魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

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 アニメのディエス、もうちょいなんとかならんのか・・・!?と思いながらテスト勉強を続ける今日、第七話を投稿でございます。


 正田作品はノベルゲームだからこそ面白い、はっきりわかんだね。


世界にはフラグってものがいっぱい転がっているんだ。ただ本人が気付かないだけで

「父さん?もうそろそろ、どこに向かってるか教えてくれないか?」

 

 

 山間に作られたトンネルを通る黒い高級車の中で、美少年が自分の親に今回の遠出の目的を尋ねていた。

 彼の名は千葉 修次(なおつぐ)数字付き(ナンバーズ)である『剣の魔法師』千葉家の麒麟児と呼ばれている少年であり、その実力は3mの間合いなら世界でも上位に入ると言われている。

 修次と真正面に座り腕を組みながら目を閉じているのは、彼の父であり千葉家の当主を務める千葉 丈一郎(じょういちろう)。その筋肉隆々たる偉丈夫といえる体からは年による衰えを全く感じさせない。

 

 

「商談だ。」

 

「父さんが直々に?」

 

「ああ、相手は「政狩家」だからな。」

 

「政狩って、あの「蘇った村正」と呼ばれる!?」

 

「そうだ。今回はお前の紹介も兼ねている。決して失礼のないようにしろ。」

 

 

 「政狩」の名は、一度でも刀に関わったことがある者ならば知らないものはいない。俗世には全く興味を示さず、ただ刀を打つ為だけに育てられる鍛冶師の家系。彼らの作品はどれも逸品であり、一部では数千万単位での取引が行われたともいわれている。修次も千葉本家に保管されている政狩の刀を一度見たことがあるが、他の刀との決定的な違いというものを一目で理解させられた。

 そんな政狩家だが、先程言った通り俗世に関わることがほとんどないため、その実態を知る者はあまりに少なく色々な噂も絶えない。「世に出回っているものは全て本作ではない」「一人で何人もの魔法師を相手にできる」「その家に迷い込んで帰ってきたものはいない」などなど、一部現実的ではないものもあるが。

 

 

「パイプを持っていたのか?」

 

「先代が偶然知り合ったらしい。それからは五年に一度こうやって我々が出向いて取引を行っている。」

 

 

 もはや信仰の域にまで達しかけている生きた伝説、それが刀鍛冶の頂点「政狩」なのだ。一体どんなところなんだと戦々恐々としていながらも、楽しみの方が勝っている自分はやはり千葉家の人間なんだなと自嘲気味の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 昼の中頃、車はある山の前で止まった。使用人が扉を開け丈一郎が車から降りるのに修次も続いていく。

 

 

「戻るまでここでまて。」

 

「はい、いってらっしゃいませ。」

 

「行くぞ、修次」

 

「ああ」

 

 

 そのまま二人は道の開けたところから山を登っていった。整備などされていない。ただ木が生えていないからここは通れるというだけの道なき道だ。

 

 

(周りにも町なんてものは見えなかった。本当に今の時代でこんなところに住める人間がいるのか?いや、あの政狩だ。俗世を捨てた人々だからこそ、至れるものがあるのかもしれない。)

 

 

 十五分も歩けば、開けた平らな土地に出た。そこには一件の木造の家があった。普通の一軒家よりは広いが二階はなく、誰もが予想する「昔の日本の家」をそのまま形にしたような家だ。そして、家の前には一人の男性が立っていた。自分の父のように筋肉隆々といった訳ではなく細身だが、それは無駄な肉を極限まで削り理想の肉体を身に付けているのだということが一目で判る。丈一郎とは別方向で年による衰えを感じさせない初老の男性はこちらが目の前に立つと、威厳に満ちた声で話し掛けてきた。

 

 

「久しくなるな。遠路はるばるよくおいでなさった。初見となる者もいるので名乗っておこう。私は現政狩家当主、郁磨の父である政狩龍馬だ。今日はよろしく頼む。」

 

「お久しぶりです龍馬さん。ではこちらも。現千葉家当主、千葉丈一郎。こちらは、」

 

「は、初めまして。次男の千葉修次です。よろしくお願いします。」

 

「ああ、礼儀正しくて結構。ここではなんだ、上がるといい。」

 

「はい、お邪魔します。」

 

「お、お邪魔します。」

 

 

(なんだろう、不思議な感じだ。身のこなしから只者じゃないことはわかる。だけど)

 

 

 それだけだ。希薄というか何というか、あまり存在というものが感じられない。目には見えているのに、周りに溶け込んでいるかのように実感できないのだ。

 

 

「分からないのだろう?」

 

「えっ」

 

「只者ではない、だがその存在というものが上手く捉えられずそれ以上のことが分からない。違うか?」

 

「いや、あってる。」

 

「なら心得ておけ。彼等は俺達とは別次元の存在だ。あらゆるものを捨て、己にとって唯一無二のものを極めた上位存在。今の俺達では決してたどり着けない境地に至った化物。それが政狩だ。だから俺達では彼等を正確に捉えられない。」

 

「・・・言い過ぎじゃないか?」

 

「いずれわかる。ただ彼らの怒りを買えば、首が飛ぶのは俺達の方だぞ。」

 

 

 それは自分への忠告や脅しではなく、まるで自分に言い聞かせて奮い立たせているように修次は聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「粗茶ですが、どうぞ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「ど、どうも。」

 

 

 居間に案内された修次たちは、そこでおもてなしを受けていた。アイナが出したお茶をいただき口に含む。昔ながらの緑茶の匂いが部屋を満たしていく。

 

 

「はじめまして。ワタシは当主郁磨の妻、アイナです。よろしくね。」

 

「あ、はい。はじめまして、次男の修次です。こちらこそよろしくお願いします。あの、失礼なのは重々承知なのですが、あなたは外国の方、ですよね?」

 

「ふふっ、まあこんな家の女が外国人っていうのも変な話よね。色々事情があってこっちに来たときにここの当主にあってね、ワタシから嫁入りしたのよ。どこの国かは想像に任せるわ。」

 

「へーそうなんですか。あ、変なこと聞いてすいませんでした。」

 

「別にこれくらいいいわよ、気にしないで。」

 

 

 修次がアイナと会話を弾ませている間、丈一郎はこの家の当主である郁磨との挨拶を済ませていた。

 

 

「お久しぶりです丈一郎さん。今回もよろしくお願いします。」

 

「いえいえ、こちらが買い取らせて頂く立場なんですからそう堅くならないで下さい。」

 

「そう言ってくれると助かります。片腕が無いのに鍛冶師の家の当主を名乗るのは、自分でも少し忌避感があるくらいなので。それはそうと、彼はあなたの?」

 

「はい、次男の修次です。まだまだ未熟ですが、剣の腕はそれなり以上と言えるほどになりますよ。まあ、あなた方と比べるとどうにも言えないかもしれませんが。」

 

「いやそんな、こっちは刀しか脳のない脳筋一族ですから。っと、はじめまして修次君、僕が政狩家当主の郁磨だ。そんな肩に力入れないで寛いでいってくれ。」

 

「い、いえ、そういうわけには。招いて貰った身でそんな・・・。」

 

 

(なんか、普通だな。もっとキリキリした感じだと思ってたんだけど、案外そうでもないっていうか。何処にでもある普通の家庭って感じというか。)

 

 そんなことを思いながらしばらく待っていると、龍馬が麻布の袋に入れた刀を二つ持って居間に現れた。

 

 

「品を持ってきた。商談を始めよう。」

 

 

 龍馬はそう言って座ると、麻布の紐をほどく。中から納刀された状態の刀を取り出し丈一郎に渡す。

 黒光りする漆塗りされた鞘に金で綺麗に装飾された鍔、そして鞘から抜かれた刀身。全てが一級品であり、刀身に関しては最早言葉にする事が烏滸がましいと思える程のものだった。一度納刀し、白鞘に納められたもう一本の刀を見るが、同じような感想しか湧き出てこない。修次にいたっては息をする事を忘れ、目が刀に釘付けになっている。

 

 

「これらは、どちらが打たれたものなのでしょうか?」

 

「黒鞘に納められたのが過去に僕が打ったもので、白鞘の方が半年前にオヤジが僕の息子と一緒に打ったものです。」

 

「息子さんと一緒に、ですか?それは、将来が楽しみですなぁ。」

 

「ええ。まあ、少し、というかかなりそればかりに夢中になってしまっているところがあるのですが。」

 

「確か、刀弥君でしたかな?物言わずでずっと剣を振っていましたね。」

 

 

 丈一郎の頭には鋭い目つきをした少年の姿が思い浮かんでいた。道場で素振りをしていたところに自分が挨拶をすれば、少し頭を下げただけで直ぐに鍛錬を再開する。五年前の彼でも、同年代では足元にも及ばない程の剣の腕を持っているのが分かった。今ではどこまでいっているのか。

 

 

「年はいくつになりましたかな?」

 

「今は十四で中学二年になります。ああ、でも魔法科高校に進学しようとしているみたいなんですよ。どうやら魔法に興味があるみたいで、適性もB+とかなり高かったんです。」

 

「そうなんですか。実はこの修次も今は魔法科高校の生徒でして、刀弥君が進学する頃には卒業してしまいますが。」

 

 

 郁磨は今のうちに、魔法科高校について色々と聞いておこうと考えた。アイナも同じことを思ったのだろう。アイコンタクトを取るとアイナから聞き始めた。

 

 

「ねえ、修次君。参考までに、どこの学校か聞いてもよろしいかしら。」

 

「は、はい。僕が行っているのは東京の八王子にある第一高校です。特徴は国立魔法大学への進学率が他校より高いことですね。九校戦での優勝経験もあります。」

 

「その九校戦っていうのは何かしら?」

 

「名前の通り、年に一度全国にある九つの魔法科高校が集まって行われる魔法の競技大会です。早い話が共同でやる体育祭と言ったところでしょうか。」

 

「へえ、かなりのエリート校なのね。その第一高校って。」

 

「でも、刀弥君は魔法適正がB+もあったんですよね?一校では魔法実技の方が優先されますので、彼なら簡単に入れると思います。」

 

 

 第一高校の入学試験は、論理七教科の筆記テストと魔法実技試験を受けることとなるが、実技の方が筆記より比重が大きいのだ。

 

 

「お前たち、その話は後にしろ。今はこちらが先だ。」

 

「あ、すまないオヤジ。話を折ってしまいすいません。」

 

「いえ、お気にならさず、この話は後ほど。それでは刀の方に戻らせてもらいますが、これらの銘は?」

 

「前に言った通り、私達が売るものは全て本作ではない。本作ではないものに銘はつけない主義だ。」

 

「そうでしたな。額はどのくらいをお望みで?」

 

「三百万あればいい。高いなら下げるが。」

 

「いや、現代の価値から考えてもそれは低すぎます。ましてやあなた方政狩の打った刀を二本もとなると桁が一つ増えて当たり前というくらいですよ。」

 

 

 第三次世界大戦以降、伝統品の職人はその数を急激に減らしていった。今では政府の保護の下に品を生み出し、博物館に展示されるのが普通だ。買い取ることはできるが一世紀近く前とは比べられない程の値段がつく。そんなご時世で刀を買うとなると、たとえ上級階層の人間でも躊躇してしまうほどとんでもない額が付くはずなのだ。

 

 

「そこまではいらん。むしろこの取引のおかげで金銭なら余っているくらいだというのに。」

 

 

 だが、この家で普段使われるお金は日用品代と食料代、刀弥の学費、数年おきに行われる鍛冶に必要なものの取引のみ。旧時代の生活を送っている政狩家にとってはお金はあまり必要ないものなのだ。

 

 

「・・・わかりました。ですが、こちらも剣を扱うものとしての礼儀があります。ですので、表示額の倍、六百万でこれらの刀、買い取らせて頂きます。よろしいですね?」

 

「はあ、もうそれでよい。」

 

「では、取引成立ということで。金は前と同様に後日家の者に送らせます。」

 

 

 この後、丈一郎たちは郁磨とアイナの二人から魔法科高校について色々と聞かれたあと、満足した様子で帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「第一高校、東京の八王子・・・。あいつを頼ってみるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-ッ、はぁ、はぁ、っふ!」

 

 

 カンッ カンッ カンッ カンッ

 

 

 

 鉄を打つ

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、-ッ!」

 

 

 カンッ カンッ カンッ カンッ

 

 

 

 鉄を打つ

 

 

 

「うぅ、ァア!!」

 

 鉄を打ち続ける

 

 

 

 

 真打の儀 四日目、刀鍛冶は皮鉄を心鉄に被せる『造り込み』を終え、ついに山場となる『素延べ造り』まできていた。

 『素延べ造り』とは、造り込みでできた鉄を細長い四角に伸ばし、反り以外の刀の形を決める作業のことだ。なのでこの作業の重要度は他の作業よりも抜きん出て高く、ここで少しでも調整を誤ればできるものはなまくらのみとなってしまう。

 

 

(始めてから、いったいどれくらい経った?もう時間の感覚もおかしくなってきてる。魔力も底が尽きそうだ。そして、何よりも・・・)

 

 

 10kg近くある鉄を、刀の細さになるまで伸ばす。それも常に形を調節しながら。途轍もない時間がかかることは想像に容易い。そして時間が延びれば延びるほど、使う魔力も精神も大きくなっていく。

 

 

(-ッ!ダメだ、思考を絶やすな!常に考え続けろ!こんな状態で感覚で打ち始めたら、一瞬でなまくらに成り下がるぞ!区切りまであと少しだ、絶対にやりきれ!)

 

 

 

 カンッ カンッ カンッ カンッ

 

 

 

 思考を続けながら魔力を、そして思いを込めながら打っていく。

 

 切れ、切れ、全てを切り裂け。縁も定めも業も神秘も、全部切り裂いていけ。

 

 

 カンッ カンッ カンッ カンッ

 

 

 

 錬鉄を止め腕を下ろす。『素延べ造り』が終わった。このまま次の工程に移る。

 次に行うのは『火造り』。(しのぎ)と小鎚を使って、『素延べ造り』でできた地鉄を赤くなるまで熱しながら、刀の刃先となる部分を薄く叩き刀独特の断面を打ち出していく。しばらくすると少しずつ鉄の温度は下がっていくので、それに合わせて作業を進める。こうすることで、鉄にむらが現れないようにするのだ。最後に、船に入ったお湯につけて冷やすことで反りをつける。これで『火造り』は終わりだ。

 できた鉄を持ち上げて、出来具合を見ていく。

 

 

(細さは充分、けど反りが造ろうとしたものより少し小さい。断面はまっすぐ、心鉄にも歪みはなし。及第点はとれるだろうが、やはりまだ甘い部分もある。この体では初めてというのもあるだろうが。・・・まあ、とりあえず今日の作業、魔力を使う作業はこれで終わりだ。)

 

 

「ふう・・・。」

 

 

 ため息を吐いて、後ろに倒れ込む。ここまで長かった。頭は今も割れるように痛い。魔力はほぼ底をついた。

 それでも、しっかりできた。遂に真打の儀の山場を越えたのだ。

 

 

(まだやることはある。模様をつける『土置き』に『焼き入れ』、刀の腹に溝を入れる『桶入れ』の後に研ぎを済ませたら、最後に刀に名と命を吹き込む『銘切り』。土置きは一日置く必要があるから時間がかかるけど、これなら全然間に合う。)

 

「・・・やった」

 

 

 楽しかった。

 

 痛かったし、つらかったし、苦しかった。

 

 それでも何より

 

 刀を打つことができて嬉しかった。

 

 もっと打っていたかったと思うほどに

 

 刀鍛冶が楽しかったのだ

 

 

(もっと余韻に浸っていたいけど、そろそろ限界だ。体を拭いてもう寝よう。そして明日からも頑張ろう。今の俺ができる、最高の刀を造れるように)

 

 

 この四日、刀弥はずっと笑って眠れていた。夢でも刀を打つ姿が見られて、幸せの中にいることができるからだ。

 タオルを水につけ体を拭いたあと、もはや癖になりそうとまで愛着を持った藁の寝床で横になる。

 

 

「もうずっとこうしてたいなあ。」

 

 

 そんなささやかな願いをこぼしながら、この四日間で十回目の眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その願いは叶わない

 

 すでに物語の舞台は決しているが故に

 

 前日譚はこれにて閉幕

 

 運命が絡み始めるのはもうすぐだ

 




 次回で入学直前の話を書いたあと、遂に原作突入です。さーて、みゆきちとどう絡ませよっかねーゲヘヘ。


母「あんた、テスト赤点取ったらスマホ取り上げるからね。」


 勉強せねば・・・!
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