ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「……なんと!? そ、そのような事が!?」
とりあえず事情をディルムッドに説明した。
あんまりにもあんまりな本来の歴史に、正直ちょっとショックを受けていたようだ。
「すまない。養父が本当にすまない。だがセイバーはろくに知らなかったはずだから彼女を責めるのだけはやめてくれ」
「エミヤ。声が似てるからってジークフリートにならなくてもいいから」
心底申し訳なさそうなエミヤの肩に、立花がぽんと手を置いた。
まあ、養父があんまりにもあんまりな倒し方してるからな。流石に思うところがあるのだろう。
まあ、これで戦力はだいぶ整った。
ランサーは現代最高峰の魔術師の令呪によって、「聖杯戦争を継続中、莫大な魔力を得る」という効果を得てしまったようだ。最高峰の魔術師が令呪を四個も使うとこんなこともできるということだ。
まあ、そういう意味ではランサー陣営はこれ以上ない結末を迎える事が出来たわけだが―
『二世。一ついいかい?』
「なにかね、ロマニ・アーキマン」
通信を入れてきたロマニにそう返す二世だが、特に疑問符は浮かべていない感じだった。
まあ、それに関してはよく分かる。
『釈迦に説法だしあえて聞くのも野暮だけど、これが完全に虚偽でしかない事を、君は理解しているのかな?』
………。
「ど、どういう事ですか、ドクター」
「簡単よ、マシュ。カルデアはタイムマシンなんて代物じゃないわ」
それに答えるのはオルガだった。
「そもそも私達はこの時間における未来人じゃないわ。人理焼却の要たる特異点ならともかく、この特異点はバグのようなもの。修正されれば時間軸に何の影響もなく消える幻想みたいなもの。どういう事か分かるかしら?」
「と、申されますと?」
ディルムッドが小首を傾げる中、ロマニが残酷な言葉を告げる。
『出現の原因が解消されれば、実際の歴史に何の影響も残さず消えるって事さ。少なくともこの特異点で起きた出来事は、どの平行世界にも影響を与える事はない』
「……」
「分かっているとも。我々がどれだけ骨を折ろうと、この特異点を利用した歴史改変など出来るわけがない」
二世の沈黙を遮って、エミヤがそう告げる。
「そもそも過去改変などというものは、自分達が積み重ねてきた歩みに対する裏切りだ。起きた事をなかった事にするなどというのは、間違いなくろくでなしがする事だよ」
そういうエミヤの表情は苦苦しい。
何だろうな。実感籠っているというかなんというか。
「かといって、実際にそれを行う千載一遇の好機があってそれをしないのは中々出来ない事だ。少なくとも私は、私が引き起こす大罪を阻止する機会に恵まれてそれを投げ捨てる事が出来るかといえば自信がない」
そう自虐するエミヤは、しかしすぐに皮肉気な笑みを浮かべる。
「そう言う意味ではこの特異点は私にとって好都合だ。自己満足だけで誰一人として影響しない。偽善の極みではあるが、私のようなものにはちょうどいい」
「流石に私はそこ迄割り切れないがね」
と、二世はエミヤに苦笑を浮かべる。
『まあ、ほかにも言いたいことはあるけどね。できる限り穏便勝つ円満に解決しようとしているみたいだけど、そこまで徹底しなくてももっと単純かつ簡潔に解決する方法があるとは思う』
「正論だ。私も対価となる情報が無ければ君達にこんな手間を掛けさせる事はしなかっただろう」
ロマニの意見に、二世は否定を一切しない。
だが、その表情に後悔だけはなかった。
「だがまあ、傍目には徒労にしか見えないこの行いは、私にとっては大きな意味がある事だ」
二世……。
「実際には救えないにしても、今この場で出来る最善を成し遂げる。同じ間違いを二度も看過しない。そんな弱さを許す事は、私の心には出来なかっただけの話だ」
「……いいんじゃないかな」
その二世の言葉に、立花は笑顔を浮かべる。
「確かに何の意味もない事かもしれないけど、それでも無駄じゃないと思うよ? 少なくとも、私はこういうやり方の方が満足できる」
「確かに、それは良い事だ」
俺もその辺に関しては同感だ。
「そもそも二世がいなけりゃ、俺達は特異点解決の足掛かりすら作れなかった。それをもたらしてくれただけで十分すぎる対価だしな。その足踏みよりはましな流れではある。それ位の我がままは許されるだろ」
「そこまで言うほどではないがね。これは単純に、自分の無力さを二度も痛感しないように立ち回っているだけさ」
俺のフォローに二世は苦笑する。
そして、エミヤも苦笑を浮かべていた。
「そう言う事だ。自己満足しか残さないただの徒労だが、だからこそ、私達は自分を裏切らなくて済む。そういう意味では好都合な機会ではあるだろう?」
「……いいでしょう。貴重な情報提供と行動指針の提供の対価としては許容範囲内と、所長権限で判断します」
と、オルガがそう言い切った。
「どうせ立花やマシュのメンタル維持を考慮すれば、許容範囲内のリスクで被害を防げるのは問題ないわ。」
「ありがとうございます、所長。良くない事が黙って見過ごすのは、何かが間違っていると思いますから」
マシュがオルガにそう言いながら、しかし少し表情を陰らせる。
「そう言う意味では、桜さんという人をどうにか出来ないのは心苦しいですが……」
「これに関してはどうしようもない。レイシフトで連れて帰るにしても、彼女のレイシフト適正がどれほどか分からないのでは逆に彼女を苦しませるだけなのだから」
エミヤがその肩に手を置いて慰めながら、そして皮肉気な笑みを浮かべる。
「そも、あの英雄王を相手にするのだから、奮戦空しく敗北という可能性もある。今はそれを乗り越える事に注力したまえ。畳む事の出来ない風呂敷を広げるなど、誰にとっても迷惑なのだから」
「シビアな意見ねぇ」
「ま、勝算のない希望論なんて語る余裕はないからな」
ため息をつくクロに、俺はそう答えるしかない。
半端に希望を持たせて突き落とすよりかはマシ……と誤魔化すしかないわけだ。
……ああ、流石に、このレベルの特異点でアイツを呼ぶなんて一発限りの切り札を使うわけにはいかないからな。
『OK。僕はこの件についてもう何も言わない。人間らしいしね』
と、ロマニも納得したようだ。
『んじゃ話を戻すが、次はどうするんだ、孔明さんよ?』
と、アザゼルが久しぶりに会話に参加する。
確かに、ここ迄はトラブルもあったがおおむね順調だ。
ランサー陣営の安全は確保して、セイバー陣営との不可侵も十分可能だろう。
「そして好都合な事に、ケイネス師に頼んでバーサーカー陣営との同盟を結ぶ事にも成功した。……この好機を逃す手はない」
……と、いうことは―
「……そして使い魔も相手の行動を察知する事が出来た。そろそろ最大の難敵たる英雄王ギルガメッシュにご退場願おう」
どうやら、ここが大一番らしい。
で、人里離れた森の中で、俺達は間桐家のマスターと合流した。
「あ、さっきぶりです」
と、立花がそう手を上げるが、その表情は微妙に引きつっている。
……気持ちは分かる。
目の前の間桐家のマスター。間桐雁夜は、まともな人間なら目を背けたくなるような惨状だった。
最早ホラー映画に出てくる怪人だ。魔術に詳しいものならば、相当弄っている事が誰が見ても分かる。
「君は、あの時の……? この聖杯戦争のマスターじゃないって言ってなかったか?」
「勘違いをしないでもらいたい。ケイネス卿はとある事情から聖杯戦争から離脱した。私達はとある事情でこの聖杯戦争に絡んだ事件の解決を行っており、その過程で遠坂と敵対関係にあるものだ」
と、即座に二世がフォローを入れる。
「少なくとも私達は聖杯を求めていない。そして、この同盟においての条件は必ず守ると約束しよう」
「……時臣の奴をぎゃふんと言わせる手伝いをしてくれるって言ったな。……どうやってだ?」
どうも、根幹的には普通の人らしい。怪訝そうな表情を浮かべてるが、納得に傾いている。
「単純な事だ。君のサーヴァントは遠坂時臣のサーヴァント相手に有利に立ち回れるサーヴァント。その君達と協力して最大の難敵であるギルガメッシュ王を倒す事が出来るのならこちらにとっても好都合だからな」
「……まあ、そこの子達は魔術師とは思えないぐらい良い子達だからな。治療してくれた借りは返したかったんだ」
……ふむ、割とまともな人間……なのか?
まあ、これだけの過酷な人体改造を悪意をもって短期間に行われたんだ。精神が歪んでもおかしくない。
聖人君子というわけでもなさそうだし、しかし無理だと言ったらそのまま逝ってしまいそうだからなぁ……。
「というか二世。此処って確かアインツベルンが陣地用に購入した土地だよな? 結界とか大丈夫なのか?」
発見されて対城宝具による狙撃とか勘弁なんだが。
俺が言外にそういうと、二世は苦笑した。
「安心しろ。ついさっき確認したが、ライダーが雑に破壊している。我々はその破壊跡を歩いていけば迷うことなくアインツベルンの居城につく」
「いや、アインツベルンがなんで時臣のサーヴァントと関係してるんだ?」
雁夜がそう言うが、二世は肩をすくめた。
「ああ、聞いて驚くな」
………なんだ?
「―ライダーがアーチャーを誘ってセイバー陣営の本拠地で飲み会をしようとしてるんだよ」
まじか。
ちょっとこの作品やケイオスワールド2、そしてまだ見ぬ新作のネタとしても使う募集を活動報告でしています。ぜひ拝見して応募していただけると嬉しいです。