人修羅とガラクタ集めマネカタが行く 幻想郷紀行   作:tamino

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人里に着いたばかりでどうしたらいいかわからないシン一行。
そこに天人の比那名居天子が現れ、なぜか行動を共にしてくれることに。
天子の助言を受け、人里の顔役の稗田阿求と面会、話をつけることに成功。
活動許可と拠点、資金を手に入れた。


第3話 人修羅一行 宝探しを始める

シンが稗田家から出てくると、天子が待機していた。

交渉が終わるのを見計らって戻ってきたのだろう。

 

天子「あ、出てきたわね。うまくいった?」

シン「ああ、大体思ってた通りになったよ。お金も宿も手配してもらった」

ピク「あの阿求って子には驚いたわね~。まだ子供なのに当主だなんて」

ガラ「すごいしっかりしてたよね」

天子「そりゃそうよ。アイツは1200年前から転生を繰り返してる上に

『一度見たものを忘れない程度の能力』を持ってるの。

そこらの人間や妖怪よりよっぽど賢いわよ」

シン「へぇ……転生か……」

 

1200年前ということは平安時代が始まったくらいだろうか。

その時代から転生を繰り返し続けていて、しかも見た物は忘れないという。

なんともすごい話だ。

それにしても、さらっとそんな話が出てくるあたり、

ここはシンの居た世界とは別物なのだろう。

 

天子「それじゃさっさと移動しましょ。私もどんなところ紹介してもらったか気になるし」

 

人修羅移動中……

 

ピク「ねー、ここの人たちの『何とかの程度の能力』って言い方変わってるわよね」

天子「これはまあ幻想郷の慣習みたいなものよ。

自分はこういうやつだ、って説明するのにわかりやすいのよね。

とはいえ自己申告だし、本当の能力は本人しか知らないから、あまりアテにできないけど」

ピク「へー、名刺みたいなものかしら?」

ガラ「なんだかおもしろいね!そしたらボクの能力は何になるのかな?」

ピク「『ガラクタを集める程度の能力』とかどう?」

ガラ「えー……なんだかそのまんまだなぁ……」

シン「あ、着いたね。地図によると、あの宿がそうみたいだ」

 

人修羅チェックイン中……

 

天子「ふーん、なかなかいい屋敷じゃないの。稗田家も奮発したわね」

シン「別に野宿でもいいと思ってたから、

こんなにいいところ紹介してもらうと、逆に申し訳ないな」

ガラ「ボクは野宿よりも宿の方がいいからありがたいな」

シン「まあね。たしかにそれはあるな。

久しぶりに人間らしい生活できそうだから楽しみだよ」

天子「久しぶりに……って、アンタ達どんな生活してたのよ……」

 

天子は疑いの視線をこちらに向けている。

……余計なことを話して追及されるのも面倒だ。

あまりボルテクス界の話は出さないほうがいいかもしれない。

 

ピク「私達にも色々あったのよ」

 

流石ピクシー。ナイスフォロー。

 

天子「それにしちゃ緊張感というかオーラというか、そういうのが感じられないわね」

シン「まあまあ。そんなことよりも、これからどうするか話し合おうよ」

ガラ「そうだね!早くお宝探そう!」

天子「なんか話をそらそうとしてない?……まぁいいわ。

そもそもお宝っていっても、実際どんなものが欲しいのよ?

それがわかんないことには方針も何もないわよ」

ピク「えーと、今まで見つけたのはオサツとか食器とか……」

天子「は?」

ガラ「あとは看板とかマネキンとかもだね!あれはなかなかのものだったよ!」

天子「看板……?マネキン……?アンタ達私をからかってんの?」

シン「まぁそう思うのは無理もないけど本当なんだ。

元の世界では全部骨とう品扱いだったからね」

天子「えー……」

 

天子はがっくりと肩を落とす。どうにも拍子抜けだったからだ。

 

天子としては、

『〇イダースよろしく、お宝求めて地底に突入する』だとか、

『〇パン3世ばりに金庫に潜入する』だとか、

そういったスリルとドキドキの冒険ができると思っていた。

 

大体このシンとかいう自称デビルサマナーについてきたのも、

暇つぶしにちょうどいいと思ったからだ。

それなのに、探しに行くのは日用雑貨程度のものというのだから

肩透かしもいいところである。

 

天子「あ―……そんなのでいいんだったら、人里の雑貨店でも見てみればいいんじゃない?」

ガラ「やっぱりこっちにもお店があるんだね!!紫さんの言ったとおりだ!!」

ピク「そう言われると、ここに来るまでにそれっぽい家が結構あったわよね。

それじゃまずはそこに行きましょうか」

ガラ「よーし!それじゃレッツゴー!」

天子「ハァ……」

 

天子はどうやら乗り気ではないようだ。

せっかくの旅の道連れが不機嫌なのもバツが悪い。

そう考えてシンは声をかけてみる。

 

シン「……もしかして比那名居さん乗り気じゃない?」

天子「そりゃね。ちょっと肩透かしだったわ」

シン「……もしつまらないと感じてるなら、ついてきてもらわなくても大丈夫だよ。

ボクたちだけでもなんとかできると思うし」

天子「変に気を遣わなくていいわよ。

つまらないと思ったら勝手にいなくなるから」

シン「それはそれで気を遣うなあ……ま、自由にやってよ」

天子「言われなくてもそうさせてもらうわ」

 

シンの態度を受けて、天子は訝しむ。

 

このデビルサマナー、よほどの変わり者だ。不自然なほど人が良すぎる。

幻想郷に来た目的がいまいち理解できないことといい、ネコをかぶってるのかもしれない。

 

大体『よその世界から来た』とか平然と言っているが、それは大変なことだ。

八雲紫クラスの実力者でもなければ、世界間の移動など不可能。

いや、八雲紫ですらそんなことできないかもしれない。

 

何かを隠していることは明白だし、それが幻想郷を滅ぼすほどのものである可能性もある。

テキトーな理由付けで、変なことしないように見張る、なんて言ったが、

本当にその必要があるのかもしれない。

 

……ま、幻想郷の将来がどうのこうのというガラでもない。気楽に構えていよう。

 

天子「なるようになるでしょうし、楽しむだけ楽しみますか」

 

天子はその自由奔放な性格からは想像できないが、非常に頭がいい。

だからこそ、シンが色々と隠していることと、相当な実力者だということ。

そのどちらも推測することができた。

しかし結局は何をするでもなく興味の向く方に意識が行ってしまうのが玉に瑕である。

 

ピク「ちょっとアンタ達!何コソコソ話してるの!?さっさと行くわよ!」

シン「そうだね、待たせてごめんよ。それじゃ比那名居さん、出発しましょう」

天子「はーい」

 

人修羅移動中……

 

ガラ「こっ!これはすごい!!……ああっこっちもすごいぞ!」

ピク「はー、面白いものがたくさんあるわね!」

店主「いや~、こんなに喜んでもらえるとあっしも嬉しいねえ!」

シン「すいません……店内でこんなに騒いじゃって……」

店主「いやいや、気にしないどくれ!思う存分見ていってよ!ハッハッハ!」

天子「しかし本当に嬉しそうねぇ……唯の雑貨屋なのに……」

シン「ハハハ……ガラクタ君はこういうのに目がないからね。ピクシーも楽しそうだし何よりだよ」

 

目をキラキラさせて雑貨を手に取る二人。そしてそれを見てほほ笑むシン。

なんとも平和的な光景である。

 

しかしこのデビルサマナーは商品も手に取らず、

二人の様子を見ているだけで楽しいのだろうか?

そう思い天子は声をかける。

 

天子「あんたはどうなのよ?楽しんでるの?」

シン「ボクはみんなが楽しそうならそれでいいよ」

天子「アンタ、ほんとに変わってるわねぇ……」

シン「ん?そう?そんなことないと思うよ」

天子「アンタねぇ……まあいいわ」

 

ガラ「シン君!天子さん!見てよこのヤカン!面白い形してるよ!これ買ってく!!」

ピク「アタシはこれ欲しい~!キョウトの古根付だって!かわいいわ~」

シン「よし、じゃあ二人ともそれでいいかな?店主さん、お勘定を」

店主「ヘイ!毎度あり!」

ガラ「シン君!ほかの店も見にいこーよ!」

ピク「アタシももっとショッピングしたいわ~」

シン「それじゃ色々と見て回ろうか」

店主「毎度あり~!また来てくださいね!」

 

人修羅買い物中……

 

ガラ「いや~、大漁大漁!!こんなにお宝が集まるなんて!」

ピク「アタシもつい買いすぎちゃったわ~♪」

シン「二人とも買ったねぇ……」

天子「で、アンタは何も買わなかった、と」

シン「まあね。二人があれだけ買ったんだから、ボクはそれを見て楽しめれば十分だよ」

ガラ「そうそう!ボクが厳選したお宝セレクションがあればいつまでも楽しめるからね!

一緒に楽しもうね!」

シン「確かにこれだけあれば当分は楽しめそうだね」

ピク「アタシもこんなに買い物できて満足よ~♪」

シン「今日はもう十分楽しんだし、宿まで帰ろうか。ええと、比那名居さんはどうします?」

 

本当に楽しそうに話している3人を見て、毒気を抜かれてしまった。

色々と探りを入れようかとも思ったが、そんな必要もなさそうだと天子は判断する。

 

天子「……私は家に帰るわ。アンタ達、明日はどうするの?」

シン「そうだなあ……しばらくは人里をいろいろ見て回ろうかな。二人もそれでいいよね?」

ピク「シンがそう言うのなら、あたしは構わないわよ」

ガラ「ボクも賛成だよ!まだまだ見てみたいお店があるしね!」

天子「それじゃ私がいてもしょうがないわね。またどこか行く時はついてくから」

シン「ええと……そしたら人里から出るときは、比那名居さんに知らせればいいかな?」

天子「ああ、気にしなくていいわ。毎日様子見にくるから」

シン「へ?毎日?」

天子「そうよ。それじゃまたね」

 

さらっというと天子は飛んで行ってしまった。というかこの世界の人間は飛べるのか。

シンは若干驚いた。

 

しかしあの天子という子。毎日来ると言っていたが本当なのだろうか?

いくらなんでも暇すぎやしないか?

 

シン「う~ん……ま、気楽に行こうか」

 

紫さんが『世界が違えば常識も違う』といったことを言っていたが、

早速それを実感することになった。

些細なことで驚かされたり心が動かされるのは気分がいいものだ。

これも宝探しが好きな理由の一つである。

これから色々あると思うと、ここでの生活が楽しみになってくるシンであった。

 

 

つづく




略称一覧

シン…間薙シン(人修羅)
ピク…ピクシー
ガラ…ガラクタ集めマネカタ

天子…比那名居天子(ひなないてんし)。幻想郷の天界に住んでいる、自由奔放な天人。
たびたび人里に現れては、暇つぶしをしている。根はいい子。

店主…人里で雑貨屋を営むナイスガイ。その豪快で気前のいい性格から、常連客が多い。

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