ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「異世界の英雄……だと?」
「ああ。お前達が人理を焼却した結果だろう。奇跡的に縁のあった俺が引っ掛かり、こうして疑似サーヴァントとして召喚されたというわけだ」
狼狽する昆布野郎を、俺は心底愉快そうにあざ笑う。
まったく。イレギュラーすぎてフィフスを倒した後の記憶が曖昧だ。
神秘は世界の影響をもろに受ける。英霊の座に近しいものがあっても不思議ではないが、それは決して英霊の座そのものではない。
たぶん、令呪を使っても俺の記憶は一年先を思い出せるかどうかも怪しい。それ位の存在だ。
だが、それがこの緊急事態に彼女を助ける結果になった。
念のために仮契約をしておいて正解だった。
「……よく頑張った、
「ふえ!? 私、名乗ってないんだけど!?」
「名乗らなくても知っている。まあ、それはまた後程」
俺はすぐにイーヴィルバレトを構えると、速やかに躊躇することなく弾幕をぶっ放す。
その弾丸はもろに昆布野郎に当たるが、しかし昆布野郎は意にも介さない。
「甘い、甘いぞ!! その程度で私は殺せない!! 殺せるものか!!」
「いや、十分だ」
そして次の瞬間、ゴーレムが昆布野郎に体当たりをした。
「ぬぉ!?」
馬鹿め。真正面から挑むと思ったか。
伏兵は戦術の基本だ、体に刻み込んでおけ。
そして、ゴーレムは昆布野郎の手から離れた聖杯を確保すると、其のまま走ってこっちにGO!
「良し! そこのデミサーヴァント! そのまま聖杯を守っとけ!! こっちはこっちで何とかする!!」
「わかりました! 先輩を守るぐらい真剣に守ります!!」
よろしい!
「……さて、まあ、人理の焼却クラスの緊急事態を完成された冬木式聖杯程度でどうにかできるとは思ってないが、アンタに渡すのも見逃せんな」
「チッ! ここにきて最大級のイレギュラーが来るとは想定外だ!」
心底舌打ちする昆布野郎だが、怒りが一周回って冷静になったのか、表情を平均値に戻した。
「まあいい、私の仕事は既に完遂している。次の仕事もあるのでね、君達の末路を楽しむのはここまでにしておこう。このまま時空の歪みに飲み込まれるがいい」
「三流の負け惜しみだな。……後でもっと吠え面を掻かせてやるから覚悟しろ」
金色の粒子になって消滅する昆布野郎を、俺はあえて見逃す。
どうも奴は俺とは別の意味で規格外の存在のようだ。戦力を確保しきれていない現状ではうかつに仕掛けられないだろう。
そして、天井がパラパラと崩れ始める。
「あれ? これ、なんかまずくないか?」
『特異点が消失しかかってるんだ! すぐにレイシフトする、それまで持ち堪えてくれ!!』
「先輩! つかまっていてください」
「うん! ほら、所長も早く!!」
と、デミ・サーヴァントと立花が手を伸ばすが、オルガマリーはその手を取らない。
「……無理よ。第三魔法もなしに人間の魂は世界に残存できない。よしんば残ったとしても、それはただの残留思念だわ」
静かに肩を落として、オルガマリーはそのまま崩れ落ちそうになる。
まったく、見てられないな。
「いや、確信はないがまだ手はある」
「無理よ。聖杯はただの魔力リソースよ? そんなもので死者の蘇生はできない」
「いやいや、それができるかもしれないんだなぁ」
ああ、確かにこの世界では死者の蘇生は困難極まるだろう。
だが、しかし手がないわけではない。
「……俺の世界の聖遺物としての聖杯は、千年以上前に滅びた存在を完全に復活させるというとんでもない真似が出来た」
「それはすごいわね。でも、それを持ってるの?」
「いやまったく。俺は所有者じゃないし、デメリットが激しいからそういう用途の使用も禁止されてる。……だが」
俺はすぐに宝玉を転送する。
「何度も何度も復活されても面倒なんで、倒した後に魂を別口で封印する方法を編み出した。実際、肉体をバラバラにされた龍の魂は何百年も前に封じ込められて、しかしいまだ現存してる実例もある」
ああ、その辺に関しては間違いないさ。
なにせ俺の親友がその魂を宿した籠手を持ってるからな。
そして、そういうわけだからやりようはある。
「土壇場だが、そいつに君の魂を封じ込める。神秘は世界によって変動するから確証性はないが、聖杯の魔力リソースを使えば何とかなるはずだ」
「………嘘でしょ」
「確実性は薄いが、試してみる価値はある。……それで、どうする?」
余計なお世話ならしない。俺も、出会ったばかりの女にそこまで感情移入できるような善人じゃない。
だが、あんな叫びをぶちかましておいて、いやだとは言わないだろう。
「いいわ。やって頂戴」
成功するかわからない恐怖からプルプル震えながら、しかしオルガマリーははっきりとそう言った。
「レフは絶対に許さない。あの男はこの手で張り倒すわ。そのうえで、人理焼却を持ち直して、今度こそ誰であろうと私を認めさせてやるわ!!」
「その意気だ。気合を入れろ、オルガマリー!!」
さて、俺も本気で気合を入れるとするか!!
「ふむ。どうやら俺の知っているこの世界のはずの世界線と、この世界線は微妙にずれが発生しているようだな」
「みたいだね。っていうか聖杯戦争が五回も開催って信じられないよ」
「聖堂教会からしてみれば、本腰を入れたくはないがさりとて見逃せないという厄介な代物だったということだろう。おかげで魔術師は得をしたわけだ。……もっとも、戦争の細かい内容自体は詳しくないんだが」
「だろうね。秘匿が原則の神秘だと、そういうのは隠すのが基本だろうし。……それにしても、このメンバーだけでやれって酷くないかい?」
「仕方ないだろう? 魔術師なんて生き物がこの事態を知れば、残存リリースをすべて根源到達に回しかねない。他のメンツにしたって、このストレスのかかる環境で冷静でいられるかとなると不安視できる。俺がフォローするにも限度がある。特に食い物とかな」
「うんうん。それに関しては心から感謝してるよ。ああ、インスタントとはいえどお汁粉は美味しいねー。疲れた心に染み渡るよ」
そんな声を聴きながら、オルガマリーは目を開けた。
どういうことだろう? 宝玉に魂を封印するというのは成功したのかもしれないが、何故か五体の感覚が微妙にある。
そう、微妙なのだ。
自分が体を持ってた時と比べると、どうも微妙に鈍いというかなんというか。
「あれ、私……」
「あ、起きたねマリー」
見れば、医療スタッフだったロマニ・アーキマンが顔をほころばせながらも微妙な表情を浮かべる。
そしてアーチャーの方も、苦笑を浮かべていた。
「オルガマリー。良い話と悪い話があるんだが、どっちから聞きたい?」
「……悪い方にして。持ち上げて落とされるのは心の底から嫌だわ」
とりあえず、落ちるところまで落ちてから這い上がりたい。
そういうと、アーチャーは苦笑を浮かべて肩をすくめる。
「残念だが、マジでレフ・ライノールの言ったとおりだ。俺達で人理を救済するしかない」
「………でしょうね」
あの大爆発だ。そのダメージは非常に大きいだろうし、被害者も甚大だろう。
ましてや、他が文字通り全滅しているなどという状況下、ストレスは非常に莫大のはずだ。限界にきて発狂してしまい、それが他の人物に伝染する可能性を考慮するべきだろう。人数は最小限で行くべきだ。
さらに、魔術師のマスターを復活させたとしてもまともに人理救済を狙うかどうか。
下手をすれば根源到達の好機とみなし、人理救済派を殺しに来かねない。
もしこのサーヴァントが瀕死の重症者を救う能力があったとしても、そんなことはしない方がいいのだろう。
「そして良い方だ。……君の体の方はどうにかなった」
そんな感情も、一瞬で吹き飛ぶ情報だった。
「……説明しよう!! カルデアの技術顧問、ダ・ウィンチちゃんだよ♪」
乱入してくるのはカルデアきっての問題児。
生前は男だったのに、美を追及しているからその到達点であるモナ・リザになる。……などと抜かして女の躰で参上してきたキャスターのサーヴァント、レオナルド・ダ・ウィンチだ。
だが、その技術力は間違いなく一級品。つまり、今の自分は―
「……封印に使った宝玉をコアにした、人形の躰ということね」
「その通り! そこの兵夜君から提供してもらったアイテムを併用して、限りなく人間に近い躰の、しかしサーヴァントとすら戦えるだろう躰を用意させてもらったよ!!」
何か不穏な予感を感じさせるが、しかしまあ悪くない話だ。
「ええ、ショックはショックだけど構わないわ。……そしてロマニ? 状況はどうなっているの?」
「はい所長。現在、カルデアスは冬木以上の特異点の反応を七つほど確認しております。おそらくそれが人理焼却の原因です」
ロマニの言葉に、オルガマリーはすぐに状況を理解した。
つまり、その七つには冬木よりも強大な聖杯が存在するということだ。
敵の強大さがいやというほどよくわかるが、しかしもこれは覚悟を決めねばならないだろう。
「ええいいわ。こうなったらやってやろうじゃない。……アーチャー、貴方にも働いてもらうわよ!!」
「仰せのままに。俺も流石にこれは黙っていられないんでね」
ステータスは低い部類だが、しかし彼がただものでないのはこれまでの戦いで見て取れた。
こうなれば期待する他ないだろう。
戦力はごくわずかで敵は強大だが、人類どころか人理が滅びるとなれば、座して待つわけにはいかない。
何より、自分を認めてくれるものがここにいる。
ならば、もうやる他ないだろう。
「やるわよロマニ! そしてレオナルド!!」
オルガマリー・アムニスフィアは、気を引き締め治すと立ち上がる。
……そして、勢いよく天井に頭を激突させた。
「きゃんっ!? な、何この体、動き易過ぎるんだけど!?」
「ああ、すまん。俺の提供した材料の所為だ」
墜落したオルガマリーを支えた兵夜は、視線を逸らしながらポリポリと頬をかいた。
「君の体の材料に使ったのは、エクスカリバーだ」
「‥‥‥‥はい?」
その言葉に、オルガマリーはぽかんとした。
エクスカリバー? エクスカリバーというと、星が鍛えた神造兵器?
「ああ、神々の技術は使われているが、あくまで俺達の世界のエクスカリバーだ。神々の激戦の末に七つにへし折れてそれを別々の剣に鍛造し直して数百年ぐらい後にさらに一本の剣に打ち直したんだが、七本の時に核に使われていた部分以外を手に入れてな。それを材料に神代の魔術師や堕天使の長の力を借りて対サーヴァント用の前衛装備にしたんだ」
「そっちのエクスカリバーも興味深い。対人装備の範疇を出ないが、汎用性においては規格外だ。オリジナルは普通にA+ランク以上はあるだろうね」
レオナルドが言うのならば、それはすごいのだろう。
だが、剣一本を材料にしてどうやったらこんなことに?
「あの世界……便宜上D×Dとでも呼ぼうか。D×Dのエクスカリバーは七つの能力を持っているんだが、その一つに形状変化があってな? それで人形の体を人間風に加工してるんだ」
「気が利いてるのは素直に感謝するけど、そんなものを私に使っていいの?」
「ああ。……アーチャーとして召喚された所為か、俺の宝具扱いされてないからまともに使えなかった。聖剣因子が吹っ飛んだらしい」
はあ、と兵夜はため息をついた。
それをなんというか精神が追い付けていないのかやけに冷静に見つめながら、オルガマリーはその問題点を聞く。
それに答えたのは、ダ・ウィンチの方だった。
「そもそもその剣はサーヴァントとの前衛戦闘を主眼として開発された装備でね。下位から中堅のサーヴァントならまともに戦えるだけの戦闘能力を与えてくれるものだ。しかもアップデートでさらに上の存在も足止め可能」
「つまり、今の所長はサーヴァントにも匹敵する存在になっているわけです」
ロマニの最後の言葉に、オルガマリーは深呼吸して頭の中で咀嚼する。
そして五秒後。
「……なによそれぇええええええええ!!!」
当然の絶叫であった。
……藤丸ではなく近平。これさえ見れば、訓練されたケイオスワールド読者ならわかると思いますが、とりあえず説明を。
……ようは、兵夜の前世の妹の平行存在なのです。そりゃ血縁なんだから召喚されるさ!
そしてオルガマリーは何とか生存。いや、死亡したけど現存。
実際魂を封印する技術はD×Dにはあるので、それを使って保存し、あとは操作できるからだを用意したということです。
兵夜はアーチャーとして呼ばれているのでかなりの数の能力を失っています。その一つが聖剣因子。これが原因で兵夜は偽聖剣を使えないので、ならいっそのこと材料として供出しました。おかげでかなり人間に近い外見をしていますが、しかしそこは対サーヴァント用装備。
これからオルガマリーは特異点で前衛アタッカー役をやらされるという悪夢が待っています。
ごめんねオルガ! でも命を助けたうえで頼れるアーチャーを上げたから許してくれ