東方花憑伝   作:残念美人布教教会関東支部支部長斎藤宰慈

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まず始めに、匿名の名前は偽名です。間違わないように御気を付けください。




では、始まります。


覚醒と少女

 深き森の中に佇む女性。

 その女性は、周囲に溶け込む様な髪色で、その身体には白のブラウスを着用し、襟元には黄色いリボンを巻き付け、赤いチェックの上着とスカートを着ている。

 

「笑えないわね」

 

 優香は周囲を見渡してから唇の形を歪める。

 

『ウォーーーン』

 

 野生の獣が既に彼女を包囲していたのだ。その数は凡そ40匹。

 狼のような体躯をした黒色の体毛を生やす獣は、優香を完全に包囲し、襲う期を虎視眈々と狙っている。

 この様な森の奥に女子供が迷い混むなど在るわけがなく、小さな小動物や猪、熊等を狩って生きてきたのであろうその獣達は、長と思われる暗黒の体毛を生やし、顔に大きな傷跡のある大狼が優香の前に姿を表した。

 勿論、森の外に導くためではない。

 自らに注意を引き付け、隙を産み出すためである。

 

「悪いけど、纏めて倒させてもらうわよ。大丈夫。無駄死にはさせないわ。私が全員食べるから、冥福を願わせてちょうだい」

 

 優香は軽く脚を曲げバネみたいに飛び跳ねる。空中で前方にゆっくりと回転していく。踵が大地(長の頭)に着くと同時に鈍い破砕音と大地が競り上がり、空中に黒い狼が全て投げ出される。

 

「ごめんなさいね。せめて、痛まないように一瞬で楽にさせるから、恨むなら私を存分に恨みなさい」

 

 真っ赤な地面を蹴り、一番近い疑似狼の頭を蹴り砕いた勢いでまた次の疑似狼に飛び跳び移る。それを繰り返すこと凡そ40回。

 大地は紅く染まり、首の無い狼や身体のネジ曲がった狼等で地面が死屍累々と化していた。

 

「見ていて気持ちの良い光景ではないわ。一つだけ死体を運んで、それ以外は埋めましょう」

 

 優香の目の前にある一匹の死体以外は、地面と同化する様に大地に沈んでいった。

 そして、その大地から銀杏の樹がコマ送りの様な速度で生えてくる。鎮魂の導となる様に、亡骸の真上に。

 優香は暫しの黙祷を捧げ、宙を見上げる。

 

「出てきなさい」

 

「あ、あの、……………ごめんなさい」

 

 林の影からゆっくりと姿を出したのは、ふんわりとした金髪に白のワンピースドレスを着た妖怪の少女だった。

 

「幾つか聞いて良いかしら?」

 

 優香の声に反応し、肩を跳ねさせた少女だったが、瞳に決意の光を爛々と輝かせ、優香の顔を見上げて答える。

 

「私に解ることなら、幾らでも答えます。ですから、私に生きる術を教えてください」

 

 静かな決意。

 その静寂を破るのは、優香本人であった。

 

「私はまだこの世界に来たばかりなの。けど、この世界に来る前から自我を持っていたわ。

 そんな私が出す条件は簡単よ。

 どんなに醜くとも、どんなに惨めでも、嘲笑われようと、蔑まれようと、どんなことがあっても生きなさい。

 死んでしまえば、何も出来ないわ。けど、生きていれば、必ず、何かを達成できる。必ず、何かを叶えられる。だから、生き汚く、泥臭く、青臭く生きなさい。

 生きることを楽しむの。どんなものであれ、見方によっては楽しめるのよ。だから、道徳に反しない範囲であれば、どんな些細で退屈なものであれ楽しみなさい。

 無為な殺しは控えなさい。それは、貴女の心を荒ませるだけよ。だから、殺すことに慣れてはいけないわ。

 それが私から貴女に出す条件よ」

 

「………」

 

 妖怪少女は、目の前にいる存在に驚愕する。

 世界云々ではなく、その心、在り方に。

 50近くの妖獣を瞬きをする間に肉塊と化した修羅の如き存在から発された言葉は、紛れもなく心があるモノであったからだ。

 生物を慈しみ、労るという心を持て、生きることに貪欲になれ、万物を娯楽とする見方を見つけよ、と。

 

「だけど、私に付いて来たいのならば好きにすると良いわ。その場合は、貴女は私に保護されるだけになるけれど、身の安全は保証するわ」

 

 妖怪少女は葛藤する。

 庇護下に入るだけならば、苦難はないであろう。しかし、その場合、彼女から何らかの師事は存在せず、只、安穏足る日々を教授することになる。

 この荒んだ神代には、それはなんとも極楽であるかは理解している。しかし、それは受け入れることは出来ない。

 理想論と諭され、無謀な愚考と蔑まれ、乙女の夢と嗤われ、机上の空論と弾圧された。

 そんな夢を目の前の女性はどう思うのだろうかと、ふと気になった。

 

「…………………一つ、聞いて良いですか?」

 

「ええ」

 

「人間と妖怪が共存できる場を作りたいと、そう発するヒトが居たら、どう思いますか?」

 

「………そうね。それは、とても素敵なことだと思うわ。けど、それを実現させるのは苦難の道でしょうね。だから、私はその娘にこう伝えたいわね。

 

 

 

 

 

 

      ──────諦めないでやれば叶うわ」

 

 妖怪少女は決意した。

 この女性に師事を仰ごうと、この女性の教えは出来る限り守りと通そうと。

 

「私を弟子にしてください!」

 

「怪我をするかもしれないわよ」

 

「大丈夫です!」

 

「仕方ないわね。それじゃあ、この風見()香が貴女の師として貴女を教え導きましょう」

 

 この瞬間から、風見()香は死んで、風見()香となった。

 風見優香という人間は、風見幽香という存在(妖怪)に昇華された。

 死を経て、新たな生を受けた。

 前世という知識とバグのような能力を持った最凶の妖怪。

 【四季のフラワーマスター】、【天変地異の化身】、【修羅の妖】、【再現者】等と後に言われる幻想郷最強の一角を担い、妖怪の賢者の一人に数えられる猛者である。

 

 

 

 

 




ガイアとは、【大地】その物であると言われている神である。
この【大地】とは、地面であり、空であり、海であると言われているため、ガイアの息子であるゼウスの一つ前の主神、た天空神クロノスやガイアの孫に当たる海の神ネプチューン等が誕生した。
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