ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
放たれるのは聖なる輝きに満ちた数十もの光の閃光。
同時に放たれていると錯覚しそうになるほどの連続攻撃を、しかし俺は見切って躱す。
これまでの戦いにおいても、ブディカは本気で俺を殺そうとしかけてきた。
しかし、俺はこうして無事だった。
本来ならばおかしな話だ、聖槍であるというだけで、本来の俺にとっては天敵以外の何物でもない。それに龍殺しが追加など、もはや笑うことしかできないレベルだ。
かすめるどころか近くにあるだけで致命傷を追いかけない。
最初の一撃で、俺は消滅していなければおかしかった。
だが、俺は生きている。
その理由を、俺はよく理解している。
そう、これだけの猛攻をしのげているのも、それが理由だ。
「お前、奴より弱いな」
「……っ」
挑発でも何でもない事実としての発言に、ブディカの眉がつりあがる。
だが、事実だ。
三国志の英傑、曹操の名を名乗る男がいた。
自分がどこまで行けるかという、ある意味多くの人が一度は持つであろう願いを、本当に挑戦した男だ。
そのやり方がテロ行為である辺り問題児というかなんというかだが、それはともかく。
奴は、間違いなく歴代でも最強候補の聖槍の担い手だ。
そして俺は、その担い手の理想形とすら言われる戦い方をもってしてここまで来た。
目の前の女が、正真正銘の英雄であったとしても。
彼女が、俺の天敵たりうる禁手に目覚めていたとしても。
奴より格下の聖槍使いに負けているようで、あいつの隣に立てるかよ!!
忘れるな宮白兵夜。俺は兵藤一誠の隣に並び立つと決めたんだろう。歴代最優にして最強の赤龍帝に並び立つ、神喰いの神魔になると決めただろう。
だからこそ、正気の常人なら絶対にしない量の改造手術を受けたはずだ。それだけの決意と覚悟と本気と気合と根性をもって、不条理な才能の差を塗り替えたんだろう。
その俺が、この程度の輩に負けるなど納得できるか!!。
「来い、三下! 悪いがお前より強い聖槍使いを潜り抜けた俺が、対策万全の状態で負けるわけにはいかないんだよ!!」
「ほざくなよ、小僧!!」
攻撃の密度も速度も上昇するが、しかしそれを俺は意地で防ぐ。
薙ぎ払いも突きも振り下ろしも、全ていなす。
だが、その程度で俺は負けん。
戦士としてのお前の力量は曹操より下。その時点で、負けてやる理由はなくなった。
何より、移動中に聞いたブーディカの話を思い出す。
彼女は、本来なら連合ローマの側に立ってローマを滅ぼしてもおかしくなかった。
だが、しかしそれでも人理を守る為、ローマに住まう民を守る為に戦う事を決意した。
そう、彼女はそう決意したのだ。
ならば―
「アンタの恨みは向こうで晴らせ! ここはローマを守ろうとする勝利の女王が戦う場所だ!!」
「ほざくな! その程度で止まるような復讐ならば、大国を敵になどするものか!!」
渾身の攻撃を、しかし執念の一撃が弾き飛ばす。
それだけの高密度の攻撃を、彼女はしっかりと放っていた。
なるほど、これが英霊の座に届くほどの聖槍の担い手の渾身か。
だが、それでも!
「負けてやるわけには、いかないんだよ!!」
俺もまた、負けられない理由がある。
だから、そう簡単にこの場を譲るわけにはいかない!
渾身の力を込めた聖槍が振り下ろされんとする中、オレもまた義足を開放する。
おそらくこれが最後の攻防。
さあ、決着をつけようか!!
「撃ち抜け、
「蹴り落とせ、
そして攻撃が同時に放たれる。
瞬時に最高速に到達する攻撃は、しかし聖槍の方が早い。
……まずいな。
だが、せめて消滅する前に追撃不能の一撃は叩き込む!!
届くか、いや―
―届かせる!!
そして、攻撃は交差し―
「―兵夜!!」
俺は、失念していた。
ここには、もう一人いた。
そう、オルガマリー・アムニスフィアという、心強い少女がいたのだ。
彼女の裾から鎖が放たれ、聖槍に直撃し軌道を逸らす。
そして、俺の一撃はブディカを貫いた。
「………かはっ」
口から血を吐き、ブディカは数歩後退する。
「まさか、サーヴァントでもない小娘にしてやられるとはな」
自虐の感情が込められた視線を向けられ、しかしオルガマリーは息を呑みながらもその目を見返す。
「私は、人理を守るカルデアの所長です。人理焼却を、黙って見過ごすことなんてできないわ」
一応言っておくが、肩が震えてるぞ。
しかし、今のは擬態の力か。
肉体の一部を変化させて、自分の武器として運用したんだな。うん、成長してる。
まあ、服の内側からなのは乙女心なのだろう。何も言わないでおくのが吉か。
「……無念だ。あまねくローマに滅びをもたらす事こそ、我が願いだというのに」
「はっ! 元凶であるスエトニウスはおろか、皇帝ネロすら死んでいる現代のローマにまで危害を加えようとかアホか。そんなことは俺が許さん」
悪いが、俺は正当性のない復讐には不寛容だ。
復讐するなら相手を選んで。邪魔しているわけでもないのに、無関係な連中を巻き込む事は認めない。
そう。正当性のない報復でイッセーは体を失った。
それを心から怒る俺が、同じことをするわけにはいかないのだから。
「ゆえに何度でも召喚されるがいい。俺の目の黒いうちは、そんなふざけた八つ当たりはやらせんと覚えておけ」
「……ハッ! なら精々この人理焼却を阻止して見せるがいい」
その言葉に、口から血をこぼしながらもブディカはしかしを歯を剥いた。
好きにするがいい。自分も好きにさせてもらう。
邪魔をするなら今度こそ殺すのみと、視線がそれを語っていた。
「もっとも、貴様如きに奴らを倒す事など、できるわけがないだろうがな!」
その言葉とともに、ブディカは消滅していった。
そして、何とか帰還した。
「おかえり、みんな! そしてお疲れ様!」
ロマニが笑顔で迎えるが、さて、どうしたものか。
「オルガ、とりあえずロマニをどう〆る?」
「さて、とりあえず簀巻きにして宙づりは基本かしら?」
「いきなり怖いよ!? 僕何かした!?」
俺とオルガの鋭い視線に悲鳴を上げるロマニだが、これに関してはお前が悪い。
「まったく。人のことは言えんが、お前不眠不休が必要な行動は
はあ、と心底ため息をつく。
薬物投与なぞ軽く百回はしている俺だが、かといって寿命を削るような真似はしていない。
投与している薬物は、基本的に動物実験位は終わっているものだ。最低限の安全性は確保している。
将来的に軍用の強化人間の強化用に使われてもおかしくないような代物だ。後遺症などもちゃんと考慮したうえで強化している。
まったく。不眠不休で行動できるサーヴァントがいる状況で、人間が不眠不休など笑い話にもならん。
「ロマニ? 一応言っておくけど、所長は私だから。無茶なまねをするなら、ちゃんと私に言ってからにしなさい」
「ひぃバレてる!? だ、誰が気が付いたんだい!?」
オルガがロマニに説教する中、俺はため息をつくとシャワーを浴びに行く。
なんというか疲れた。いろいろ汚れた気分だし、霊体化してシャットアウトするより気分的にはシャワーだろう。
「よう宮白。お疲れさん」
「アザゼルか。後方支援は助かった」
と、途中でアザゼルと顔を合わせる。
「ロマニの監視はこれからもよろしく頼む。あの手のタイプは言われても躊躇なく行動する臭いがするからな」
「同感だ。これからしっかり目を光らせとかねえとな」
やれやれと肩をすくめるアザゼルだが、アンタはアンタで苦労背負うだろうに。
「しっかし、五の動乱の時もそうだったが、こっちでも肝心なところは
「そういうな。ここでは俺らは異邦人。その辺りはちゃんと考慮しておかないとな」
ああ、まったくもって情けないといえば情けない話だ。
人類存続を可能とするかどうかの瀬戸際の、その大事な命運を立花とマシュだなんて子供二人に任せる羽目になってるんだからな。
オルガだってまだまだ子供だし、そういう意味だと色々あれだ。
ここは、俺達が全力でカバーしないとな。
「ま、後方支援も立派な貢献だ。前線は俺が動くから、そっちは技術的な方向でサポート頼むぜ」
俺はそう告げるが、しかしアザゼルは首を振る。
「いや、そうも言ってられないだろうな。こと元凶に関してはまだ手付かずだしよ」
ああ、レフの奴はくたばってたもんな。
アイツがことの中枢に近いところにいたのは事実だ。せめてレイヴンがいれば、死体からでも情報を抜き出せたかもしれないが……。
「まあ、特異点を解決していけば、否が応でも向こうから出てくるだろう」
「だな。いくつもの問題を並列作業で解決するより、先ずは数を減らしていく方が重要か」
俺とアザゼルは、そう認識を一致させるととりあえず分かれる。
だが、人理焼却か。
そんな前代未聞の所業に対して、抑止力は何をしてるんだか。
まったく。これは流石にやばすぎるだろう。
……七分の二を解決したとはいえ、これはもっと気を付けないといけないな。
オルガと立花とマシュの未来、きちんと作ってあげなくちゃな。
セプテム編、終了。
さて、次はオケアノス編……の前に、最近再配信されたzero編に行きます。
本来ならゲーティアの介入がない小規模な特異点ですが、今回はそうはいきません。ゲーティアはさすがに兵夜をイレギュラーと認識していますので、警戒心はかなり強いのです。
異聞第四次聖杯戦争は、最終決戦あたりでかなりハードになりますので、お楽しみください。