九番目の少年   作:はたけのなすび

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感想下さった方々、ありがとうございました。

無事に帰国できましたし、速度が遅くなると思いますが、続けていきます。

では。


act-43

 

 

 

「ノイン!カウレス!」

 

 走りながら名前を呼ばれ、カウレスとノインはつんのめりそうになりながら止まった。

 見れば、通路の反対側で“黒”のライダーが手を振っていた。

 彼の傍らにはジークと、それに何故か“赤”のセイバーのマスターがいた。

 

「“赤”のランサーはどうしたんだ?」

「彼なら消滅した」

 

 ジークに答えたのはノインだった。

 獅子劫がひゅう、と口笛を吹き、ライダーとジークが目を丸くする。

 

「倒したのか?お前だけで、あのランサーを?」

「俺だけじゃない」

 

 違う、とはっきりノインは首を振り、カウレスは彼の背後から口を出した。

 

「ともかく、ランサーと……バーサーカーはもういない。それでオッサン、あんたこそセイバーはどうしたんだ?」

「あ、セイバーなら赤ライダーの相手してるよ」

「苦戦しているみたいだがな」

 

 獅子劫は肩をすくめ、親指で轟音響く通路の窓の外を指差した。

 赤と緑の二つの流星が、宙で何度もぶつかり合って、庭園を破壊して回っているようにしかカウレスには見えなかった。が、あれが”赤”のセイバーとライダーなのだろう。

 

「見りゃわかるが、あいつらは下でやりあってる。それでノイン・テーター。お前さんは確か、アーチャーのデミ・サーヴァントだろ?援護射撃はできないか?」

 

 鼓動しているのを確かめるように心臓に手を当ててから、ノインは獅子劫に向けて頷いた。今の彼は、デミ・サーヴァントの装備ではなかった。

 彼の槍が折れて、鎧が燃えたのをカウレス思い出した。修復するところは、見ていなかった。

 

「……一度なら。保証はできないし、当たるかわからない」

 

 手を握ったり開いたりしてから、ノインは答える。

 庭園に辿り着いてから、常にデミ・サーヴァントの姿で居続けていた彼が姿を変えないのは、転身できないからではないか、とカウレスはふと思った。

 “赤”のランサーの槍が、確かにノインの心臓を貫いたのをカウレスは見ていた。そこから、彼が蘇ったのは、ランサーの言ったようにバーサーカーの宝具だったのだろうとは思う。

 彼女の召喚の触媒は、彼女自身の設計図だった。そこには、バーサーカーが最期に放つ雷は低い確率で第二のフランケンシュタインの怪物を生み出すと書かれていた。

 その雷に、心臓を貫かれていたノインはランサー諸共撃たれて、そして蘇っている。

 だが同時に、詳しくは知らないが、デミ・サーヴァントとは中の英霊が退去すれば生命を落とすはずだった。

 逆に言うと、一度生命を落とせば英霊は退去するのかもしれない。

 カウレスが考え込む間にも、話は進んでいた。獅子劫は鼻を鳴らして言う。

 

「一度なら十分だ。アキレウスの気を一度で良いから逸らせ。そこで俺が令呪を使う。で、セイバーが”赤”のライダーを倒す。……ま、無茶だろうがそれくらいやらなけりゃ、俺たちは全員時間切れだそ」

「それ、間に合わせたかったら協力しろってコトじゃないか……。ってか、ねぇノイン。キミさ、心臓に穴をこさえてるんじゃないのかい?」

 

 ライダーに血で赤黒く染まった服を指差さされ、ノインは目を落とす。

 貫かれたはずの場所に、見たところ傷はなかった。

 

「その……ちょっと、刺された」

「心臓を刺されてちょっとで済むか。ひどい怪我をしているのではないのか?」

「……仮にそうでも、休んでいる時間はない。そうだろ?ライダーとジークとカウレスは、先に行けばいい。ランサーが天草四郎はルーラーの天敵と言っていた」

 

 心配するな、とノインはジークの額を人差し指で軽く突いて、獅子劫の方を振り返った。

 

「獅子劫界離、早くしろ。セイバーと赤ライダーのところまで行くんだろう?」

「何でお前が仕切るんだ。……本当変わったな」

「生きてたら、誰だって多少は変わるだろ。ほら、さっさと行くぞ」

「ダメ!援護にはボクが行くから!」

 

 ライダーが獅子劫の腕を引っ掴んで、手すりを乗り越え、虚空に現出させたヒポグリフの背中に獅子劫と共に飛び乗る。

 跳び下りざまに、ノインの腕に彼は持っていた丸い大盾を押し付けた。

 

「宝具豊富なボクのほうが今のキミより援護には向いてるもん!ほら、さっさと行くよ、”赤”のセイバーのマスター!」

「おい!」

 

 大盾の重さによろめいたノインに向けて、ライダーは口の周りを手で囲って叫んだ。

 

「宝具の名前は、『蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)』!それで発動できるはずだよ、ボクの名に懸けてキミにそれを預ける!」

 

 そら行け、とライダーはヒポグリフの手綱を握り、幻馬は嘶く。しかし、ヒポグリフも乗り手同様に全身のあちこちがぼろぼろだった。

 ライダーたちが飛び去ろうとする直前で、ジークは手の令呪を掲げた。

 

「ライダー!必ず戻って来いよ!」

 

 令呪が一つ、輝いて消える。

 

「ありがと!マスター、ノイン!そっちもルーラーとレティシアちゃんのとこに行くんだぞ!」

 

 幻馬の甲高い声が鳴り響いたかと思うと、その影はライダーと獅子劫を背に乗せて、あっという間に飛び去った。

 

「あいつ……」

 

 大盾を押し付けられて、ノインが呟く。

 複雑で精緻な紋様があしらわれた、ひと目で宝具とわかる逸品である。

 しげしげと見ながら、ノインは首を振った。

 

「そもそもこれ、誰の宝具だよ……。アキレウス・コスモスってまさか……」

「ああ、”赤”のライダーの宝具だ」

 

 こともなげに言ったジークに、カウレスとノインは絶句した。

 

「理由と経緯を色々聞きたいが……。もう、いいか。だけどこれ、お前にも使えるのか?」

「十二勇士のアストルフォには自分の武器を人から借りたり、貸したりして自由に振るった逸話があるから……」

 

 サーヴァントが生前の逸話に縛られるという法則に則れば、大丈夫じゃないか、とノインは言った。

 最後に、多分と付け加えたのをカウレスは聞きとがめる。

 

「多分ってお前……」

「追いかけてる暇はないし、今更仕方ない。でも使えるとしたら、あんたたちよりまだサーヴァントに近い俺だろ」

 

 行こう、とノインはまた駆け出した。

 相変わらずその足は速い。ジークやカウレスよりも。しかし、やはり姿を変えようとはしなかった。

 

「ノイン、デミ・サーヴァントの姿にはならないのか?それとも、なれないのか?」

 

 走りながら、ジークがカウレスの尋ねたかったことを直球に尋ねた。

 

「……なれて、一度だな。もうあいつは……消えてしまった。彼の残滓しか俺の中にはない」

 

 ジークたちがはっとするほど静かな声で、ノインは言った。

 

「あいつがいなくなるのは、俺が死ぬときだけだと思ってた、から。……寂しいな。馬鹿みたいに戦うのが好きで、俺とは正反対なやつで、気なんか合わなかったのに」

 

 それでも、寂しいんだ、とノインは血と泥だらけの顔を、服の袖で乱暴に擦ってカウレスの方を振り返った。

 

「カウレスも、さっきは助かった。ありがとう。俺が生きてられるのは、あんたとバーサーカーのお陰だ」

「あれは、だからバーサーカーが……」

 

 言いかけて、カウレスは口を閉ざした。代わりに、尋ねたかったことを問うことにした。

 

「でもさ、俺が見た分だとお前、一度は絶対にランサーに殺されているだろ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それでアーチャーが消えた。そういうことなんじゃないのか?体、どういう状態なんだ?」

「……おい、どういうことだ?一度殺された?それで大丈夫だと言ったのか?」

 

 ジークが単調ながらも低い声を出す。ノインがカウレスを横目で睨んだ。余計なことを、と言いたげに。

 そうしてからノインは続けた。

 

「ここら辺りの魔力を俺が吸っている感じだ。それで体と心臓が動いてる」

「それでわかった。バーサーカーの特性が、お前の中に引き継がれたんだ。あいつは、周囲の魔力を吸い取って、半永久的に生きられたから」

 

 そこでカウレスの言葉が一度途切れる。

 廊下の先に、竜牙兵が十体ほど現れたのだ。

 カウレスとジークが身構え、ノインが床を蹴って飛びかかる。

 骨が擦れ合う耳障りな音を立てて、剣を振り上げた竜牙兵の腰を狙い、ノインは手にした大盾を横に振り抜いた。

 五体ほどの竜牙兵が、体をまとめて真っ二つにされて崩れ落ちる。

 だが安堵する間もなく、後ろから聞こえてきた音に、カウレスとジークが振り返る。

 剣を構えて背後から襲って来た竜牙兵二体を躱しながら、ジークは彼らの膝の関節に触れた。

 

理導(シュトラセ)/開通(ゲーエン)!」

 

 ジークの魔術が行使され、竜牙兵の骨が粉へと分解された。

 反転して追いついたノインが、盾をギロチンの刃のように倒れた竜牙兵の胴に振り下ろす。

 かたかたと顎を動かして、立ち上がろうと藻掻いていた竜牙兵でも、胴を寸断されては身動きが取れなかった。

 虫のように手足を動かしていた、すべての竜牙兵の動きが完全に止まってから、ノインはジークとカウレスの方を振り返る。

 

「これくらい、大丈夫だって言っただろ?」

 

 先に行くぞ、と盾をくるりと回してノインは走り出す。

 ジークとカウレスも、その後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

#####

 

 

 

 

 

 

 

 ジャンヌ・ダルクの生涯と、”赤”のキャスターは言った。

 ドンレミ村の娘だったころ、救国のために戦った僅か二年、そして、敵に捕らえられて火刑に処された最期。

 宝具によって、ルーラーは己の人生を再現した劇の中に引きずり込まれたのだった。劇が終わるまで宝具は解除されず、中から破ることもできない。

 劇の中に現れる人々は、ルーラーを害する力を持たず、ただ彼女が生前に行ったこと、経験したことを演じては消えて行った。

 いや、演じているというよりも彼らは極めて本人に近かった。そこに、本物の魂があるのかと見まごうほどに。

 糾弾され、哀願され、ルーラーはそれでも止まるわけにはいかないと、彼らを退けた。

 行かないで、と哀願した母親の手を離し、何故我らを殺すのかと糾弾した敵兵を排除した。何故止まらなかった、と問うてきたフランス王には、ただ互いの道が異なっただけなのだと正論を説いた。

 自身を焼いた司教ピエール・コーションにも、ルーラーは心を乱されることはなかった。ただ、己と彼とは立場が異なっただけだと、恨むこともない。

 ルーラー、ジャンヌ・ダルクはそうして生前と何も変わることなく、己の道を曲げることはない。

 幻の人々は次々に消え去り、しかし一人だけ決して消えない少女がいた。

 気づけば二人は、ジャンヌ・ダルクの最期の場所、ルーアンの広場に立っていた。

 火刑台を背にしたルーラーの前には、前髪で片目を隠した華奢な幼い少女がいる。

 劇が展開される間、彼女は一言も口を利かなかった。ただ影のようにその場に立ち続け、たった一人の観客としてルーラーの生涯を見ていたのだ。

 

「貴女は、一体誰なのですか?」

 

 少女と目線の高さを合わせてかがみ込んだルーラーの目を、少女は片方の目で覗き込んだ。

 

「私はジャンヌ・ダルク。あなたの名前は、なんというのですか?」

「……わたしはあなたの知る人の、影のひとり。名前は(ツェーン)

 

 見れば、いつの間にか簡素な服を一枚着ていただけの少女は、小さな体に不釣り合いな紫の鎧を纏っていた。

 その転身の仕方に、ルーラーは見覚えがあった。聖杯大戦に留まると言った、デミ・サーヴァントの少年と同じだったのだ。

 

「貴女は、デミ・サーヴァントなのですか?ノイン君と同じ?」

「ちがいます。わたしは……わたしたちは、それにすらなれなかった影法師。そして(ノイン)の背負った、影たちのひとり」

 

 英霊ジャンヌ・ダルク、と少女は、真っ直ぐにルーラーを強い目で射抜いた。

 真っ直ぐな視線だった。

 その目をルーラーが受け止めたとき、また世界が暗転する。

 ルーラーが目を開けたとき、そこは薄暗い城の一室だった。石造りの壁と床、漂う空気は陰惨でルーラーは息を呑んだ。

 

「ここは、ジルの……」

「はい、ここはティフォージュの城。あなたの死をきっかけにくるってしまった、ジル・ド・レェの居城です」

 

 ツェーンと名乗った少女は、無表情のまま、ルーラーの背後を指さした。

 振り向いたルーラーの目は、一人の騎士の姿を捉える。

 暗がりから現れたのは、点々と血が飛び散った、白銀の鎧を身に付けた騎士の男、手には布で覆われた丸い包みを持っている彼は、ルーラーの姿を見とめて腕を大きく広げた。その後ろには、”赤”のキャスターの姿もあった。

 

「おお、聖処女ジャンヌ!このようなところで再び見えるとは!」

 

 ジル元帥は歓喜の声を上げる。ルーラーは彼の後ろに立つキャスターを睨み据えた。

 

「シェイクスピア、彼の幻すらも呼び寄せたのですか?」

「幻?いえ、彼は幻ではありません。彼は我々が聖杯の力に頼って呼び出したサーヴァント、そしてその幼子もまた、ただの幻ではございません。彼女に根付かされた英霊の霊基、それを頼りに召喚された、紛れもない死者の一人です!」

 

 振り返ったルーラーの視線を受けて、少女は無表情に歩み出、ジル元帥の手が握る包みの布を一気に剥いだ。

 中から現れたものに、ルーラーの喉が鳴る。

 

「ジル!貴方、貴方は……彼を!?」

「ええ、ジャンヌ。どうですか、この美しい彼は、銀の髪とルビーの瞳、私が生前に手にかけた少年の誰よりも、彼は美しい!」

 

 ジル・ドレ・レェ。フランス史上に殺人鬼として名を残す彼は、ジークの生首を高く掲げた。

 それを見て、ルーラーは顔を手で覆う。見たくなかったのだ、彼の、仲間と思っていた少年の、あまりに無惨な姿を。

 その彼女の目の前に、ふわりと音もなく少女が立つ。

 

「……どうして、ですか?ルーラー、どうして、あなたはなげくのですか?あなたはひとびとを慈しみ、けれど特定の誰かを慕うことはなかったはずです。ひとびとの選択を尊ぶから、彼らの運命の末路を悔やまない。……だからわたしたちのきょうだいにも、おなじようにした。そうでしょう?」

 

 幼い少女は、色素の薄い瞳で、ルーラーを見上げた。

 その彼女の手には、いつの間にか血に濡れて、二つに折れた槍が握られていた。

 ルーラーの内側、深いところで、息を呑む音がした。

 

「なのに、それなのにどうして、あなたは嘆くのですか?彼――――ジークとわたしたちのきょうだいに、なんの違いがあったというのですか?」

 

 少女の手から、血が零れる。ルーラーは、内側でレティシアが震えるのを感じた。

 

「その動揺、胸の痛みの理由は明らかですぞ、ジャンヌ!」

「……どういうことです、ジル」

「明確でありましょう。あなたは戦いの中で、ホムンクルスの少年を慕っていたのです!我を忘れ、取り乱すほどに!」

 

 ジル・ド・レェの言葉に、ルーラーの体が揺れた。

 自分が、たったひとりの誰かを恋い慕う。それは到底、有り得ないことに思えた。

 

―――――本当に?

 

 けれど、レティシアのことを、彼女がノインに向けていた想いと伝えた言葉を思い出すと、心が震えた。

 

―――――あの子は、レティシアは、ノイン君のことを。

 

 慕っていた。

 レティシアが流した涙は、ノインのためだけだった。

 

―――――それならば、(ジャンヌ)はどうだったのだ?ジーク君を……。

 

「見捨てたのですか?だから、とめなかったのですか?ごじぶんの心のために?わたしたちのきょうだい、最後のひとりを」

 

 気付けば、あの少女はまたもルーラーの前にいた。

 

「彼の死を避けるため、そのために、デミ・サーヴァントの少年が犠牲になることをあなたはわかっていたはずだ!あなたが彼を、殺すのだ!」

 

 違う、と否定しようとした。

 そんなことがあるはずがないのだと。

 自分には、誰かを村娘のように慕う権利は無い。

 自分が、裁定者のサーヴァントの役目を負った己が、今この世を生きている少年に恋をする。それは、とても罪深いことのように思えた。

 それを、ルーラーは心底理解しているはずなのだから。

 だが、反駁しようとした瞬間、ルーラーとしての権利の一つが発動した。

 この世に呼び寄せられていたサーヴァントが消滅するのを、彼女は感じ取る。

 

”黒”のバーサーカー、”赤”のランサー、そして――――儚い弓兵の霊基。

 

 呆気なく、一人の少年が死んだのだと、ルーラーは悟る。

 デミ・サーヴァントの霊基と、触媒の人間の生命は絡み合っている。英霊の霊基が消えたということは、彼の生命が失われたということだ。

 

「あ、ああ――――」

「”黒”のもう一人の弓兵が消滅いたしましたな、ルーラー。しかしこれで、死せる狂戦士と生ける少年の生命を対価に、あなたがたの最大の敵は退けられたのです!ホムンクルスの少年の生命は守られた!彼の犠牲によって!貴女が、予想していた通りに!」

 

 ルーラーは胸を押さえた。

 そうしなければ、耐えられなかったのだ。

 軋む心の底から、恐ろしい何かが顔を覗かせていた。

 今を生きる少年と少女。彼らの想いは、決して途絶えさせてはならなかったはずだった。見守るべきだったはずだ。

 そう思って、そう考えて、けれどルーラーはデミ・サーヴァントの少年を止めなかった。

 

 ―――――力が、必要だったから?

 

 それは確かにそうだった。彼自身、そのことをわかっていた。だから城には留まらなかった。

 

 ―――――けれどそれ以上に、ホムンクルスの彼が死なないようにと。

 

 そう、思ってはいなかっただろうか。

 

 ―――――等しく慈しむべき彼らに、私は区別をした?片方を……切り捨てた?

 

 自分自身の心の底に罅が入る。

 割れ目の隙間から覗く感情に胸を突かれて、言葉を失い膝を屈するルーラーの頬を、冷たい少女の両手が挟み込んだ。

 顔を上げれば、驚くほどの間近に少女の顔があった。

 

「あなた――――あなたたちは、わたしたちのきょうだいに、出あわなければよかったんです」

 

 色彩の乏しい瞳の中、ルーラーのそれとは異なる少女の瞳が、映り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




名前だけ出ていた十番目でした。
世界線が違い、大切な誰かと出会えなかった盾の乙女…と似て非なる女の子とでも。
彼女が何を思ってああ言ったか、ジャンヌの心情など追々なのでお待ちを。

ちなみに一時間後に、エイプリルフールネタを投稿します。ぎりぎりですが。

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