原作は読んだことないから、設定とか色々間違ってたらゴメンね
男は平凡だった。受かった大学も普通のところだったし、会社も普通のところでただのサラリーマンだった男だ
やりたかったこと、つまりは夢も他のみんなと比べると少し古臭いと言われたが、“手品師になって世界を見て回りたい”というごくごく普通のものだった
実に普通な夢だ。“アイドルになりたい”や“ゲームクリエイターになりたい”と同じくらい普通な夢だ
でもまあ、結局夢を諦めて趣味の範囲で楽しむようになった彼は、未練がましくもその
そして子も孫も得た80代前半を超えた辺りでガンを発病し、1年の闘病生活の末、静かに家族に見守られながら彼のそれなりに幸せな生涯は終わりを迎えた……
ハズだったのだが
「おめでとう。このゲームを勝ち抜いたのは」
「オラァ!!!」
若返った肉体で彼が最初にしたことは、不謹慎なセリフを発するオッサンをぶん殴ることだった
なんやかんやいろんな経緯や話を経て、彼は手品師になって世界を見て回るという夢を叶えるべく、若返った体で護衛としてついてくることになった男と共に、新たな世界に旅立った
「ようやく復活を果たしたか……」
(ツルリーナ3世に憑依なんて聞いてないよ)
ツル・ツルリーナ3世として憑依する形で
「おめでとうございます3世様」
膝をつく
冥界…
この地で勃発していた天使・悪魔・堕天使の三大勢力による戦争……それは突如現れた赤龍帝“ドライグ”と白龍皇“アルビオン”によって大きな混乱をもたらす
どの勢力も2体の龍の覇を争う戦いに巻き込まれ、ひどく消耗してしまった。ゆえに3つの勢力は二天龍を止めるために手を組むこととなった。命を奪い合ってた者同士が命を預け合う立場になるとは、皮肉なこともあったものである
しかし、三大勢力が総力で戦ってなお、二天龍の戦いは止まる気配がなかった
「そろそろ勝たせてもらおうか白いの!!!」
「それはこちらのセリフだ赤いの!!!」
強大な赤と白が冥界の淀む空の下で激突する。その余波だけで多くの命が消え、吹き飛ばされていく
それを見ていた三大勢力たちは歯噛みし、悪魔陣営の1人、サーゼクス・グレモリーは呟く
「なんて凄まじい戦い……これが赤龍帝と白龍皇の戦いか…!!」
「言ってる場合じゃねえよ。これからどうする気なんだサーゼクス?」
呟きに反応したのは堕天使の組織「
「今はセラフォルーたちが他のところの防衛に向かっている以上どうすることもできない…!だが幸い二天龍はこちらのことを見向きもしていない…ならば必ずチャンスは……」
「…!!待ってくださいサーゼクス」
言葉を遮ったのは熾天使の1人のミカエル。彼の言葉を機に全員がその濃密な気配に気づく
「なにかが来ます……」
森の草木を掛け分けて姿を現したのは……「なさけ有り」の文字が書かれたヘルメットを被った迷彩服を着たシブい雰囲気の男だった
ただし、手に持っていたエロ本の存在が全てを台無しにしていた
「人間……?」
「なんで冥界に人間が……ッ!!?」
ゾワァ
その場に居た三大勢力の者たち全員がおぞましい気配を感じ取って、鳥肌が立つ
神でも、四大魔王でも、ましてや近くの二天龍でもない邪悪なプレッシャーが冥界を駆け巡る
「!!あれは……」
「箱……?」
邪悪な気配の元は、二天龍が戦う場所の上空に現れた黒い箱から発せられていた。その箱が開き、大量のハトと共に1人の男が姿を見せる
『
背丈の長いコートを羽織り、額に鳥のようなマークが刻まれた赤い短髪の男。皇帝“ツル・ツルリーナ3世”が冥界にその姿を現した
ドライグとアルビオンは突如現れた乱入者に龍特有の殺気をぶつける
「キサマ!我らの戦いのジャマをする気か!!!」
常人でなくとも直接ぶつけられれば死のイメージを垣間見るほどの殺気……しかし、ツルリーナ3世は気にせず、2体の龍をつまらなさそうに見下ろす
「知らんな。私の野望の障害となる存在は何者であろうと排除するのみ」
「ならばキサマから葬ってやろう!!!」
人間風情に大口を叩かれたと思ったドライグはその口を大きく開き、燃え盛るブレスを吐いた。それを躱す様子もなく、3世は炎に飲み込まれた
「ふん、大口を叩いた割にはこの程度…」
瞬間、炎の嵐はたちまち吹き飛ぶ
『
「!? なんだと、無傷!!?」
「あの鏡か!!!」
3世の前に出現したマジックミラーの鏡部分が炎を全てはじき返していたのだ
「次はこちらの番だ」ブクゥ
3世は頰を大きく膨らませると、息と共に火炎を吐き出す
『
「何!鏡から炎が!!!」
「グオオォォォ!!!」
マジックミラーの性質を利用してガラスの方から炎を貫通させる3世。ドライグとアルビオンからすれば鏡から急に炎が吹き出るという事態によって不意打ちされ、身体を炎で焦がした
「おのれェ!!その鏡が
「フン」
アルビオンが翼を大きく広げて3世向かって飛び込む。そしてアルビオンが頭部を突き出したところで3世はマジックミラーを消し、取り出した布で自分の体を覆う
『
そのまま牙は宙を噛み砕く
「消えただと!!?」
「上だ白いの!!!」
「なっ…!?」
ブォン
アルビオンの頭上から布を払って現れた3世は目の前を掌でなぞる。するとなぞられた所からテニスボールほどの花火が現れ、それをアルビオンに叩きつける
「
「グワアアアアアアアアアアア!!!!」
凄まじい爆撃に翼ごと翼膜を貫かれた白龍皇は飛行能力を失い、巨大な体が大地に落下した
「バカな!やられただと!?」
「次はキサマだ」
バラララ…
浮遊する3世はトランプを取り出し自分に纏わせると、螺旋状に回転させてドライグに突撃する
「
「小賢しい!!!」
『Boost!!Boost!!Boost!!Boost!!』
赤龍帝の能力「倍加」の力を4度重ねがけしてもう1度ブレスを吐く。接触し合った2つの力は拮抗する
「2倍」バラララ…
「なっ!?」
しかし3世が新しいトランプを無情に追加。均衡はあっさり3世の方へ傾き、トランプの斬撃がドライグに無数の傷跡を作る
「ガアアアアアアアアアアアア!!!!」
「さらにくれてやる」バラララ…
さらに増えるトランプの物量に押され、赤龍帝は地に沈む
それを遠くで見ていた悪魔、天使、堕天使たちは信じられないものを見るかのような目をしていた
「わ、私たちが総力を駆使しても止めることすらできなかった二天龍をたった1人で蹂躙している…!?」
「神器を使ってるのか?いや、それにしたって多過ぎる。なんだよありゃァ…」
「一体何者なんだ、彼は……?」
「あれがツル・ツルリーナ3世様のチカラだ。いずれ世界の王となるお方よ」
サーゼクスの疑問に答えるブルース。なお視線は未だ手に持ってるエロ本に集中している
それを見た上級天使の1人がコンバット・ブルースに怒りを表す
「ミカエルさまに対しその態度はなんだ!!」
「黙れ」
「!」
それに対してブルースはすっけなく返す
「今ちょうど良いところを読んでいるのだ」
「キサマァ!!人間風情がふざけるなぁ!!!」
ミカエルよりもエロ本にしか関心がないブルースに激昂し、不敬な人間を殺すべく上級天使は光の剣を手に強襲し…
そしてブルースの半径5メートルの範囲に入ったその時、突如現れた無数の鉄条網に引っかかる
『トラップ真拳奥義「ビリビリ包囲網」!!!!』
「ぎゃあああああああ!!!?」バリバリバリ
「これは鉄条網!!?ワナか!!」
触れて2秒もせずに電撃鉄条網にかかった上級天使は天使の形をした炭の塊と化した
「おおっ、これはなかなかのアタリだな…フフフ!」ペラッ
(ただの人間が見向きもせずに上級天使を瞬殺しただと!!?しかも神器を使った様子もなし、そもそもあのワナをいつ仕掛けた?そしてまだ残っているのか?……ただのスケベ野郎と思っていたがフェイクか!向こうで戦ってるバケモノと一緒にいるだけあって、そのチカラは俺たちが総力で戦ってようやく勝てるといったところか…)
堕天使の総督であるアザゼルは、エロ本を読みふけてるコンバット・ブルースがその裏で何を考えているのか全く想像がつかなかった
その一方、ツルリーナ3世は宙に浮かぶ箱に腰をかけながら二天龍が立ち上がるのを見ていた
「所詮はトカゲ風情…このツル・ツルリーナ3世に勝つことなどできぬのだ」
「ナメるなよ人間!!どれほどのチカラがあろうと、我が能力には敵わぬ!!!」
『Half Dimension!』
白龍皇のチカラを半分にして奪う「半減」の光がツルリーナ3世に触れ、その強大なチカラを半分にして奪おうとした
しかしアルビオンの半減能力は、3世の体に触れた瞬間強力なチカラに阻まれる
「な…なんだと…!!?」
白龍皇は信じられないものを見る目で3世を見上げる
「白龍皇の能力が完全に干渉できぬほどに強固な封印がこの人間に施されているだと…!!!」
「バカな!?あり得ん!!白いのの能力が効かぬほどの封印をされて、俺たちを同時に相手していたというのか!!?」
「……やはり“毛の封印”か……」
ドライグはアルビオンの言葉を疑う。神以上のチカラで封印されていながら二天龍と戦えるなど、もはや人間ではない。いや、悪魔や天使や堕天使、神自身だとしても不可能
ならば目の前の存在は、神程度など軽々と超えたナニかなのだ
「余興は終わりだ」クイ
3世が人差し指と中指を立てて動かすと、地面から巨大な鎖が突き出てきて二天龍を拘束する
『
「何ィッ!う、動けん!!!」
「グオオォォ!!放せーーー!!!」
「さあフィナーレだ」バチバチバチ
さらに高く浮遊しながら肉眼で捉えられるほどに膨大なオーラが3世の周囲でハジけ、空に大量の大槍が現れ…雨のように降り注ぐ
「貫け!!!
「「グワアアアアアアアアアアア!!!!」」
地面に縫い付けられるように体のあらゆる部位を大槍で貫かれたドライグとアルビオンは、大ダメージと多量出血でとうとう指1本動かせなくなった
「に、二天龍を、倒した……?」
ブルースを除く全員が唖然とする中、3世は天使、悪魔、堕天使たちがいる場所…正確にはコンバット・ブルースがいる場所に静かに着地する
「ゴミは片付けた。いくぞブルース」
「ハッ!!」
二天龍をゴミと称しそのまま立ち去ろうとする3世とブルース
それを引き止めようとするサーゼクス
「ま、待ってくれ!!君たちは一体……!?」
「耳障りだ」バサッ
喧騒を煩わしく思った3世は布を取り出すと自身とブルースを覆い
『
「き、消えた……」
まるで最初から誰もいなかったかのような沈黙が長く続き、それを天使のトップであるミカエルが破った
「……一体彼らは何者だったのでしょうか……」
「さあな……だが、2つだけ分かることがある。1つはあの軍服を着た
「…「世界の王となる」か……」
「そしてもう1つは、俺たちが束になったところでヤツを倒すことなどできんことだな」
笑えない話だ。三大勢力を軽くあしらう2体の龍が戦場で暴れたと思えば、その二天龍を容易く蹂躙するバケモノが現れたのだから……二天龍が戦いの最中に言ったことが真実だとすれば、それほどのチカラがありながら封印されているのだから始末に負えない
しかもそれが人間の姿形をしているのだから見つけるのも困難な話になってくる
「なんにせよ、まずは二天龍の封印からだな」
「そしてこの戦争を終わらせて、彼のことを話し合わねば…」
「……ツルリーナ、3世……」
こうして長きに渡って続いた三大勢力の大戦は、二天龍、そして1人の人間によって唐突に幕を閉じた。その大戦で人間による二天龍の蹂躙劇を見た天使、悪魔、堕天使の大半はこう語る
『ヤツに手を出してはならない。ヤツは人の皮を被ったバケモノだ。もしヤツに目をつけられれば、ヤツのチカラによって体を真紅の血で染め上げられることになるだろう』
その名は真紅の皇帝「ツル・ツルリーナ3世」
(まったく、なんだって昼寝してるタイミングであんなヤツらが出てくるのが……。それよりも
「いくぞ。これよりZ計画を再開する」
「3世様の仰せのままに」
全身エロ本で固めた理性のなくなったコンバット・ブルースに対してゴミを見る目で見ながら、3世は「布の魔術」でブルースと共に青の世界から消えた
思ったけど、なんでボーボボのクロスオーバー作って少ないんだろ?
やっぱギャグだから?主役張れるキャラとかめちゃくちゃいるのに、首領パッチとか天の助とか魚雷ガールとか……改めてボーボボのキャラって濃いなぁって思った