ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「お二人とも、ご無事ですな!?」
進撃を続ける中、俺たちは元帥と合流した。
「ええ、こっちにいるサーヴァントは倒したわ。後は向こうがジャンヌ・オルタを打ち倒せれば―」
「なら、貴方方はオルレアンの城へと赴いてください」
オルガの言葉を遮るように、元帥は告げる。
「遠見の兵が確認しました。二人の聖女が戦闘を繰り広げ、城へと移動したとのことです」
「ジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタか!」
どうやらいつの間にか大詰めになっていたらしいな、オイ。
とはいえ、ここをほおっておいていいものか。
「この戦いは、どんな形であれフランスの裏切りが根幹にあるもの。願望機という異常があれど、我々が清算しなければならないものです」
元帥は、そう言いながら聖人の如き笑みを浮かべた。
「お行きなさい。例外は例外が相手をするべきことでしょう。フランスの罪はフランスが相手をします」
「元帥……」
オルガは何かを言いかけるが、しかしすぐにそれを振り切った。
「行くわよ兵夜! ここですべての決着をつけます!!」
「了解だ、オルガ。……ここは任せたぞ、元帥!!」
俺達は、一気に城に向かって駆け出した。
城の中では、色々と激戦が繰り広げられていた。
これまでとは全く異なるタイプの化け物が埋めつくす中、俺はガトリングガン片手に突っ込んでいった。
「嫌だ気持ち悪いなんていうかぶよぶよしていやぁああああ!!!」
あと、オルガが色々と悲鳴を上げていたが我慢してくれ。
カルデアに戻ったら温泉の素あげるから頑張って!!
「……あら? 異国の服装をした方々がいらっしゃいますわね」
「もしかして子イヌの仲間? 服装がなんか似てるけど」
あら、ここにもサーヴァントが。
「近平立花とマシュ・キリエライトのことを言っているならその通りだ!! あいつらは?」
「子イヌなら魔女を追っかけて行ったわ!」
「ですが、サーヴァントの一人が逃げ出してそちらに行きました」
ええい、なんてことだ。
「行くわよ兵夜! このままにしては置けないわ」
「わかってる。急ぐぞオルガ!!」
俺はこの場を二人に任せて全力疾走する。
「あ、こら! 何おいてってるのよー!!」
「ああ、
すいませんなんか不安げなキーワードがいくつか聞こえたんですが!!
「気にしちゃだめよ兵夜! きっと気にしたら負けだわ!!」
「頑張れ立花!」
俺達はとにかく全力で突撃をかます。
そして、そこで見た者は……。
「おお、ジャンヌ!! 痛々しい姿に!!」
「ジル……」
既に致命傷を負ったジャンヌ・オルタと、ついさっき見たような顔の男がいた。
「元帥……っ!」
その姿で正体を察したオルガが息をのむ。
ああ、そうか。
竜の魔女がサーヴァントを呼ぶのなら、彼こそがもっとも適任だっただろう。
とはいえ、これは流石に今の俺達にはきついのだが。
「ジャンヌよ、貴方は少し疲れただけです。目を閉じてお休み下さい」
ジャンヌ・オルタを心から労りながら、ジル・ド・レェはオルタを床へと横たえる。
「目覚めた時にはすべて終わっております。このジルめにお任せ下さい」
「……そうね。ええ、貴方が言うのなら―」
そう言い残し、ジャンヌ・オルタは消滅する。
そして、消え去ったそこにあったのは―
「―あれは、まさか?」
偽眼がそのやばさを感知する。
間違いない。あの莫大な魔力は、聖杯だ。
その光景を見て、ジャンヌは悲しそうに目を伏せた。
「―やはり、そうだったのですね」
「そういう、ことか」
俺も、ついにすべてを理解した。
おいおいまさかと思ったが本当にそうだったよ。
何この聖女メンタル。ちょっと畏怖すら感じるんですけど!!
「……勘の鋭い方々ですな。特にそこのサーヴァントは、貴方がいればジャンヌはあのような目に合わずに済んだかもしれません」
ジル・ド・レェは聖人のような微笑を浮かべながら、聖杯を手に取って立ち上がった。
「え、え? お兄ちゃん、何に気づいたの?」
「聖杯を与えられたのは、あいつだということだ」
まだよくわかっていない立花に、俺は端的に結論を先に言う。
ああ、そういうことだ。
聖杯の持ち主は竜の魔女じゃない。
竜の魔女こそが、聖杯だったんだ。
「やはり素晴らしい慧眼だ。そう、竜の魔女は我が願望です」
ジル・ド・レェは堂々と認め、俺達に告げた。
「願望? どういうことですか? 彼女はジャンヌさんの別側面では―」
「いえ、違いますよマシュ。……今度こそ断言できます。彼女は私ではありえません」
マシュに対して、ジャンヌははっきりとそう言い切った。
不安も懸念も何もなく、今度こそ完膚なきまでにまっすぐに。
「彼女は私の別側面でもなければ、そもそもサーヴァントですらない。そう、貴方の願いそのものなんですね、ジル」
ジャンヌの視線を受け、ジル・ド・レェは静かに頷いた。
「最初は、貴女をよみがえらせようとしたのです。それはもう、心から願ったのですよ、当然です」
ジル・ド・レィは真相を語り始める。
聖杯を与えられたこの特異点の下手人である彼は、ジャンヌの復活を心から願った。
本来ならば、それはサーヴァントの召喚という形で叶えられただろう。反動も含めて十体以上のサーヴァントを召喚したのだ。出来なかったら、それこそ嘘である。
だが、聖杯はそれを叶えなかった。
願望機としての性能がありながら、サーヴァントを召喚する力がありながら、しかしそれは不可能だと聖杯は告げたのだ。
「ですが、私の願いなどそれ以外にございません。ええ、それこそ天に誓って断言できますとも」
だから―
「ゆえに、作り上げることにしたのです。私が信じる私が焦がれた貴女を!! そして、作り上げました」
そう、それがジャンヌ・ダルク・オルタ。
別側面ではない、正真正銘のファンアートジャンヌ・ダルク。
「……大丈夫なの、貴方。正気?」
「ほほほ。お嬢さん、良い事を教えてあげましょう。……そんなもの、ジャンヌが火刑に処されたとき捨て去りましたとも」
質問に即答で返され、オルガは食いしばるように痛みに耐える。
自分を聖人のように聡し慰めた元帥が、将来こうなり果てるとなれば、そりゃそうだろう。
その悲壮なまでの在り方に、誰もが何かを言い返したくて言い返せない。
だが、一歩ジャンヌは前に出た。
「ジル。それは当然です」
「ほう?」
かつての盟友を前にして、ジャンヌは微笑を浮かべた。
「私は裏切られました。嘲弄されました。人は、私が最期を無念で迎えたと思うでしょう」
少しだけ痛ましげにしながらも、しかしジャンヌの言葉は揺らがない。
「ですが、あなた達がいる祖国を恨むはずが、憎むはずがないじゃありませんか。私は、竜の魔女になどなるはずがありません」
そう、はっきりと告げた。
「………やはり、貴女以上の聖女など私の中には存在いたしませんな」
ジル・ド・レィのその言葉に、俺たちは静かに頷いてしまった。
ああ、そうだろう。
誰もが悲惨だというだろう。誰もが無念だと思うだろう。誰もが恨み言を想像するだろう。
だが、しかし彼女はそうしなかった。
愛するものたちがいる国だから。そんな理由で、人を恨まずに組まず最期を迎えたのだ。
だから、聖杯はジル・ド・レェの願いを叶える事ができなかった。
何故ならジル・ド・レェはフランスへの復讐を前提としてジャンヌを召喚しようとしたのだから。
聖杯の力をもってしても、歪めることができない以上、それはかなえることができない。
まさに鋼の聖女。いやオリハルコンだ。
元帥の言ったとおりだ。この人間城塞ある意味頑固すぎる!!
「まさに聖女の名に相応しいその優しい言葉。ですがジャンヌ?」
そう、彼女は鋼の精神の持ち主だ。
心の強さでいうのならば、この場の誰よりも上回っている。少なくとも俺を上回っている。
「覚えておくといいでしょう。例え、貴女が祖国を欠片たりとも憎まずとも―」
「―お前が、許せるわけがないよな」
俺は、先手を打ってそう告げた。
ああ、そうだ。そうなんだ。
「できるわけないよな。なによりも大事だった人を、そんな人によって救われた国が、無残にも裏切って残酷な死を与えたなんて、耐えられるわけがない。
ジャンヌの前でいうことではないが、そんなこと言えるわけがない。
たとえ、罪のない子供すら殺してしまう行為だとしても。
たとえ、当人が恨んでないとしても―
「―ジャンヌ・ダルク。これは貴女の罪だ」
「―っ」
できるわけがない。
そんなことは、普通の人間には無理なんだ。
「この暴走を見抜けないのは、まごうことなくあなたの罪だ」
「いえ、それは違いますぞ少年よ」
俺の言葉に、ジル・ド・レィは静かに首を振った。
「これは単に、私がジャンヌの信頼に応えられなかっただけのこと。そう、貴女が憎まず恨まずとも―」
そして―
「―私が、私がフランスを憎まずにはいられない!! すべてを裏切ったこの国を亡ぼそうと誓ったのだ!!」
その言葉とともにに、巨大な化け物が生まれようとする。
「ジル……」
「貴女は赦すだろう。しかし、私は赦さない!! 神とて、王とて、国家とてぇ!!」
とっさに俺はガトリングガンを放つが、しかし生成速度の方が早すぎる……!!
「滅ぼして見せる。滅して見せる。それこそが聖杯に託した我が願望!!」
そして城すら砕き、巨大なイソギンチャクのような魔獣が姿を現す。
「我が道を阻むな、ジャンヌ・ダルクぅううううう!!!」
「……座にきちんと持ち帰るといい、ジャンヌ・ダルク」
その姿に、俺は鋭い視線をジャンヌに向ける。
「誰もがあなたのように強く生きれるわけじゃない。それがわからなかったからこそ、この特異点の元凶が彼になったんだ」
そう、ジル・ド・レェは悪鬼として名を遺す。
聖女を失った悲しみから、正気を失い邪悪として名を遺す。
その原因は、ひとえに聖女の火刑にこそあったのだから。
「…………そう、ですね。確かにその通りだ」
その言葉を、ジャンヌは静かに受け止めた。
「貴方が恨むのは道理で、聖杯で力を得た貴方が、国を亡ぼそうとするのも、悲しいくらいに道理だ」
ジャンヌはその罪をしっかりと受け止め。
「―だから、受け止めなきゃね?」
……その手を、立花はしっかりと握った。
「立花……」
「大切な人だから、その人が道を間違えそうになったら、止めなきゃだめだよね?」
「……はい。そうです」
その手をしっかりと握り返して、ジャンヌはまっすぐ前を見る。
「私は―止めます。聖杯戦争における裁定者、ルーラーとして」
その旗を掲げて、ジャンヌ・ダルクはまっすぐに敵を見据える。
己の道と相いれない、かつての同胞を倒すために。
「貴方の道を阻みます、ジル・ド・レェ……!!」
「ならば、今の私達は不倶戴天!」
堂々と声を張り上げ、ジル・ド・レェはそれを迎え撃つ。
「決着をつけよう、ジャンヌ・ダルク!!」
「望むところです、ジル!!」