ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
さて、それではいったいどうなることやら―
「まあ、二世の読みが外れたとしても、今度はセイバー陣営相手に「アーチャーぶちのめすから邪魔しないで」とでもいえばいいか」
「確かにな。少なくともライダー陣営はいるようだし、二勢力に英雄王を討つまでの不可侵を頼み込むことはできるだろう」
俺とエミヤは一番後ろで歩きながら、そうぼやいた。
なんでも、二世の読みが正しければここでセイバー・ライダー・アーチャーの三人が飲み会をしているらしい。
なんでもライダーが「聖杯にふさわしい奴を決めるなら、誰が一番王にふさわしいかで決めればいいだろう」とかほざいたとか。
「しかしまあ、正直に言うと英雄王も征服王も俺の好みにあいそうにないな。ぶっちゃけ騎士王が一番納得しそうだ」
「だろうな。君や私は守護する側だ。弱肉強食を良しとする覇道の王とはそりが合わないだろう」
「そりゃそうだ」
少なくとも、話に聞く限りギルガメッシュ王とうちのところの四大魔王とは政治方針は合わないだろう。
四大魔王と英雄王の壮絶な死闘が思い浮かぶが、この際それは置いておく。
人類を間引きして勢い余って滅ぼす可能性もあるギルガメッシュ王と、悪魔は愚かあらゆる種族において「滅びていいものなどいない」とするサーゼクス様は相いれない。三大勢力の和平とか、くだんのギルガメッシュは失笑しそうだ。
だって……。
「
「絶対助けに行く、とは言わないのかね?」
「世の中そう簡単にいかないってことは嫌というほど知ってる人だからな。老害のせいで百年以上苦労してるんでな」
ああ、だから必ず助けろとは言わないだろう。
しかし、事情を知ったら助けられないか考えてしまう人ではあるだろうな。
「しかしまあ、君たちのマスターは苦労するだろうな」
「まあな。……人理焼却とか前代未聞すぎる。マジでオーフィスの援護がほしい」
「そうではない」
なんだよ?
「救う、というのは存外に大変なことだ。そも、他者による救いなど救いとはいいがたいところがある」
ふむ。
「よしんば救いになるとしても、ただ救い上げればいいというわけではない。極論迄単純にすれば、最後まで責任を負わねばなるまい」
……。
「人理の救済ともなれば、それは非常に大きなものだ。言っては何だが、かなり平凡な側面がある彼女には荷が重いかもしれないと思うと少々かわいそうでな」
「……そこまで深く考える必要はないと思うがな」
うん、ちょっと反論させてもらおう。
「なんだと?」
まあ、こいつの持論にも一理はあるだろう。
だが、そう簡単にうなづくわけにもいかない。
「人理の救済はひとまず置くが、人ひとり救うのは意外と簡単だよ。さりげない一言だけで心から救われることなんてざらにある」
ああ、俺がそうして救われたたちだからな。これは言うしかない。
「当人が救おうとか考えてない一言でも、人は救われる。心から救われる。……あんたはちょっと重く考えすぎだよ、人を救うってのは、難しいこともあるが同時に簡単でもある。ケースバイケースだ」
「ふむ、あまり頷きがたい価値観だな」
まあ、見てきたものも違うだろうからな。
「まあいい。今はこの第四次聖杯戦争をどうにかすることに注力するべきか」
「同意見だ。合わないなら合わないで適度な距離の取り方というものがあるしな」
さて、それでどうしたものか―
「本当に飲み会をしています! あ、あの長い取ってのついた木のコップは何でしょうか?」
「……はい、完全に間違った日本文化いただきましたー」
マシュの言葉に立花の視線が柄杓に向いて、なんとなく事情を察したらしい。
「一応言っとくがそこの方々。それは飲み会用の食器ではない筈なんだが」
俺は一応そういうが、問題はそこでもなかった。
ああ、確かにものの見事にいるよ、セイバーもライダーもアーチャーも。
ライダーのマスターとセイバー陣営のホムンクルスはいるが、遠坂時臣と思しき男は確認できない。
とはいえ、あれが遠坂時臣のサーヴァントであることは確定的に明らか。二世情報だ。
と、いうわけで……。
「ほぉ。こりゃまた……」
「げ、あの時の根暗男!」
「貴方方は……。それに、そのサーヴァントはバーサーカー?」
「バーサーカーと手を組んだの? いったいどうして?」
ライダーにウェイバーくんにセイバーにアインツベルンがそれぞれに言葉をかけるが、しかしそれを無視する男が一人。
「……あの成金趣味みたいなやつが、時臣のサーヴァントか……っ」
「何の用だ、虫食い風情が。その哀れみしか誘わん体たらくで、
いきなり飛び出していきかねない雁夜の殺意満々の視線を受けて、金ぴかの鎧に身を包んだサーヴァントが不機嫌そうににらみつけてくる。
……ただものではないってのがよくわかった。間違いなく我が強いタイプだ。
しかも殺気も極大。ちょっと刺激したら即座にこっちを
禍の団の首魁共とは一味違うが、かといってこの流れで交渉ができるかとなると……確かにやばい。
「安心したまえミセスアインツベルン。以前も言ったがわれわれはそちらと事を構えるつもりはない。……ただしアーチャーのサーヴァントには消えてもらうがね」
と、二世がさらに火種を投入。
それを聞いて、ギルガメッシュは静かに立ち上がった。
「混じり物風情がよく増える。……時臣とは違った意味で学ばぬ魔術師どもが。……その愚行、命をもって贖ってもらおうか……っ」
なんだ? 一瞬マシュをみて、なんか意味深なこと言ってきたぞ?
デミ・サーヴァントのことを言っているのか?
しかしこれ待たなんとやら、ライダー迄立ち上がってきた。
「待て待て金ぴか。この宴をぶち壊してるのなら、あれは我々全員の敵ではないか?」
「いやそっちに手を出す気はないんだけど」
俺はとりあえずそういうんだが、しかしライダーは何言ってんだって顔をしている。
「何を言うか。王の宴を邪魔しに来て、なにもされんと思っとるのか、お前ら」
「あ、すまん。うちの王様は事情次第で許してくれるから甘く見てたわ」
うん、サーゼクス様とか事情を聞いたら許してくれそう。
と、それはともかく、なぜかアーチャーはライダーに鋭い視線を向ける。
「ならん。我が法を犯した賊は我が怒りによって裁定する。英雄王たる我が王威。立ち入ることは貴様でも許さんぞ、ライダー」
「と、こうなるわけだ。あの三人はそれぞれ王故の意地というものがある。ことアーチャーはそのあたりが高いのでね、この場の共闘の可能性はほぼない」
と、訳知り顔で二世がそう言ってきた。
『……戦力過剰の逆行モノってこんな感じだよねぇ』
ロマニがしみじみとなんか感慨深げに言っているがスルー。
それはそれとして乱戦になる可能性はあるんだが……。
「なるほどな。それは余が口を刺し挟める筋合いではないな。……坊主、ここは観戦と行くぞ」
と、ライダーはあっさり納得すると酒飲み始めた。
……ビール片手に野球観戦するオッサンかよ。
まあいい。とりあえずライダーはこの戦闘にかかわってこないと。
問題はセイバー側だが……。
「余所でやって欲しいのはやまやまだけれど、こちらに矛先が向かない限りは手出しする理由はないわね」
困り顔だがこっちも今すぐ攻撃してくるわけではないようだ。一安心だ。
「よし! これで交戦協定成立だ! セイバーとライダーは無視してかまわん!!」
「ああ! 殺し潰せ、バーサーカー!!」
「Arrrrrrrrrr!!!」
雁夜の指示をうけ、バーサーカーが突進する。
「狂犬ごときが。誰の許しを得て俺に牙を向けるか!」
その瞬間、ギルガメッシュの背後で金色の輝きが幾重にも浮かぶ。
そこから出てくるのは、莫大な神秘が込められた法権の数々。
一つ一つが最低でもCランク以上の宝具に匹敵する。しかもどうも、いくつかはただ強力なだけじゃなく特殊効果の類もありそうだ。
なるほど、あれを射出するのがギルガメッシュの得意戦術ということか。確かにこれはキツイ。
高ランクの宝具を湯水のごとく撃ってくるんだ。並のサーヴァントなら即座に返り討ちになってもおかしくない。
が―
「悪いが英雄王。貴様の王道はこの特異点には不要のものだ、とくと立ち去るがいい」
「っていうかあの金ぴか、大人になった方が質悪いとか最悪じゃない?」
その大半にほぼ同じ宝剣が叩きつけられ、その全てが弾き飛ばされる。
……確かにバーサーカーは第四次聖杯戦争においてギルガメッシュの天敵だ。
だがしかし、今この場にいるサーヴァントに限定すれば、同レベルの天敵が二人いる。
即興で贋作を作り出す英雄、エミヤ。そして、そのエミヤの力を聖杯としての特性である意味で上回る存在、クロエ・フォン・アインツベルン。
一人ではギルガメッシュの本気の攻撃密度には苦戦するが、二人掛かりならその労力は大きく低下する。幸運なことに二人ともアーチャーなので、単独行動スキルゆえに立花の負担も小さい。
と、いうわけで圧倒的な弾幕は出掛かりから吹き飛ばす。
そして一気に接近するバーサーカーが、はじかれて宙を舞う宝剣を奪い取り、接近戦を仕掛ける。
その特性により放たれたギルガメッシュの宝剣をそのまま武器として運用できるという利点。これは間違いなく明確に有利な攻撃だ。
しかし、それをもってしても英雄応ギルガメッシュはなお強敵。
振るわれたその斬撃は、空中で張られた魔力障壁に受け止められる。
それをなすのはギルガメッシュが手に持っていた杖。
「……よかろう。どうやらこの聖杯戦争、とんだ茶番だったようだ」
苛立たし気にそう言い放つその目は、俺たちにむけられる。
「凡俗の雑種ごときが英霊を何騎も従えるとはな。とはいえ、その大半は事実上の紛い物というのは皮肉ということか」
……疑似サーヴァントの俺と二世。デミ・サーヴァントのマシュ。サーヴァントシステムを利用しているとはいえ、厳密にいえばサーヴァントではないクロとジーク。エミヤも守護者であることを考えると、聖杯戦争のサーヴァントとしては微妙か。
しかしそれだけではないな。何をもってして茶番と断じた?
小規模特異点である以上、この聖杯戦争がある意味で茶番なのは確かに事実だ。だが、それを見切ったというのか?
俺が気になるが、しかしそんなことを赦してくれる相手でもないようだ。
「よいぞ? 道化の戯れというのならば、俺も少しは羽目を外そうではないか。……この茶番を彩って見せよ、雑種共!!」
そしてその言葉と共に、戦闘はさらに激化する。
千里眼使ってマシュ辺りの事情を大体把握したギルガメッシュ。生み出した連中の評価がダダ下がりです。
流石にコラボイベントでのギルガメッシュはポカが多かった気もするので、この作品では強敵度もストーリーにおける重要度も桁違いに上がっています。バトルはかなり白熱するので、お楽しみに!!
それとは別に、兵夜とアーチャーでちょっと会話を。
以前どっかで「兵夜とアーチャーは反りが合わない」と書いたと思いますが、理由は此処ですね。救われた経験ゆえに生まれる人を救うことに対するスタンスの違い。
当人が深く考えてない言葉で心から救われた兵夜からすれば、人助けのスタンスとしてはエミヤとはそりが合わないというわけです。なんというか「人に任せられるところは任せても人を救うことはできる」的な感じですね。