ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「それで、どうやって首都の位置を探るの?」
「それについては簡単だ」
オルガと共に野営しながら、俺達は作戦を詰める。
「冷静に考えればわかることだと思うが、そもそもこの時代の技術水準では機動力が現代に比べて圧倒的に劣る」
「そうね。普通の斥候じゃあ、せいぜいがただの馬。サーヴァントの足なら簡単に追いつけるわね」
その通り、斥候が全滅したのもそこにあるのだろう。
おそらく英霊が自ら駆けつけてぶっ倒している。斥候なら兵力は少ないはずだし、そうなってもおかしくない。
しかし、それは裏を返せば―
「機動力に長けていれば、離脱することは不可能ではないということだ」
そういうわけで、俺が呼び出したのは装甲車。
もちろん、オフロードも可能な軍用車だ。
これで移動しながら、俺達がより広い範囲を偵察する。
「運転は俺がやるから、オルガは双眼鏡なり視力強化なり、とにかく都市を探してくれ」
「結局こうなるのね……」
『まあ、こんな大ごと楽に済ませられるわけねえしなぁ。仕方ねえだろ』
と、通信から返答が来る。
来たのだが……。
「アザゼル。なんでお前が通信に出てんだ?」
ロマニどうした。
「まったくよ。
オルガから殺意のオーラがだだ漏れしている。
アザゼル。確かにオルガの躰は特注品だから作成者の一人であるお前の調整は可能なら必要だと思い許したが……。
「アザゼル。お前、オルガになにをした?」
『別に何もしてねえよ。調整するついでにこの特例でできることを試してみようと思い外側から操作を―』
「ダウト。オルガ、後でシメていいぞ」
だから何やってんだこいつは。
「まったくね。この駄目サーヴァント! とにかくロマニを出しなさい!! ロマニをどうしたのよ?」
『ロマニの奴なら今は寝てるよ。そりゃあいつだって仮眠ぐらいするだろ?』
アザゼルの言うことは正論だったが、しかし本当か?
俺はいぶかしんだが、すぐに答えが飛んできた。
『あのねえ。当身を入れて気絶させるのは、寝てるとは言わないわよ? 気絶っていうのよ』
「……ハーロットはそう言ってるけど何してるのよ!!」
速攻でオルガからツッコミが飛んでくるが当然だ。
お前は味方に何をしてるんだこの馬鹿野郎。
「アザゼル! 確かにロマニはお前と同じで日常生活では扱いが悪くなるタイプのキャラだが、ただの人間に何してんだ!!」
医療スタッフなのに一生懸命オペレータまでしているロマニになんてことを!! なんてことを!!
俺もオルガも心から怒るが、しかしアザゼルは通信の向こう側でため息をついた。
『そりゃこっちのセリフだよ。……お前ら、気づいてなかったのか?』
「「なにが?」」
同時に首をかしげるが、速攻で飛んできたのはかなり辛辣な言葉だった。
『あの馬鹿野郎、薬物投与で無理やり思考速度を強化してやがった。たぶんフランスの時もそれで無理やり睡眠とか誤魔化してお前らをサポートしてたんだろうな』
その言葉に、俺は一瞬思考が空になる。
確かに、通信が繋がっている時は常にロマニが出ていたが、まさかあの野郎、四六時中自分が見てたのか!?
「た、確かにレイシフト中の私達は不安定な存在だから、常に観測を怠るわけにはいかないけど、他のスタッフだっているでしょう!?」
『だから、そいつらが休んでる分まで不眠不休だったって言ってんだよ。……やっぱり黙ってたな、あの野郎』
オルガにそう答えたアザゼルは、通信越しで再びため息をついた。
「あの馬鹿……っ。なんで所長の私にも黙ってそんな無茶を―」
『お前に、精神的な負担を掛けたくなかったんだろうな。……ロマニの奴も肉体的にかなり無茶してるが、お前も相当無茶してるだろうしな』
アザゼルはそう前置きしてから、口調を優し気なものに変える。
『まあ、カルデアの方は心配すんな。この俺とダ・ヴィンチがいる以上、システムの方の再調整はだいぶ進んでいるからよ。現場は現場で大変だろうが、そこは兵夜に丸投げしとけ』
「冗談じゃないわ。私はカルデアの所長として、責務から逃げ出すわけには―」
『そこが間違いだって言ってんだよ』
オルガが反論しかけるが、アザゼルはそれを遮った。
『まだ30にもなってねえ小娘を、こんな大事業の責任者にさせるなんてどうかしてる。……ここは最年長の俺にもっと頼っとけ。宮白も中身は三十代だしな』
その言葉は優し気で、あいつの地が見える。
ああ、そうだろう。
いきなり父親が死んでこんな大事業の跡を継がされた。それだけで、どれだけオルガの心に負担があったかなんて想像に難しくない。
レフに依存するのも当然だ。そうでもしなければ耐えられねえ。
『お前は確かに魔術師としては天才なんだろうが、こっち方面じゃあ苦労しただろ? ダ・ヴィンチは天才だが個人主義だろうし、ロマニは優秀だが超人じゃねえしな。兵夜から聞いてるが、魔術師ってのは外道が多いんだろ? そんな中、よくもまあカルデアを運営できてたなって褒めてやるよ』
その言葉に、オルガは何も言えなかった。
それを理解しながら、アザゼルはさらに続ける。
『……よく頑張った。あとの難しいところは俺らに任せな。お前は現場に集中してな』
「………ふ、ふん。わかったわよ。数千年生きている経験には価値があることぐらい魔術師ならわかるし、今回は参考にしておいてあげるわ」
オルガ、顔真っ赤だぞ?
「と、とにかく! ロマニは普通にベッドに寝かしておきなさい! あなたのことだから、下手をすればその辺の床に転がしてそうで心配だわ」
『そこまで鬼じゃねえよ。適当に毛布をかけといたからな』
アザゼル。それ誤差の範疇内。
そんなこんなで最低限の情報さえ手に入ればいいと思ったが、しかしラッキーな出来事が起きた。
「言われた通りね。確かにこの時代において最高峰の大都市があるわよ」
双眼鏡を覗いたオルガがそれを確認する。
こっちがあてもなく長距離行軍をしている間に、ガリアを攻め落とした立花達が有益な情報を獲得したのだ。
すなわち、連合ローマ帝国の首都の場所。
なんでも女神に散々振り回された挙句、再びカリギュラと戦った結果らしい。よくわからん。
とはいえ、その情報が正しいかどうかを調べる為に俺達は移動を開始。そしてそれは実際に正しかったわけだ。
「さて、それじゃあすぐに帰還するぞ」
「いいの? もう少し情報を調べてからでも―」
オルガの言うことも理解できるが、しかし今回はそこまでしなくていいだろう。
なにせサーヴァントの巣窟であることは想像できる。
ならば、長居は禁物だ。ばれて集中攻撃を喰らえばひとたまりもない。
敏捷に長けたランサーや、騎乗物を使うライダーに発見されれば、俺達ですら勘付かれる可能性がある。
そういうわけで場所が確認できた以上、もうここに用はない。
即座に俺達は撤退を開始した。
「……そういえば、アザゼル」
移動中暇なので、俺は通信越しにアザゼルと会話する。
『なんだ? 今、マシュ達はローマ側のサーヴァントの援護に行って帰還したところだが』
そうか、あっちはあっちで大活躍のようだ。
「それは重畳。それで、まあいわゆる世間話の類だ。……アザゼルは、ネロ皇帝をどう思っている?」
なんとなく、気になった。
ネロ・クラウディウスは暴君と言われることになる。
それに関してはキリスト教に対する弾圧が原因だが、それも歴史によれば火事場泥棒などを起こしていたことを理由によるものらしいし、ましてやキリスト教徒はキリスト教徒で、当時は問題行動が多かったらしい。
俺から見た皇帝ネロは何というかワンコ系な印象があるのだが、アザゼルからは果たしてどう見えているのか。
『そうだな。確かに、いずれ追いやられることになるだろう人物ではあるな』
アザエルは、はっきりと言った。
『カリスマはある。愛もある。政治センスも優秀だ。だが、致命的な欠陥がある』
「致命的? この短期間にそこまで見抜けるの?」
オルガも首を傾げるし、俺もよくわからん。
それは一体どういうことなのだろうか。
『簡単なことだ。アイツの愛は周りを振り回しすぎる』
「お前は追放されてないだろうに」
鏡を見ろ。
教え子を遠慮なく実験台にし、挙句の果てに組織の金を使ってゲーム創るような奴が、周りを振り回してないってのか、ああん?
『……問題は支配される民の方だよ』
アザゼルは、苦い顔を浮かべてそう言った。
ふむ、特に市民から嫌われているようにも見えなかったが。
だが、アザゼルの意見は違ったようだ。
『宮白ならわかると思うが、指導者という者の適性は、支配される民にも大きく左右される。いわば需要と供給、それがかみ合っているかどうかってやつだ』
まあ、それはわかるが……。
『民が望んでいるのは繁栄と存続だ。だが、ネロは繁栄は望んでいても存続を強く望んでいるかは怪しい』
アザゼルは、そう言った。
平和になればあとは種の存続と繁栄。アザゼルはそう言ったのだ。
それはつまり―
『アイツの愛情はすべて焼き尽くすような節がある。美しく燃え尽きるのなら、それもまたありと考えているだろう。……それが、何かをきっかけに噴き出るのが、この世界のネロの衰退の原因なのかもな』
怖いことを言うなよ。
「……例えそうだとしても、それを私達が諌める事は許されないわ」
オルガは、そう言った。
「人理を守る私達が、自分達の手で人理を潰していいはずがない。……今の話、立花達にはしちゃ駄目よ?」
『わかってるようるせえなぁ。俺だってそれぐらいはわかってるっつの』
明らかにめんどくさそうにアザゼルはぼやくが、しかしすぐに反応が変わる。
ん? なんだなんだ?
『宮白、オルガマリー! サーヴァントが後ろから接近してるぞ!!』
「「っ!?」」
俺はとっさにアクセルを全力にして加速する。
連合ローマ帝国内部にいるサーヴァントだなんて、高確率で敵に決まっている!!
「飛ばすぞオルガ、舌を噛むなよ!!」
「え、え、ちょっとぉ!?」
ビビって俺にしがみつくオルガだが、しかし普通に席に座っているようが安全なんだが。
まあいい。ニトロまでブッ込んでの最高速度。
ライダーのサーヴァントでもない限り追いつけるはずがない……と願いたいなぁ!!
アザゼル大活躍。
そして兵夜側も現代文明を最大限に使用して首都を発見するが、しかし敵にも発見される。
さて、次の話でついに題名の意味が出てきますぜ?