ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
流石に中途半端はまずいですよね、中途半端は
「立花、マシュ!! 無事ね?」
駆け込んだオルガマリーは、その光景を見た。
「心せよ。世界は、永遠でなくてはならない……」
ネロの剣が、ロムルスを貫いている光景を。
「あ、所長」
「どうやら、ロムルスは倒せたようね」
とりあえず、障害の一つを乗り越えることには成功したようだとオルガマリーは理解した。
「……おお、オルガマリーか」
自らの手で祖を倒したことに思うところがあるのか、ネロは少し弱った様子だった。
しかし、すぐにその感情を押し込めると、剣を掲げる。
「いいところに来た。これでローマはあるべき姿へと戻ることだろう。本陣を見つけた貴様や兵夜にも報奨を出さねばなるまいて」
「それはありがたいのですが、聖杯と宮廷魔術師はどちらに?」
報奨を今にも出さんばかりのネロを抑えながら、オルガマリーは周囲を警戒する。
「むぅ? 神祖は討ったのだ。最早連合ローマ帝国は終わりではないか?」
「いえ。その神祖をこの世に呼び戻したのは聖杯によるもの。そしておそらく、くだんの宮廷魔術師こそが呼び出した元凶です。彼を討たねば、今度は異なる時代の異なる覇王を呼び出してローマを再び蹂躙することでしょう」
そう。ロムルスはおそらく元凶ではない。
元凶が呼び出した、担ぐ為の神輿だ。
人理焼却を起こす特異点を生み出す要因、聖杯。それの持ち主こそが、真の意味での元凶だ。
その宮廷魔術師こそが、真の意味での元凶のはずなのだ。
それがレフかどうかはこの際どうでもいい。しかし、聖杯の持ち主から聖杯を奪還しなければ、結局は鼬ごっこなのだ。
「ロマニ。この近くに聖杯の反応はないの? この機に聖杯を確保しなければ、結局は同じことの繰り返しよ!」
『待ってくれマリー。今すぐに捜索を―』
「いや待て。……サーヴァントではなさそうだが、すぐ近くに誰かいるぞ」
荊軻が、ロマニの声を遮って声を飛ばす。
そして、その視線の先に彼はいた。
「……いやはや。まさか所詮サーヴァントとはいえ、神に至った者まで倒すとはね。これもまた、あのイレギュラーの存在が原因か」
シルクハットを被った、癖毛の長髪。
その姿を見て、立花も、マシュも、そしてオルガマリーもその表情を鋭くする。
「……久しぶりね、レフ」
「そうだねオルガ。……君みたいな屑が、まさかサーヴァントにすら届く剣を持つように……いや、剣そのものになるとはね。心の底から吐き気がする」
鋭い視線をぶつける、かつての上司と腹心。
人理存続の為の初レイシフトのタイミングで爆発事件を起こし、そしてオルガマリーの体を吹き飛ばした張本人。
レフ・ライノール・フラウロスが、黄金の盃を持ちながら、不快げな表情を浮かべる。
「だが、所詮はサーヴァント数騎程度の戦力だ。聖杯の力には勝てないだろうね」
「……なるほど、貴様が件の宮廷魔術師か。そして、その手に持っている杯が聖杯とやらだな?」
「はい。あれが聖杯です。形状は、前回目にした物と同一のようですが……」
ネロとマシュもまた深く身構える中、オルガマリーは一歩前に出る。
だが、それは冬木での盲目的な信頼とは違う。
明確な敵意を持って、オルガマリーはレフと対峙していた。
「かつてカルデアの所長である私を爆殺した時と同じね。……王の危機をあえて見逃すとは、宮廷魔術師失格じゃないかしら?」
『というより、それが素なんじゃないかい? カルデアに居た時より生き生きとしているよ』
不快感を隠さないオルガマリーと、一周回って呆れているロマニの声に対しても、レフはその傲岸不遜な態度を崩さない。
それどころか、むしろ当然といわんばかりに胸を張っていた。
「ふん。私が真に使えるのは我らが王ただ一人だ。……神祖とはいえ所詮はコピーのサーヴァント如きに、私が敬意を払う理由はないさ」
「確かにね。それが正しい現代の魔術師の認識よね……」
レフの言葉に、オルガマリーはあえて肯定する。
サーヴァントとは、厳密に言えば英霊そのものではない。
英霊の座に存在する英霊のコピーがその正体。それも、側面を抽出した部分的な存在だ。
もとより使い魔としての契約を受け入れ、絶対命令権すら保有している存在。根っからの魔術師なら自分よりも下に見るのが当然だ。
仮に英霊そのものに敬意を向ける者がいようとも、劣化コピーでしかないサーヴァントに向けるそれは本人の自画像や銅像に向ける者と大差ない。本質的に人やそれ以上のものとして扱うことなどナンセンス。それが魔術師らしい認識だった。
だから、オルガマリーはそうしない自分に苦笑する事こそあれレフのその態度に激昂する事はない。
それは、魔術師というものを理解している立花もまた同様だ。
同様ではあるが、しかしそれも含めて目の前の男に対する苛立ちは強かった。
「無駄口は後だよ。……観念して聖杯を渡せ、レフ・ライノール!!」
兵夜に提供されてカルデアで生産中の魔力パレットを構えながら、立花はレフに指を突き付ける。
……ちなみに、ガンドの発射準備も完了していた。返答次第では速攻でぶっ放す気が満々である。
「はっはっは。いっぱしの口を利くようになったじゃないか、お嬢さん。フランスでの大活躍がそうさせるのかな?」
その言葉は、既にフランスの特異点が完了しているという事に他ならない。
そして、笑みを浮かべているレフだが、その口調には苛立ちがにじんでいた。
「まったく、その所為で私は大目玉だよ! 子供の使いすらできないのかと追い返されて、こんなところで小間使いだ」
「そりゃ良かった。さっさとお返しが出来て嬉しいよ」
「同感ね。私の体のお礼が出来る事に感謝するわ」
レフの愚痴に、立花もオルガマリーもざまぁみろと言わんばかりの笑みを浮かべる。
だが、その言葉にはもう一つの意味が隠されている。
それに真っ先に気づいたのは、アザゼルだった。
『なるほどな。お前は正真正銘2016年担当。しょせん使いっ走りに過ぎないてことか』
「……口が滑ったな、まあ、どうということはないが」
その聞いたことのない声に、レフの反応が更に変わる。
「どうやら、レオナルド・ダ・ヴィンチとは違った方向での知恵袋を召喚したようだな。……後方支援にサーヴァントを召喚するとは、こちら側ではあまりない発想だ。……あの男の入れ知恵か?」
「いや、お兄ちゃんは家政婦を召喚しようとしてた」
『アイツ馬鹿じゃねえの!?』
思わずポロリと事実をこぼした立花の発言により、アザゼルはツッコミを飛ばした。
当然といえば当然だろう。
サーヴァントの戦闘能力は、並の上級悪魔を凌駕する存在だ。少なくともアザゼルの知るサーヴァントは、何らかの形で並の上級悪魔を超える兵夜達を苦しめるか肩を並べるかしている。
そんなもんを家政婦として使う事を目的として召喚するなど、アホでしかない。
なぜ聖杯戦争というものを熟知している兵夜が、イレギュラーだらけの聖杯戦争しか知らないアザゼルにすらツッコミを入れられる真似をしているのか。
立花としてもツッコミを全力で入れたい気分だ。バカなのかあの男は。
こと苛立たしくなるのは、そんな男にコケにされたレフである。
聖杯を握る手にも力が籠り始めており、顔にも青筋が浮かんでいた。
「そんな馬鹿に聖杯を奪われた所為で、私がどれだけ主に怒られた事か! 聖杯を相応しき愚者に与え、その顛末を見物する個人的な愉しみも台無しだ」
「それは良かったわね。裏切りの罰には全く足りないけれど」
ざまあみさらせと言わんばかりに、オルガマリーは心底からの嘲弄の視線を向ける。
更にそれに便乗するように、通信からも追撃が行われる。
『なるほどな。つまりこの時代を狂わせるのには、それを行うヤツが必要だったってわけか』
『フランスでは元帥がそうだったけど、裏を返せばこの時代にはそんな人物がいなかったって事だね』
アザゼルとロマニが、レフの言葉の裏の真実を速やかに暴く。
「そ、そうです! 神祖ロムルスは人類の未来をネロさんに託しました。つまり―」
『―この時代に、君達に協力したがる裏切り者はいなかったという事だね、レフ教授!』
マシュの言葉を繋げ、ロマニから痛恨の言葉が届く。
その言葉に、レフは心底苛立たし気にしながら頷いた。
「まったくだ。……だが、人間などというカスや、その慣れの果ての残像でしかないサーヴァントになど初めから期待していない。君もだよ立花くん」
歯をむき出しにして嘲笑しながら、レフは人類最後のマスターを見据える。
その目に浮かぶのは、嘲りだけでなく嫌悪と憐憫すら含まれている。
「凡百のサーヴァントをかき集めた程度で、このレフ・ライノールはおろか、我が王を阻む事など夢物語だ」
「あら? 兵夜にあっさり聖杯を奪われたのは誰だったかしら? あなたぐらいなら阻めそうだけれど?」
カウンター気味に痛烈な皮肉を放つオルガマリーだが、しかしレフももう動じない。
「だからこそ、こちらもそれ相応の対抗策を用意したよ。……向こうの世界のヤハウェも酔狂だ。自分すら殺せるような道具を、自分を信仰しない者に与えるなど愚かの極みだ」
にんまりと笑みを浮かべるレフの言葉に、全員がある人物を思い浮かべる。
それは、赤い髪を持つ聖槍の担い手。
『なるほどな。確かに、奴ほどローマの滅亡を願っている女はそういない。その怨念を使って召喚したということか』
「……あの、平行世界のブーディカとやらか」
「その通り。こんなことなら、最初から彼女に聖杯を与えておけば良かったと反省しているとも。それならあの忌々しい男も楽に殺せただろうに」
アザエルとネロの追及に、レフは全く動じずには堂々と肯定する。
竜を殺す力を宿した、神殺しの聖槍。
悪魔にして神にして龍種である兵夜にとって、この上ないほどに天敵である。
聖槍の使い手は、その時点でサーヴァントにとっても脅威となる。その上それが英霊へと昇華し、サーヴァントとして呼ばれている。更に、とどめとしてその担い手の至った力は龍殺し。
怨敵ともいえる兵夜殺しに、この上なく特化したブディカの力。こと最強の神滅具である聖槍の歴代保有者であろうとも、対兵夜に最も適しているのは間違いなくブディカだった。
レフが知らない歴代最高峰の担い手である曹操ですら、その一点では勝ち目がないだろう。それ以上の効果を発揮できるであろうモノも、平行世界を含めても規格外の狂気を持つ一人のみ。そして彼もまた龍殺しを持っているからこそできる所業である。
ゆえに、レフはブディカが兵夜を殺す事だけは確信している。
才能、装備、バックアップ、果ては相性と全てが上回っている。ましてやその実力もレフ自身がしっかり認識して兵夜をしのぐと確信したのだ。これで勝てなければもはや何らかの意思が介入しているとしか思えない。
ゆえに、レフはそれ以外の雑兵を潰すつもりでここに来ている。
「霊長類最高峰程度では、私は倒せない。さあ、我が王の寵愛を受けた私自らが、貴様ら下等な人間の駆除を行ってやろう」
その言葉とともに、レフの気配は大きく変わる。
サーヴァントのそれを軽く上回る圧力。
その気配に、立花もマシュもオルガマリーもネロも、サーヴァントである荊軻すら震えた。
それは、間違いなく恐怖の感情。
圧倒的な実力差を持つ存在に対する、本能的な恐怖心が呼び起こされていた。
『全員気をつけて! サーヴァント複数分のシャレにならない魔力反応が突然発生したよ!?』
『っていうか、流れから言ってレフってやつがなんかしたんだろうな。……どうなってる? 全身鎧か? 巨大化か?』
「……そんなものだったらまだましだったわよ」
震える声で、オルガマリーは吐き捨てる。
そこにあるのは肉の柱とでも形容するべき代物。
ジル・ド・レェが召喚した海魔ですら、これに比べればまだ可愛いと形容できただろう。
『この反応は、サーヴァントでも幻想種でもない! 伝説上の、本当の『悪魔』反応だ!』
「まったく優秀だなロマニ・アーキマン!」
狼狽するロマニの言葉を肯定しながら、レフだったものは嗤う。
まるで、その醜怪な肉の塊が心底誇らしいといわんばかりだった。
「この醜さが貴様達を滅ぼす!! そう、私こそレフ・ライノール・フラウロス!! 七十二柱の魔神が一柱! これが、王の寵愛そのものである!!」
今後の連載をどうしたものかと考え中。
第二部があれですからね。兵夜たちを残存させることが困難なので、さてさてどうしたものか。
兵夜はゴルドルフと仲良くなれそうなんですけどねぇ。アイツの性格なら「ありもしないベストを探してる間にポンと出てきたモアベター!!」とすさまじい勢いで絶賛するでしょうし、そのうえでその周りの警戒を怠るという痛恨のうっかりをぶちかますので、ん部に関していえばつつがなく進められるでしょうし。