ケイオスオーダー 異世界英雄のホーリーグレイル!! 作:グレン×グレン
ジャンヌ「あれはまさかイングランドの新兵器!? ……え? アメリカ合衆国?」
レイシフトは無事に完了した。
そして、いきなり異常を発見した。
「……な、なによあれ! あれが、人理焼却の原因!?」
「うっわー。なんか綺麗だけど……やばいよね、あれ」
いきなりオルガマリーは冷や汗を流し(無駄に多機能な自動人形である)、立花も頬を引きつらせる。
しかし、それを見ながら兵夜は冷静だった。
「……攻撃の余波で次元に裂け目ができる光景を何度も見た所為か、我ながら冷静だな」
「まるでリアクション芸ができない芸人みたいです、兵夜さん」
『え、なに? どうしたの四人とも?』
ロマニは全く状況を把握できていなかったが、さてこれをどう説明したらいいものか。
「マシュ! すぐに映像をロマニのところに送りなさい! 間違いなくあれが異常の原因の一つよ!!」
「はい! 宅急便もびっくりの速度で送ります!!」
『あ、うん、こっちにも見えたね……ってなんじゃこりゃぁああああ!!』
ロマニの驚愕も当然だろう。
フランスの空に、巨大な光の帯が生まれていた。
おそらく高度は成層圏にも到達しているだろう。そんな光の帯が、地上から見てもすぐにわかるぐらいはっきりと見えている。
「ロマニ、すぐにレオナルドを呼んで解析させなさい。……こんな事象が起こっていれば歴史に残ってなければおかしいわ。間違いなく、未来消失に関わってる」
『了解です。それはこっちでやりますので、所長達は現地の調査に専念してください』
速やかにオルガマリーは指示を出し、そしてすぐに周囲を確認する。
「とにかく、特異点になっているほどの事態なら、間違いなく何か異変が起きているはず。人里を探して話を聞くわよ」
「OK。そういうことならまず探そうか」
すぐに支持を出すオルガマリーにどこか安心したような笑顔を浮かべて、兵夜はすぐに空を飛ぶ。
悪魔というのは伊達ではない。空中飛行程度なら簡単にできる。
さらに自身のスキルを使って遠身を行い―
「オルガ、いきなりだが特異点の理由に一歩近づいたぞ」
「え? そんなに目立つの?」
「なに? ピラミッドでもあったとか?」
オルガマリーと立花が首をかしげる中、兵夜はすぐに降りると装甲車を呼び出してドアを開ける。
「……砦がワイバーンに襲われている。急がないと全滅するな、あれは」
この世界、ワイバーンとか幻想種はその殆どが世界の裏側に行っている時期のはずだ。
少なくとも、群れをなして現れていたら間違いなく大騒ぎになる。そんなもん魔術教会も聖堂教会も隠匿できないだろう。
うん、間違いなくこれがフランスの人理を無茶苦茶にしている原因の一つだ。
「ちっ! 派手にやってやがるな!」
混乱を避ける為にある程度近づいてから車から降り、そしてすぐに駆け付ける。
「マシュ! 助けに行くよ!!」
「あ、はい! って先輩待ってください!!」
急いで立花は宝石を片手にワイバーンに先制攻撃を叩き込む。
顔面に莫大な魔力を叩き付けられ、ワイバーンの一体が弾き飛ばされる。
そして、すぐにワイバーン達の敵意はこちらに向いた。
「ああもう立花! 確かに良いことしてるけど、もうちょっと慎重にしなさい!!」
「仕方がありません、所長。それが先輩の良いところですから」
『特異点だから死人が何人出ても問題はないんだけどね。あまり無茶はしないでくれよ』
なるほど、立花達にはそういうことにしているわけか。
それでも動く辺り、魔術師には全く向いていないお人好しだな、あいつは。
まあいい。死人は少ない方が歴史の修正力も上手く働くだろう。
……ここは手早く片付ける!!
「さて、片付けるか」
リチャード。お前の力を借り受ける。
魔力を流すと同時に、産まれるのは合計19丁のイーヴィルバレト。
これが、リチャード・ジョーダン・ガトリングの宝具。
彼が発案し、そして直接的に製造に関わったガトリングの生産及び使用。それを俺との融合により、イーヴィルバレトに変換して運用する。
それは、戦争の死者を減らす為の発明。
たった一人で百人分の働きをすることができれば、死者の数は結果的に減るだろうという祈り。
戦争を根絶するのではなく、戦争による死者を減らすという現実的な祈り。
今の時代のガトリングの運用が彼の願いに乗ったものなのかは、彼は語らなかった。
だが、それは間違いなく歴史を変えた号砲だ。
「乱れ撃つ!
放たれる一斉射撃が、骸骨兵やワイバーンをことごとくハチの巣にする。
よし、この調子なら八割は減らせる。
「マシュは立花の護衛に回れ!! オルガ! お前は残りを頼む!!」
「わ、わかってるけどどうすればいいのよ!」
あ、そういえば具体的な戦闘トレーニングはさせていなかった。
「……はいこれ」
俺はすぐに巨大なメイスを呼び出すと、それをオルガに渡す。
「これ、なに?」
「勢い良く振り回してワイバーンを叩き落せばいい。簡単だろ?」
「……………うそでしょ?」
ミンチになっていくワイバーンを見ながら、オルガは顔を真っ青にしながらため息をついた。
うん、でも仕事はちゃんとやってくれた。
ありがとな、オルガ。
とはいえ、この調子だとフランス兵に犠牲者が出てきそうだな。
できれば死者はいない方がいいんだが、さてどうしたものか……。
「兵達よ! 水をかぶりなさい!!」
その時、良く通る声が響いた。
そこにいるのは、強い意志を目から放つ少女。
「彼らの炎を一瞬ですが防げます! ……さあ、武器を取って戦ってください! どうかお願いします!!」
槍突きの旗をぶん回してワイバーンを吹っ飛ばすその姿は、間違いなく常人ではない。
立花はその姿を見て、何かに気づいたようだ。
「ドクター! あの人まさか……」
『ああ、サーヴァントだ。しかし反応が弱いんだけど、どういうことだろう』
状況はよくわからんが、しかし味方ということでいいだろう。
「そこのサーヴァント! こちらと連携する気はあるか!!」
「……あなたもサーヴァントですね? 助かります!」
よし、このままぶちかます!!
そして、何とかワイバーンの群れを撃退することができた。
さすがに竜種なだけあっててこずったが、まあサーヴァントが複数名いればなんとかなるか。
「ありがとうございます。助かりました」
「いいえ。むしろお礼は私が言う方です」
と、マシュとそのサーヴァントがにこやかに言う中、さてどうしたものか。
「……兵夜。どうやらちょっとまずいことになってるわよ?」
「どうした、オルガ」
なんだ? いや、見ればわかるか。
周りの兵士たちが皆彼女をみておびえている。それも、かなりやばいレベルで恐慌状態だ。
「貴女は……いや、お前は……!」
震える声でビビりながら、兵士たちは一目散に砦に向かって駆け出した。
「逃げろぉおおおお!!! 魔女が出たぞぉおおおおお!!!!」
うわぁ見事な逃げっぷり。なんだなんだ?
「……魔女、フランス……まさか貴女、ジャンヌ・ダルク?」
オルガがすぐに何かに思い立ったのか、そう声をかける。
その言葉に、サーヴァントは辛そうな表情を浮かべながら頷いた。
「はい。私はルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクです」
「ジャンヌ・ダルク? 確か聖女って呼ばれてる?」
立花が首をかしげてそう呟くが、しかしこの時代では果たしてどうなるか。
「……いや、彼女が聖女として認定されたのは数百年後だ。それまでは、魔女として処刑されたままだ」
なるほど、それで魔女か。
だが、それでも当時のフランスからしてみれば救世主とは言わんまでも希望の光だったはずだ。
それが、いったいなんで魔女扱いされてるんだ?
「……とりあえず、場所を変えましょう。ここでは兵士達の心を追い詰めてしまいます」
「そうだね、ついて行こうか」
ジャンヌの提案に、立花は速攻で乗った。
ふむ、確かにそうした方がよさそうだ。
「……仕方がないわね。兵夜、車を出して頂戴。ロマニは当時の地図を探して近辺の村を探しなさい」
『了解です所長。さて、すぐにでも村を探さないとね……っと』
ああ、確かにこのままだと砦の兵士がプッツンして仕掛けてきかねないな。
犠牲者は出さずに済むなら出さない方がいい。ここは素直に退散するか。
とはいえ、魔女か。
いくら見捨てたとはいえ、フランス人までもが彼女を魔女呼ばわり。
「オルガ。俺が知っている聖杯戦争では、こんなケースがあった」
「何かしら?」
「双子の魔術師が同一のサーヴァントを別側面で召喚したという事例だ。例えば二重人格で有名なジキルとハイドなら、まさに二人を分割して召喚するということも可能だろう」
「コロンブスとかローランとかはなりそうね。あとは護国の王と吸血鬼のモデルのヴラド三世とかかしら」
すぐにどういうことかを理解してくれたようだろう。
そう。創作物において復讐者となったジャンヌ・ダルクなど良くある話だ。
それを置いても、ジャンヌ・ダルクは実は苛烈で夜襲などの当時のノンマナー行為を積極的に行っていたという話がある。
もし、俺達の目の前にいるジャンヌ・ダルクが聖女としての側面を引き出したものだとするならば……。
「復讐者としての側面が、今回の特異点の原因、なのかしらね」