあいいだろう。聖杯を持っているんだから、それ位はしたっておかしくない。
だが、マリー・アントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトはおかしいだろう。
聞けば、マリー・アントワネットはライダーで、モーツァルトはキャスターだ。
芸術家がキャスターなのはツッコミどころがあるような気もするがまあいいとして、マリー・アントワネットってそんな机上の逸話あったっけ?
「そもそも、僕は英雄という実感が全くない。悪魔の奏でる音に興味があったから魔術をたしなんでいただけなんだけどね。それでもこれが異常なのはよくわかる」
ああ、それに関しては同感だ、モーツァルト。
マスター無しで召喚されたサーヴァントが、少なくともここに二騎存在する。これは間違いなく異常だろう。
ジャンヌ・ダルクは良いんだ。能力をほぼ発揮できていないとはいえ、ルーラーなんだから。
だが、単独行動スキルを持っているわけでもないマリー・アントワネットとモーツァルトが召喚されているのはどういうことやら。
「……これは、推論ですが」
と、ジャンヌが口を開いた。
「この聖杯戦争は、そもそも最初から聖杯を手にしている者がいるという時点で前提が崩壊しています。……それに対する聖杯の反発ではないでしょうか?」
……なるほど。
本来聖杯を獲得する為の戦争が起きる前から勝者が発生した為に発生する反発作用か。
「……確かに。冬木式の聖杯にはサーヴァントが全部同一陣営で召喚された場合、対抗策としてさらに七騎サーヴァントが召喚されるシステムになっている。それと同様のことが起きたと考えるべきだろうな」
『なるほど、抑止力も仕事してると考えるべきだね。……ということは』
ああ、その通りだロマニ。
オルガもまた勘付いたようだ。その表情に光が灯る。
「……味方となるサーヴァントが、この時代にいるということかしら?」
「第三勢力になるって可能性は否定できないけどね
だが、探すのは悪くない」
アマデウス(当人がそう呼べというのでそう呼ぶ)の意見ももっともだが、しかし確かに悪くない。
少なくとも、協力してくれる可能性があるのならそれを頼るべきだろう。
「ドクター。そっちで探せない?」
『OK、やってみるよ。……流石にルーラーの感知には劣るけど、並のサーヴァントの感知能力よりかはできるはずだ』
確かにな。だが……
「しかし、それでも足りない」
ああ、足りない。
「足りないとは、どういうことですか? 兵夜さん」
「文字通りだよ。敵の戦力はワイバーン。相当に数が揃っていれば、サーヴァントでも脅威になるレベルの化け物だ」
そう、数による圧殺は文字通り脅威だ。
圧倒的な対軍宝具があるならばまだしも、それがない俺達の現状では、数の暴力は押し切られかねない。
これがただの人間なら、まあその気になればやりようはあるだろう。ただの人間相手なら、千人や二千人いてもサーヴァントなら倒せる。
だが、ワイバーンは流石に危険だ。
サーヴァントがサーヴァントの足止めに終始して、そのうえでワイバーンによってじわじわ削る戦術を取られれば、流石にまずい。
「ことオレとアマデウスは警戒されるだろうからな。散々暴れたし」
「ああ、確かに絶対サーヴァントをぶつけられるだろうね。それも可能なら何人も」
俺はあのアーチャーとは戦いたくないなぁ。なんというかロボットアニメによくある戦艦対主人公機の戦いになりそうだ。
正真正銘のサーヴァントをなめてかかっていた。あいつ等英雄派の幹部クラスを超えている。
俺も神になって能力が上昇したけれど、それでも対応しきれないとか厄介だろう。
「……それに対抗する為には、こちらも大量の数が必要だ」
「それは、フランスの騎士団と協力するということですか?」
ああ、そういうことだよジャンヌ・ダルク。
「もちろん、ただ彼らを投入するわけじゃない。それでは犠牲者が多すぎる」
ああ、犠牲者はできるだけ少ない方がいい。無理をしない範囲で少人数にしたいところだ。
ゆえに、俺たちはそれ相応の対策をとる必要がある。
「……だから、そっちの交渉は俺がやろう。オルガ、できれば手伝ってくれないか?」
「え、ええ!? 私!?」
いや、他に適任がいないだろう。
「サーヴァントの捜索の方に人員を割くべきだからな。とはいえついさっきのとおりうっかりしたら大変だし、できればサポート役を1人つけるべきだと痛感した」
で、その場合もっとも適任なのは俺と密接にリンクしているオルガだ。
「協力してくれオルガ。割と切実に肩を並べる相棒がほしい」
「そ、そんなこと言われても困るわよ……」
オルガはそういうと項垂れる。
「体が吹き飛んだことで、アムニスフィアの魔術刻印も失われたもの。今の私の魔術じゃあサーヴァントにダメージを与えるなんて困難だし、この体だって戦闘で動かせるほど慣れてるわけじゃないし……」
「それは移動しながら教えるさ。俺にも責任の一端はあるしな」
『そうそう。レオナルドの仕込んだ礼装の説明もきちんとさせないといけないしね。……そして、悪いけど団欒の時間は終了だ』
と、ロマニの声のトーンががくんと下がる。
『サーヴァントの反応を確認した。それも、ワイバーンを大量に引き連れてそっちに向かっているよ』