人修羅とガラクタ集めマネカタが行く 幻想郷紀行   作:tamino

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あらすじ

シン一行VSオオナムチというショッキングな戦闘を目撃してしまった天子。
あまりのショックでふさぎ込んでしまうものの、
持ち前の立ち直りの早さで、気持ちを切り替える。

書物からオオナムチの正体を突き止め、更なる真実を知るために
例の洞窟にまた足を運ぶのだった。

今回のお話は天子が再度洞窟に向かった、その前日の出来事である。


第10話 人修羅一行 花見に繰り出す

シンがオオナムチと一戦繰り広げた洞窟。

実はその洞窟こそが、裏・博麗大結界の要石が埋められている場所だった。

 

この結界の要ともいえる場所に、八雲紫の式である八雲藍は調査に向かっていた。

 

藍「各勢力の代表に再度話を聞いてもらうためにも、状況把握をしなくては……」

 

昨日の会合では醜態をさらしてしまった。

今度こそ相手の考えていることを理解し、交渉できる場を整えなければならない。

 

堅物ともいえるほど生真面目な藍は、この調査に全力を注ぎ、

十分な情報が得られるまでは帰らない覚悟でここまで来ていた。

 

藍「……?なんだ?この気の乱れは……」

 

洞窟に近づくと、藍の皮膚にピリピリとした感触がまとわりついてきた。

これは非常にまずい状態である。

結界の場の乱れは、結界が緩むことに直結するからだ。

 

1週間ほど前にここを調査したときは、こんなにおかしな状態ではなかった。

 

結界は弱まってはいても、即座に機能停止するほどひどい状態ではなかったし、

場の空気は特に問題なく安定していた。

 

それが何故か昨日、急にヒビが入ったと紫様から言伝があり、

実際に今日来てみれば、通常では考えられないほど場の乱れが生じている。

 

ここ数日でなぜこんな荒れように……

 

藍「とにかく実際に見てみないことには、何とも言えまい……」

 

結界内の調査に来たはずが、とんでもないことになるかもしれない。

ひびの入った結界、異常な場の荒れ方、結界を管理する紫様の謎の憔悴…

 

考えられる結論は……

 

藍「まさか……出てきてしまったのか……」

 

……できるだけ考えないように努めていたのだが、

強力な存在が結界を破って抜け出てきた、ということなのだろうか……

 

藍「……」

 

藍は覚悟を決める。

 

八雲藍は現在八雲紫の式として活躍しているが、

本来は中国の大妖怪、九尾の狐の一族である。

いくら日本屈指の強力な神々でも、後れを取るような実力ではない。

 

しかし結界内の神々については話が変わる。

彼らは元来、国を動かすレベルの実力者であり、加えて千年以上も魔力を集め続けてきた。

当然活躍していた古代よりも現代での実力は跳ね上がる。

 

それを踏まえれば、どうしても実力的に対抗できるとは言い難いだろう。

とはいえ、実力が上の相手であっても、情報の差がある以上、やりようはあるはずだ。

 

……そんなことを思いめぐらし、藍は集中力を高めつつも、洞窟に入っていく。

 

藍「……」

 

あまりの瘴気に表情が歪む。

妖怪である自分ですら不快感を感じるほどの瘴気の濃さ。

そして奥に進むほど強くなる血の匂い。

 

普段であれば洞窟特有の生物がちらほらみられるのだが、その姿もない。

五感で感じられるすべての情報が、ここにいては危険だという結論を導き出す。

 

……冷や汗を流しながら奥へ進む藍。

ついに例の戦闘が行われた広場までたどり着いた。

 

藍「こ、これは……」

 

目の前に広がる異様な光景に、藍は息を呑む。

1週間ほど前に訪れた時とは、その場の光景すべてが一変していた。

 

要石が埋まっている空間は、以前は広間程度の広さだった。

それが目の前に広がる空間は、広々としたドームと言えるほどになっている。

 

漂う魔力もめちゃくちゃだ。

以前の穏やかで静止したような、安定した気質からは想像できないほど荒れている。

非常に禍々しい魔力がぶつかり合ったという印象だ。

 

そして一番目を引くのが、空間の中央で息絶えている大蛇である。

床に血の池を作っているこの生き物は、十中八九ここで何者かと戦闘をし、敗れた側だろう。

 

空間の入り口、そんな遠くからではあの死体が何なのか詳細は確認できない。

藍は恐る恐る近寄ってその正体を調べてみる。

 

藍「これは……ひどいな……」

 

無残に横たわる大蛇の死体は、本当にひどい状態だった。

全身が穴だらけで、鱗に覆われた強靭な肉体は、無残にも肉片となって飛び散っている。

 

首から上の損傷はさらにひどく、皮膚は骨もろともはじけ飛び、

かろうじて原形をとどめているありさまだ。

 

藍「……!」

 

藍はここで気づく。

これは唯の大蛇ではない。首から上は人面だ。

 

……ということは、妖怪。

それもこの場がここまで荒れるほど、強烈な戦闘を行った妖怪。

 

藍「やはり悪い予感は的中していたか……」

 

間違いない。結界から抜け出た伏ろわぬ神々の一柱だ。

この状況でそれ以外の選択肢は考えられない。

 

……しかし当然の疑問が浮かぶ。

何故この大蛇はこんな無残に殺されているのだろうか?

 

この大蛇が伏ろわぬ神々の一柱だとするなら、敵は誰だったのだろうか?

 

藍「……考察はあとだ。まずは一通り情報を集めなければ」

 

特に気にしなければいけない結界についても調べてみる。

 

……ひどい状態だ。

なんとか結界としての最低限の機能を保ってはいるが、歪みに歪んでいる。

 

紫様から聞いていたヒビも、あと一押しで破壊されるところまで広がっている。

要石もほぼ抜けかけている。危険な状態だ。

 

藍「これは一刻の猶予もないな……。仕方ない。やるしかないか」

 

結界をこのままにしておけば、ほんのわずかな衝撃でも完全に破壊されてしまう。

 

今の状態は、いうなれば

台風の日に火のついた蝋燭を外に出しておくようなものだ。

 

放っておけば、ふと目を離した程度で、手遅れになりかねない。

そんな状態だ。

 

 

……この状態を何とかするには、結界の修復しかない。

 

藍とて強力な妖怪。結界作成についての基本的な知識はある。

一人で結界を修復するのはかなりの重労働だが、できないことではない。

 

藍「さて、まずは場の空気を安定させねば……」

 

・・・・・・

 

藍は手際よく結界の再修復を進めていく。

 

乱れた場の気質を整え、要石を正しい手順で再度埋め込んでいく。

結界の破れそうな部分に霊気を流し、丁寧に傷を補強していく。

 

・・・・・・

 

並みの術者なら、複数人で数日かかる作業。

藍は人並外れた集中力で、たったの数時間で行ってしまった。

 

藍「ふぅ……ひとまずはこれで何とかなるか……」

 

いくら藍の能力が高いとはいえ、流石に無理をしすぎた。疲労感は隠せない。

 

しかし努力の甲斐もあり、

突貫工事ではあるが、これであっさり結界が破れるようなことはなくなったはずだ。

 

藍「次は……この妖怪だな」

 

そう言って藍は足元に目を向ける。

その視線の先には大蛇の妖怪の死骸が横たわっている。

 

ひどく損傷した状態ではあるが、何者かの特定くらいはできるはずだ。

 

それに自分一人で特定するよりも、

紫様と情報共有しながら確認するのが吉だろう。

 

そう考え、藍は紫に連絡を取る。

 

藍「紫様……聞こえますでしょうか……?」

 

少しのタイムラグの後、紫の声が頭に響く。

 

紫「どうしたの……?もう結界内の調査は済んだのかしら……?」

 

藍「お休みのところ申し訳ありません。

不測の事態がいくつかございましたので、報告を、と思いまして」

 

紫「……そう。それじゃ、話して頂戴」

藍「ハイ」

 

 

妖狐説明中……

 

 

紫「そんなことに……わかりました。

それではその死骸はこちらで預かります。貴女はそのまま調査を続けて頂戴……

結界の修復……ご苦労だったわね……」

 

藍「ありがたきお言葉」

 

そう言うと紫はスキマを藍の目の前に展開した。

ここに妖怪の死骸を入れろということか。

 

いつもの紫なら、スキマを開き、遠隔操作で死骸を取り寄せるくらい造作もない。

 

その少しのチカラを惜しむということは、

今の紫には、その程度の余力も残っていないということだろう。

 

藍「……」

 

藍は心底、紫のことが心配である。

 

結界が急速に危険な状態になった原因を聞いても、話をはぐらかされる。

寝たきりになるほど憔悴している理由も教えてくれない。

 

いくら主のことを信用しているとはいえ、

日に日に弱っていく姿を見ていれば、不安が増していくというものだ。

 

……スキマに死骸を入れながら、藍は悔しさと焦りに下唇を噛みしめる。

 

藍「……これでよし。

さあ、気を取り直して結界内の調査に入ろう……」

 

 

 

くよくよしてても仕方がない。

 

藍は心機一転、結界内の調査を始める。

 

 

 

……結界内の調査と言っても、

実際に結界内部に潜入したり、外から結界内部を物理的に見るようなことではない。

 

結界の内部に意識を集中し、

封印されている存在の魔力の質、大きさを見定める、ということをするのだ。

 

藍ほどの実力があれば、この方法で大半の情報をつかむことができる。

 

 

 

ではなぜ今までそれをしてこなかったのか、というと、

理由は大きく三つある。

 

一つ目は、

こちらの意識を結界内に飛ばすことで

封印されている存在に余計な刺激を与えてしまう可能性があること。

 

二つ目は、

もし精神に直接干渉できるような存在が封印されていた場合、

こちらの意識が取り込まれ、戻ってこれなくなる危険があること。

 

三つ目は、

これをすることにより空間の魔力に歪みが生じて

結界が弱まってしまう危険があったこと。

 

 

 

主にこれらの理由から、封印の内部の詳しい調査は保留されてきた。

 

今までは情報を得たからと言って、採れる対策に変わりはなかったのだ。

わざわざ危険を冒すメリットはほとんどない。

 

結界内の戦力がどうあれ、結界の強化方法こそが論点だった。

 

 

……しかし今は事情が違う。

各勢力の長を説得するためには、より詳細なデータが必要だ。

 

先日は、敵勢力の規模もわからない状態で

味方をしてくれと言っても話にもならなかった。

 

もしこれが、自身の勢力だけで、どうにもならない戦力差だとわかれば、

聞く耳も違ってくるだろう。

 

龍神様もそれを見越して、

結界内の調査をするようおっしゃっていたに違いない。

 

 

……何より結界が破られそうな今、

藍自身も相手の正確な戦力を知っておきたいと思っている。

 

 

虎穴に入らずんば虎子を得ず

 

 

藍は精神を集中させ、結界の中に意識を張り巡らせた……

 

 

・・・・・・

 

 

藍が必死で結界を整え、調査をしている間、

その結界をあんな状態にした当事者たちは、

のんびり人里を散歩していた。

 

ガラ「ねー、シン君、やることなくなっちゃったけど、何したらいい?」

シン「うーん、そうだねぇ……」

ピク「結局お宝情報聞きそびれちゃったものねぇ……」

 

本当は先ほど寄った稗田家でお宝情報を聞くつもりだった。

 

しかしながら、会話が弾んだせいで情報を聞きそびれてしまったのだ。

 

一度別れの挨拶をした手前、もう一度戻るのもバツが悪い。

 

そういうことで、シン一行は行く当てもなく、

人里をぶらぶらしていた。

 

そんな中、町人の会話が耳に入ってきた。

 

 

 

町人A「おいお前、聞いたか?」

町人B「なんでえ?藪から棒に」

 

町人A「なんでもな、今年の桜は特にキレイだそうだ。

花見、まだ行ってねえだろ?」

 

町人B「あー、この辺には桜が植わってねぇからなあ……

花見も気軽にできりゃいいんだが」

 

町人A「だよなあ。桜を見ながらの一杯は格別だもんなぁ」

 

町人B「それで何か?そんな話するってことは、花見の予定でもあんのか?」

 

町人A「おう。命蓮寺をちょいと行ったところに、いい場所があるみてえでな。

そこでみんなして一杯ひっかけようって話なのよ」

 

町人B「そりゃあいいじゃねえか!俺も行くぞ!」

 

町人A「おめえならそう言うと思ってたぞ!そいじゃ今週末な!」

町人B「おうよ!」

 

 

 

シン「……へぇ、花見、か」

 

ピク「ねえシン。花見って何なの?」

ガラ「ボクも初めて聞いたよ。それってもしかしてお宝?」

 

シン「いや、お宝ってわけじゃないけど……そうだな」

 

シン「ピクシー、ボルテクス界には桜ってなかっただろ?」

ピク「サクラなんて聞いたことないわね」

 

シン「桜っていうのは、きれいな花を咲かせる木のことでね。

春……ちょうど今くらいの気候になると、

それはもう、きれいな景色を見せてくれるんだよ」

 

ガラ「そうなんだ!

あのおじさん達もすごい楽しみにしてたし、

すごくいいものみたいだね!」

 

シン「そうだね。

日本人はみんな桜が咲き誇る季節を楽しみにしてたんだ。

せっかくだからボクらもやってみようか?花見。」

 

ガラ「それは名案だね!なんだかワクワクしてきたよ!」

 

ピク「そこまで言うなんて、よっぽどいいものなのね。

私もやってみたいわ!ハナミ!」

 

シン「よし。それじゃ花見をしよう。」

 

 

シン「……とは言っても、どこで花見をしようか……?」

 

ピク「あ、そういえば最初にここに来た日に、

紫っていう自称管理人から説明受けたじゃない?」

 

シン「そうだったけど……あ」

 

ピク「思い出したみたいね。その時彼女言ってたわ。

『冥界には白玉楼って建物があって、桜がキレイだ』って」

 

ガラ「あ、確かにそんなこと言ってたような……。よく覚えてたね!」

 

ピク「ふふ~ん。私の記憶力をなめないでよね~」

 

ガラクタ君がピクシーに拍手をして、

それを受けたピクシーは誇らしげにしている。

 

シンも、うすぼんやりと思い出す。

そういえば紫さんは、そんなこと言っていたな。

 

シン「よし、それじゃ冥界に行って花見をしよう。二人ともそれでいいね?」

 

ピク・ガラ「は~い!」

 

・・・・・・

 

冥界の白玉楼で花見をするのを本日の目的としたシン一行。

 

仲良くなった店主に冥界への道を聞き出し、

徒歩でそこまで向かうことに。

 

シン「それにしても冥界まで徒歩で行けるとは驚いたね」

 

ピク「そうねぇ。話を聞くと、幽霊しかいない場所だそうじゃない。

そんなとこに悪魔が入ってもいいのかしら?」

 

ガラ「別に幽霊も悪魔みたいなものだしいいんじゃない?

思念体みたいなものでしょ?」

 

シン「まぁ、それに近いような気はするね」

 

ピク「気にしても意味ないか。そんなことよりハナミっていうの楽しみよね~」

 

ガラ「ホントだよね!このワクワク感、お宝さがしみたいだよ!」

 

シン「そうだね。花見をするっていうのも、一つのお宝みたいなものだし」

 

ガラ「心が躍っちゃうなあ!」

 

 

人修羅移動中……

 

 

シン「なんとか迷わず着けたみたいだね…… !! これはまた……!」

 

ピク「わぁっ……キレイ……」

 

ガラ「こ、これは……!!すごいぞっ……!!」

 

冥界の入り口である、大階段までたどり着いた3人。

一同は一斉にあるものに目を奪われた。

 

それは、階段沿いに植えられた、無数の桜。満開の桜。

 

どこまでも続く階段に沿って、咲き誇る桜は、

まるで現世ではないような錯覚を引き起こさせる。

 

……まあ実際冥界なのだが。

 

ガラ「は~……なんてキレイなんだ……」

ピク「本当ねぇ……一面キレイなピンク色」

 

シン「あぁ。ここまですごい場所とは思わなかったよ」

 

花見は昔何度かしたことがある。

しかしここまでの規模の桜を見たのは初めてだ。

 

自然の美しさ、スケールの大きさに心が洗われるようだ。

 

シン「……と、ここで見とれててもアレだし、

ひとまず階段上っちゃおうか。」

 

ガラ「あ、そうだね!」

 

ピク「上り切った場所の景色も楽しみね~!」

 

 

階段を一歩一歩昇るシン一行。

桜でいっぱいの花道を、満たされた気持ちで進む。

 

 

……ボルテクス界にも街路樹や、ヨヨギ公園など、

一応植物はあった。

 

しかしどれも緑の常緑広葉樹がメインで、

花が咲いているものは皆無だった。

 

だからこうやって、

花を見る、ということだけでも本当に久しぶりなのだ。

 

ピクシーとガラクタ君に至っては初めてだろう。

 

こういう景色を美しく思う心は、

人の心を忘れないためには、非常に大事だと感じる。

 

 

……とても長い階段だったが、桜を楽しみながら上ったことで、

あっという間に頂上に到着してしまった。

 

 

 

冥界というにはどういうところかと考えていたのだが、

なんだか神社のような雰囲気だ。

 

 

あれが白玉楼だろうか?

目の前には大きな和風建築が見える。

 

命蓮寺にも負けず劣らずの、立派な建物だ。

 

ピク「頂上からの景色も絶景ね~!まるで夢の中みたいだわ」

ガラ「あの建物もこの景色にとってもマッチしてるね!」

 

ガラクタ君の言う通りである。

一面の桜の中、ひっそりとたたずむ白玉楼。

まるで一枚の絵画の様だ。

 

シンが美しい景色に感動していると、声がかかる。

 

??「あの……すみません。どなた様ですか?」

 

そう言って白玉楼から出てきたのは、銀髪の女の子。

 

その身のこなしは、無駄がなく、重心が安定している。

腰に刀を二本差していることからも、剣術の心得があるのがわかる。

 

そして特に目を引くこととして、

少女の傍らには、白玉団子のようなものが浮いている。

 

白玉団子と白玉楼をかけたシャレだろうか?

 

シンが失礼なことを考えていると、少女が言葉を続ける。

 

??「もしや、白玉楼へのお客様でしょうか?」

 

シン「あ、いや、そういうわけじゃありません」

 

ピク「私達ハナミっていうのをしに来たのよ」

ガラ「白玉楼ってところのサクラは見事だって、紫さんに聞いてたので!」

 

紫、という単語で少女はピクっと反応する。

 

??「そうでしたか、紫様から……

では皆様は、紫様の御客人ということでしょうか?」

 

シン「そういうわけではないんですが……ええと、お名前は……」

 

妖夢「あっ、失礼しました。

私は白玉楼で剣術指南役をしています、魂魄妖夢(こんぱくようむ)と申します」

 

シン「あ、こちらこそ名乗らないですいません。

ボクは間薙シン。デビルサマナーをしています」

 

ピク「私はピクシーよ!ヨロシク~」

ガラ「ボクはガラクタ集めマネカタです!初めまして!」

 

シン「妖夢さん、ボクたちは別の世界から、幻想郷に宝探しに来たんです。

その中で、ここの景色が素晴らしいと聞いて、ぜひ見たいと思いまして。」

 

シン「紫さんにはこちらに来た初日に、ルールとか風習とか、

色々教えてもらったんです」

 

妖夢「ええと……別世界から?……宝探し?」

 

どうやら困惑しているようだ。

この反応も久々である。

 

……さて、どうしたものか。

 

と、考えていると、ピクシーが助け舟を出してくれた。

 

ピク「なかなか信じられないと思うけど、本当よ。

今は人里に住んでるわ。阿求さんにもよくしてもらってるのよ」

 

妖夢「阿求さん……というと、稗田家の当主ですか」

 

ピク「そ。何なら確かめてもらっても大丈夫よ。

宿も手配してもらったんだから」

 

妖夢「成程。すぐに人里に確認、というわけにはいかないので、アレですけども、

そういうことならお招きさせていただけると思います」

 

ガラ「ありがとうございます!妖夢さん!」

 

妖夢「とんでもないです。

まずはここの主人に話を通してきますので、申し訳ありませんが、

少々お待ちくださいね。」

 

シン「ありがとうございます」

 

妖夢「立ちっぱなしで待っていてもらうわけにはいきませんので、

そちらの縁側に腰かけていてもらえますか?」

 

妖夢は白玉楼の縁側を目で指し示す。

 

とてもよく手入れされた庭に、視界一杯の桜。

どうせならここで花見をしたいくらい、いいロケーションだ。

 

ピク「ありがとね~」

 

 

・・・・・・

 

 

縁側まで通されたシン一行。

妖夢さんは白玉楼の主に取り次いでくれている。

 

ピクシーがあそこで阿求さんの名前を出すとは、

なかなか機転を利かせてくれて助かった。

 

出会った当初はもっと本能のまま動いていたのだが、

一緒に旅を続ける中で、色々と生きる知恵を身につけてくれた。

本当に頼もしい相棒である。

 

妖夢「皆さん、お待たせいたしました」

 

みんなでのんびりと桜を眺めていると、

妖夢さんが戻ってきた。

 

妖夢「主人の西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)に確認をとりましたところ、

お招きするように、と仰せつかりました。

ということで、皆さんこちらへどうぞ」

 

 

そういうと妖夢さんは奥の客間へと先導してくれた。

見た目は中学生ほどなのに、シン一行をもてなす姿は堂に入っている。

 

自分が中学生の時はもっと子供だったな、と思い返しつつ

通された客間で主人を待つ。

 

 

??「皆様、お待たせしました~」

 

しばらくすると、

間延びした声と共に、初めて見る人物が入ってきた。

 

西行寺「妖夢から聞いてると思うけど、

私が西行寺幽々子よ~。よろしくね~」

 

シン「あ、はい。よろしくお願いします」

 

随分とのんびりとした女性だ。

 

ピンク色のウェーブがかかった髪に、ゆとりのある空色の和服。

本人の雰囲気も手伝って、

まるで周りの空気がゆっくり流れているような錯覚を起こしてしまう。

 

 

シン一行は、先ほど妖夢にしたのとおおむね同じ自己紹介をして、

話の本題へと移ることにした。

 

 

つづく




略称一覧

シン…間薙シン(人修羅)
ピク…ピクシー
ガラ…ガラクタ集めマネカタ

藍…八雲藍(やくもらん)。八雲紫の式にして、幻想郷でも指折りの実力を持つ九尾の狐。頭の回転、計算力にかけては右に出るものはいない。が、予想外の事態に弱いのが玉に瑕。紫が動けない現在、代役として動き回っている。

紫…八雲紫(やくもゆかり)。妖怪の賢者。人修羅の封印にチカラの大半を割いており、寝たきり状態。普段は本心をほとんど表に出さずに好き勝手やっているため、自由奔放、傍若無人といった印象を持たれている。本当は思いやりの深い妖怪なのだが。実力は幻想郷メンバーの中でも頭一つ二つ抜けている。

妖夢…魂魄妖夢(こんぱくようむ)。白玉楼住まいの庭師にして剣術指南役。とても真面目であるがゆえに、主人の幽々子からは日々からかわれている。従者としての能力も剣術の腕も上々。半霊という人魂のようなオプションがくっついているが、それは彼女がそういう種族だから。

西行寺…西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)。白玉楼の主。幽霊であるが、実態を持っており、ほとんど生者のようなもの。呪殺系の特技が使えるため、無耐性の者は敵ではない。幻想郷のパワーバランスの一翼を担う実力者。性格はおっとりとしており、人当たりもよい。紫ととても仲が良い。

町人A、町人B…人里住まいの仲のいい大工。しょっちゅう仕事終わりに呑みに行く。今度の花見では秘蔵の焼酎を開けて、大工仲間で楽しむつもり。

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