ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
立花「お兄ちゃんって、起源「イレギュラー」とかかなにか?」
「ねえねえお兄ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
と、俺は立花にそんなことを言われた。
「なんだよ? 言っとくが俺は魔術師としては二流だから、聖杯の調査などには関わってないぞ?」
「いや、そっちじゃなくてさ」
と、立花は渡されたジュースを飲みながら聞いてきた。
「参考に聞きたいんだけど、お兄ちゃんが参加した聖杯戦争はどんな感じだったの?」
ああ、その話か。
確かに、今後の事態を考慮するのならば、聖杯戦争の経験者の言葉はアドバイスになるかもしれない。
なにせ聖杯戦争そのものがレアケースだ。俺が居た世界線でも60年周期でしか開催されてないし、この世界ではどうも一回しか起きてないようだ。
まあ、魔術師は己の魔術を秘匿するのが基本だ。それも英霊召喚クラスの大魔術など、秘中の秘といってもいい。
どっかの誰かが大聖杯を発見して、そいつがその情報を一部でもばらまくなんてド級の阿呆か俺の想像の外を超える思考をもつ者で無ければあり得ないだろう。
ゆえに、参考にするべきだという考えは分かるが……。
「言ってもいいが、たぶん全く役に立たないと思うぞ?」
「なんでさ? だって世界規模の聖杯戦争だったんでしょう? 特異点一つ一つは一つの地方なんだし、規模が小さいなら何とかなるんじゃいの?」
「はっはっは。立花さんや。あの世界舐めてるぞ?」
ああ、まったくもってそんなことはない。
「そもそも、あの聖杯戦争において通常の聖杯戦争の常識は全く当てはまらん」
そう、そうなのだ。
何故なら、前提条件として聖杯戦争のセオリーのいくつかが完全崩壊しているからだ。
「立花。まず前提条件として、聖杯戦争でのマスターのセオリーを教えておこう」
「うん」
素直に頷く立花に、俺は聖杯戦争最大のセオリーを言い切る。
「マスターの役目は基本後方支援。むしろこれしかできないと言ってもいい」
なにせ、この世界で人間とサーヴァントの戦闘能力は次元が違うレベルでかけ離れている。
文字通りサーヴァントは一騎当千。加えて霊体であるため通常攻撃が通用しないという最大の利点があり、さらに基本七クラスの内過半数が魔術に対する耐性を保有している。
つまり、まともな手段で対抗するには一人で軍事勢力の派遣したそこそこの規模の部隊を、魔術以外の神秘で撃退できることが必要となる。
そんなものは死徒でも困難だ。そんなことができる連中など、一つの世代に十人もいればいい方だろう。
とにもかくにもそんなレベルの例外を保有していることが前提条件となっている以上、聖杯戦争にそんな輩が参戦していることなどレアケースに近い。間違いなく異常事態だ。
だが、あの世界ではそうではない。
ぶっちゃけ、サーヴァントは優れた戦力ではあっても規格外の戦力ではない。
神滅具や禁手の持ち主ならば、少なくとも勝負の土俵に到達することはできるだろう。それはすなわち一つの世代につき十三人は対抗できる人間がいることになる。実際は半分ぐらい人外という異常事態だが。
そして、それに人間が対抗できる方法も存在している。
というより、高位の神器や人造神器はそれ自体が下位の宝具に匹敵する代物だ。この時点でサーヴァントに対抗できる切り札を人間はかなりの数が持っている計算になる。そしてそれと同等クラスの戦闘技法は腐るほどある。
そして人外の存在がゴロゴロいる。神や魔王クラスは、間違いなく並のサーヴァントなら一蹴できる。格が違うのだ。
「………何その世紀末。怖いよ」
「そうだろうそうだろう。だが、こんなものでは終わらない」
そう、ここからだ。
まあ、そういうわけで最大の問題点を単純に言えば―
俺の経験した聖杯戦争、サーヴァントは殆どサポート役である。
っていうか、フィフスにしろ曹操にしろヴァーリにしろレイナーレにしろカテレアにしろ、ドーピングなどの後天的要素も含めてだが、
俺はガチンコで戦えば不利なところがあるが、そもそも俺の相方は最上級のサーヴァントである。間違いなく格においてあの聖杯戦争中ぶっちぎりトップを引き抜いている。反英霊なのが玉に瑕だが、それはともかく唯一まともな英霊の領域である。
ぶっちゃけ、他の連中はあの聖杯戦争が特例だからサーヴァントとして召喚できた存在だと思う。
まあとにかく、聖杯戦争に参加しているサーヴァントの内、その殆どはマスターの方が強いのだ。
実際、殆どのサーヴァントは直接戦闘はマスターに任せ、サポートに回っていることの方が多かった。
例外はセイバーぐらいだが、これはレイヴンが典型的な魔術師だった為戦闘能力が低いの例外だろう。いや、例外なのはあの聖杯戦争なのだが。
最弱のランサーを引き当てた曹操は、最強の神滅具持ちなので当然。歴代最強の白龍皇たるヴァーリ駆るライダーはもちろん当たり前。キャスターは闘う者ではなく作る者なので、単純戦闘能力ならばドーピングしてないカテレアにも劣るだろう。バーサーカーは割と凶悪な部類だが、条件を満たさなければあのレイナーレと戦って勝てるとは思えない。アサシンにいたってはフィフスが前衛を自分ですることを前提にしていた節があるので論外。俺もフル装備ならアーチャーとまともに戦えるだろう。
また、スタイルそのものが通常の聖杯戦争では戦いにならないものも多い。
他にセイバーが召喚されなければ効果を発揮することができず、よしんばできても英霊になるほどの存在が劣化版に劣るわけがないのでセイバーは弱い。
ランサーは論外。あいつは特殊能力以外は見る物がない。普通に英雄派の幹部なら禁手使えば勝てるだろう。
キャスターはさっきも言ったが本人が直接闘う部類ではない。だからこそ敵の中でも特に厄介なのだが。
バーサーカーは敵が大量であるという、七タッグによるバトルロイヤルでは真価を発揮できないサーヴァントなので、これも除外。
アサシンはおそらくハサン・サッバーハでも直接戦闘能力は低い部類だ。諜報組織としてはともかく、前衛戦力としてはかなり弱い。そもそもフィフスはド付き合いは自分がやるというあの世界だからこそできる戦略をとっていたようなので当然だ。
ライダーは防衛線なら効果を発揮できるが、そうでなければそこまで強い部類ではないだろう。というよりアレはヴァーリが強すぎる。
たぶん普通に総当たり戦をすれば、一番勝率がでかいのはアーチャーだ。そしてそのアーチャーですら、前衛は俺達が対応した。
このように、この聖杯戦争、セオリーであるサーヴァントが主力という常識をぶん投げている。はっきり言ってレイヴン以外はサーヴァントをサポートに回しているのだ。
繰り返すが、普通は聖杯戦争においてまずマスターは後方支援しかできない。それがこの世界の前提条件であり、それほどまでの格の差があるのだ。
なにせ英霊は人から生まれた上位存在。信仰によって数万人分の魂の質を持つ、正真正銘人間を超えた者だ。
これをぶん投げるにはそれこそ規格外の力が必要。それが、この世界における常識である。
だが、あの世界なら話は違う。
神秘は世界によって変動する。それが、アザゼルが立てた仮説だ。
実際神代の英霊なら、サーヴァントのクラスに下げられた状態の自分よりも強いことがあってもおかしくない。それほどまでに当時の神秘はチートだったことだろう。
だが、神秘がどんどん減っていっている現代では、魔術師の戦闘能力はごっそり減っている。
一応魔法世界式の魔法は発動できたし、D×Dの魔法は魔力を使わないので成功したが、それでも出力は堕ちている。まあ、これは研究用なので俺はメインで使わないからいいだろう。教えて魔術師が暴走したらそれこそ人理が崩壊する。
まあ、それでも対抗できるのは最上級クラスだ。それほどまでの格の差がある。
……いかに俺の気が狂っているか分かってもらえた事だろう。最上級の環境で最上級の施術者がいて最高の材料を用意できたからといって、サーヴァントとガチバトルができるレベルまで肉体を改造するなど正気の沙汰ではない。例え魔術師であろうと、やれと言われたら九割ぐらいは断るだろうし、残りの奴の九割も躊躇するだろう。我ながら狂っているな。
「………お兄ちゃん、ちょっと正気?」
「自分でも狂気度高いのは自覚してる。だがそれが必要だったことも理解してくれ」
まあ、そういうわけなので役に立たん。
最大のセオリーであるマスターとサーヴァントの方向性が最初から破綻しているのだ。こんなもん特例すぎてこの世界に当てはめれんわ。
そして、そこから先も問題だ。
なにせ、この聖杯戦争は本当に戦争だ。
一騎当千の戦力によるぶつかり合いだから戦争……などという意味合いではなく、本当に戦争だ。
いわゆる対テロ戦争だ。禍の団というテロリストと、三大勢力を中心とした現政権側の戦争だ。
サーヴァントの数は一対六。これで現政権側が勝てたということが、サーヴァントの戦力が直接的な戦力の差にならないことの証明でもある。
まあ、それこそ人理定礎クラスで世界の在り方を変えることになったので、これは試合に勝って勝負に負けた形だろう。痛み分けというかダブルノックアウトというか。
その所為で、本来聖杯戦争で勝率の低いサーヴァントが大暴れするという珍事が起きた。
言うまでもなくキャスターである。
作る存在であるキャスターは、戦闘能力そのものは低い。宝具クラスを作成できるとはいえ、それを扱うものの技量が低いのでまともな勝負は不可能だろう。
だが、それを可能とする者達があまりにも多すぎた。
マスターであるカテレアを炉心にした人型機動兵器はもちろんのこと、アサシンなどを母体としたサーヴァントの力を宿した戦闘要員。そして魔王剣ルレアベ。
材料が豊富だったこともあって大量に用意したキャスターの存在は、禍の団にとって貴重な要因だっただろう。少なくとも、あいつがいなければアサシン軍団による大被害は発生しなかったと断言できる。
また、あまりにも規模がでかすぎるがゆえに諜報組織であるアサシンが大活躍。この大量のアサシンによって弱みを握られた者達が大量に内通者になり、情報戦という領分で大苦戦を強いられた。
このように、通常の聖杯戦争では扱いづらいサーヴァントこそが本命といっても過言ではない大活躍をぶちかましている。もうイレギュラーだらけだ。
「だから、俺達の聖杯戦争は参考にしちゃいけない。特例はセオリーにはならないからな」
「うん、聞けば聞くほど凄いことになってるね……」
立花も思わず苦笑い。
ああ、まったくもって酷い話だ!!
「まあ、そういうわけだから参考にしない方がいい。間違ってもお前がサーヴァントとガチ勝負しようとか考えるなよ?」
「しないしない。できることを頑張るよ」
立花はそう言って笑うが、しかし心配だ。
なにせ、俺の妹だからなぁ。
「大丈夫だよ。無理しなきゃいけないし無茶なこともしてるけど、それでもできることからしてかなきゃ絶対失敗するもん。そういうことをしていかないとね?」
だといいんだがな。
頼むから、普通のマスターの範囲内で行動してくれよな?
書けば書くほどイレギュラーまみれ
そして本題にご注目ください。……今回から、本格的にイレギュラーが出てきますよ?