魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

9 / 21

 更新が遅れてしまい本当に申し訳ありません。まさか自分でもメリクリあけおめことよろハピバレなんて挨拶をする事になるなんて思いませんでした。何してたんだというのは聞いてくれないでいてくれたら嬉しいです。


 でも、こちらから一つだけ

 何で邪ンヌと師匠がこない!?(泣)


幸せの絶頂にある時、背筋が凍る感覚があったら気をつけな。そこから先は地獄だぞ

 

 

 

 七月某日の正午、遂にその日が訪れた

 

 刀弥が挑んだ政狩の伝統「真打の儀」、小屋に籠もらせ極限まで追い込んだ状態で行われる刀鍛冶。刀弥が小屋に入ってあれからもう十日、つまり今日は儀の期限の日なのだ。

 小屋の前にはもう既に龍馬、郁磨、アイナの三人が集まっていた。皆固唾を呑んで時計の針が重なるのを待っている。

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

 チッ チッ チッ

 

 

 誰も口を開かない中、時計の針の音だけが響いている。後数秒で針は12の数字の上で重なり儀の終わりを告げる。

 

 

 チッ チッ チッ

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

 チッ チッ チッ

 

 

 残り、三秒

 

 

 チッ チッ チッ カチッ

 

 

 パカッ

 

 

 ポッポー ポッポー ポッポー

 

 

 針が重なると同時に、時計に付けられた扉が開きその中から玩具の鳩が現れる。小屋の扉の上に掛けられた鳩時計が正午の時間を軽快な鳴き声で告げた。

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・ップ」

 

 

 沈黙を貫いた一同だったが、アイナがもう我慢出来ないと言うように吹き出した。既に腹を抱えて笑いをこらえている状態だ。それを何とも言えない表情を浮かべながら見ていた郁磨は、コレをずっと外させない父親、龍馬に向かって言葉をかけた。

 

 

「・・・なあ、オヤジ。もうそろそろ、本当にあの時計変えないか?いつもなら別に気にならないんだけど、真打の直後にコレっていうのは、その」

 

「・・・前にも言ったが、これは私の母君が少しでも我々が和むようにという想いから着けられたものだ。そして私の父である先々代はコレを外してはならないと厳命した。ならばこのままでいるしかなかろう」

 

「いや、それも知ってるし、理解出来る。だけど・・・」

 

 

 コレはないだろ!

 

 郁磨の頭に思い浮かぶのは、絶えなく笑顔を浮かべているがたまに訳の分からないことをしでかそうとする自分の祖母。

 

 

(あれは天然の塊のような人で、祖父ちゃんは祖母ちゃんのことになると凄く甘くなっていたよなー)

 

「それよりも、今は刀弥だ。開けるぞ」

 

「え、ああ、そうだな。おい、アイナもいい加減にしろ。毎回毎回もう慣れただろ」

 

「ップ、フフ、・・・ふぅ、ごめんなさい。けど、慣れるのは当分無理よ」

 

「はぁ、アイナのツボが変なのは相変わらずか。まあいいや。オヤジ、頼む」

 

「ああ。」

 

 

 懐から鍵を取り出し、扉に付けられたら鍵穴に差し込む。回すと同時に、がちゃり、と大きめの音が鳴る。そのまま龍馬は手をかけ、前に勢いよく押した。

 

 まず彼らの目に入ったのは、綺麗に整理された鍛冶場だった。埃やスス、炭のかけらも見あたらず、儀が行われる前より綺麗にされている。その次は、寝床として使われたであろう藁で編まれた敷物。その上には既に水洗いされた鍛冶用具やタオルが置かれていた。これらは、鍛冶師は刀を造るだけではいけないとしっかり理解し、これからの刀鍛冶のことも考えられているという証拠だ。今の年齢でこれを理解して実践出来ているのかと、郁磨と龍馬は刀弥の評価を改める。

 

 最後に目に写ったのは、長めの木箱を前に座禅をくむ刀弥の姿だった。今は目を閉じ小窓から漏れる陽の光を浴びて、まるで神々しささえ感じるような錯覚さえ覚える。そんな彼に三人とも一瞬動きを止めたが、真っ先に再起動した龍馬が呼びかける。

 

 

「刀弥」

 

「・・・」

 

 

 返事は無く、未だに目を閉じうつむいたままだ。二人の親が心配そうに目を向ける。不審に思った龍馬は刀弥の口元に耳を近づける。すると、息があるのを確認できた。

 

 

「眠っているだけだ。やはり、かなりの疲労だったのだろうな」

 

「そうか」

 

「よかったぁ」

 

 

 龍馬の言葉を聞き、二人とも胸をなで下ろした。アイナに至っては涙ぐんでもいる。

 

 

「おい、刀弥」

 

「・・・ん、うんん。・・・あれ、爺や?」

 

 

 もう一度、今度は少し強めに呼びかけると刀弥は目を覚ました。

 

 

「なんでここに?って、ああ、そっか。もう時間か」

 

「そうだ。真打ちの儀はこれで終わりだ。よく頑張ったな。できた刀は木箱の中だな」

 

「うん。結構、上手く出来たと思う」

 

 

 まだ眠たいのか、おぼついた足取りで刀弥は立ち上がり木箱を手に取った後、紐をほどいて中から何の装飾も施されていない抜き身の刀を取り出す。そのまま茎の部分を握り締め、己が集大成を持ち上げる。皆が期待の視線を向ける中、遂にその刀身が露わとなった。

 

 

 

 綺麗だ

 

 

 この言葉がそれを見た者全員の心を埋め尽くした。

 

 種類は現代で一般的な刀を指す「打刀」で、刀身は刃長二尺三寸(約70cm)、反り七分(約2cm)。そんな、ここにいる皆なら何度も見てきた普通の刀。だが()()が違う。アイナはこの()()を明確に言葉にする事はできないが、「それは形や構造、材質といった目に見える物ではない」という事だけはしっかりと理解出来た。

 

(本当に綺麗。何故そう感じるのか不思議なくらい。でも、これ、どこかで見たことがあるような)

 

 

 

 

「ねえ、爺や」

 

 

 唐突に刀弥が龍馬に呼び掛けた。そんな年でここまでの業物といえるべき彼の傑作を前に、思わず龍馬も身構えてしまう。

 

 

「どうした」

 

「風呂、行っていい?」

 

 

 だからこそ、こんな抜けた質問をしてくるとは予想しておらず、一瞬固まり言葉につまってしまった。おい孫よ、ここは感想などを聞く場面ではないのか?

 

 

「はぁ、行ってこい。話は上がってからだ」

 

「分かった」

 

 

 返事を聞くと刀弥は刀を木箱の中に戻し、さっさと小屋を出行ってしまった。いくら何でもマイペース過ぎるだろと思ったりもしたが、真打を終えても元気な証拠だと仕方ないといったふうに溜め息をこぼした。

 

 

「なぁ、刀弥」

 

 

 最後に、郁磨が刀弥の背に声をかけた。そして一つの質問をした。

 

 

「刀を打っているとき、お前はどんな思いをこめたんだ?」

 

「切れ」

 

 

 一拍の間も空けずに、答えを返す。

 

 

「総てを切り裂いてゆけ。ただ、それだけ」

 

 

 それが当たり前だと、それ以外に何がある。そんな風に言われた気がするような言い方だった。

 

 

「そうか」

 

「うん」

 

 

 今度こそ、刀弥は小屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 ヤッフゥー!久しぶりの風呂だー!

 

 

「・・・ふぅ」

 

 

 あーぎもぢいー、やっぱり何かやりきった後はお風呂に限るかな!疲れが全部流れていくこの感覚が最高かな~。

 ああ、物凄く楽しかった。ここが魔法科の世界だとか自分が魔術師だとか、そんなのどうでもよくなってしまう。やはり何処までいっても自分は「鍛治師」で「刀狂い」なんだと、死んでも変わらないんだと。それを再確認出来て良かった。今挑んだのは間違いじゃなかった。

 さて、頭の回転も戻ってきたところで、今回の反省会といこう。

 今回での最大のミスは、やっぱり自分の思い通りの反りに出来なかった点だろう。せめてあと5mmは欲しかった。もう一つは魔力の使用配分。魔術を扱った鍛治は初めてだとは言え、明らか使いすぎた面もあったし。上の2つの要因で、少し耐久性の面で不安が残ってしまった。コレはもしかしたら致命的な問題になる可能性もある。次までには絶対に克服しなければいけないものだ。鍛治は引き続き爺やに師事を請うとして、魔術は母さんに頼るとしよう。そろそろ魔術の訓練もしようと向こうもいってたし。

 次は誉めるべき点だ。自分で言うのも何だが、初の独り鍛治でここまでやれたのは、誇ってもいいと思う。いくら知識と前世の経験があるとは言え、この体での実践は初めてだったのだ。それであの出来なら、誰だって十分だと言うだろう。まあ、そこまでは言わないでも、自信に繋がったのは事実だ。

 

 こんな風に反省会を続けていき、半刻ほどで一段落ついた。まだまだ鍛錬不足ということを改めて実感した。これまで以上に精進せねば。

 そう言えば、父さんが最後によく分かんない質問してきたな。「どんな思いをこめたんだ?」なんて、そんなの「切れ」に決まっているだろう。刀は置物でもなければ装飾品でもないんだ。前世にもいたが「美しい刀を打ちたい」なんて言うやつは、腕がどれだけ良かろうと刀鍛治師としては三流もいいところだ。刀は元々切る為だけのものなんだ。美しさなんてものは二の次だし、いい刀を打てば勝手に付いてくる。なら何を目的に打つべきかは明白だろう。そんな当たり前のことを聞きたかった訳じゃないだろうし、うーん。・・・まぁいっか。そんな気にする事でも無いし。

 さーて、そろそろ上がりますか。これ以上湯に浸かっていたらのぼせちまう。あ、そうそう。刀の名前も結局あれにしたんだった。前世で初めて自分が打った作品。これまでも、そしてこれからも、あの時と同じ思いで行くために。

 

 

 

 

 骨は燃えると、含まれたカルシウムが炎色反応を起こし火が燈赤色(とうせきしょく)になる。だが、昔では別の色の炎になったという記録があるのだ。

 

 その色は『紫』

 

 赤と青の相反する二つの色を内包することから「高貴と下品」「神秘と不安」などの二面性を表す色とされ、骨を焼いた際のこの色の火が、おとぎ話に描かれる人魂の正体だともいわれている。

 

 それを知って、吉田蓮斗(前世の俺)は一つの誓いと共に、自分の作品に名を付けた。

 

 

 肉を焼いてもまだ足りぬ

 

 その骨が紫の火を上げるまで

 

 その火が我が魂となるまで

 

 鎚を握って降り続ける

 

 刀の名は

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 刀弥の姿が見えなくなったと同時に、三人とも木箱に入った刀弥の刀に視線を向けた。

 

 

「刀弥の奴、やってくれたな」

 

「そうだな。まったく、こんなモノを初の真打で完成させるなんて、僕達に喧嘩売ってるとしか思えないよ」

 

 

 そう言った郁磨の横を通り過ぎた龍馬は、木箱に戻された刀弥の刀を手に握り外に出る。小屋の近くに生えていた小さめの木の前に立つと、そのまま横に一太刀を振るった。すると木はゆっくりと斜めにずれていき、最後には見事としか言い様のない断面のみを残し地に落ちた。

 

 

「重心にほぼぶれはなし。だが、恐らく反りは描いていたモノより少し小さいな。それとやや耐久性に不安がある、といったところか。あえて挙げるとしてもこの程度だな」

 

「かなりの出来なんですね」

 

「ああ。だが、かなりの一言では済まされるものではないな」

 

「まだ十四で初の独り打ち。それでこの出来なんて、この目で見なければ絶対に信じないよ」

 

 

 アイナが矢張りと言ったように確認の言葉をかけた。郁磨も一度、龍馬から刀を受け取り試し斬りをし始める。

 

 

「でも、流石僕の息子。未だ教えていない本質までをも理解しているとは」

 

「本来はまだまだ早すぎるのだがな。まぁ、これならば特に問題はないだろう」

 

「ん?どういうこと?」

 

 

 二人の会話の意味が分からず、アイナは何のことか尋ねた。親子二人は「ああ」とそう言えばといった風に答えた。

 

 

「本質というか、心構えって言った方がわかりやすいかな」

 

 

 答えを聞いて、アイナは更に訳が分からなくなった。

 

 

「心構えって、一番最初に捉えるべきものじゃないの?」

 

「まあ、そうなんだけど。これについては別というか何と言うか」

 

 

 言いあぐねていた郁磨に、溜め息をつきながら龍馬が助け船を出した。勿論、それで郁磨が睨み付けるまでがいつもの流れだ。

 

 

「未だ未熟過ぎる身では、これは却って悪影響を及ぼす。だから先に技術を磨かせ、その後にこれを説く。基本はそうなのだが・・・」

 

 

 結果はご覧の通り、年からは考えられない技術とまだ誰も教えていない心構えを、今回の真打で見せつけられた。何がやらかしてくれるのではないかと覚悟はしていたものの、これは流石に予想の斜め上を行き過ぎた。

 

 

「して、その心構えとは?」

 

「あぁ、それは刀を打つ目的を間違えるなってことだよ」

 

「根源に至る為でしょ?」

 

「まぁ、僕たちはそうだけど、教えることは違うな。それは魔術師の目的であって、本来の刀鍛治とは全く関係のないことだからね。刀の本来の目的は「切る」ことだ。なら僕達鍛治師は切る為の刀を打たなきゃならない」

 

「だが、今の時代にその考えを理解出来る者はそうおらん。彼らにとって刀なぞ縁遠い物であり、触れる機会はあってもそれは芸術品としてであり、切る為の武器として見る人間なぞ皆無だろう。実際に現代での刀の役割とは芸術品であり、他の鍛治師が打つ刀も()()()()()()()()()()()()()ばかりだ。それを否定するつもりはないがな」

 

 

 現代において、刀が武器として使われることなど普通有り得ない。その役割は芸術品として人を魅了することだ。だから今の鍛治師の殆どが『美しさ』を欲する。だが、そもそも人が美しいと感じたのは、その切る為だけの武器としての姿なのだ。さらに言ってしまえば、切ることに特化した剣を勝手に人が美しいと思っただけ。ならば、刀に美しさを求めることは、はなから間違っているのではないのだろうか。

 

 

「と言っても、僕ら政狩家は普通からほど遠いからね。刀を芸術品と思う奴なんてまずいない。けど、最初からそればっかりに気にしていたら、思いが早って上手くいかない。だからまずは何も言わず技術を磨かせて、行き詰まったところにこれを教える、って言うのが伝統なんだけど・・・」

 

「初めてにも関わらず素晴らしい技術を見せつけ、切ることにも異常なまでの執着を見せた、と。刀弥って、刀鍛治の才能に溢れ過ぎ?」

 

 

 何度もしつこいかもしれないが、まだ十四の少年が本質を捉えた上で一本の刀を一人で完成させるなど、まず有り得ない話なのだ。それを「刀弥だから」ですませられる周りも周りなのだが。

 

 

「これ、真面目に先祖返りを疑うものだぞ」

 

「まぁ、真実がどうにせよ、刀弥の才は我々の想像を遥かに越えるものだということが分かった。これなら次からの鍛錬は段階を大幅に上げてもいいだろう」

 

 

 刀弥の地獄が確定した瞬間である。

 

 

「あ、ねぇねぇ」

 

 

アイナがそう言えばと言った風に声をかけた。

 

 

「そう言えば、その刀の名前って何なの?」

 

「あぁ、えーと

 

 

 

 

紫焔(しえん) 刀弥』

 

由来は知らないけど、紫の焔とは物騒な名だよ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 時は移り、ある夏の日のこと。場所は旧長野県との境に違い旧山梨県にある、住所も割り振られていない人里離れた小さな村。ここにはある家系の人間たちが住んでいた。

 

 その家系の名は『四葉』

 

 魔法の最高権威を持つ十師族の一つに数えられ、過去の事件から「アンタッチャブル(触れてはならない)」として恐れられている、現代最凶の魔法師一家。

 

 そんな危険極まりない場所の中央、四葉家の本邸の一室で一人の少女がその手にある写真をもって、ベッドに腰をかけていた。

 

 彼女の名は司波深雪

 

 現四葉家当主である四葉真夜の姉、深夜の娘であり、次期四葉家当主候補の最有力。その美貌は未だに幼さを残しながらますます磨きをまし、可憐さと神秘性をも持ち始めた。

 だが今はその顔には色濃く影が浮かんでいた。そしてその原因は自分が持つ一枚の写真にあった。

 

 どこかの体育祭の様子だろうか。二人の男女が体操服を着て腕を組みながら、いや、男子の方が無理やり組まされながら写っている。その証拠に、男子の方は体を離そうとしながらそっぽを向いていた。

 写真の女子はもちろん持ち主である深雪であり、これ以上無いほど楽しそうに笑っている。事実この頃は毎日が楽しかった。学校に行くのが、彼に会うのが、彼と一緒に話すことや授業を受けることやご飯を食べることが、心の底から楽しく感じたのだ。

 

 

 それを自らの手で壊した。

 

 

 自分の思う通りにならないと分かって、それが受け入れられなくて、彼の誇りを貶してしまった。その返答は、これまで感じたことのない大きな殺意と拒絶だった。彼とはそれから一度もあっていない。

 

 彼は今、どうしているのだろうか。

 

 

「政狩君・・・」

 

 




 今回のできはあまり自分的には納得できていません。それもあって遅れてしまったのですが、「これはちょっと・・・」て感じたなら感想に下さい。頑張って書き直してみます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。