人修羅とガラクタ集めマネカタが行く 幻想郷紀行 作:tamino
八雲藍は結界内の戦力調査のために、結界に向かう。
しかしそこで待ち受けていたのは、
場の霊力の乱れ、今にも破れそうな結界、謎の妖怪の死骸と、
トラブルがてんこ盛り。
藍はなんとか一つ一つ片付けていき、ようやく結界内の調査を始めるのだった。
一方そんな藍の苦労もつゆ知らず、
シン一行は、花見をするために、白玉楼にお邪魔していた。
シン「……というわけです」
冥界の白玉楼へ花見をしにやってきたシン一行。
つい先ほど客間に通され、
たった今、主人の西行寺幽々子に自己紹介を済ませたところだ。
西行寺「あらあら、それでわざわざ幻想郷に……
はるばる遠い所からご苦労様~」
シン「えっ?あっはい。……お気遣いありがとうございます」
先ほど妖夢さんに話した内容と同じことを話したのだが、
特に驚いてはいないようだ。
事前に妖夢さんからあらましを聞いていたからなのか、
それとも単に細かいことは気にしない性格なのか……
西行寺「それで私たちは何をしてあげればいいのかしら~?
お花見するだけだったら、特に何か協力することもない気がするのよね~」
シン「そうですね……元々こちら、白玉楼にお邪魔する予定はありませんでしたから、
何かしていただきたい、といったことはありません。」
シン「ですが、しいて言えば、ボクたちはここに来たばかりで、土地勘がないので
花見ができる場所なんかを教えていただければ嬉しいです」
優しそうな人だし、せっかくなら聞きたいことを聞いてみよう。
そう思ってシンは幽々子に尋ねてみた。
西行寺「そうねぇ。この辺で一番いい場所って言うと、うちの庭じゃない?
ほら、貴方達がさっき座ってたところ」
ピク「確かにあそこからの眺めは、すごくよかったわ」
ガラ「庭も凄くきれいだったしね。まるで水が流れてるみたいだったよ」
丁寧に手入れされた庭は、見るものの心を癒す、と、
昔テレビで見た気がする。
枯山水というのだろうか?
白玉楼の庭も同じつくりになっていた。
庭一面に敷き詰められた砂利には、等間隔で平行な線が引かれていた。
まるで渓流の流れのようだ。
静止している空間のはずが、水の動きが見えてくるというのは、とても不思議だ。
ところどころに配置された適度な大きさの岩も、
とても良いアクセントになっている。
小さいころに親に連れられて渓流釣りに行ったのを思い出す。
西行寺「あら、よかったじゃない、妖夢。
貴女の仕事が褒められたわよ~」
妖夢「はい。皆さん、ありがとうございます」
ガラ「あれ?なんで妖夢さんがお礼を言うの?」
西行寺「あら、聞いてなかったのね。この子はここの庭師なのよ。
あの庭もこの子が毎日手入れしてるのよ~」
ピク「あら、すごいわね」
妖夢「もったいないお言葉、ありがとうございます」
シン「確かにあんなきれいな庭で、きれいな桜を見ながら花見だなんて、
最高の贅沢ですね」
西行寺「でしょ~?それじゃ今日はウチでお花見していく?」
シン「ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします」
西行寺「わかったわ~。でもその前に……」
シン「?」
西行寺「シンさんて言ったかしら。あなたお強いのよね?」
シン「まあ、それなりに場数は踏んでますが……それがどうかしましたか?」
西行寺「やっぱりね~。それじゃシンさん。
妖夢とちょっと戦ってみてもらえないかしら?」
シン・妖夢「へ?」
いきなりの話でシン、妖夢の両名が目を丸くして驚く。
まさか花見の話から手合わせの話になるとは、想像していなかった。
妖夢「ゆ、幽々子様!何でそうなるんですか!?
いきなりそんなこと言って、お客様に失礼でしょう!?」
西行寺「え~?だってシンさんってデビルサマナーなんでしょ?
どんな戦いするのか見てみたいじゃない」
妖夢「そ、そんな理由で……」
焦る妖夢さんを見て、幽々子さんはケラケラ笑っている。
普段からこんな調子なのだろうか?実にほほえましい。
西行寺「シンさんはどう?別にいいわよね~?」
シン「あ、はい。こちらとしては構いませんよ」
妖夢「し、シンさんまでそんなことを……」
シン「でも、少し不安ですね」
西行寺「?……何か心配な事でもあるの~?」
シン「いえ、大したことではありませんが、妖夢さんは剣術を使うんですよね?」
妖夢「え、ええ」
シン「ボクも剣を使うことはありますが、
剣術なんて言えるほど大したものじゃありません。
ただ振り回すような戦いしかできないです。
だから形式的な試合なんて、できないと思うんですよね」
シンの戦闘スタイルは、どう言ったものか、まさに我流、といった感じだ。
先ほど話したように、霊剣を作り出しての斬撃、そこからの衝撃波。
口からの各種ブレス。
体の各所から魔力を放出してのレーザー、ビーム攻撃。
補助技として身体能力向上、逆に相手の身体能力低下。
さらには全属性魔法の詠唱。もちろん回復魔法も。
……このように、考えられる戦闘行動はすべて採ることができる。
普段はすべて解禁することはなく、最大でも8つほどしか技は使わないのだが、
やろうと思えばすべての技が使える。
正に千変万化。対応できない状況はない。
しかし今回のような手合わせなどは初めてで、
なまじ対応力がある分、何をどうしたらいいのやらわからない。
西行寺「あら、心配いらないわ~。自由にやって頂戴」
西行寺「うちの妖夢もそんなに弱くないし、ある程度無茶しても大丈夫よ~。
ね、妖夢?」
妖夢「ハァ……。またそんなことを……
シンさん、気乗りしないなら断っていただいても結構ですよ?
幽々子様はこうやって私をからかっているだけですので……」
西行寺「まぁ、ひどいわ~。せっかく主人が実力を認めているっていうのに~」
妖夢「そ、そういうつもりでは……」
このままでは妖夢さんがいじられ続けてしまう。
流石にそれは気の毒なので、そろそろ話を進めることにしよう。
シン「わかりました。お受けしますね。
ただ、完全に自由に、というと、どうしたらいいか迷ってしまいますので、
形式だけ決めてもらえませんか?」
西行寺「助かるわ~。それじゃこうしましょ」
そう言うと、幽々子は手合わせの条件を提示してきた。
まず勝敗は『勝てないと思った方が負けを宣言すること』
勝負には用意した竹刀を使う事。武器はそれ以外使用不可。
場所は白玉楼の道場で。会場が破損しない程度に頑張ること。
随分と、まあ、なんというか、ゆるい。
まあ本人が、楽しみたいから、と公言してる以上、
こちらの動きだけでも見れれば満足なのだろう。
シン「わかりました。それで問題ありません」
妖夢「私もかまいませんが……本当にいいんですか?シンさん」
シン「大丈夫ですよ。
この程度で花見の場所を提供してもらえるなら、安いものです」
妖夢「そうですか……。それでは、よろしくお願いします」
・・・・・・
会場の道場まで足を運んだシン一行。
着いて早々、妖夢さんが約束の竹刀を貸してくれた。
妖夢さんが手合わせの準備をしたい、とのことなので、
話でもしながら、のんびり待つことにした。
ガラ「シン君!その竹刀ってカタナ凄いね~!練習用なんだよね?」
シン「そうだよ。昔の人は、慣れるまではこれで練習してたみたい」
ガラ「切られても血が出ないなんて夢の様だねぇ。
拷問受けてた時は、みんな血まみれだったもんなぁ」
シン「あ―……ナーガの槍とか、ヤクシニーの双剣とかね……」
ガラ「これ欲しいな~。手合わせが終わったら聞いてみようかな~」
シン「一本くらい工面してくれるかもしれないね」
ガラ「だったらいいなぁ」
ピク「ところでシン、勝負だけど、どうするの?」
シン「どうするって、何が?」
ピク「いくら今弱くなってるって言っても、
あの子よりはあんたの方が強いんじゃないの?
全力でやって大変なことになっちゃ、後味悪いわよ」
シン「まあね。ちゃんとその辺は考えてあるよ」
ピク「へぇ、どうするの?」
シン「技を使わないでやってみようと思うんだ」
ピク「うーん……まぁ、それならよさそうね」
シン「せっかく手合わせするんなら、自分の素の戦闘力を試してみたいしね。
いつもはスキルとか耐性で何とかしちゃってるし」
ピク「負けても死なない戦闘とか初めてだしね。いいんじゃない?」
・・・・・・
妖夢「皆様、お待たせいたしました。
こちらの準備はできましたが、シンさんの方は大丈夫でしょうか?」
色々雑談しているうちに、妖夢さんが戻ってきた。
何を準備してきたのかと思ったが、どうやら着替えてきたようだ。
道着に袴と、道場にピッタリな服装になっている。
西行寺「どう?こっちの服の妖夢もかわいいでしょ~?」
シン「はい、とってもかわ」
ピク「ええ、すごく似合ってるわよ」
妖夢「そんな……とんでもないです」
とても似合っていてかわいい、と褒めようとしたら、
ピクシーがセリフをかぶせてきた。
一体なんだろう、と思ってピクシーを見ると、
例の冷たい目で睨んできた。
非常に怖い。
西行寺「それじゃ、二人とも準備ができたみたいだし、
早速始めましょうか」
妖夢「ハイ!よろしくお願いします!」
シン「よろしくお願いします」
・・・・・・
道場の中心で、竹刀片手に妖夢さんと対峙する。
流石に剣術指南役。剣を手にした途端、隙が全く見えなくなった。
竹刀の奥に、体がすっぽりと隠れているような錯覚が起きる。
反面自分は型にハマっていないどころの話ではなく、
片手で竹刀をもって脱力している、構えと言っていいのかわからない待機姿だ。
変に慣れないことをするよりは、いつも通りの方がチカラを出せる。
そういった方針でいこうと思う。
シン「……」
妖夢「……」
お互いに向き合ったまま動かない。
二人とも相手の出方をうかがっているようだ。
西行寺「なかなか仕掛けないわねぇ」
ピク「下手に攻撃してよけられたら大変だものね」
ガラ「ボクまで緊張してきたよ……」
シン「……!」
静寂を破り、シンが動く。
やはりボルテクス界の流儀でいけば、やられる前にやる、である。
シンは大きく竹刀を振り上げ、目の前の妖夢に向かって全身でたたきつける!
ーーー『デスバウンド(モーションのみ)』!!
荒々しい一撃ではあったものの、
シンの一挙手一投足をくまなく観察していた妖夢には、あっさりとかわされてしまう。
大ぶりな一撃を繰り出した後には、必ず隙ができる。
妖夢はその隙を狙ってシンに反撃!
妖夢「(……入る!)」
妖夢の竹刀がシンに振り下ろされる!
その剣筋は完全にシンの屈んだ背中を捉えていた!
しかし……
シン「……!!」
バチィッ!!
なんとシンは妖夢の竹刀をかわさず、
竹刀を持っていない左手で、竹刀の『側面』を薙ぎ払った!
妖夢「!?」
通常の剣術ではありえない動き!
竹刀にしても真剣にしても、素手で攻撃中の刀身を弾くなど、正気の沙汰ではない。
まさかの反撃に妖夢は動揺してしまう。
竹刀が弾かれて体勢が崩れたところを見逃すシンではない。
シン「ジャッ!!」
シンは妖夢の方へと体を捻り、その回転を利用して竹刀を振り上げる!
妖夢「くっ!」
しかしさすがの妖夢、竹刀で攻撃を受ける……が
妖夢「(……強いっ!!)」
思った以上にシンの攻撃はパワーがあった!
このままでは押し切られる!
妖夢「……!」
バッ!!
押し切られる刹那、妖夢はその身軽さを活かして跳躍!
太刀筋に沿って跳ぶことで、シンのパワーを後方へと受け流した!
シン「……」
たった数秒の攻防だったが、
相手の力量は相当なものであると二人は認識する。
一旦仕切り直しだ。
二人はまた試合開始前と同様、距離をとって向き合った。
・・・・・・
西行寺「あらあら、なかなかやるわね~。シンさん」
ピク「当然よっ!私達ビックリするくらい戦ってきたんだから!」
ガラ「は~、二人ともすっごい動き……」
西行寺「でも妖夢はまだまだチカラを出してないわよ~。これは優勢かしらね?」
ピク「シンだってまだまだ本気じゃないわよ!」
ガラ「あぁ、こっちもヒートアップしてきちゃった……」
・・・・・・
向かい合い、次の攻め手を考える両名。
妖夢「……!!」
今度は先に妖夢が動く!
妖夢は持ち前のフットワークの軽さを活かして、
ジグザクとステップを踏み、シンへと近づく!
動きの振れ幅に緩急を持たせたステップ。
いつどの角度で打ち込んでくるのか、相手に掴ませない!
シン「!!」
まるでスパルナやバイブ・カハを思い起こさせる俊敏さだ
流石にこれではシンも攻撃を当てられない。
バッ!
妖夢は最後の一ステップで一気に踏み込み、
シンの脇腹を狙う!
バシィッ!
シン「ッ……!!」
シンはかわし切れずに、一撃もらってしまった。
竹刀ということもあり、ダメージはほとんどないが、
これが真剣であればいい一撃だったという事実は変わらない。
俊敏さにはある程度自信があったので、
素直に感心する。
シン「……!」
シンは攻撃後の隙を狙って攻撃しようとする
……が、既に妖夢はシンの制圧圏から出てしまっていた。
見事なヒット&アウェイだ。
妖夢「……」
妖夢の様子を見れば、息一つ乱れていない。
……
シン「まいりました」
妖夢「……へ?」
西行寺「あら~?」
ピク・ガラ「ええっ!?」
まさかこんなに早く決着がついてしまうとは。
そんなこと誰も想像していなかった。
ピク「ちょっとーーーっ!!何降参してるわけ!?」
シン「いや、だっていい一撃もらっちゃったし、
ボクの攻撃はもう当たりそうにないし……」
ピク「そ・う・じゃ・ないでしょー!?
アタシが応援してるんだから、勝つまでやりなさいよ!」
シン「いやいや、そうは言うけどね、妖夢さんかなり強いよ?
今の状態じゃサンドバックにされてお終いだってば」
ピク「あーもー!シンの根性なしっ!」
ピクシーはかなりハイテンションになっている。
あっさり降参してしまったのがよっぽど悔しいようだ。
頭から湯気を出しながらプンスカしている。
シン「まぁまぁ……ほら、でもさ、これで花見させてもらえるんだし、
気分切り替えていこうよ」
ピク「アンタまさか、
早く花見したくてギブアップしたんじゃないでしょうねぇ……?」
シン「……違うって」
まぁ花見をさっさとやりたかったのは間違いないが。
・・・・・・
妖夢「……」
西行寺「妖夢おめでと~。よかったわね~勝てて」
妖夢「……ありがとうございます」
西行寺「で、どうだったかしら?戦って見て」
妖夢「そう、ですね。
全く本気ではないということはわかりました」
西行寺「あら?シンさん本人は、
あのままやっても勝てない、って言ってたけど~?」
妖夢「それは……今の条件なら、ということだと思います」
西行寺「へぇ?」
妖夢「シンさんの腕力、スピードはかなりのものです。
しかし何というか、それがシンさんの強さではないんじゃないかと思って……」
西行寺「と、いうと?」
妖夢「最初のシンさんの一撃、覚えてますよね?」
西行寺「ええ。すごい激しい一撃だったわよね~」
妖夢「あれは本来もっと違う技なんじゃないかと思うんです」
西行寺「へ~……どうしてそう思うのかしら?」
妖夢「正直あんなわかりやすいモーションの攻撃なんて、当たりませんよ。
シンさんは実戦経験も豊富という事でしたので、それは尚の事承知してるでしょう」
西行寺「まぁ、言われてみればそのとおりね」
妖夢「でもあの時の動きには、淀みがなかった。
普段から慣れている動きということです」
妖夢「つまり、あの攻撃はあの状況、あの動きで
本来は『当たるもの』だったのではないでしょうか?」
西行寺「?」
妖夢「そうですね……例えば、
あの攻撃はもっと広範囲に被害を出せるものだったとか、
普段使っている武器がもっと広範囲に攻撃できるものだとか、
もしかしたら相手の動きを止めるような技を普段は使っているとか……」
妖夢「とにかく、シンさんは普段の動きのまま、
今回のルールで戦ったんじゃないでしょうか?
もっと本当は色々とできるのに、しなかったとか……」
西行寺「成程ねぇ。さすが私の先生だわ~」
妖夢「茶化さないで下さいよ……」
・・・・・・
西行寺「付き合ってもらっちゃってありがとね~。
約束通り縁側はお貸しするわ。存分にお花見を楽しんでちょうだい」
シン「ありがとうございます」
西行寺「いいのよ~。こっちの趣向に付き合ってもらったことだしね」
ガラ「あ、そうだ!妖夢さん、一ついいですか!?」
妖夢「はい?どうしたんですか?」
ガラ「さっき使ってた、竹刀ってカタナ、一本譲ってもらえないでしょうか!?」
妖夢「……竹刀を?鍛錬にでも使うのですか?」
ガラ「いえ、斬っても血が出ないカタナなんて珍しいじゃないですか!
お宝として欲しいなって思ったんです!」
妖夢「お宝……そう言えば皆さん宝さがしに来てるって言ってましたね。
竹刀はお宝なんて大層なものじゃないと思うんですが……」
ガラ「そんなことありません!ボクは初めてみましたし、珍しいですって!」
妖夢「う~ん……いいですか?幽々子様」
西行寺「まぁ、一本くらいならいいんじゃない?結構あったわよね?」
妖夢「はい。10本以上はあるので問題ありません」
西行寺「それじゃ気前よくあげちゃいましょ」
妖夢「わかりました」
ガラ「やった!!ありがとうございます!ありがとうございます!」
妖夢「どういたしまして」
西行寺「あ、そうだ。私もお花見に混ぜてもらえないかしら?
ここってなかなか刺激が少ない所だから、一緒に楽しみたいのよ~」
シン「もちろんいいですよ。お断りする理由なんてありません」
西行寺「ありがとね~。
それじゃ妖夢、お花見の用意を給仕幽霊に頼んできてちょうだい」
妖夢「はい。
……あの、私もご一緒してもよろしいですか?」
ピク「私達は構わないわよ?」
妖夢「ありがとうございます」
西行寺「貴女が自分から言い出すなんて、珍しいわね~。
何か聞きたいことでもあるの?」
妖夢「はい。先ほどの手合わせでの感想戦というか、
シンさんが何を考えて戦っていたのか知りたくて」
シン「その程度ならお話ししますよ。
ボクも妖夢さんがどんなこと考えてたか気になりますし」
妖夢「やった!ありがとうございます!」
妖夢は楽しそうに笑っている。
感想戦ができることを喜んでいる姿を見て、
とても真面目でいい子なんだなぁ、とシンはほっこりする。
ピク「……シン、わかってるかはわからないけど、口説いちゃダメだからね……」
シン「ええと……そんなことしないよ」
ピク「……アタシが傍で聞いてるから。
危ないと思ったらつねるようにするわ」
シン「……ハイ」
・・・・・・
こうしてシン一行と、白玉楼の二名は
一緒にお花見を楽しむこととなった。
美しく手入れされた庭園と、視界一杯に広がる満開の桜の中、
白玉楼で用意してくれたお酒と食事を楽しむ。
阿求に話したように、ボルテクス界の当たり障りない話をしたり、
妖夢と戦闘についての話で盛り上がったり、
とても充実したひと時を過ごすことができた。
こんなに幸せなひと時を過ごせるのなら、
何度でも花見を楽しみたい、と
しみじみと感じるシンであった。
……余談として、
その間シンはピクシーに十数回つねられ、
肌が腫れあがることとなった。
つづく
略称一覧
シン…間薙シン(人修羅)
ピク…ピクシー
ガラ…ガラクタ集めマネカタ
妖夢…魂魄妖夢(こんぱくようむ)。白玉楼住まいの庭師にして剣術指南役。とても真面目であるがゆえに、主人の幽々子からは日々からかわれている。従者としての能力も剣術の腕も上々。半霊という人魂のようなオプションがくっついているが、それは彼女がそういう種族だから。
西行寺…西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)。白玉楼の主。幽霊であるが、実態を持っており、ほとんど生者のようなもの。呪殺系の特技が使えるため、無耐性の者は敵ではない。幻想郷のパワーバランスの一翼を担う実力者。性格はおっとりとしており、人当たりもよい。紫ととても仲が良い。