人修羅とガラクタ集めマネカタが行く 幻想郷紀行   作:tamino

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※今回は前回までの台本形式から、台詞に名前を入れない通常形式に変えてみました。
色々模索中ということで、ご迷惑おかけいたしますm(__)m
もし何かそのことについてご意見くださるようでしたら、お手数ですが『活動報告』の方にコメントを頂けると嬉しいです!

・・・

あらすじ

幻想郷の地下にある旧地獄。そこに建っている地霊殿。

地底の顔役、古明地さとりは、謎の訪問者、
藤原行景(ふじわらのゆきかげ)と交渉した。


第27話 矯めつ眇めつ 1

「さとり様、どうだったんですか?お話は」

 

「フフ……とても興味深いお話でした」

 

 

客人を送り届けてきた燐に向かって、さとりはニヤリと微笑む。

 

 

「そう……ならいいんですが……大丈夫ですか?」

 

「なにがです?」

 

「いや、その……なんていうか、さとり様、普段と感じが違いません?」

 

「……そうね。ちょっと気分がいいから、それが出ちゃってるのかもね」

 

「そ、そうですか」

 

「あの男が話した内容。貴女にも説明するわ」

 

「え?あ、はい」

 

「ああ、大丈夫よ。他のみんなにはひとまず知らせないでも」

 

「しかし……」

 

「いいのよ。今はまだ、大々的にするべきではないのだから」

 

「まぁ、さとり様がおっしゃるのなら、私はそれでいいですけど……」

 

「それじゃよく聞きなさい」

 

「ハイ」

 

 

そう言うとさとりは、

先ほどの男が持ちかけた内容を説明し始めた。

 

 

「あの男……藤原行景と言ったかしら。なかなか面白い申し出をしていったわ。」

 

「面白い申し出、ですか」

 

「そう。あの男はね、長年の修行を通して、『動』の気質を、『静』の気質へと変換する法力を操れるようになったの。

……といっても、あの男のチカラはそれほど大きくない。お燐、貴女の半分のチカラもないでしょうね」

 

「へぇ、私のチカラの半分、か。人間にしてはそこそこといったところでしょうか。

でも人の気質を操るなんて、なかなか聞いたことのない能力ですね」

 

「ええ。私もそんな能力があるなど初めて聞きました。

でもあの男の心を覗いてみたら、それは嘘ではなかったわ」

 

「さとり様に隠し事はできないですものね」

 

「そう。そしてあの男は、その能力を使って、一定数の地底の妖怪を、地上に戻すことを望んでいます。私に面会しに来たのは、その後ろ盾が欲しかったみたいね」

 

「あー、えー、ど、どういうことでしょうか?」

 

「ま、それだけ聞けばそうなるわよね。

私もそれをあの男の口からきいたときは、捻り殺してやろうと思ったもの」

 

「そうなりますよね」

 

「でも心の中を覗いて、私も考えを改めたわ。なかなか興味深い内容だったの」

 

「さとり様がそこまでおっしゃるなんて、珍しいですね。

よっぽどいい話だったんですね」

 

 

お燐のその言葉を受け、さとりはニヤリと笑みを浮かべる。

普段の薄っすらとした微笑みとは違う、ギラリとしたものが見え隠れする笑み。

さとりにしては珍しい感情を感じ、お燐のカラダは心なしか固くなる。

 

 

「それは順々に説明するわ。

まずあの男が地底の妖怪を地上に進出させたい理由から。

 

あの男は、藤原氏の傍流が幻想郷に移り住んできた一族の末裔。

そして一族の願いは、幻想郷を出て、外の世界で高い地位を手に入れること」

 

「人間らしい理由ですね」

 

「そう。だからこそわかりやすい。愚かではあるけどね。

そしてそのために、あの男は幻想郷のチカラを利用しようとしているの。

幻想郷の中で、外の世界にはないチカラを有した存在を囲い込んで、外の世界での覇権争いに役立てようと考えた」

 

「うーん。それは不可能でしょう。管理人達がそんなの許しませんよ」

 

「そうよ。幻想郷はあくまで、外の世界で不必要になった存在を受け入れる受け口。

その中にあるものは何であれ、迷い込んだ外来人などを除けば、外の世界に戻すことはできないわ。基本的にはね」

 

「ですよねえ」

 

「でもあの男は、それを承知で考えた。なにか幻想郷で得たものを、外の世界に反映させる方法があるはずだ、ってね。

そしてある方法を考えついたのよ」

 

「ある方法?」

 

「あの男はまずこう考えた。『幻想郷から最低限、外の世界に出せそうなものは何か?』と。

そこで、ひとまず自分のカラダを外の世界に出すことに、目標を絞った。

 

でも普通に生活していたら、それすら手が届かない望み。ではどうすればいいか?

外の世界へ行く方法はいくつかあるけれど、有名なものは、博麗神社の結界を通る方法、管理人のひとりである八雲紫に頼む方法、偶然結界に空いた穴から抜け出す方法。

しかしあの男は、その3つは非現実的と考え、別の方法を考えた」

 

「……他に方法があるんですか?」

 

「貴女も知ってるはずよ。地上に最近、命蓮寺が出現したわよね?」

 

「え? ええ。一輪さんや村紗さんは知り合いですから当然知ってますけど……」

 

「そこの住職。聖白蓮。彼女がどこに封印されていたか覚えている?」

 

「あ……!」

 

「ええ。その通りよ。彼女は魔界に封印されていた。そして魔界はあらゆる世界とつながっている。あの男は、魔界経由で外の世界に進出しようと考えたのよ」

 

「そうか……い、いや、でも、やっぱり無理ですよ!理屈はわかりますけど……」

 

「そうね。貴女の考えるとおり、魔界は非常に危険な場所。

私でさえも、無事に行って帰ってこれる保証はないわ」

 

「そうですよ!それを私よりも弱い人間がやろうなんて無理です!」

 

「それがそうでもないの。あの男の能力は覚えている?」

 

「えーと……『動』の気質を『静』の気質に変える……でしたっけ?」

 

「そう。その能力があれば、理由なく襲ってくるような悪魔たちも、相手の精神を安定させることでやり過ごすことができると踏んだの」

 

「むむむ……確かに、そういった能力の使い方はできそうですね」

 

「まあ本人としても、それは賭けだと考えてるみたいだけどね。

その際に計画の成功率を上げるために、地底から外の世界に出たい者を、何人か護衛として連れて行こうとも考えているようよ。

そうすれば当初の目的である、『幻想郷のチカラを外の世界に反映させる』という目標も達成できるわ。ハイリスクハイリターンというやつね」

 

「なかなか無茶なことを考えますね……

その護衛として着いていった者が、外の世界で役に立つってわけですか」

 

「ご名答よ」

 

「なるほどですね……あ、でも、それだけなら、なんでわざわざ『地底の住人を地上に移住させる』なんて話が出てくるんですか?

そんなことする理由はないように思えますけど……」

 

「そう。確かにその計画がうまく行けば、あの男の目的は達成されます」

 

「だったら……」

 

「でもね、お燐。その計画は100%失敗するわ」

 

「え、ええ!?なんでそう言い切れるんですか!?」

 

 

驚くお燐を見て、さとりは自分の頭上を指さす。

そして次に右、左と指の方向を変え、最後にお燐に指を向ける。

その行為を理解できず、燐は首をかしげる。

 

 

「??? え、ええと、一体どうしたんですか? さとり様?」

 

「いつでも、どこでも、あらゆるところから、私達を監視するものがいるわ」

 

「……」

 

「それで合っているわ。幻想郷の管理人、八雲紫よ」

 

「そうか、それで……」

 

「私くらいの実力と能力があれば、あの妖怪が監視しているかどうか、判断することができる。ちなみに今現在、あの妖怪の監視の目がないことは確認済みよ。

でもあの男程度の実力では、監視の有無に気づくことはできない」

 

「幻想郷の住人を魔界経由で連れ出す、なんて、八雲紫が許すはずないですよね」

 

「そういうことよ。

だからそのままではあの男の計画は100%失敗する。魔界を通って外の世界に出ることができたとしても、それに気づかれれば最期。どこにいようが連れ戻されるか、処分される」

 

「それじゃ、その計画は破たんしてるじゃないですか」

 

「そうよ。そのままでは、ね。

でも八雲紫の影響をすり抜けることは可能よ。2つの条件を満たせば」

 

「ふ、2つの条件……?」

 

「ええ。まず1つは、魔界を抜け、外の世界に出るまでに、八雲紫に気づかれないこと。

もう1つは、外の世界に出たあの男を、幻想郷に連れ戻す、もしくは処分することに障害を作ること」

 

「ええと……すみません。いまいち理解できません」

 

 

燐はさとりの言うことが理解できず、頭をかく。

言っていること自体はわかるが、その真意がつかめないのだ。

 

何故、八雲紫に気づかれてはいけないのは、外の世界に出るまでなのか?

八雲紫が障害を感じることとは、何なのか?

 

 

「私も貴女と同じように思ったわ。そして、実際あの男の考えを読んで、感心したわ」

 

「……なかなか頭が回るようですね」

 

「権力欲というものは、人間の能力を最大限に引き出すのかもしれないわね。

……順に説明するわ。まず八雲紫にばれない期間が外の世界に出るまで、というのは、博麗大結界が関係しています」

 

「博麗大結界……」

 

「そう。博麗大結界の機能は知っているわね?」

 

「はい。常識と非常識を分ける結界、でしたよね」

 

「その通りよ。魔界は幻想郷ではないとはいえ、非常識の領域。つまりは『こちら側』の世界。そこを越えるまでは、八雲紫のチカラは十全に発揮されます。

しかし外の世界に出てしまえば、結界の中ほど簡単にチカラをふるうことができなくなるわ」

 

「つまり、魔界を抜ければ八雲紫の支配力が弱くなる、と」

 

「そういうことね。外の世界に出てしまえば、少なくとも片手間でこちらに呼び戻すことはできなくなる」

 

「でもそれだけでは……」

 

「そうね。それだけでは何も解決しない。

そこであの男を連れ戻す、もしくは処分することに対するデメリットを設定する必要が出てくる。

八雲紫が抱えているのは、幻想郷から抜け出た数名を処分する、という幻想郷の管理人としての役割よ。その役割と天秤にかけるほど重い理由ができれば、外の世界に出た者たちは干渉されることが無くなる」

 

「むむ……理屈としてはわかりますけど、それは現実的なんでしょうか?」

 

「少なくとも、外の世界に出ていった者たちに関しては、その後に幻想郷に大きな影響を与えることはなくなるわ。つまり、正直に言えば、『連中を連れ戻す、もしくは処分するメリットはほぼない』という感覚のはずよ。

つまり、やらなきゃいけないからやる、というだけで、やらなくても大きな問題はないのよ」

 

「言われてみればそうですね。ほっといたってこっちには関係ないか」

 

「そうね。だから設定するデメリットは、そこまで重いものでなくてもいいはずよ。

でも、そうは言っても、八雲紫はああ見えて責任感が強いわ。

天秤に乗せる条件には、ある程度の重みをもたせてやる必要はある」

 

「……それで、その条件、デメリットというのに、私達が関わってくるんですか?」

 

「察しがいいわね。正解よ。

もっと言うと、あの男が魔界から出るまで八雲紫の気を引く役割も担うわ」

 

 

……大分頭が混乱してきた。状況を整理してみよう。

 

あの藤原行景(ふじわらのゆきかげ)という男は、外の世界で一族の名声を高めることを目的に、こちらに接触してきた。

 

そのための第一歩として、自身が幻想郷から脱出することを目的とした。その際、幻想郷のチカラあるものを何名か連れて行けるのが理想だ。

 

それが達成できる方法として、ハイリスクだが、魔界経由で外の世界に脱出する方法を選んだ。彼の能力があれば、不可能ではない。

 

しかしその際に障害となるのが、幻想郷の管理人、八雲紫の存在。彼女はその行動を邪魔してくるだろう。無策では100%計画失敗だ。

 

そこで追跡を逃れる条件として、2つの障害をクリアする必要がある。

ひとつは、博麗大結界を抜けるまで彼女に見つからないこと。

もうひとつは、外の世界に出た彼らに手が出せないようなデメリットを用意すること。

 

で、そのふたつをクリアするために、私達のチカラが必要になるということだ。

 

……しかしここまでの話では、私達にとって、一番重要なことが言及されていない。

 

 

「本当に優秀ね。お燐。その通りよ。

話の流れの理解はそれで完璧。

そして、ここまでの話では、『私達が協力する理由』が全く出てきていない」

 

「……はい」

 

そうなのだ。

私達は慈善事業などする気はない。むしろそんな連中とは対極の存在だ。

だったら主人であり、地底のまとめ役でもある、さとり様が、この話に乗る理由は何か。

それはこれから話されるのだろう。

 

燐はごくりと生唾を呑む。

話の大きさも、自身の感じる緊張感も、今までに感じたことがないものだ。

 

さとりの語る、あの男の計画は、詰めの段階に差し掛かっていた。

 

 

つづく


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