受け継がれてゆく魂の絆   作:雷月皆無

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喪われた記憶の再生に成功しました。


第六話 Broken Soul(起)

 香川か愛媛か、それとも徳島か高知か、四国のどこかの山の中にアタシはいる。正直なところ、今いる山の名前を聞いたところで、すぐに県名なんかを出せるわけもなくて。どこにいるとかに特に意味なんかないように思えるから、アタシまったく覚える気ありません。……ってのが本音。

 今いる場所が、山とか森くらいにハアクはしてるけど、多分それくらい分かってればフツーに生きていく分には問題ないんじゃないかな、って。

 というか、最終学歴が小学校中退で、一年くらい寝たきりだった人間の学力ををなめないでほしい。

 ……自分で言っててなんか悲しくなるなぁこれ。もっと勉強しとけばよかったって公開後に……なんだっけ? 後で

思い出すでっしょ。

「ターゲット消滅。戦闘は終了しました」

 そう宣言した波戸(ばど)さんの声を聞いて、体から熱と力が抜けて、手に持った武器が急に重くなったようにさっ覚する。例えるなら、スイッチを押して点けっぱなしにしてた電気が消えた……みたいなイメージ。

「ああもう、疲れたぁ!」

 感じられる疲労感がすごくて、倒れ込むみたいにあお向けにねっころがる。スイッチが入ってるときは疲労なんか全然感じないんだけど、一度スイッチが切れるともうダメだ。戦ってるときには感じなかった疲労感が一気にやってきて、キツイのなんの。

 そういえば……さっきまでは気にすることもなかったけど、なんか目の見え方が変だ。右側だけがやけにひび割れてるみたいになってて見づらい。逆に左側は仮面がないみたいによく見える。これってもしかして仮面こわれちゃってるかもしれない。

 ベンショーとかにはならないだろうけど、顔見られちゃってたらどうしよう。なんで顔をかくさなきゃいけないのか思い出せない。でもあのウルトラマンに変身してた少年とは今日が多分初対面だから問題ないとは思うけど、後で聞いとかないといけないかなぁ。

 それはともかく、仮面がどんなことになってるのかも気になって仕方ないから、外そうと思って左腕を動かそうと力を入れる。けど顔まで動かすその途中にゴキン、って左肩からすごいイヤな音がした。

 全然腕に力入らない。…………マジかぁ、完全に肩外れちゃったかもしんない。 

 昔に武器を投げつけた時みたいに今回もおんなじようなことシステムの補助なしにやるなんて、やっぱ無茶しすぎたかなー……。なんて、ちょっとだけ反省。

 起き上がりたいけど、右腕は相変わらずで、何も感じないし。一人じゃどーにもこーにも動けないし。こんな時は……。

勇魚(いさな)さーん! 助けてくださーい!!」

 あの時(・・・)の戦いとはジョーキョーが違うから、こうやって部隊の人たち、ちがう言い方をすれば今の仲間って呼んでもいい人たちに助けを呼べる。こういうのは……なんだろ、言葉にしづらいなこれ。

「はぁぁぁぁ……。波戸、そこの無茶しかしない馬鹿を頼む。俺は西片とあの適能者(デュナミスト)の様子を見てくる」

「アイコピー、命令を受諾したため行動に移ります」

「いやいや勇魚さん、なんでそんな分かりやすくため息つくんですか!? それにアタシそんな無茶してるつもりなんてあんまりないんですけど!」

「……ハッ。そんな体で何言ってんだ」

 少年の方に歩いていく勇魚さんに、なんでか鼻で笑われた。『そんな体』って言われても、急に体に力が入らなくなるくらい、なんてことないのに、勇魚さんは心配性だ。

「さてと。諸星、大丈夫であるならばライジングハンドして証明してください」

 そんなことを言いながら近づいてくる波戸さん。

「いや、今アタシ挙手とかできないんですけど! それに左肩外れてるだけですし」

 手を挙げることができないから、悪あがきにケガしたところを伝えてみる。

「なるほど。ノット大丈夫であると判断しました」

 いや、アタシの話聞いて! そういうところですよ本当に!?

 距離がほとんどゼロになって 波戸さんに見下ろされる形になってしまう。そしてアタシを見下ろす彼の声色はとても平坦で機械みたいにも思えてしまう。

「お体にタッチしますよ……」

「いや、んでそーなるんスか!?」

 アタシのこう議も無視されて、かがんだ波戸さんが手をのばしてくる。ふむふむ、と口にしながら腕とか体とか足を順番にさわられる。フコーかサイワイか無反応になっちゃってるあたり、アタシも女の子をだいぶ捨てちゃってるなぁ、なんて思わず遠い目になっちゃう。あれ? でもアタシって今まで自分が女の子かどうか意識したことなんてあんまりなかったような、あるような……。あー……どうだったっけ? 全然思い出せないや。

「自己申告の通り、左肩がディスロケイトしていますです、これは。それに加えて全身に筋肉疲労がありますが、これはまだ無視してノープログラムなレベルでしょう。…………ベリベリー不可解であると思考」

「やっぱりアタシの話聞いてるじゃないですか。だったらわざわざ体さわる意味なんてなかったんじゃ……」

「非合理極まりないですが、機材のない現状においては触診がモスト合理的と判断したまでです」

「……あ、そっすか。とりあえず言葉のキャッチボールしてください」

「これより上着を脱がし、ショルダーを嵌めなおします」

 だから、アタシのリョーショーもなしに、上着を脱がし始めないでほしいんだけどなぁ。口に出してもムダになるだけだとアタシは知っている。この人は言い出したら聞かないガンコなヒトだから。でも一応形だけでも口ごたえするのはシューチシンがまだのこってるあかしなんだろうとも思う。

「アンダースーツの上から、外れた肩さわりながらそんなおもしろくないジョーダン言わないでほしんですけど! 今の波戸さん、まるで変質者そのものっスよ」

「冗談はあまりノットライクです。ノット合理的であるために」

「え、マジでやるんですか。いや無理無理無理無理!」

「ユーアレディ」

「疑問形ですらな―――ダメでアッダァアアァアアアアア!!!??」

「なるほど、アルソー痛覚が常人に比べると随分鈍いようですね。それにしても……地面に這い蹲ってナンセンスにもがき、痙攣する様は、まるで瀕死のバグスが如くですね」

 鼻で笑われる気がする。それに、なんだか馬鹿にされてる気もするけど、アタシにはいっつもこんな感じだから多分気を使ってくれてるんだと思う。

「む、虫けらって……もっとマシな言い方ないんですか。この鬼! 悪魔! 宇宙人!」

「エイリアンは悪口ではありません。もっとマシな言い方というと…………では、車に轢かれたフロッグに格上げしてあげましょう」

「車に轢かれた蛙って何!? 昆虫からは虫類になった、やったー。って喜べばいいんですか? できるとでも思ってるんですか」

「ノンノンノン。私はジョークを好まないとは言いました。バット、冗談をセイしないとは一言も言っていませんよ?」

「えぇ……、じゃあ今までって全部ジョーダンだったんですか? びっくりするほどつまらないっスね……」

「ですが先程の言葉を冗談だと言った覚えもナッシングですがね」

「ちょまっ!? どっち!? ふだんから、アタシのことなんだと思ってるんですか?」

「犬程度にはシンクしてますよ、下等生物の愛玩動物風情が。モースト、それも血統書付きに見せかけた雑種として、ですがね」

「うわ、最っ低だ」

 二人して中身のないバカな話をしてたら、聞こえてきた勇魚さんの声にさえぎられる。

「おい、そこで無駄話してる波戸。そんな暇あるなら諸星連れてとっととこっち来い」

「了解しました。自力でスタンドできますか」

「あー……ちょっと無理っぽいんで、肩貸してもらっていいですか?」

右うでを引っ張られた。立ち上がらせてもらったはいいけど、バランスを取れずに波戸さんのお腹に顔からぶつかってしまった。

「あっごめんなさい……て早、歩はばくらい合わせてくれてもいいじゃないですか」

「合理的ではないためリジェクトします。そも、何故そうする必要性があるのか理解不能です。ヒトがドッグなどといった下等生物をヒトと同等に扱わないように、私が狂犬をどう扱おうが私の勝手ではないでしょうか」

「なるほど一理あ……いやいやない!! なんで一瞬納得しかけたんだアタシ!? っていうか犬ネタまだ引っ張るんスか」

腕を引っ張られてつんのめりそうになりながら歩くこと数十メートルくらい。

「―――というのがこの子の名前です」

「何? ……いや、ただの偶然だと思いたいが、そう言う訳にもいかないんだろ。応急処置はどこまでやった?」

「今できることは全て……えーっと、見えている傷の止血と鎮静剤を投与しました。あと私たちがこの子にできることは、病院でちゃんとした治療を受けさせてあげることですよ先輩」

 勇魚さんと高木さんの二人は傷だらけの少年の手当てをしているように見えた。他にも何か話してたみたいだけどアタシにはよく聞こえなかった。

「あの、その子死んだりしないですよね?」

「大丈夫大丈夫。少し血を流しすぎただけで命に別状は全然ないから」

「よかったぁ。……あっそうだ!」

 ウルトラマンの少年が無事らしくて安心する。人が傷ついたり死んだりするのは悲しくてイヤなことだから。

 まわりを見れば、ヘルメットと仮面を外した西片さんが木にもたれて座っていた。

「そういえば、西片さん頭大丈夫ですか?」

「言い方ァ!」

 心配したら西片さんに怒鳴られた。なんでだろ?

「そんな急に大声出したらダメだよ西片。頭大丈夫じゃないかもしれないんだから安静にしてないと」

「お前も後で病院行って頭大丈夫か診てもらえ」

「高木さんに勇魚リーダーまで……。あっ波戸さん」

「そんなサムシングスモールよりも」

「あっ……無視されるよりひどいや」

「勇魚さん。怪我人はどうするんスか?」

「とりあえずヘリコを呼ぶ。適能者を一人だけ先に病院送りにする必要があるからな。俺と高木はここでヘリコを待つ。

 波戸と西片は、麓の車拾って、ヘリコをこっちまでまわしてもらえ」

「了解しました」

 命令を出しながら、勇魚さんは何度も無線をいじってるけど、どういうわけか使えないらしい。

「あと諸星。お前は自分で投げ飛ばした武器拾ってこい」

「うへ、まじか。ごめんなさい、足がまだ……。一人じゃ無理そうです」

「あー……なら高木、諸星についていってやれ」

「え? でもこの子は……」

「状態が安定してるなら俺でも見てやれるさ」

「それじゃ先輩、後お願いします」

 仮面を外した高木さんが西片さんとくっつきそうなくらい顔を近づけた。二人は何か言葉を交わしてるみたいだ。ここからじゃ内容は聞き取れないけど、西片さんの顔が真っ赤になっていた。

 

「ここでグッバイですね。その前に用件を済ませておきましょう」

 波戸さんが急に手を離す。

 そのせいでバランスをくずしてしりもちをつく。そんなアタシの耳に波戸さんが顔を近づけてきた。

「私は貴様が嫌いだ、デッド……死んで欲しいくらいには。ペドレオンとのバトル中、急に閃光弾が飛んできて焦ったでしょうねぇ。やったのは私だ、あわよくばペドレオンに殺されはしないだろうかと愚考してしまいましてね。……しかし、ホワイ目が見えない上、お荷物を担いでいたのに死んでいないのか、この化け物が」

うまく言葉を返せない。本気か冗談か分かりにくい。

「あ、あはは。冗談きついですよ。何言ってるんですか、どう見てもアタシ人間じゃないですか。冗談としてはマイナス百点満点ですよ」

 返せたのは当たりさわりのない言葉だけ。

「……なるほど。アンダスタンしました」

 アタシを数秒じっと見つめると、何かに納得したのか理解したのか、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、西片さんの方へ歩いていいく。波戸さんは西片さんをムゾウサに担いで、それに文句を言われたのか、何度も担ぎ方を変えたりと四苦八苦していた。

 

言い争う二人を横目にしながら、勇魚さんが入れ替わりになるようにやってきた。

「波戸と何を話してた?」

「聞いてくださいよ勇魚さん、アタシのこと化け物だなんて失礼しちゃいますよね。あの人のジョークセンスが壊滅的すぎて、こんな真顔になっちゃいました」

「……そうか。そんな話だったら俺も遠慮なく言えるな」

 あっやばい。なんか怒ってる。

「いやでも。高木さんあんまり待たせるわけにも……」

「安心しろ、一言二言断ってある」

「ゎーそれなら安心だ」

 冷汗を流す。これはたぶんブチギレだ。アタシにもオチドはあるからダマって聞き入れる。

 

 勇魚さんが大きく息をすいこんだ。




乃木園子は激怒した(以下略)
「ゆゆゆ杯なんて素敵な企画があったなんて聞いてないんよォォォォォオオオオオオ!!! 私もミノさん全力で甘えさえたっ」




次回投稿は日曜日です。
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