ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
その衝撃とは、二世が放った言葉だった。
『そう。その偉大なる人理保証機関カルデアを生み出した者こそ―』
あ、ごめん二世。ちょっと継承したオルガがどうも様子がおかしくて―
『―ケイネス・エルメロイ・アーチボルト! あなたです!!』
「はぁあああああああああっ!?」
オルガが絶叫を上げて、勢いよくハイアットホテルの方向に振り向いた。
おい。首がごきってなったんだが。いくら人体を模倣してるだけとはいえ、大丈夫か? 痛覚も再現してるんだぞ?
「え? ちょ、ちょっとまって!? そんな事ないわよね? これはお父様が生み出した機関よね? 断じてあんな水銀オデコなんかじゃないわよね!? そうだと言ってよ今すぐに!?」
「オルガ深呼吸!! 俺は詳しいこと知らないけど、確かそうだったはずだから落ち着け!!」
『マリー深呼吸!! そこに関しては断言できるから安心して!! 僕もその辺しっかり関わってるから!! 金策集めから関わってるから!!』
俺とロマニが一生懸命なだめるが、オルガはパニック状態で過呼吸まで併発している。マジでやばい。
「ジーク! 警戒よろしく!! 俺はオルガを落ち着かせるから!! えっと、鎮静剤鎮静剤……」
「わ、分かった。……ダーニックもやりそうだな」
ジーク!! おまえも衝撃に反応して変なこと考えるな!!
っていうか大声出しすぎたな。これ、キャスター陣営に勘付かれてなければいいんだが。とりあえず消音魔術を展開しておこう。
この辺りは声が反響するからな。もっと早く展開するべきだった。うっかりしてたな久々に。
「ひょ、兵夜、ロマニ!? 違うわよね? 私、なんか記憶が曖昧になってるみたいなんだけど、アニムスフィアはアーチボルトの配下になったりしてないわよね?」
『大丈夫です所長。先代所長は一生懸命頑張って、他のロード達に勘付かれないようにお金を集めてカルデアを作りました。僕がここにいるのもそのおかげなんですから、落ち着いてください』
く、詳しい事は聞かないが、お前も色々大変だったんだな、ロマニ。
そういうわけだオルガ。大丈夫だから深呼吸深呼吸。
『まあ、あり得ぬ話ではないなー!!』
「そんなわけないでしょう!!」
おい当代エルメロイ。それでいいのかあんたは。
これが政争を潜り抜けてきたであろう、時計塔のロードなのか? ポンコツ臭が現れてるぞ!!
オルガをなだめるのに必死だったけれど、「悲観主義者のアトラス院と組むなどありえない」とか言ってなかったかあんた!!
『いや、流石に時計塔での派閥争いに新たな切り口が必要だとは思っていたのだよ。そっかー。大人げなくそういった研究にも本気出しちゃうかー私ー』
『そしてそれも、ソフィアリ家の経済援助があってこそです。貴方とソラウ嬢の仲睦まじい夫婦生活があったからこそ、莫大な資金を賄う事ができたのですよ』
『うん。すごくお金がかかるのはそうなんだけど、それでもまだ足りないからね? それもこれもマリスビリーの博打を打つ根性があってこそだから、安心していいよマリー』
「そうよね? そうよねロマニ!? 私、なんか調子がおかしいけど、そういった方向で認知症を発症したわけじゃないわよね?」
ああもう、グダグダ。
『はっはっはー。研究ばかりしてきた私が夫としてどこまでできるか不安だったのだが安心したよ。そっかーそっち方面でも私は天才かー』
『私も鼻が高いです! 我が主は危なっかしいところこそあれど、大事をなせる器だと信じておりました!!』
ランサー。馬鹿にしてる風にも聞こえるんだがそれでいいのか?
いやまあ、それはともかく……どうしようか、この状況。
何だろう。緊張感あふれる腹の探り合いかと思ったら、なんか一気にギャグ時空になってきたぞ?
『まあ安心したまえ。先代の人格を理解している二世からしてみれば、乗せどころがたやすい相手であるのもこの選択の一つだからな』
と、エミヤがそう言ってくる。
『そうなのかい? まあ、一番だましやすそうって感想になるんだけど』
『当然だとも。挫折を知らないエリートで、しかも乗せどころがよく分かっている相手。仮にもロードとして政争すら潜り抜けた二世ならば、乗せれない方がどうかしている』
と、ロマニにそう告げるエミヤは、しかしすぐに真剣な口調になる。
『とにかくそういう事だ。交渉が上手く言った以上、我々の仕事は敵の離脱の阻止。侵入ルート以外のルートを塞いで、万が一にでもキャスター及びそのマスターの逃亡を阻止する事だ』
まあ、それはそうだな。
……連続殺人鬼を堅気がいる街に投げ込むなんてマネは心が痛む。出来る事ならここで終わらせたい。
上手くいけば高性能の令呪を更に一画手にする事も出来るわけだ、このチャンスは逃せない……な。
そして数時間後。
『よし、敵サーヴァントの撃破に成功。これで一安心だ』
「マシュと立花にご苦労様と伝えておいて。……仕事が無くて良かったわ」
と、ロマニの連絡にオルガがため息をつく。
まあ、心労が溜まりまくっているから当然といえば当然か。
……ほんと、お疲れ様。
『とりあえずケイネス卿は令呪を確保しに向かったよ。後は僕達で敵のマスターを何とかすればそれでよしだね』
「確かにな。なるべく生け捕りにして、余罪を吐かせる方向で行くべきかねぇ」
なんでも警察が犯罪と立件出来ていない事もあるしな。そういうフォローもしておくべきかもしれん。
「確かにそうだな。……快楽殺人なんてものは、流石に俺も許容できない。ここで捕まえるべきだ」
「そうね。逃走ルートは確保してるし、このままお仕置きしちゃおうかしら」
と、ジークとクロも納得のようだ。
まあ、ここはそうするのが一番だな。
と、そんなことをしていたら、話に聞いていた通りの奴が現れた。
「……あれ~。お兄さん達、こんなところで何してんのかな?」
フレンドリーにしているうえに、殺気をまるで感じない。
……なるほどポテンシャルは高いな。活動の仕方次第では、現代の連続殺人鬼として座に名を残せたかもしれない。
だが、来ると分かっているなら何の問題もない。と、いうわけで―
「とりあえず寝てろ」
「はうぉ!?」
俺は遠慮なくボディブローを叩き込んで悶絶させると、即座に魔術の行使を開始する。
「……さて、警察に出頭させて自白させるのは良いな。……薬物でも飲ませとけば多少のごまかしはできるか」
「確か日本の法律って、明らかに違法な事されてる状態だと証拠にできないとかなかったかしら?」
「捜査資料にはできるから、その資料を基に証拠を発見できれば問題ない。俺が何度もやってきた常とう手段だから安心しろ」
「別の意味で安心できないわね」
と、クロのサポートを受けながら手早く処理をしていると、立花達が追い付いてきた。
「あ、お兄ちゃんもう終わったの?」
「まあ、断定された暗殺者なんてこんなもんだ」
まあ、今回は好都合な展開だったからな。
之が強くてニューゲーム。逆行SSのごときチートっぷりだ。
だがしかし、ここからが大変だろうな。
なにせ今回の件で色々と遠坂陣営が干渉してくる可能性が出てきやがったからな。あまりにスピーディなこの事態、どう考えても俺らの関与を疑うだろう。
……俺達全員で挑んでも苦戦する可能性をしさされている英雄王ギルガメッシュ。そいつの興を引くかもしれん。
これは、そろそろ警戒を玄にした方がいいかも―
「……全員、臨戦態勢を取れ!」
その時、二世の声が響く。
なんだこの警戒具合。また例の如くアサシンでも来たか?
既に五回ぐらい襲撃があるが、はっきり言ってこっちも既に警戒というか突っかかってくるのが分かってるからそこまで怖くないのが現状だ。
なにせ数十分の一だからな。フィフスもパラケもいないから幻想兵装が使われる事もないし、そういう意味ではサーヴァント級の戦力があつまっている現状ではそこまで怖くない。
唯一の危険因子である立花の襲撃は二世が警戒しているし、そういう意味では現状だとだいぶ安心できる敵なんだが―
「……厄介な術を使うな。感知系の宝具か何かか?」
……なんか、明らかに雰囲気の違うヤツが出てきやがった。
赤いフードを被って顔を隠したヤツだ。
っていうかコイツ……。
「おい二世。コイツ倉庫街で仕掛けてきたサーヴァントだぞ」
そうだ、こいつあの時の倉庫街にいたヤツだ。
あの場所で二番目の狙撃ポジションに陣取ていた、謎のサーヴァント。
それが、なんでこんなところに―
「……要調査対象だったが、まさかのこのこ出てくるとはな。貴様には聞きたい事がいくつもあった」
「私達が言うことでもないが、この聖杯戦争に置けるイレギュラー要素が出てくるとはな。これは好都合だ」
二世もエミヤも警戒する中、相手側のサーヴァントもため息をついた。
「それはこちらのセリフだ。もののついででキャスターのマスターを始末しようかと思ったら、先客がいたとはな。やはり慣れない事はするものじゃない」
そう言いながら、謎のサーヴァントは銃とナイフを構える。
「……一応穏便に話ができるのなら、それに越した事はなかったのだが」
「会話は無用だ。僕は人倫の外側に使役されるもの。人に使役される英雄とは分かり合えないだろう。このまま逃がしてくれるというのなら何もしないけどね」
取りつく暇なしとはこのことだな。
「どうする二世。こうなったらとりあえずボコして話を聞くしかなさそうだが」
「それしかあるまい。我々以外のイレギュラーである以上、こいつは十中八九この特異点のカギを握っている。……とは言え、この立地では数が生かせんな」
確かに。この立地は数の利を生かしづらい。
しかも俺とジークは宝具の特性も発揮しづらい。マシュも獲物がでかすぎるから狭い立地ではあれだろう。
となるとエミヤとクロの2人が一番なんだが―
「……ん?」
なんか、妙な音が聞こえてきたぞ?
なんというか、雷撃と馬車みたいな―
『みんな! 君達の方向に向かって新たなサーヴァントが接近中だ! 宝具を使って強引に接近してきてる!!』
マジかロマニ!? 今度は何だ!?
この最速で仕掛けてきた俺達と殆ど同じタイミングで、仕掛けてくるサーヴァントなんているわけが―
「……あ」
……おい、二世。まさかアンタ迄うっかりか?
誰が、誰が来た!?
「アラララァアアアアアアアアイッ!!」
んだぁああああああああああ!?
ぎ、牛車ぁあああああ!?
はい、イレギュラー登場のおり、本章最大の想定通りに動いてくれない人が乱入しました。