ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
モノづくりの天才って、一人いるだけでデウス・エクス・マキナにできるから困る。
生まれる化け物から距離を取りながら、俺達は警戒心を全開にしてラスボスを睨み付ける。
あれがキャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェの奥の手か!!
「マスター、聖杯を確認しました! どうしますか?」
「決まってるよ」
立花はマシュの言葉を受け、躊躇することなく腕を書掲げる。
その手の甲に刻まれし令呪を全力で開放する。
「全力全開! 気合を入れて!!」
「はい。これより全力で聖杯を回収します!」
「カルデアの使命の第一歩。ここで決めるわよ、皆!!」
「了解だオルガマリー・アムニスフィア所長。仕事はきちんとしておかないとな!!」
ああ、そういうわけで聖杯を回収する為にもここでジル・ド・レェを撃破し。
「舐めるなよ匹夫どもがぁあああああ!!!」
そのとたん、巨大怪獣の触手が音速超過で振り下ろされた。
「全員後退!!」
俺は躊躇することなく立花を抱えると全力で交代する。
大口叩いたけどこんなのどうしろってんだぁあああああ!!!
遠慮なく光の槍を連続で叩き込むけど、すぐに再生するから焼け石に水だ。
あんなもん、高ランクの対軍宝具でも倒しきれんぞ!!
「ダ・ヴィンチちゃん! なんか方法はないか!」
『僕は!?』
この状況下でオペレーターに何を頼むというんだ、ロマ二!
しかし、今のままではどうしようもない。
再生能力が莫大なあのデカブツ。まともにやり合っては勝ち目がない。
『OKOK。その辺に関しては私に策がある』
おお、頼りになるなダ・ヴィンチちゃん。
『君からもらった資材の一つを、こんなこともあろうかと所長に組み込んでおいた。それを使えばあの化け物だろうと倒せるはずだ』
……ん?
「ダ・ヴィンチちゃん。例のあれは試作型だったはずなんだが」
『ああ、だから私が再調整を施しておいた。数分持てばいい方だが、一時的に完璧な状態で英霊の力を行使できるはずだ』
何を作ってるんだこの天才。
流石大天才。アザゼルと性質似ているだけあって仕事はするんだよなぁ。
「あのねえ! 私の体に変なものを仕込まないでくれる!? それで何を仕込んだのよ!」
『はっはっは。それが天才というものだからね! とにかくそれなら一撃で勝負がつく。そうでなければ負けてもおかしくない。さあ、どうする?』
ふむ、これ、選択肢ないよな?
「……や、やるしかないんでしょう? やるしか!」
震える声で、オルガマリーはしかし立ち上がる。
だが、それを見逃すほどジル・ド・レェは甘くなかった。
「させんぞぉおおおおおお!!」
うわあ、でかさに見合わないすごい速度で触手が振り下ろされる。
「え、、うううう嘘でしょうぅ!?」
いかん! 思わぬ展開にオルガが硬直した。
あんなの喰らったら流石に持たない―
「宝具、仮想展開!!」
その直撃する一瞬で、マシュが宝具を展開する。
生み出される守護の力が、触手の攻撃をしっかりと受け止める。
最強の聖剣と呼ばれるほどの代物すら、条件付き展開で受け止めたその防護結界。
しかし、それすら圧倒的な質量という暴力で押し切らんとする。
だが、それを俺はあえて無視する。
「……大丈夫だ、オルガ」
そっと、俺はオルガの肩に手を置いた。
「兵夜……」
「ダ・ヴィンチちゃんに渡したのは、三大勢力の技術者が束になっても追加生産できない超高性能な一品だ。瞬間的とはいえ、それを強化したアイツを信じろ。それに―」
そう、それに。
「いざとなったら俺が何とかしてやる。だから、気を張るな、オルガ」
義足を壊れた幻想すれば、まあ何とかなるだろう。
「―――信じてるわよ、兵夜」
その言葉と共に、システムが解放される。
正真正銘これが最後の一撃だ。
ジル・ド・レェ。
お前の恨みは道理であり、お前がフランスを恨むのも道理だろう。
そしてその恨みのままに凶行を繰り返して処刑される。それが正しい歴史なんだ。
……それを、変えてやることはできない。
だから、この一撃をもって手向けとする。
―これは、生きる為の戦いである
―これは、己より強大なモノとの戦いである
―これは、人道に背かぬ戦いである。
―これは、精霊との戦いではない
―これは、邪悪との戦いである
―これは、世界を救う戦いである
「
さあ、受け取るがいい、特異点の元凶よー
「―
この一撃が手向けの華だ!!。
放たれるのは星の輝き。
神霊クラスの魔術行使は、全盛期の天竜ですらそうは出せないほどの破壊力をもって化生を切り捨てる。
ほんの僅かにずれたことで、ジル・ド・レェは弾き飛ばされるが、もう俺達のすることは何もない。
「……後はお前のやることだ。自分の不始末は自分でつけて来い」
俺は、そういうとすぐに後ろを振り返る。
今更逆転は不可能だ。これ以上オレがここにいる理由はないだろう。
残存するワイバーンを始末して、被害の発生を少しぐらい抑えておくか。
そう思いながら走っていると、外から元帥が駆けつけてきた。
「―あの怪物と輝きは一体!?」
「―気にするな、もう終わった。……ジャンヌ・ダルクが待っている」
俺はそう言って、元帥の背中を押す。
……一瞬、このまま背中から刺すべきかとも思ったが、しかし思いとどまる。
そして、俺はワイバーンを始末するべく駆け出した。
「おかえり、四人とも!! お疲れ様!!」
笑顔でロマニが迎えるのを見て、俺達はとりあえずの第一歩をクリアしたことを実感する。
物資の補給の当てはない。人員もごく僅か。
挙句の果てにレイシフトも未だ実験段階。サーヴァントはサーヴァントで色々問題あり。マスターにいたっては三流。
よくぞ、これで特異点を解決することができた。
「本当によくやってくれた。カルデアのスタッフ全員を代表して礼を言うよ」
「それは違うさ、ロマニ。……優秀なカルデアのスタッフが後ろからサポートしてくれるからこそだ」
「はい。それに、現地ではたくさんの方々に助けられましたから」
俺もマシュも謙遜抜きでそういうし、それにそれだけではない。
「さて、まだ第一歩だがそれでも特異点の解決だ。……ここは少し豪華な食事で祝うとしようか」
「おや? まだまだ特異点の解析などもしなければいけないというのに食料を大放出していいのかい?」
ダ・ヴィンチちゃんにはそういわれるが、俺もそこまで馬鹿ではない。
「安心しろ。こんなこともあろうかと、オルレアン奪還作戦の数日前にイノシシを四頭ほど狩っておいた。……熟成もだいぶ進んだだろうし、生姜焼きにでもするか」
確か生姜はあったはずだ。
記念すべき特異点解決第一弾だ。少しぐらいは奮発しないとな。
「オルガ、イノシシ運ぶの手伝ってくれ。一人じゃ手が足りない」
「それ、所長にやらせることじゃないわよ」
そういいながらも、オルガは素直にイノシシを持ってくれる。
そして先に退出すること約一分。俺は足を止めると振り返った。
そして、それにオルガも驚かない。
「……わざわざ猪を出すなんておかしいと思ったのよ。それで、何のよ―」
言い終える前に、俺はオルガを抱き寄せた。
「………な、ちょ、ちょっと! あなた奥さんいるんでしょう!?」
「いいから、胸位貸してやる」
俺は、そっとオルガの頭をなでる。
……数秒後、オルガは俺の胸に頭を寄りかからせた。
「余計な気遣いよ。……ジル・ド・レェはのちに悪魔として歴史に名を遺す。そんなことは知っているわ」
「ああ」
「そして、人理修復と守護を担う私達が、歴史を変えるわけにはいかない。……あの人を殺すなんて選択肢は、私達にはないわ」
「ああ」
だけど、元帥と呼んでしまうわけだ。
「………これが、人理を守るということの責務なのかしらね」
「ああ、つらいな」
俺は、そっと慰めるようにオルガの頭をなでる。
「オルガ。……俺は弱い」
「サーヴァント五騎相手に足止めするような奴が何言ってるのよ」
「心の問題だ。俺はある男に胸を張るという決意に依存することで、こうしてやっていけるからな」
裏を返せば、依存する対象がいるからこそ無理ができる。
要は思いっきりもたれかかって行動しているのだ。己の中に主柱がない。
「だから、俺はちょっとやそっと依存される程度のことで文句を言ったりはしない」
ぽんぽんと、俺はオルガの背中をたたく。
「当分は俺を頼れ。安心しろ。俺はこれでも魔術教会に匹敵するレベルで昇格の門が狭い悪魔社会で、十台で最上級にまで手が届いた男だぜ?」
「………そう。なら、少しだけこうさせて」
オルガは、そういって、俺の胸に顔をうずめる。
「いい人だったわよね、元帥」
「ああ、聖女の右腕に違わない人物だった」
それから十分ぐらいで、オルガは普段通りになった。
とはいえ、これはかなり精神的にきつい内容だ。
これから、大変なことになりそうだ
大海魔を呼び出すジル・ド・レェを終わらせるのは、いつだって星の聖剣である。
というわけで、約束されし勝利の剣、発動。英霊召喚システムなどを保有するカルデアの技術顧問であるダ・ヴィンチちゃんなら、幻想兵装の応用発展も不可能ではないと思い仕込みました。
平行世界のエクスカリバーのガワを触媒として、一時的に約束された勝利の剣を発動させる切り札です。カルデアからの外部供給減があるからこその離れ業でした。
そして、オルガマリーは少し成長して少しダメージを。そのどちらもジル・ド・レェがもたらしたものだというのが皮肉です。
とはいえ、兵夜としても思うところはありまくりですね。……もしイッセーがジャンヌと同じような末路をたどればどうなりかねないかまざまざと見せつけられたのですから。