フライハイト   作:†2pru†

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弱者と強者

「(まぁ、酒呑みとつるむだけじゃ俺の知らない技術を学ぶ機会は無いだろうし、ランバートならつまらない船旅はしないだろう。)」

 

とかも考えつつ、港に浮かぶ一隻の小型船へ乗り込む

 

この小型船は"コグ船"と呼ばれ、近場から近場への貿易に広く使われる、別称"ラウンドシップ"

オークを用い、所謂「鎧張り」と言う、外板を重ね合わせながら造られた構造は、機動性を犠牲に、耐久性と安定性を底上げされている。

コグ船はまるで、海賊船を真似るように船首と船尾が細くシェイプされ、戦闘用の塔楼が増設されている

通常、コグ船はマストは1本だが、2本付いてるコグ船も見かける。...マストを増やす事による変化は知らん。

長さとしては約30m、20~30人で運用出来るのが、小型船によるメリットだ。

 

 

とまぁ、解説をしていたら出港していた訳で。

 

「...馬鹿みたいに揺れるな、安定性が有るとは何だったのか。」

 

「酔わないだけアルバートはマシですよ、以前は新入りが吐きまくってたから。」

 

と、大柄の男の名はブラン・エルダール。

堅物で無口、かと思えば口を開けば気が良く、マイペースな甲板長。

 

「...さいですか。」

 

(なお、うp主も船に乗った事は一度有るが、酔い止めが無ければ即死だった。)

 

「...?」

 

ふと、黒いローブで服装と共に身を隠し、フードを深く被る人の姿が、半分上の空なアルバートの目を釘付けにする。

 

~負けか勝ちか、それは置いて、次の戦闘は多くを学べ~

 

アルバートの脳裏に、静かに響くその声に、思わず首を傾げる

 

「...は?」

 

 

「...アルバート、突っ立ってる暇があるなら構えてください。」

と、無機質な声が意識を呼び起こす。

 

「あ?...ああ。」

 

いつの間にか黒いローブの奴は霧のように消えていて、代わりに横に今にもビタ付けしてくるカラヴェル船が一隻。

 

「...何処の船だ?」

 

「知らんが、来た以上は歓迎しないとな。」

 

と軽いトーンでショートスピアを構えるランバートの眼は、まるで鷹のように鋭く、獲物を待ち構えていた。

 

 

そして、船と船を繋ぐ橋が掛けられ、船に乗り込み、船に乗り込まれ、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「...思った以上に揺れるな...!」

揺れの激しさに体勢がフラつくアルバートだが、持ちこたえつつ敵船へ

 

「よっと。」

敵に足を引っ掻け、敵を地に伏せて武器を奪い、応戦するブラン

 

「...」

静かに弓を構え、遠距離から援護射撃するシューヴァ

 

アクロバティックな戦闘は其処にはない、もししよう物なら...

\ノオオオオオオ...バシャン/

と、叩き伏せられ海に沈められるだろう

\ドワアアアァァ...バシャン/

 

「次に海水浴したい奴はどいつかな?」

と、素手で、船上の激しい揺れにも微塵も動じず、安定した戦いを見せるランバート

 

援護を続けるシューヴァに、襲い掛かる影が2つ

「...!」

1つの影に穿たれる槍

 

斬られる後ろ髪、シューヴァは冷静に、斬られた髪を襲い掛かってきた敵の眼に投げつけ、怯む隙に1本の矢をナイフのように敵に刺す。

 

「...てか、槍を投げるのかよ。」

 

冷静に言ってる場合でもなく、船上の揺れに対応できず、未だに押し込まれるアルバート

 

「(異常に揺れるわ敵はそれに慣れてるわ、どうした物か...)」

 

何とか一人倒せば、直後に何かが飛んできた

 

「...っ!」

 

弾けばそれは"EOH"と銘付けられた紫色の投擲用ナイフが

 

「...」

そして、紫髪碧眼の女性が、アルバートに近付く

 

「...チッ」

アルバートは、舌打ち1つして、少し後ずさる

 

「...それ以上は、下がらない方が良い。」

紫髪の女性は、武器を構えずして、アルバートに忠告する。

忠告の通り、後ろは無く、手摺と海だけだった

 

「...序でに、詠唱も抵抗も無駄だから。」

と、シューヴァとは違った、感情の籠っていない無機質な声、無表情でアルバートに忠告する。

 

「...じゃあ、何だ?殺りたいなら殺れよ、どうせ俺はただのお荷物さ...見ての通りのな。」

不貞腐れ、覚悟を決めたように空を仰ぐアルバート

 

「...ただの荷物なら、どうして狙われているのかな。」

と呟くと、シューヴァの矢が、紫髪の女性をアルバートから遠ざけるように穿たれた。

 

アルバートは咄嗟にランバートの船に乗り込み、紫髪の女性は追わず、一行をただ見つめていた。

 

「此くらいで良いだろ、逃げるぞ。」

ランバートの号令で船は再び動き、一行を乗せて敵船から遠ざかり始める

 

勿論敵船はそれを追いかける。

未だに緊迫した状況だが、アルバートはそれどころでは無かった。

 

何か貢献したわけでは無く、ただ味方の手を煩わせただけのアルバートは、灰のようになっていた。

不慣れと言うのもあれば、そもそも陸での常識も通用せず、色々な要素が絡み、船上での戦闘がまともに出来なかったアルバートは、とにかく押されて、疲弊した所をあの女性に制圧された。

これ程の失態をどうこうも出来ず、ただただ悔やみ、頭をもたげて溜め息を漏らすアルバート。

 

ふと、シューヴァに何気無い視線を向けると、一言冷たく放たれる。

「...私に何か言って欲しいのですか?ならまずは自分で考えてみてからです」

 

「...」

特にそう言う訳でもなく、予想もしていない一言に、一層悔恨の念に浸るように顔を俯け、また溜め息を漏らす。

 

 

「まぁ、何事も先ずは経験、反省もしているし良いんじゃないか?」

ともフォローする声も有るが、アルバートはそんな声も耳に入らなかった

 

~...ただただ船に揺さぶられて、何も出来ないまま制圧された...まるでただ転がるだけの樽じゃねぇか...~

 

その思考が、ただただ頭を駆け巡る。

 

「...戦闘から学んで反省するのは良いけど、1度こうなれば随分深くまで落ち込むのがネックね。」

 

と、ぽつり呟く黒いローブの者

 

「......(...誰だ?)」

と、気になった声の方向にゆっくり目を向けるも、其処には黒いローブの者は消えていた。

 

「(......女?...)」

 

脳裏に言葉が1つ過る。

 

「...負けか勝ちか、それは置いて、次の戦闘は多くを学べ」

 

「......」

 

声の方向に声の主は居ないが、再び聞こえた声に首をゆっくり頷ける事しか出来なかったアルバート

 

 

 

彼の1つの冒険譚は、まだ始まったばかりだが、次は如何な苦難が待ち受けているのか。

 

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