ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
さて、とりあえずガトリングガンの乱射で、敵の軍勢は散り散りになった。
まさに一騎当千。ガトリングガンの面目躍如だ。
なにせ機関銃は戦争の歴史を変えた産物。密集体形の意味を極限まで薄くし、戦場の在り方を一変させた存在。その先駆けこそガトリングガン。
それはリチャードの思惑と外れた方向だったろうが、ある意味で星の開拓者スキルを持っていてもおかしくない非常に高レベルな能力だ。
ゆえに、まさしくそんな陣形を中心とする手合いなど、物の数ではない。
露払いという意味なら、全サーヴァントを見渡してもかなり上位に入る自信がある。
なにせ道具作成スキルの応用で弾丸を容易に生成できる為、燃費がいい。
とはいえあまり乱用しては疲れることも多いし、適当に息を抜きながらするべきではあるわけだが。
「オルガ、とりあえず今のうちに戦闘に慣れておこう」
「え、ええ。わかってるわ」
ああ、言ってはなんだがただの人間。それも鉄製の槍や剣、弓矢で装備した兵などオルガの敵ではない。
彼女の躰は聖剣製。それを突破するには、せめて艦載兵器か対艦兵器ぐらいは持ってきてもらわないと困る。神秘でやるにしてもサーヴァントの宝具クラスがほしいところだ。
「いいか、オルガ。偽聖剣は特にあるエクスカリバーの能力をメインに運用することで戦闘をおこない、そしてそれがお前の体をここまで人間に近く作り上げることに成功している」
そう、それが最大の理由だ。
そもそも、剣を体にするだなんて無茶を実行に移せたのは、それが機能しているからに他ならない。
「名を、
「そ、そうだけど……。この数を私がやれっていうの!?」
かなり数がいるので若干ビビリ気味のオルガだが、しかし安心しろ。
偽聖剣をそんなどこにでもある槍や剣で貫ける奴なんて、それこそサーヴァントになってなければおかしい化け物クラスだ。
そんな奴は、出てきた瞬間にわかる。持っている気迫の類が違うからな。
そういうわけで、今のうちに本格的にオルガの戦闘訓練を行っておかないと。
「まずは自分の体を変化させるイメージから始めてみろ。なんていうか……毛をはやすとかうおわぁ!?」
いきなりケリが飛んできたので、とっさに俺は伏せてかわした。
「……女にムダ毛をはやせですって? そう、死にたいのね?」
「待て待て待て待て。俺がカルデアに帰還するとオルガにも負担がかかるから―」
「うっかり判断をミスして単独行動して、私をピンチにした人がよくほざくわねぇ?」
う、すいません。
髪の毛を伸ばすとか髪の毛を操作するとかそんな感じでいうべきだった。いかん、ジョークのつもりだったんだが想像以上にきつかったようだ。
でも人間要素の強い獣人とか萌えるよね! 手とか足とかが獣状態とか可愛いと思う!!
「と、とにかく! 偽聖剣は基本として擬態で鎧状にしたうえで、それによって柔軟に動かしたり、ブレードをはやして戦闘するのが基本のスタイルだ」
そう、偽聖剣が対サーヴァント用として優れているのはそれがあるからといっても過言ではない。
これにより非常に動きやすい全身鎧という、中々作れない代物を最高水準で作ることに成功した。
むろん他のエクスカリバーも有効活用している。特に俺と相性が良かったのは祝福だしな。
だが、偽聖剣を鎧として機能させていたのは偏に擬態に他ならない。
オルガの体を形成するのにも、それを重視して調整し直している。まずはそれを使いこなすことから始めなければならないのだ。
「……じゃあ、先ずは爪を伸ばすとか」
「爪を伸ばす……ねぇ」
いうが早いか、オルガの爪が少し伸びる。
やっぱり彼女は優秀だ。やりやすい方法を教えればすぐに習得してくれる。
「じゃあ、それでちょっとローマ兵の武器を破壊してみろ」
「ええ!? いや、魔術師が人殺しを躊躇するようじゃ話にならないけど……。生身で死体を作るのはちょっと―」
まあ、確かにそれは抵抗があるだろう。
だが安心しろ。
「別に人を殺せって言ってるわけじゃない。まずは武器を破壊するところから始めればいい」
そう。その程度でいい。
「殺し合いはあくまでサーヴァントの領分だ。マスター側のオルガは、サポートができればそれでいい」
「いえ、私は魔術師としての心構えの話をしてるのであって……」
そんなことを言っていると、兵士が一人突進してきた。
「し、死なばもろともぉおおおおお!!!」
「今は話し合いの真っ最中よ!!」
……オルガ、お前の今の躰で全力キックは常人だと即死ものだから気を付けよう。
さて、こちらの方は大体片付いたか。
オルガも少しずつだが戦闘に慣れているし、この調子なら立花の護衛ぐらいは行けるだろう。
俺が雑魚を散らしてマシュが守り、オルガが抜けてきた手合いを潰す。この三段構えなら、立花をカバーすることはできるはずだ。
この際、攻勢は召喚されたサーヴァントに任せるという手もある。俺達はその辺りをフォローする方向に行った方がいいだろう。
『お兄ちゃん! こっちも片付いたけど大変だよ!!』
なんだぁ? いったい。
「落ち着きなさい立花。それで、いったい何があったの?」
『ネロ皇帝が女の子だった! それもすごくかわいい!!』
え? 女?
ネロって男じゃなかったっけか? あれ? 女?
『そんでもてサーヴァントと戦ったよ! カリギュラだってさ』
「カリギュラ……というと」
「ええ、ネロ帝の叔父よ」
ふむふむ。これはおかしい。
この年代でカリギュラ帝が生きているわけがない。だからサーヴァントなのはわかっている。
だが、カリギュラはローマの皇帝だ。なぜそれがローマを襲う?
ふむ、これは少し厄介なことになってきているぞ?
その後、首都ローマに迎え入れられた俺たちは、ローマの現状を知ることになる。
連合ローマ帝国。そう名乗る軍勢によって、今ローマは襲われているというのだ。
むろん、そんな内戦など歴史には記されていない。当然のことだが人理焼却案件だろう。
詳しい情報は斥候が戻ってこない為全く持って判明されていないが、その皇帝は間違いなくサーヴァントだろう。
この時代において、高位の魔術師ともなれば現代のロードクラスでも手に余りかねない化け物のはずだ。それをたやすく倒せる存在などサーヴァントぐらいしかこの世界にないだろう。
つまり、マジモノの可能性がある。
だからこそ、短期間でこれだけの国を侵略することができたのだろう。
歴代皇帝の中でもカリスマ性のある者達を中心にすれば、人心掌握という点においては有効だろう。
しかし、船頭多くして船山に登るという言葉がある。
如何にローマ皇帝を大量に投入してカリスマ性を物量攻撃しようとも、それぞれに政策があり理念があり方針があるはず。
そんなもん、内部分裂してもおかしくない。
しかし、連合ローマ帝国は一丸となってローマ帝国を蹂躙している。
これを可能とするならば―
「敵将の中には、歴代ローマ皇帝を圧倒するほどのカリスマ性を持った存在がいるということか」
いったい誰だ?
世界征服一歩手前とも言われたアレクサンドロス大王か? モンゴル帝国の長、チンギス・ハンか? それともドイツを立て直したアドルフ・ヒトラーか?
それとも、のちの世の世界最強の大国、アメリカ合衆国の大統領?
今の段階では情報がないからまったくわからんが、しかしこれは厄介だ。
フランスはフランスで面倒だったが、しかしこれはこれで大変だぞ。
「……どう思う、ロマン」
『間違いなくサーヴァントによる攻撃だね。この時代では死んでいるはずのカリギュラ帝がいるのなら、まさにそうだとしか言いようがない』
「ふむ、姿なき魔術師殿もそういうか。やはりそういうことなのだろうな」
ネロ帝はそう沈みながら言う。
しかしサーヴァントが相手というのならば、ローマ帝国といえど苦戦は必須だ。
そして国家クラスの組織が相手というのならば、俺達では数が足りない。
さらに、その組織は高確率で聖杯を保有している可能性がある。
そういうわけで。
「ぜひよろしくね! ネロ皇帝!」
「快諾してくれるとは有り難い!! 貴公達のうち一名に総督の位を与えるぞ! 先刻の働きへの報奨ももちろんだ」
とまあ、速攻で同盟が成立した。
現役の国家の支援が受けられるのなら、それに越したことはない。
それに立花やマシュとしても、ローマを助ける行為そのものが精神的にプラスだろう。
「ありがとうございます。皇帝陛下。では、総督の座は兵夜に―」
「いや、それは立花に与えてやってくれ」
オルガの言葉をさえぎって、俺は立花に総督の座を提供する。
「む? それはかまわぬが、よいのか?」
「それでいいの?」
ネロ帝もオルガも首をかしげるが、しかしこれが一番優先だ。
「総督クラスともなれば、護衛の兵士をつけやすくなる。それに、俺は単独行動の方が優勢だしな」
そう、最優先するべきは立花の安全。
立花は俺達の中で唯一のただの人間。戦闘能力も生存能力も低い。
護衛をつけるには、相応の地位につけるのが一番だ。
ちなみに俺は結構現場で動く方が得意なので問題ない。実戦で指揮するというならば、小規模部隊が限界だろう。
まあそういうわけなので、必要な戦力はそこまでだ。
「そういうわけで、オルガはフランスと同じく俺と一緒に行動な」
「……ああ、だから私に総督の立場を渡さないのね」
想定できていたのか、オルガはそういうとため息をついた。
ああ、悪いが俺とお前は一蓮托生。この際一緒に行動してもらう。
「行動するとは言っているが、どうするつもりだ?」
「ああ、そんなことは決まっているだろう」
皇帝ネロに対して、俺はニヤリと笑みを浮かべた。
「首都の場所を探すに決まっているだろう? 俺達だけなら逃げられるからな」