「鷲尾須美です。……今日は銀いないのね」
「うん。弟と遊び倒すんだって~」
「そうだったの……」
「それじゃあまずは、前回のあらすじだよ~。はい、わっしー」
「え、えーと……『バーテックスを倒した勇者部の前に突如として現れた巨大な敵性生物、怪獣。怪獣に東郷美森を人質に取られ成す術のない勇者たちを救ったのは、光の巨人。勇者の協力を得て、怪獣を倒した光の巨人はどこかへと飛び去っていくのでした』」
「さすがわっしー、真面目だね~」
「茶化さないの」
「続いて、みんなから寄せられた
「……全体的に雑じゃないかしら」
「というわけで、マスターDさんからの感想を一部抜粋したんよ~」
ペドレオンの変身とか、ガス攻撃は無しか、ちょっと惜しい。(^_^;)
「変身にガス攻撃……中々に多才なのね、この怪獣は」
「う~ん……変身って、『飛翔体』と『ゲル状の液体』のことでいいのかなぁ? でも怪獣の魅力の全部をたった1回で書ききる必要もないよね~。
ガス攻撃のガスって、可燃性だから。もし引火にしたら樹海が大変なことになっちゃうよ~」
「そのっち……あなたまさか!」
「おぉっと! もうこんな時間だ。では第四話、どうぞ~」
生きるということは、死んでいないということじゃない。
死んでるように生きていたくないから、自分が生きていることを日々誰かに知らしめる。つまるところ、僕はただ、生きていたい。ただ、それだけ。
「はぁ……はぁ……」
荒い息を吐きながら近くの木にもたれかかり、そのまま座り込む。
バクバクと心臓の音がやけにうるさい。脈拍も安定しないし、全身が痛いし、痺れはまだ残ってるしで最悪なコンディションだけど……。
生きてる。これ以上ないくらいに生きてるって実感が沸く。
本当に最高で、最悪な気分だ。多分、口角が吊り上がってるだろうな、って思う。
誰か見ている人がいれば、頭大丈夫って言われそうなのは自覚してる。けど、今ここに生きてる! いつ朽ちるとも知れないこの命。それを賭けるに足る人達を守ることができた。
大切で愛おしい二人。心から愛する人達の内側。本当に守れてよかった。だけど、後悔は後からやってくるもので。もっと早く辿り着けていれば東郷さんにあれだけの恐怖を感じさせることはなかったかもしれない。彼女もあそこまで頑張る必要はなかったかもしれない。話には聞いていた勇者部の人達にここまでやらせる必要もなかったかもしれない。どれもが『もしも』の話で、今こうして後悔できることに感謝する。死という終わりは誰にだって平等に訪れて、逃れようのないものだから。彼女達も今を全力で生きている。彼女達の心の内を知らなくても、彼女達が『死んでいない』ということは明らかで。生きるということは、それ自体が一種の戦いだ。自分自身をどれだけの人達に覚えていてもらえるか。人の真の死は、誰からも忘れ去られた時だと何かの本で読んだ覚えがある。だから死にたくないし、生きていたい。
生きることはそれそのものが苦しみと死で溢れていて、いつかは終わるもので。もちろん、痛いことや苦しいことは嫌だけど。それらと生涯をかけて向き合い、付き合っていくのが生きるということなんじゃないかな。だからこそ、生命には限りがあって。ほんの瞬きのような瞬間を、揺らめく炎のように駆け抜けるから美しい。花が散る様に感動を覚えるように。人々が故人を悼む気持ちを忘れないように。やがて訪れる終わりがあるから、人はそこに意味を見出す。
また逆に死にたくないと考えるからこそ、人は自分の生に意味を与えようとする。すっごく無様な自分を軽蔑しながらも、今日を生きられたことに感謝する。人間なんていつ事故に遭うかも分からないから。いつ生命が朽ちるか分からないから。
視線を上げれば、木々の隙間から綺麗な蒼穹の色を映した空が見える。
目を閉じれば、心地の良い風を肌で感じ取ることができる。
耳をすませば、葉擦れの音が聞こえる。
鼻で大きく息を吸い込めば、土と草と木の匂いを強く感ぜらるる。
もう一年以上も経つのに、彼女が使っていた大和言葉が耳から離れない。
もう一度でいいから、一目でいいから会いたい人がいる。
彼女との文通。電子メールじゃない、今となってはすごく貴重な手紙でのやり取り。突然、返事が返って来なくなったけど、彼女は今どこで何をしているんだろう?
俗物的で
守りたい人達がいる。
逢いたい人がいる。
だから余計に頑張れるんだ。
たとい、この頑張りが
短刀を手に取ったその時、頭の中に情報が流れ込んできて、自分がやらなくてはならない事が何なのかを理解した。『人喰いの化け物』を倒すこと。この世界を守ること。
それと同時に知る羽目にもなった。今こうして過ごしている日常は、薄氷の上にかろうじて成り立っているものだと。人知れず、人喰いの化け物に生存を脅かされているこの世界。だからいつ消えるともしれない命を張って化け物と戦う。
戦う理由は自分のためじゃなく、知らない誰かのためでもない。大切な人達の笑顔を絶やしたくないから戦う。知らない誰かのために戦えるほど聖人じゃないけど、安に死んでもいい命なんてものも存在しない。
結論として、自分のために化け物と戦ってる。大切な人達の悲しんでる顔を見たくないから、化け物に食べられるなんて理不尽な死に方なんて決して認められないから、そして自分が生きていたいから。
どうして『巨人』に変身できる力を手に入れたのか。なぜ自分なのか。理由なんて分からない。だけど、これは多分運命なんだと思う。
それにして……あのカラフルな木だらけのあの場所はなんだったんだろう? とりあえずひたすらに歩き回って、人喰いの怪物を倒して。気が付いたら、元に戻っていたし、分からないことだらけ。
ふと、ベチャリという不快で粘着質な嫌な音を耳が捉えた。
目を開く。眩い太陽光で霞む視界に、黒くてゲル状のドロドロと粘っこそうな液体が木から垂れていて、地面に黒い水たまりもどきを作っていた。
何故だか気になって、目が離せない。いや違う、こいつから目をそらしてはいけないんだ。
気が付けば、内ポケットに仕舞った短刀が熱を持っていて、全力で走り切った後の心臓の音のように激しく鳴り続けている。
この反応は、人喰いの化け物が近くにいるということ。
だけどどこに?
まだ体を動かすのもつらいから、目だけで辺りを見渡してみるも、それらしい姿なんてどこにも見当たらない。
……まさか!?
大急ぎで視線を黒い水たまりもどきに戻せば、数秒前まではたしかにその場所にあった水たまりはなく。目測で、目の前の五メートル先くらいの場所に黒い水たまりもどきは移動を果たしていた。
ここまでされて分からないほど馬鹿じゃない。信じられないことだけど、この動く水たまりが化け物ということなんだろう。
ただの液体なら、巨人になってビームで蒸発させてやれば、それでおしまいのはずだ。
体にかかる負荷なんて考えてる暇なんかない。化け物は全部倒さないといけない。もしここで逃がせば、どれだけの人が犠牲になるか。
ゆっくりと右腕を動かす。体を動かしたせいで全身が痛んで、顔がひきつる。
痛みをこらえて、ようやく右手が短刀を掴み、ポケットから取り出す。あとは、鞘から抜くだけ……。
僕が何をしようとしているか、気付いているのかいないのか。目の前で突然黒い水たまりもどきがうごめきだす。そのまま爆発的な勢いで体積を増し、形を成してゆく。その姿は、かなり小さくなっているとはいえ、さっき倒したはずのナメクジ型の化け物とよく似た姿。いや、瓜二つ。
「な……」
思っていた以上に馬鹿みたいな声が出た。
あのナメクジの姿をした人喰いの化け物はさっき倒したばかりのはずなのに。ビームを受けて爆発したのをこの目でしっかり確認したはずなのに。まだ生きてるなんて一体どういう……。
頭の中で疑問がぐるぐる回る。本当にこのまま倒していいのか。倒したらまた小さくなって復活するんじゃないか。そんな恐怖が拭えない。だからなかなか短刀を抜くことができずにいる。
化け物は警戒してるのか、のっそりと近づいてくる。
小さいとはいえ、それでも見上げるしかない大きさの化け物。
この化け物がここで倒されることなく人を襲い続ければ、なんて考えると寒気がする。
だからやっぱりここで倒す他ない! 小さくなって復活したらその時で、どう倒せばいいか考えるだけ。つまるところ……。
「なせば大抵なんとかなる……だよね」
決心がついた。この化け物は速攻で倒す。右手で短刀の柄を、左手で鞘を持つ。いざ変身しようとしたその時、高速で横切る何かと風を感じた。
「え……?」
化け物の目の前に落ちて転がる短刀。
手元を見れば短刀はなく、その両手もぱっくりと裂けて、血がだくだくと流れ出て、服と地面を汚している。
自分の陥っている状況を脳がようやく理解し、遅れてやってくる激痛。
「あぁぁぁああああああああああ!!」
痛みに絶叫する。
「ッご!?」
お腹に強烈な衝撃。
口から何かがせり上がってくる。えずき、無様に吐しゃ物をまき散らす。
吐くものが無くなって。傷も痛いではなく、ただ熱いとしか感じなくなって。ようやくのことで化け物をにらみ付ける。
「ゲッゲッゲッゲッゲッ」
不快でしかない音が化け物から聞こえてくる。大きな口を歪ませて、笑ってる?
化け物の細長い腕がぶれた。直後、またお腹に強烈な衝撃。
えずく。もう吐くものは胃液しかない。喉が、口が焼けるような感覚を強制的に味あわされる。
化け物のあの細長い腕が鞭みたいに自由自在に動かすことができるんだと知っていても、目で見えないんだから避けようがない。
化け物がまた笑い、大きく口を開けた。食べる気なのだと嫌が応にも知れた。
巨人に変身できない僕はただの虚弱な人間だ。だから一か八か、化け物の足元に落ちてる短刀を拾う事さえできればなんとかなる。
大きく息を吸い、体に力を入れて走りだそうとした刹那、天地が逆転して頭に血が上る。
どうなったかなんて考えるまでもない。化け物に足を掴まれて、高く持ち上げられている。
ゆっくりと体が下げられ、どんどんと化け物の口が近づいてくる。
これで……終わり? まだだ。
まだ終われない。死んでたまるか。……生きるんだ。生きて―――
「せえええええええりゃあ!」
威勢のいい声が聞こえたかと思ったら、目の前で化け物が真っ二つになった。
それを為したのは、大赦の白い仮面を着けて顔を隠し、右腕を力なく垂らし左腕一本で冗談みたいな大きさの金属の刃を振り下ろした小柄な人物だった。
化け物の腕から力が抜けて掴まれていた足がするりと離され、体は当然のように頭から落下を始める。
「やばっ!」
そんな声とともにお腹に強い圧と全身に妙な浮遊感を覚え、数瞬後に浮遊感が消える。
肩の上に俵のように抱えられているらしいと今更ながらに理解する。
「はぁぁぁぁ、なんとか間に合った……。あ、そうだ。連絡いれとかないと。
もしもし。こちら、み……
『諸星ィ! 独断専行の説教は後だ! 何があったか簡潔に報告しろ』
「対象のデュミナスト? を無事保護しました。……ほんと噛みそうな名前ですよねデュナミトス」
『デュナミストな。無駄口はいい、ビーストはどうだ?』
「えー……頭から真っ二つにしたんですけど、まだ生きてますねこれ。というか再生してます……」
『分かった。もうすぐそっちに着く。それまでの護衛は任せたぞ』
「了解っす」
『……怪我には気を付けろよ。通信終わり』
「さっ……てと! あ、待たせちゃってごめん」
この人と上司らしき人の通信が終わって、こちらに話しかけてくる。
少しくぐもっているけど、声の感じと話し方から女の人なのかな。それも多分、同年代の。
僕が言えたことじゃないけど、どうして命かけてるのかとか、『デュナミスト』や『ビースト』と、聞きたいことは山ほどあるけど。
まずはお礼を言わないと。
「えっと……助けてくれて、ありがとうございます。大赦の人」
「お礼なんかいいって。これがアタシらのお役目なんだからさ」
というか、いつまで抱えている気なんだろうか。
そんなことを言おうかどうか迷っていると、突然諸星さんが僕を抱えたまま左に跳んだ。
何事かと思い、見た。さっきまで諸星さんが立っていた地面が抉られていて、真っ二つの状態から元通りの姿にに再生した化け物を。
なんで抱えたままなのか理解した。それに『護衛』の意味も。僕じゃ、あれを避けられない。避けられなかったら死ぬしかない。それに、大赦の人が僕を殺されないよう守る必要性なんて一つしか思いつかない。巨人に変身できる短刀の存在。僕が死んで困るということは、僕しか巨人に変身できないということだと推測できる。
そう思考している間にも、化け物は容赦なく僕と諸星さんに攻撃をしてくる。木が折れて、地面が抉れる。当たったら最低でも大怪我すること間違いなしの攻撃。
それを諸星さんは右に左に縦横無尽に、走って、跳んで、避けて避けて避けまくる。
がくがく揺さぶられ続けて、正直吐きそう。
いや、でも待ってほしい。怪物の腕は目で追えない速度で振るわれてるのに、なんでこの人はすごく簡単そうに避けてるの!?
「そもそも、なんであれを避けられるの!? 痛ッ」
舌噛んだ。
「勘と経験だよ。いくら早いって言っても、アレの矢と比べたら、全部かわいく見えてくる……っとぉ!」
……『経験』とか『アレの矢』とか、また聞きたいことが増えてしまった。
あれ? なんだか気が遠くなってきた……。
もう痛みすら感じてられないけど、そういえば今血を流してるんだった。
「あの! 避けてるだけじゃ……!」
「無理無理。右はそもそも使えないし。左はきみを抱えてるから武器も使えない。ていうか、アタシの武器もアイツの足元にあるから、むやみに近づいてこれ以上怪我されるわけにもいかないんだって」
「だけど……」
諸星さんの言ってることが正論過ぎて反論できない。確かに彼女の上司は『もうすぐそっちに着く』と言っていたから、着くまで待っているというのが正解なんだろうけど……。
「大丈夫だって! アタシ、体力には自信あるからさ。ぎ……三花様に任せときなって!」
「みんなの笑顔を守る。それが私たち勇者部です」
「焦げてたり、生焼けだったりしたけど、温かくて幸せで。そんな私を見たお姉ちゃんは、ちょっとだけほっとして、ちょっとだけ泣いて、いっぱい嬉しそうだった」
「まっ、女子力高いのも? 困りモノ? ってゆーかさ☆」
「そっ、そうよ! あんな甘ちゃんばっかで心配だし! 大切な仲間だから!」
「バニーさんいいよね~」
「私たちがいる限り銀は―――銀のたましいは存在する。だから……『良い思い出』になんかさせない」
「須美はこういう時だけかわいいなあ」
みんなのためになることを勇んで実施する部活動『勇者部』
そんな勇者部で過ごすみんなの、にぎやかで楽しく心温まる日々
『結城友奈は勇者部所属ぷにっと!』 第1巻 好評発売中!
「一旦CM入りま~す。諸星三花……いったいなにものなんだ~」
スペーススクワッドでメレ様がさらにえっちくなっていたので生存報告を兼ねて第四話を分割して東郷しました。
『諸星』。まぁ、そういうことです。ウルトラマンの能力って本当にインチキ臭いよねというお話し。特にジードにおけるベリアル様なんて……。
勇者部所属の話。本編とパラレルなら……本編とパラレルなら……きっと!だめでしたー……。