ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
あまりに莫大な魔力の奔流に、俺は近くにいたオルガを連れて即座に全力後退。
「マシュは立花を守れ! こっちはこっちで何とかする!!」
「は、はい! 宝具、仮想展開……!!」
星の聖剣の全力を受け止めたマシュの宝具なら、立花をカバーするぐらいなら何の問題もないはず。
問題はこっちだ。射線から逃れたとはいえ、果たして間に合うか―!!
「おお! これぞまさしく圧政者の輝き! 圧政者よ、汝を抱擁せん!! それこそ……愛!!」
なんかデカブツが俺達を通り過ぎて行ったので、思わず盾にしました。
……のちに味方のサーヴァントだと聞いて、流石に悪いと思ったのはここだけの話だ。
だが、それでもその奔流は莫大で、俺達は勢いよく吹っ飛んだ。
「きゃぁあああああああああああああああ!?」
「しっかり掴まっていろ、オルガ!!」
オルガをしっかりと抱きしめながら、俺は奔流を何とかしのぐ。
そして力の波動が消え、振り向いた俺達の目には酷い破壊の痕跡が残されていた。
……連合ローマ帝国首都が、灰燼と帰している。
相手の射線上にあった都市の部分は跡形もない。
なんだこの火力は、マジで星の聖剣に匹敵する火力じゃねえか!!
「アザゼル! 立花とマシュは!?」
星の聖剣の全力すら防げるんだから大丈夫だとは思うが、しかし流石に心配だ。
俺が現界に支障をきたしていない以上大丈夫だとは思うが、しかしこれは―っ
『安心しろ。マシュも立花もランスロットもネロも無事だ。……ブーディカがギリギリで間に合ってな、相乗効果で何とかしのぎ切った』
その言葉に、俺は安堵の息を漏らす。
「……そう、よかったぁ」
オルガも一安心したのか、地面にへたり込んだ。
ああ、どうやら何とか無事なようで何よりだ。
だが、通信越しのアザゼルの声はかなり緊張感が漂っていた。
『残念だが事態は深刻だ。……召喚されたサーヴァント、アルテラは現在首都ローマの方向に向かって進軍中だ。あの女、徒歩でローマを潰しに行きやがった』
おいおいおいおい。流石にまずいぞ。
これだけの疲弊状態で首都が壊滅すれば、ローマ帝国は確実に終了だ。
これならまだネロを殺された方がましじゃねえか!
「仕方がない。すぐにでも追わないとまずいな」
『ああ。……と、言いたいがそっちは立花に任せろ』
なんだと? とは思ったが、すぐにどういうことか理解する。
足音が、聞こえた。
そこにいるのは、ぼろぼろになった赤い髪の女。
ブディカが、そこに立っていた。
攻撃の余波でこちらに吹き飛ばされたらしい。つまりは、死に体だ。
しかし、それでも彼女の目からは憎悪の炎が残っていた。
「……どけ。ローマを蹂躙するのは、私のやる事だ」
「いや、そういうわけにはいかないな」
まったく。面倒な事になったもんだ。
「立花、聞こえるか?」
『うん! なにかなお兄ちゃん?』
元気そうな声で何よりだ。
だから、ちょっと無茶振りしよう。
「スマンが野暮用だ。……アッティラは任せる」
『……OK。そっちは任せたよ』
ああ、察しのいい妹で助かるぜ。
俺は通信を切ると、静かにブディカを見据える。
彼女のローマに対する恨みは正当で、彼女はローマに復讐する権利があるのかもしれない。
だが、それは俺達の世界のローマであって、このローマじゃない。
この世界のブーディカがローマを救う事を選んでいる以上、彼女の行動は余計なお世話に過ぎない。
それを、見過ごすわけにはいかないさ。
元より、彼女は俺の世界の住人。俺が来た事で向こうの警戒心を強めてしまったというのなら、その責任は俺が果たす他ない。
「……さあ、聖杯戦争を始めよう。……お前の八つ当たりはここで終わる」
「終わらんさ。我が復讐はこれから真なる意味で始まるのだから!」
そして、俺のローマにおける最後の戦いが始まった。
セプテム編の最終章スタートです。
神殺しの聖槍vs神喰いの神魔。果たして勝利の女神はどちらの神を倒すものに!!