ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
「……そして、わたしにはレイシフト適性ができたわけね?」
「材料の
「そういうわけで、あまり離れると悪影響が出るかもしれない。所長には悪いけど、これからは立花くんと一緒に聖杯探索に参加してもらうからね」
そんなことを会話しながら、オルガマリー達は立花のいた部屋へと入ってくる。
そこは、レイシフトを行うための中央管制室。つまりは、特異点へとレイシフトを行う準備ができたということだ。
「あ、アーチャーさんだ!」
「ああ、立花か。元気だったか?」
兵夜は立花の頭を撫でながら、苦笑する。
「そういえば兵夜さん。大変気になることなのですが、どうしてマスターの名前が分かったんですかっ?」
マシュがなぜか頬を膨らませながらそう尋ねるが、兵夜はちょっと苦笑を浮かべる。
「……今から言う話に嘘はないけど、果たして信じてもらえるかどうか……」
便宜上兵夜がD×Dと名付けた異世界は、この世界からすれば文字通り異常といっても過言ではない世界だった。
なにせ、神秘の減衰によってこの世界から消えている神や幻想種が、普通に地球で過ごすことができる世界なのだから。
そして何より、聖堂教会が信仰する聖書に記されし神が、死んでいるということだ。
それが遠因となり、天使率いる教会、悪魔と堕天使が睨み合う冥界は和平を結ぶ。そしてその和平の波は他の宗教や神話体系にも及んでいった。
だが、問題はそこではない。
このヤハウェの死はバランスの崩壊やら渦の発生やら様々な現象を巻き起こしたらしい。
その渦は、死者の魂を記憶を持ったまま転生させるというイレギュラーを巻き起こした。
その名は転生者。その数は少ないが、世界に悪影響を防ぐ為に神秘を人間達に秘匿する……などという考えがあまり根付いていないもの達だらけだったことから、第三次世界大戦及びそこからくる様々な異能技術の頻発が生まれた。
文字通り世界を塗り替えたその戦い。敵味方共に転生者は何人も参加し、主力の一つとして激戦を潜り抜けた。
そして、その元凶ともいえるフィフス・エリクシルとそれを討ち滅ぼした宮白兵夜は共に転生者である。
その多大な功績、そして悪魔となって一年足らずで最上級にまで手が届いたサクセスストーリー。そして悪魔の政争を立ち回った政治センスが評価され、彼は英霊の座に至った。
そんな彼だが、転生者であるからにはもちろん前世の名前や人生が存在する。
聖杯戦争を生み出した御三家の分家。音楽を聴きながら歩いてたら車に気づかず事故死した阿呆。
その前世の名を、近平
そして、近平家は魔術師の家系では珍しく子だくさんな家系だった。
その三女。名を近平立花という。
「お兄ちゃんだったの!? 馬鹿なお兄ちゃんだったの!?」
「確かにそうだけどバカバカ連呼しないでくれない!? あと厳密には別人!!」
実の妹(厳密には別人)の容赦ない言葉を受け、兵夜は心からツッコミを入れた。
厳密には別人だが死別した兄との再会に対して、もう少し何かこういうことはないのだろうか。
「お兄ちゃんは馬鹿だなぁってみんなでお通夜の時も苦笑いだったよ。お馬鹿すぎて素直に悲しめなかった私達の身にもなってくれない?」
「かつて家族に悔やんだ自分を殴ってやりたい」
レイシフト前に食事としてサンドイッチを食べながら、兵夜と立花は兄妹の団欒を始めていた。
「うぅ……っ。距離感が近くてなにかもやもやします。川で加湿器を使ってるかのようなもやもやです」
「例えがよく分からないわよ、マシュ」
そんなマシュにツッコミを入れながら。オルガマリーはため息をついた。
「それにしても、信じられないほどに世界はいっぱいあるということね。まさかそんな世界があったなんて」
はあ、と感心の息をつくオルガマリーは、兵夜を見ながら少しだけぼけっとした。
「だけど、そんな存在が味方に付いてくれたのは僥倖だわ。不幸中の幸いというものね」
「……どうしましたか、所長?」
「え? いえ、何でもないわよ!」
マシュに聞かれて顔を少し赤くしながらオルガマリーは否定する。
とはいえ、何を否定されたのか少しよく分からず、マシュは首を傾げた。
「さて、食事をしながら聞いてくれ。今回の特異点のことだ」
と、ロマニは会話を中断させ、意識を自分へと向けさせる。
今回の特異点は15世紀のフランス。
時期とすれば、百年戦争の真っただ中である。
とはいえこの時期は戦争は休戦状態。本来なら平和……とは言わなくても比較的リスクは少ない世界だ。
しかし、特異点とされている以上油断はできない。
極端な話、フランスは人類史にとって重要度の高い場所だ。
フランス革命の影響は現代において大きく、その下地が崩れてしまえば、抑止力をもってしても修正は困難。
ゆえに、決して見逃すことはできない場所なのである。
そして、その原因となるのはおそらく聖杯だろう。
莫大な魔力を持ち、願いをかなえる願望機としての性質を持つ聖杯。
それを悪用すれば、歴史を変えることも決して不可能ではないだろう。
「……とはいえ、冬木式の聖杯で歴史を変えるのは不可能だと、俺の知り合いが結論を出してたんだがな」
「つまり、冬木の聖杯戦争で使われた以上の性能の聖杯をレフは手にしたってことね」
兵夜の疑念に、チョコレートを食べながらオルガマリーは即答する。
「少なくとも、現代から過去に聖杯を送り込んでさらに歴史を改ざんするだけの聖杯をレフは手にしていたと考えるべきよ。……それも、おそらくあと七つも」
「だろうね。そして、それに対抗する為にはそれこそ聖杯が必要だ。今の僕達では勝ち目がない」
ロマンもため息をついて現状の厳しさを語る。お汁粉を食べながら。
それを見ながら、立花は首を傾げた。
「質問! そのお菓子どこから持ってきたの?」
心底疑問である。
カルデアは標高6000メートルの山脈にある施設だ。
そんなところでこんな無駄遣いできるほどの嗜好品があるとは思えなかった。っていうか運ぶのにも一苦労だろう。
そんな立花に、兵夜はにやりと笑うと片手を振るった。
すると、そこに出てくるのは缶ジュースだ。それも日本の。
「これが俺の能力の一つだ。義手の機能で、ある飛行艇にある格納庫の中身を自由に呼び出せるのさ」
「お兄ちゃん、義手だったの!?」
思わぬ事実に、立花は目を見開く。
これほどまでに完成度の高い義手など、立花は目にしたことが全くない。
「精度の高い義手ですね。ダ・ウィンチちゃんの作成品にも匹敵します」
「まあ、これも異世界技術の一つさ。……ライダークラスで召喚されたのならラージホークも呼び出せるんだが、アーチャークラスではできることは少なくてなぁ」
「でもおかげで助かるよ。……やっぱりこの環境だと嗜好品はたくさん持ち込めなくてね。これだけあれば職員のストレスもだいぶ発散できるよ」
ロマニはほっと一息つく。
食事や飲酒はストレス発散に効果的だ。
そして、わずか数十人で人類滅亡を通り越した人理滅亡の危機に対抗するなど、過激すぎるストレスの元だろう。
過酷すぎる状況に、ストレス発散の娯楽は必要不可欠だ。
「なら、俺もごっそり放出したかいがあるってもんだ。……現地でも嗜好品の類を集めてくるから、まあ期待せず待ってろ」
「確かに、大昔の技術じゃそこが知れてるからねぇ」
兵夜もロマニも苦笑するが、しかし資材の供給が容易になる兵夜の存在は非常に力になった。
彼が提供してくれた大量のゴーレムにより雑務をすることがなくなったのも効果的だろう。掃除洗濯などの雑務にまで時間をかけていたら、残りのスタッフのストレスは尋常じゃなくなっているはずだ。
最初の召喚で彼を呼び出せたのは望外の幸運だろう。単純戦闘能力とは別の意味で彼は力となっている。
「よし! じゃあそろそろレイシフトを始めようか!」
「そうね。デザート込みで食事も終わったし、あとは人理を修復するのみね」
ダ・ウィンチの言葉にオルガマリーは頷くと、そして立ち上がった。
「……各員! カルデア局長、オルガマリー・アムニスフィアの名において命じます!」
その言葉に、全員が真剣な表情を向ける。
「これより私達は人理修復の為、特異点へと向かうわ。……辛い戦いになるでしょうけど、私達のサポート、任せるわよ!!」
「もちろんです所長。そちらも、現地での人理修復の方が大変でしょうが、よろしくお願いします」
「現地で危険な目に遭わない分、私達は比較的気が楽だよ。サポートぐらいは任せたまえ」
ロマニとダ・ウィンチの言葉に、オルガマリーは少しひきつった表情を浮かべるがすぐに振り返った。
「気合を入れなさい、立花。あと、頼りにしてるわよ、兵夜、マシュ!」
「了解です!」
「もちろんです、所長」
「仕事はきちんとするともさ」
そして、人理修復の旅が始まる。
もう隠してもいいことないので全部話した兵夜。そうでもしないと納得してくれそうになかったし。
そして便利な四次元ポケット持ちの宮えもん。カルデアにお菓子という娯楽を大量衣提供しました。
実際、食事はストレス解消には効果的なので、人心掌握術の心得もある兵夜としては速攻で動くべき事案です。冷静に考えてカルデアのこの現状はいつ最悪の事態に発展してもおかしくない。