「あの馬鹿…キョウトに気をつけろと格好つけながら自分が捕まっては世話ないな」
チッと舌打ちをしながら、千葉は彰に電話をかける。立場上、仕方ないとはいえ自分たちもまんまと利用されたことも苛立ちに拍車をかける。
「ま、しょうがねぇ。かぐや様に言われたら、アイツに選択権なんてねぇだろうしな」
藤堂さん以外の幹部連中も全員、同意したしなと卜部は付け加える。
「そうだな。それに我々もナリタに居られない以上、桐島に文句を言う資格は私たちにはない」
藤堂にまでそう言われては彰に文句を言うこともできない。それにそもそも、自分でも八つ当たりなのはわかっているのでため息を吐いて溜飲を下げる。
「はい、そうですね…しかし、アイツ電話に出ないな」
ナリタのことや、これからのことを話し合いたいところなのだが全く電話に出ない。何をやっているんだと思っていると、漸く繋がった。
「やっと出たか、この緊急事態に何をやっている」
『じゃあないでしょうよ。俺は久しぶりに外出たんですよ。外の情報を手に入れとかないと』
ペラと紙を捲る音がする。どうやら、資料を読み込んでいるらしい。
『しかし、俺が捕まってる間に色んなことがあったみたいだな』
「ああ。情報の差分は埋まったか?」
『今、やってる所だよ。しかし、驚いたなぁ。僕のヒーローアカデミアが終わっちゃうなんて』
「何の差分埋めてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
シリアスだが、千葉は反射で声を荒げる。だが、電話先のシリアスブレイカーの話は続いていく。
『え?ジャンプの差分埋めてんだけど?いやあ、軟禁されてる間に読めなかったからさぁ』
「いや、その差分、永久に埋めなくて良いけど!?むしろ、お前を埋めときたい!永久に!」
『確かに埋めなくて良いって気持ちはあるよ?好きなジャンプの作品の終わりを見たくなくて少し埋めときたい気持ちわかるよ?』
「そんな話してないが!?お前自身を埋めたいって話してるんだが!?」
『お前自身か…多分、虎杖にとっても宿儺は自分自身だったんだろうな…』
「何言ってんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ジャンプの話から離れろぉぉぉぉぉぉ!!」
千葉の絶叫を聞いていた卜部と仙波は静かに首を縦に振る。
「確かにな…今はジャンプの話は危険だ…」
「うむ…呪術廻戦も終わった…不動の海賊王があるとは言え2番手不在の群雄割拠の戦国時代…」
「ああ…一度話し出すと止まらねぇ」
「止まれ馬鹿ども!今すぐ止まれ!目の前の状況を思い出せ」
『確かにそうだ。目の前の状況は不利かもしれん。しかし、ここから現れるんだ新時代の英雄が。新時代の呪術廻戦が』
「ジャンプの状況を思い出せなんて言ってないわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「確かにそうだ。マガジンの状況も考慮に入れるべきだろう」
「いや、藤堂さん!?流石の私も無理ですよ!?いくら藤堂さんの発言でも、流石に全肯定はできませんよ!?」
『いやいや、肯定はしてあげようよ。マガジンだってさあ、生きてんだよ?流石に冷たくない?』
「お前は黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ねぇ、本当にお願い!ちょっと黙って!300円あげるから!」
『今は300円じゃジャンプ買えねぇんだよ!』
「何にキレてんだ!?お前の情緒どうなってる!?」
『北に行ってみたくなってる』
「絶対に行くなよお前!?これ以上、新しいお前になられたら誰も対処できないからな!?五条悟の孤独を味わうからな!?」
その後、結局、ジャンプの話しかしないで会話は終わった。千葉さんは頑張ったと思います。
「コーネリア殿下!ご無事ですか!?」
「問題ない…しかし、これだけ大掛かりな仕掛けを…ゼロだな。途中から、解放戦線の指揮が急激に良くなったから怪しいとは思っていたが…キョウトではなく、奴が飛び出したか」
目の前の自然災害に等しい土砂崩れを見て、コーネリアは獰猛に笑う。
このタイミングでの土砂崩れを偶然だとコーネリアは片付けない。そんなことはあり得ないとすら思っている。こんな解放戦線にとって都合の良い「偶然」など起こるわけがない。
「しかし、仮にそうだとしても消耗率が凄まじい…ダールトン将軍とも連絡が取れませんし、これは一度体制を立て直すべきです」
「安心しろ、保険も動かす。加えて予備部隊も全て動かせ。この機に乗じて攻めてくる奴等を返り討ちにしろ。向こうはこちらが退くと思っているはずだ。どちらが狩られる側か教えてやる。親衛隊は我に続け!」
そう言うと、コーネリアは影から狙っていた解放戦線のナイトメアにランスを突き立て、そのまま突撃を開始する。『戦姫』コーネリア。その二つ名は伊達ではない。ゼロの秘策がハマったとはいえ、現在の解放戦線にコーネリアを討てる猛者はいない。その突撃は止められない。解放戦線はその攻撃を全く止められず、解放戦線の前線は完全に崩壊した。
「戦略を戦術で超えるか…流石、姉上」
ルルーシュは現時点の戦況を鑑みて思考に耽る。土砂崩れはモノの見事に当たった。しかし、周囲の街への被害を考えすぎた結果、原作よりもブリタニアへの被害も抑えられてしまった。しかし、それでもブリタニアの被害が甚大であることには変わりない。
「アレックスの隊は?」
「連絡が取れません…恐らく、土砂崩れに巻き込まれて…」
コーネリアもコーネリアで思考に耽る。解放戦線の前線は崩壊させたが、こちらの被害も甚大。おまけに、解放戦線の部隊が全滅したわけでもなく後ろには無傷の黒の騎士団が控えている。当初のこちらの優位は既にないと見て良いだろう。
つまるところ、現状の状況は
「「五分と五分」」
ルルーシュとコーネリアは奇しくも同じ結論に辿り着く。これからの行動がこの戦の趨勢を決めると言って過言ではない。
「互角であれば、退くのは性に合わん!」
コーネリアは迷いなく、ナリタ山を駆け上る。最早、解放戦線は敵ではない。狙いは騎士団。
「互角であれば、姉上なら退きはしない」
コーネリアの思考をルルーシュは読む。今の状況を踏まえて、自分の位置を見出しギルフォードなどの部隊と挟み撃ちにする気だろう。
ならば、それに備えて伏兵を用意する。
「だが、ゼロならそれを予想する。この状況なら狙いは私だろう。欲しいのは私の首だからな」
だが、コーネリアはそのゼロの思考を読んでいる。読んだ上で、自分の首を獲りにいく。この状況を見逃す馬鹿はいない。
分かっているのだから対処もしやすい。ゼロの仕掛けた伏兵は悉くがコーネリアと親衛隊に蹂躙される。足止めすらできていない。
「コーネリア殿下!伏兵が弱すぎます!これは罠です!」
「だろうなぁ!」
目の前のナイトメアを切り裂くコーネリアは全て分かっている。全て分かって進軍する。
「姉上であれば、自分が読まれていることを分かっている。その上で来る。今までの自信と自負が勝利を過信する…扇、井上。自分たちの部隊と解放戦線の残存兵力を全て使って親衛隊を足止めしろ」
「ああ!意地でも食い止める!」
「ゼロ…来たわ…」
「予想通りだ…このままでは、コーネリアに勝ち目はない。私たちの勝ちだ」
紅蓮の中のカレンはルルーシュの声を聞き、現実としてそれに同意する。自分だけではない。隣には紅蓮ではないが最新の無頼に乗ったマーヤもいる。周囲の兵も精鋭。間違いなく騎士団の最強戦力が集っている。周囲の兵に、コーネリアの周囲の僅かな兵を足止めさせればその時間にマーヤと自分でコーネリアを討てる。その自信がある。おまけに周囲は崖。敵の援軍もそうそう近寄れない。
しかし、カレンの本能が危機を訴える。
コーネリアの機体を視界で捉えるがルルーシュに笑顔はない。コーネリアは強い。だが、こうなる可能性も分かっていたはずだ。なのに、単騎で罠に飛び込む?そんな危険を犯すか?勇気と無謀を履き違えているとしか思えない行動。本能ではなく、理性で警戒を訴えた。
「ゼロ…やはり、罠か」
「コーネリア殿下。いかがいたします?」
「やることは変わらん。言ったろう?保険もあると」
その保険の存在に最初に気づいたのはマーヤだった。
「カレン…信じられないけど…この崖を突き抜けて何かが来る」
マーヤは額に軽く汗を浮かべる。それほどのスピード。それほどの突破力。
「何か…?そんなもんアレしかないでしょうが…」
カレンの体が軽く震える。それは恐怖か。それとも、圧倒的な才を持つ自身と並ぶ強敵との出会いの歓喜か。
直後、弾ける衝撃。土で目の前の視界がゼロに近くなる中、微かに見える白き機体。
その姿を見て、カレンは脊髄反射で間を詰める。
突然だが、原作崩壊という言葉をご存知だろうか。
数えきれない程の原作崩壊を繰り返してきたこの世界。最早、崩壊していない所を探す方が難しい。
しかし、そんな世界においても何の因果か?運命か?宿命か?互いの存在に惹きつけられるかのように
「やっぱり来るわよね…白兜!」
赤と白は激突する。