ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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107 好き勝手に生きる奴でも気付けば色んなものを背負ってる

「全く、ゼロのことになるとカレンは無茶をする!」

 

マーヤは無頼を操縦しながら、先程の光景を思い出していた。

 

すでに満身創痍である身を忘れているかのように迷いなくゼロを追うと言い切ったあの気迫を。

 

『行かせてマーヤ!今、行かないと私…絶対に後悔する』

 

「今のカレンが行っても助けになるとは思えない」

 

『理屈じゃないのよマーヤ。ずっとそばにいるって誓った。だから、行く。それだけよ』

 

言っても無駄だろうと判断して、同時に向かったが行動が無茶なことこの上ない。一歩間違えれば、自身が土砂に流される危険極まりないルートをカレンは選択した。もちろん、そんなルートをマーヤが選択できるわけがない。

 

よって、カレンより大分遅れてマーヤはゼロの所に向かっていた…が、そんなマーヤに通信が入る。

 

『百目木!今、何処にいる!』

 

「無事だったのね、ゼロ。カレンはそっちに?』

 

『ああ。だが、百目木。わかっているとは思うが』

 

「分かってる。カレンは勝てない。だから、私もそっちに」

 

『いや、それは良い。それよりも、やってもらいたい事がある」

 

「この状況で何か策が?」

 

『一つだけある。癪だがな』

 

ルルーシュはマーヤに策の内容を伝えた。

 

「なるほど…ただ、それだと新たな出撃者が少数だということが条件になるけど」

 

『間違いなく少数だ。あの飛行船に搭乗できる人数など、たかが知れている。あの土砂崩れを発生させた段階で、伏兵の存在もあり得ない。そんなものがいれば纏めて土砂に流されているはずだ』

 

「確かに…じゃあ、私は現在の戦線の情報を伝えれば良さそうね」

 

『そうだ。この作戦には情報とスピードが鍵になる。迅速で行え!』

 

ルルーシュはマーヤとの通信を切ると、カレンに通信を繋ごうとする…だが、今の状況ではカレンの集中力を乱すことが死に直結しかねない。

 

「こんなものか?あのランスロットを破ったナイトメアは?」

 

「うっさい!そんな喋ってると舌噛むわよ!」

 

「ははは!それだけ喋れれば上等。もしお前が万全であったのならば、少しは楽しめたのかもな」

 

目の前の戦いは遊びに近いものになっている。シンによる一方的な攻撃。カレンは生き延びることが精々だ。それも、シンが遊んでいるから生き残っているに過ぎない。気が変われば一瞬で終わる。

 

戦闘員ではないルルーシュもそれくらいのことはわかる。だが、伝えないわけにもいかない。この場に留まれば、あるのは死のみだ。

 

「カレン。方針を手短に伝える。良いな?私を信じて着いてこい。それだけだ」

 

そこまで言うと、ルルーシュは無頼を動かし、その場から離脱する。カレンも迷わず、それに着いていく。当然、シンのことを警戒しながらではあるが。

 

「ほう?みっともなく足掻くか」

 

シンは笑みを深めると、ショットガンを打ちながら後を追う。負けるはずがない戦い。必然的に、愉しみは弱者をいたぶることへとシフトする。だが、その事実がギリギリのところでルルーシュとカレンの命を繋いでいた。

 

「アイツ、完全に遊んでるわよ!」

 

「好都合だ!これで時間と距離を稼げる!」

 

戦闘者として遊ばれている事実にカレンは憤怒するが、ルルーシュとしては全くもって問題ない。まともに戦ったところで勝てないのだ。相手が遊んでくれるのであれば、それを利用する。シンもそれは分かっているが、分かった上で放置している。今となってはゼロの隠し球の方に興味がある。

 

「とは言っても、遊びで死んだら自己責任だがな」

 

ショットガンが少しずつ紅蓮に被弾していく。元々、ボロボロの機体である上に本来ならば避けられるものでもルルーシュに当たる可能性のあるものは全て当たりにいっている。被弾が増えて当然だった。

 

「カレン!無理するな!紅蓮はもう限界だぞ!」

 

「この状況で無理しないで、いつ無理しろってのよ!」

 

カレンからすれば、この状況で無理をしない道理がない。これで無理をしなければ、紅月カレンがルルーシュの側にいる価値がない。

 

「馬鹿が!お前が動けなくなったら終わりなんだぞ!」

 

「そんくらいは見極めてるわよ!」

 

本当かどうかは疑わしいが、確かにカレンは致命傷はことごとく避けるか、防ぐかしている。シンが完全に遊んでいるとはいえ、この条件下でここまでのことができるとは。

 

「イレブンにはアイツとゼロ目的で来ただけだったんだがな」

 

他にもこんな才能の塊が野にいるとは思わなかった。間違いなく才能だけなら、ナイトオブラウンズに匹敵する。事と次第によっては、それを上回るかもしれない。だが、それは飽くまでもこの窮地を切り抜けられればの話だ。

 

「とは言え、ここで死んだらそれまでだ」

 

シンは才能を愛でるようなことはしない。どんな才能だろうが死んだら終わり。それだけの認識でしかなかった。

 

遂にシンのショットガンが紅蓮の足を捉える。紅蓮の足が止まったタイミングでシンのヴェルキンゲトリクスの足も止まる。しかし、それを見計らっていた第三者がいた。緑色の長髪の美女。その女は妙なことを口走るとヴェルキンゲトリクスに触れる。

 

「悪いな。契約者を殺させるわけにはいかないんだ」

 

(何だこれは…!?)

 

接触することでC.C.が与えるショックイメージ。シンは過去の自分の過去のトラウマを強制的に脳内再生させられることで動きが少しの間止まる。

 

しかし、相手はスザクではない。相手が生身の女であろうと躊躇はない。ショックイメージに侵されながらも、シンは躊躇いなくC.C.にショットガンの斉射を浴びせた。

 

成す術なくC.C.はその攻撃を諸に食らい、斜面を転がり落ちていく。

 

「C.C.!」

 

「面白いトリックだな。何だ今の力は?」

 

まだ少し気分が落ち着かない。一瞬、昔の映像が大量にフラッシュバックしたように感じた。

 

だが、確実に今の女は死んだ。この現象に興味はあるが、あの女が死んだ以上、気にしても仕方ないことであった。

 

「さあな。だが、これで条件はクリアされた」

 

「興味はあるが答えないようだし、別に良いか。しかし、この程度がゼロの奥の手とは少しガッカリだな」

 

「奥の手などではない。ただの腐れ縁だ」

 

「ほう?妙な言い回しをする。しかし、何か気に食わないようだが?」

 

「当然だ」

 

本当に癪に障るというような言い方でゼロは続ける。

 

「せっかくの貸しを即座に返されたんだからな」

 

直後、シンの頭上から月下が舞い降りる。即座に危険を感じたシンはバックステップでそれを躱したが、その結果、ルルーシュ達との距離が空いた。

 

「久しぶりだなゼロ。間に合って何よりだ」

 

「卜部か。アイツの采配か?」

 

「ああ。伝言だ。これで貸し借り無しってよ」

 

月下の中の卜部の言葉にルルーシュは仮面の下で嫌そうな顔をする。心底嫌なのである。

 

「久しいな。卜部」

 

「俺は久しくしないで良かったけどな」

 

心の底からの卜部の本音だった。こんな面倒極まりない奴に会いたいと思うほど、粋狂ではない。

 

「数年振りに会えたというのにつれないな。再会を喜ぼうじゃないか」

 

「相手がお前じゃなかったら、もう少し喜べたよ」

 

卜部の返しにも、シンは笑みを崩さない。少しはこれで楽しめる。そう言いたげな顔だった。

 

「主菜は遅れているようだが…お前ならば前菜くらいにはなるだろう。簡単に壊れてくれるなよ?」

 

「ばーか。何言ってんだ?忘れたのか?」

 

卜部はふんと鼻を鳴らす。

 

「アイツは期待を裏切るタイプなんだよ」

 

直後、背後から現れたトラックがシンのヴェルキンゲトリクスを吹き飛ばす。誰だ?等と言及するものはいない。むしろ、ルルーシュなどは画面の下で文句を言っている。

 

「遅い」

 

「交通ルールは守るタイプなんでな」

 

「待ちくたびれたぞ」

 

ヴェルキンゲトリクスの中でシンは歓喜の笑みを浮かべる。EUの事件から、この男のことを忘れたことはない。忘れたくても忘れられない。コイツのせいで成し遂げられなかったのだ。自らの願いを。想いを。

 

「彰。今度こそ決めようか。この世界は終わるべきか、続くべきか」

 

「前から言ってっけど、そんなもん決める権利は俺たちにはねぇよ」

 

彰は白けたような顔をシンに向ける。

 

「お前がこの世界に絶望するのは勝手だ。実際、否定しきれねぇしな」

 

だが、と彰は続ける。

 

「お前がテメェの捻くれまくった愛情で全てを終わらせようとすんのなら何度でもお前の想いをへし折ってやるよ」

 

彰は刀をシンへと向ける。

 

「日本もブリタニアも知ったことか。俺の手が届く範囲は俺の国だ」

 

「相変わらずの自己中、傍若無人。では、守ってみせろ。お前の国とやらを」

 

「後悔すんなよ?お前の自慢のおもちゃを壊されてもよ」

 

そう言うと、彰が乗ってきたトラックの扉が開く。出てきたのは機体が灰色に染まったナイトメア。

 

カレンは少し驚きの目を向ける。

 

「まさか…これ、あんたの…」

 

「ああ、そうだよ」

 

ガリガリと彰は頭を掻く。

 

「心配性のお姫様に渡されてな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ちょっと待て」

 

「あん?」

 

キョウトから出る直前、アキトに呼び止められた彰が振り返ると車のキーを渡される。

 

「かぐや様がお前のために作らせた特注品だ。持っていけ」

 

「気が進まねぇ…何が入ってんだよ」

 

「お前に役立つ物だ。大切に扱え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間に合っているかどうかは不明ですが、彰様はそろそろ着いた頃ですね」

 

一人、呟きながらかぐやは空を見上げる。

 

自分にできることはここまで。戦いが始まればかぐやにできることは信じることだけ。無力な自分に苛立ちを覚えるが、そんな暇すら自分にはない。自分にできることを全力で行うだけだ。

 

「進んでください。白でも黒でもない貴方だけの生き方を」

 

自由気ままに流れる雲のようなあの男が少しでも自分らしく生きられる助けになるのならばーそんな男に惹かれてしまった自分のような人間が希望を持てるならばーかぐやは全てを賭けよう。

 

白でも黒でもない灰色の道を突き進む彰の力になるように授けたナイトメアの名はー叢雲ー

 

無理を言って紅蓮だけでなく、もう一騎作らせた彰のためのナイトメア。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、あのロリ姫に借りを作ったのは怖いがこれで条件は互角だな。さて…」

 

彰はじろっとナイトメアのシンを睨みつける。

 

「お前の歪みまくった愛情を矯正してやるよ」

 

「やってみろ」

 

シンは彰の睨みを狂った笑みで受け止める。

 

かつてEUで交わった終焉を望む刃と存続を望む刃が立場も国も時も超えて

 

再び交わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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