ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
そんなこんなで、俺達は二手に分かれて作戦を決行する。
マルタの意見をうのみにするわけにはいかないかもしれないが、しかし仮にも聖女のプライドがあった彼女が、意味もなく嘘を言うとは思えない。
つまり、本当に現状に相応しいサーヴァントがいるということだ。
その竜とやらがどういうものかはわからないが、しかし警戒しておくに越したことはないだろう。
と、いうわけで立花達はそっちに送らせた。
サーヴァント四騎係なら流石に警戒するだろうし、こっちに関しては安心していいだろう。
そして、俺とオルガはジル・ド・レェ元帥を探して行動している。
とりあえずは彼の領地に向かう予定だったのだが―
「何? 彼が今のフランス軍をまとめ上げているのか?」
『ええ、街の人に聞いたから間違いないわ。それと、リヨンの話もきちんと聞いたの』
マリー・アントワネット王妃がその人徳で聞き出した情報によると、どうやらリヨンは既に滅ぼされたらしい。
だが、滅ぼされるまでは一人の戦士によって比較的安全な町だったらしい。
ワイバーンの群れを単独で屠れるような戦士など、この時代ではサーヴァントぐらいだろう。しかも相当の対軍特化だ。
「……話を聞く限り、龍殺しの伝承をもつ英霊だと思うわ。それも竜を張り倒した聖女マルタが言うほどだもの。おそらく今回のサーヴァントでも指折りでしょうね」
オルガが想推測する中、素早く資料をまとめていた。
流石にフランス語を丁寧に書くのには慣れてないので、すごく助かる。俺も紙を調達したかいがあった。
『しかし、本当に大丈夫なのですか? ジルが今の魔女と呼ばれた私を受け入れるとは思えません』
『確かに心配ですね。ジル・ド・レェ元帥は彼女の火刑を機に心を病んで猟奇殺人に走ったといわれるほどの信奉者。既に味方になっていないのなら、反動ですごいことになってそうです』
ジャンヌ・ダルクとマシュが不安げな顔をするが、しかししないわけにもいかないだろう。
敵が聖杯を使って甚大な数のワイバーンや骸骨兵を用意している以上、こちらも相応の戦力を確保する必要がある。
人間の兵士でも、相当の武器があれば骸骨兵の群れ程度ならどうとでもなるのだ。
そして、俺はその気になればそれぐらいは準備できるのだ。
「まあ、そこに関してはダメでもともと。成功すれば大儲けって話だ。……その辺に関してはこっちでやってるから、そっちはそのリヨンの戦士を探すことに集中しておけ」
『はい。……ですが、どうすれば私はあんなことをできるのでしょうか』
ジャンヌ・ダルクも色々と塞ぎ込んでいるな。
……ふむ、あえて例え話をしてみるか。
「ふむ、あえて偽物だという前提で話すなら、できないこともないだろう」
『え? そうなのお兄ちゃん?』
立花が首をかしげるが、しかしこれは可能不可能でいえば可能だ。
「サーヴァントの力をそれ以外の存在に宿すのは、既に俺の世界ではテロリストが実用化していた。劣化再現ではあるが、聖杯をブースターとして使えば可能不可能でいえば可能だろう」
まあ、アレだけそっくりだと別側面の召喚を考えた方が妥当なんだが……それにしたって性格が違いすぎる。
このジャンヌは苛烈な側面はあるが基本的に丁寧だが、しかしあの黒ジャンヌはかなりヤンキー属性が強い。
偽物でないにしても、意図的に何らかの歪みを付け加えられた可能性はあるだろう。
「ジャンヌ・ダルクの信奉者が、復讐者としてのジャンヌを聖杯に求めて、それがアンタを歪める形で召喚した可能性はある。だから深く考えるな」
『そっか! じゃ、あのジャンヌは偽物ってことだね! よかったねジャンヌ!!』
『立花さん、ありがとうございます。……ですが、それはそれでその聖杯の持ち主のことを考えると複雑ですね』
とはいえ、少しは気が晴れたようだ。それはそれで何より。
……ん? 偽物?
「………オルガ、そもそも聖杯は願望機だよな?」
「何よいきなり。少なくとも、莫大な魔力リソースでありそれを利用して願いを叶えることはできるわよ」
『そうだね。しかも冬木の聖杯より魔力の総量では上回るだろう。とはいえ、願望機としてはワイバーンを量産してそれでフランスを蹂躙する為の戦力にするだなんて迂遠だとは思うよ』
ロマニがデータを解析しながらオルガに同意し、そして補足する。
『これは推測だけど、おそらくレフがこの時代に送り込んだ聖杯は、魔力リソースに重点がふられてるんじゃないかな? 人理焼却の要としての機能が中心で、願望機としては二流なのかもしれない』
「全然嬉しくないがな。其れってつまり、そんなものを独自開発できるほど敵の技術が優れてるってことだろうに」
だが、これで少し推測ができた。
「サーヴァントの中には、剣士という概念や冬将軍というある種の逸話が形になったものもある。もしかしたら、あのジャンヌは「ジャンヌ・ダルクが蘇ったら復讐するはずだ」という民衆の思想が固まったものなのかもしれない」
『……またそれは、二流の演劇というかなんというか』
芸術家としては言いたいことがあるのか、アマデウスが嫌そうな顔をする。
とはいえ、俺としてはむしろそっちの方が自然だと思うのだが。
怒って当然のことで怒らないのは、美徳にしても欠点と紙一重だしなぁ。
「まあ、それはともかく。そろそろ一仕事だ。……オルガ、気合を入れるぞ」
「ええ、それじゃあ通信を切るわよ」
オルガも俺も、流石にちょっと緊張してきた。
なにせ、国家らが一仕事だ。
「……よもや、ストレートに通してくれるとは思いませんでした、ジル・ド・レィ元帥閣下」
まさか、ちょっと話をしただけで通してくれるとは思わなかった。
「いえ、今は我々も色々と立て込んでおりましたので。それに、貴方方のお話は聞いておりますよ?」
そう穏やかな口調で告げる元帥は、しかしすごく疲れている雰囲気だった。
のちに猟奇殺人に耽溺するとは思えないようで、しかし思えてしまう。それほどまでに苦悩がにじんでいる。
「あのワイバーンを使役する者は、ジャンヌ・ダルクと伺いましたが……」
「私は当人を見ていないので何とも。ですが、彼女を見たことのあるものがそういうのでしたら、少なくとも酷似しているのでしょうね」
最初っから疑ってかかってはいないが、現実に存在する証言を無視するわけではないようだ。
しかし―
「それで、貴方方はいったい何者ですか?」
「……警戒しているというのなら、なぜあなたは私達をこんなところへ通したというの?」
オルガが震えそうになるのを片手を握って抑えながら、そう真正面から見据えて尋ねる。
まあ、そこかしこに兵の気配がする上、隠してすらいないからなぁ。
「簡単なことです。話に聞くそこのあなた方の力では、外の兵士では無駄死にするだけです。ことそこのあなたの持ち込んだ兵器とも呪術とも思える者は、数多くの敵を蹂躙することに特化しているでしょうから、数で押し切るのは愚策でしょうしね」
「流石はフランスの元帥。いい戦略眼をしている」
人づてに聞いた話だけで、ガトリングガンの特性を理解するとは恐ろしい。
これが、英霊の座に登録されるほどの軍師の慧眼か。
「小規模な大砲を連続で打つことで、広範囲の敵を一斉に攻撃する。現代の戦術の基本では、とても勝ち目がない。もしそれがあるとするならば―」
「―狭いところに誘導して、全方位から精鋭による集中攻撃、というわけね。自分から囮を引き受けるなんて……っ」
その度胸に、オルガは何か羨ましそうなものを見ながら声を震わせる。
だが、しかし―
「まあ落ち着きなさい。誰か、水と食べ物を持ってきなさい」
元帥は、しかし冷静だった。
「よろしいのですか、元帥?」
「かまいません。この期に及んでもさっきも敵意も感じられない。どうやら、彼らは竜を率いる戦士達とは異なるようです。……責任は私が取ります。今は何よりも情報が欲しい」
……正気か、この元帥。
「胆力があるというのか、それとも正気を失っていると心配するべきか。……大丈夫ですか、元帥」
「正気ですか。そんなもの、聖女をフランスが裏切った時点で無くしてしまったかもしれません」
そう自虐的に笑いながら、元帥は正面から俺達を見据える。
「竜とそれを率いる狂戦士達が現れてから、しかし同時に何人もの強大な龍に対抗する戦士達もまた現れたという報告があります。察するに、貴方達はその対抗する戦士の側なのではないでしょうか? そうだとするならば、話に聞く時代を先取りしすぎたあの大砲の発展形も頷ける」
……なるほど、確かに慧眼だ。
「兵夜、貴方は下がってなさい。……ここは、私が動くべき時よ」
オルガは一歩前に出ると、優雅に一礼した。
「挨拶が遅れました。……私の名前はオルガマリー・アムニスフィア。……この事態を解決する為に、遠い地より来たものです」
「なるほど。では、この事件に対して筋の通った説明ができるということでよろしいですかな?」
……ここからが正念場か。
「……人理焼却、そして、その根幹の一つがこのフランスにあるというのか」
「いや、ちょっと信じるのが速すぎないか?」
ここで虚言を弄してもいつかバレると思ったので、あえてオルガは真実のみを語った。
とはいえ、これは信じすぎでないだろうか?
「いえ、あのがとりんぐがんという兵器は実に理に適っていますが、今の時代の鍛冶ではどうやっても作れないでしょうしね。ましてや現代の戦術では発想にすら至らないでしょう」
そう告げると、元帥は疲れたような、それでいて聖人を思わせる笑みを浮かべた。
「数百年以上たった後の未来の物と考えた方が、すんなりと納得できるのですよ」
「納得が速くて助かるわ。でも……」
オルガが躊躇ったのはジャンヌのことだろう。
「復讐の魔女としてのジャンヌと、フランスを思う聖女としてのジャンヌですか。……正直、信じがたいですね」
「やはり、サーヴァントのシステムは流石に信じがたいですか」
まあ、ある意味聖書の教えとは合わないからな。思うところはあるのだろう。
「いえ、異教徒の思想であることはこの際問題ではありません。……そこ、確かに魔女の所業ではありますが、今は優先順位をわきまえなさい。よしんば挑んでも無駄死にするだけです」
鞘走りそうになる戦士を抑えながら、元帥は俺達に再び顔を向ける。
「……信じられないのは、ジャンヌに魔女の側面があったことです。しかし願望機によって人格を歪められているのなら、納得がいく」
「そ、そうですか?」
ぶっちゃけ俺としては、ジャンヌの内心の憎悪が形になったものだとばかり思っていたのだが。
偽物うんぬんも立花とジャンヌの気を紛らわせる為の過程で、可能性は低いと思っていた。
「正直に言えば、ジャンヌ・ダルクという聖女は正気を疑うような人物でした。……ああ、悪い意味ではありませんよ? 彼女はよく私に目潰しをしていましたが、それも私が興奮して我を失ったことが原因ですので」
「やっぱり過激ね」
「まあ、後世でも過激派側だったといわれてるしなぁ」
しかし目潰しってなんだよオイ。
「正直に言えば、あの方はきっと復讐する権利があるが行使しないでしょう。……ですが、フランスの信奉者は話が別です」
そう、はっきりと言い切った。
「誰もがあのお方のように生きられるわけではない。それどころか、復讐を選ばないことを不思議に思う者達の方が多いでしょう。……私ですら、フランスは彼女の憎悪に燃やされるべきではないかと思うのだから。神が本当に実在するのか信じられなくなっているのだから」
元帥……。
後の世で、猟奇殺人鬼として名を遺した男。
一説には、その原因はジャンヌ・ダルクが火刑に処されたショックだという話もあったが、まさにそういうことか。
「元帥閣下。お気持ちは少しはわかりますが―」
「ははは。ご安心くださいアムニスフィア嬢。私はまだ冷静です。少なくとも、彼女が愛したフランスを守らんとする心は健在ですので」
そう力なく笑う元帥は、俺達を見ると表情を真剣なモノへと変化させる。
「それでは、まずはあなた方が我々に何を求めているのかをお尋ねしたい」
「それは―」
俺がそう言おうとしたその瞬間―
『漸く繋がった! 二人とも、大変だ!!』
「……これが、科学というものの力ですかな」
冷静でありがとうございます元帥閣下!!
「ロマニ!! このタイミングで通信しないでよ!! 元帥がその名に相応しい慧眼の持ち主でなければ会談破綻してたわよ!?」
『ご、ごめんなさい所長!! で、でも大変なんです!!』
なんだ? また立花達がバーサーク・サーヴァントと接敵したか?
『立花くん達が敵に襲われました! それも、一神話体系で最強クラスの竜種、ファヴニールです!!』
わーい大ピンチだ!?
「お、落ち着けみんな! パンツを用意するんだ、脱ぎたて!!」
『それでどうにかなる相手じゃないよ!? 相手はエルトリアじゃないよ!?』
「こっちのはそれでどうにかなるんだよ、頭の痛いことにな!!」
そうか、この世界のファヴニールはパンツじゃ説得できないか。
いいことだね!!
……いや、良くないな。説得の余地がない!!
この作品、こんな感じで兵夜&オルガマリーが立花&マシュとは別行動することが多くなります。
それはともかく、ガトリングガンは次代を先取りしすぎた平気ですね。この時代に持ち込まれても誰もが持てあますこと必然。
そして兵夜もたいがいD×Dに毒されていることが発覚。すべてはパンツが悪いんや……