時が止まったかのように彰とシンの二人は動かない。
変わらず、彰はシンを睨みつけている。
睨み続けて、睨み続けて暫く経った頃
「…早くナイトメア乗りなさいよ」
飽きれたようにカレンが呟く。様子を見るにしても、ナイトメアに乗っていた方が良いのは明白だ。
「乗れません」
「「「は?」」」
「色々探したんだけどさー」
流石にこの空気でアレだとは思っていたのか、珍しく引き攣った顔で彰は続ける。
「…入口ないんですけど、このナイトメア」
「馬鹿かお前は!」
「締まんないわね、あんたは本当に!」
「何やってるんだお前は!?」
三者三様にツッコミを入れる。この空気でそんな阿呆なことしていれば、正常な反応だ。だが、彰にも言い分はある。
「何で俺のせいになるんだよ!こんな分かりづらい構造にしたあのロリ姫のせいだろうが!」
「ちっ!とにかく、俺が時間を稼ぐ!お前はその間にゼロ達にも手伝ってもらってなんとかしろ!」
そう言うと卜部はシンの前へと移動する。時間稼ぎに徹するというのは本当らしく、絶対に相手の射程に入らない距離からの牽制。意図がわかっていながらも、シンはそれに付き合う。
「相変わらずフォローに苦労しているな」
「このくらいなら、慣れたもんだよこの野郎!」
その時間を利用して状況を打破すべく、カレンとゼロは彰の側による。
「大体、入り口がないなんて馬鹿なことあるわけないでしょ!キーはどこなのよ」
「そのキーがないんだよ」
「だから、そんなわけないでしょうが!」
『キーハオンセイニンショウデス』
「「「うおっ!?」」」
ナイトメアから突然、聞こえてきた音声に彰達は驚きの声をあげる。しかし、機械なのでそんなことは気にせず話を続ける。
『シヨウシャトウロクヲイタシマス。パスワードヲニュウリョクシテクダサイ』
「…パスワードは知ってるのか?」
「知らん」
「…マニュアルを読み込むしかないようだな」
『パスワードハキマッタモノデハアリマセン。カグヤサマガ、アキラサマカクニンノタメニセッテイシタモノナノデ、カグヤサマAIヲナットクサセレバヨイデス』
「ほお。じゃあ、そのロリ姫AIを納得させるにはどうすれば良いんだ?」
『カグヤサマニアイノコクハクヲシテクダサイ』
「…」
3人とも、暫く固まる。暫くすると空耳だろうと判断した彰が再度確認を取る。
「すまん、聞こえなかった。もう一回言ってくれ」
『カグサマニアイノコクハクヲシテクダサイ』
「よーし、卜部さん。分かったこのナイトメア使えねーわ。もう俺ステゴロでその狂愛主義者ぶっ倒すから交代してー」
「バカ言ってんじゃないわよ、アンタ!」
割と本気で言っている彰の頭をカレンがぶん殴って無理やり止める。素手でナイトメアに勝てるわけがないからだ。
「愛の告白くらいすれば良いでしょうが!そんなもん気にするようなマトモな神経してないでしょ!」
「何が悲しくて機械にあのバカ女への告白をせにゃならんのだ!そんなんするくらいなら、お前に告白するわ!」
「私にして何の意味があるのよ!急いでるんだから、気にしてる場合じゃないでしょうが!」
「その通りだな。告白などただの言葉だ。それに意味などない。何でもいいから適当に愛を囁け」
「クソ童貞が偉そうに言うじゃねぇか!じゃあ、お前が言えよ!」
「お前でないと意味がないのだろう?であれば、私が言っても無意味だ」
『ゼロサマデモカデス』
発せられたその言葉に固まるゼロへ、彰はそっと笑顔で肩に手を置く。
「告白なんてただの言葉なんだろ?んじゃ、頼むわ」
「ふざけるな、お前のナイトメアだろうが!お前がやれ!」
「童貞に告白の経験させてやろうって言ってんだよ?人生で一回と告白したこともないんだろ?ヘタレなんだろ?だから、場数踏ませてやるって言ってんだよ」
ゼロ様のカッコいい所見てみたい〜とイブの声色で発する彰にルルーシュの苛立ちは倍増する。
「馬鹿が!初めてだから価値があるんだ!貴様のように適当な言葉で誑かすクズの告白が一回増えたくらいで何も変わらん!お前がやれ!」
それに、そもそもとゼロは叢雲を睨みつける。
「彰はともかく、私でも良いなら誰でも良いだろうこの尻軽が!良いからとっとと開けろ!」
その直後、
叢雲から放たれた電気ショックがゼロを襲う。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ちょ、ゼロ!?…大丈夫?」
即座にカレンが無事を確認するが、どうやら問題ないようである。
『ワルクチヲイウトジドウゲイゲキイタシマス』
「どんだけ無駄な機能つぎ込んでんのよ、このナイトメア!?」
『アキラサマトゼロサマイガイニカグヤサマノアイテニフサワシイノウリョクガアルモノハオリマセン。デスカラ、ホカノカタハフカデス』
「何でナイトメアに乗るのにかぐや様の相手に相応しい相手である必要がある!?」
『ワタクシニノルノハニホンノキボウノオフタガタダケダトノオモイカラデス。カグヤサマノオンセイヲサイセイシマス』
ピーという音の後に音声が再生される。
『ゼロ様…彰様…私の中に入って…』
「言ってること生々し過ぎるんですけど!?止めてくれない!?」
完全にアウト過ぎる音声を再生する叢雲にカレンが顔を真っ赤にして反論する。
「良かったなゼロ。これで童貞卒業できるぞ。合法的に幼女の中に入れるんだ。シスコンなら泣いて喜べ」
「絶対に断る!良いからお前は早く告白しろ!俺は彼女がいるから告白などできん!」
「彼女なんて可愛いもんだろ!俺なんて結婚してるんですけど!?」
どうしてもナイトメアに告白などしたくないし、中に入りたくもない2人の不毛な争いはしばらく続いたが、決着がつかない。心底嫌だと思っているので当然だ。暫し2人は睨み合ったが、納得させることが不可能であるため妥協点の探り合いに入った。
「こういうのはどうだ?お前が適当に告白する。入り口が空いたら先に適当な石を大量に投げ込んでから俺が入る。これなら均等だろ?」
「石を投げ込むのに何の意味あんのよ…?」
「アイツの中に最初に入るのが石になるだろ?笑えるじゃん」
「よし、それでいこう」
「コイツら…」
カレンの引き攣った顔を無視して、ゼロは叢雲の前に立つ。
「お前を幸せにしてやる。だから、ドアを開けろ」
『ココロガコモッテオリマセン』
「おい、コイツにギアスをかける方法はないか?」
「キョウトに乗り込むか。調子こいてるあのバカ姫捕まえて、逆さ吊りにしようぜ」
「いい加減にしなさいよ、アンタ達!」
割と本気でキョウトに向かおうとしているバカ2人の襟首をカレンが掴んで引き寄せる。
「良いから本気でやんなさいよアンタ達!卜部さんもそろそろ限界よ!?」
馬鹿をやっているから、忘れているかもしれないが隣では卜部さんが文字通り命懸けでシンを食い止めている。流石にそれもそろそろ限界が近い。
「たく…おい、ロリ姫」
ため息を吐いて彰は叢雲へと向き直る。
「前に俺のことを勝手に信じてるとか言ってたけどな…悪いが俺も勝手にお前のことを信じてる」
だから、と彰は続ける。
「俺がお前を助けてやる。だから、お前も俺を助けろ」
暫し、続く静寂。だが、直後に音が鳴り響く。先ほどまで壁だったところに、入り口が開いた。
「告白ってあれで良いの?」
「さあな。良いなら気にすんな」
嫌がらせ目的で何個か石を投げ込んでから、その入り口から彰が搭乗する。さて、やるかと彰が準備を始めると不意に音声が鳴り響く。
『彰様。このナイトメアを渡すのですから一つ貸しです。その貸しで貴方に命令します』
一拍、空いた後映像の音声は話を続ける。
『死ぬことは許しません』
『オンセイノサイセイハイジョウデス』
直後、音声が停止する。だが、その内容に彰も苦笑するしかない。
「たく…我が儘なロリ姫だよ。本当に」
彰がそんなことを言うと、目の前で丁度卜部の月下が吹き飛ばされていた。その卜部にトドメを刺そうとしたシンのヴェルキンゲトリクスの前に出る。
「そんな急ぐなよ。早漏はモテネぇぞ」
「数年振りなものでな。流石に昂る」
「その昂りはジャンにでも向けてやれよ。泣いて喜ぶ」
「捨てたものに興味はない。それに、お前はそんな心配をしている場合じゃないんじゃないのか?」
「あん?」
「私が1人でここにいるとでも?お前の他の大切な連中とやらの心配はしなくて良いのか?」
「心配いらねーよ」
ニィッと彰は悪そうに笑う。
「どっかのロリコンが気合い入れてたからな」
「くっそ、こいつ!?」
「アヤノ!横!」
ユキヤの声でかろうじてアヤノはルキアーノのパーシヴァルの爪を寸前で躱わす。
「どうしたぁ!?この程度かEUの救世主ども!」
「俺らはそんな大それたもんじゃねぇよ!」
リョウがミサイルを放つが、紙一重でパーシヴァルは躱していく。完全に見切っている。
「コイツ…!?」
「どうしたぁ!?クリーンヒットは一つもないぞぉ?お前らはその程度かぁ?」
愉しそうに笑うルキアーノはミサイルなどを躱しながら、少しずつアヤノへの距離を詰めていく。
「捉えたなぁ!お前の大切なものは何だぁ?変わったかぁ?」
「少なくともお前じゃないことは確かだな」
「何…!?」
流石のルキアーノも予測できなかった謎の第三者の介入。その第三者はウルナエッジを突き立てて、ルキアーノを後方まで吹き飛ばす。
それに警戒したのか少し距離を取るが、アヤノ達3人からしたら予想外ではあるが中の人物に予想はついていた。
自分たちと同じアレクサンダを扱うものなど、日本では自分たち以外に1人しかいない。
「鈍ったんじゃないのか?お前ら」
「遅れてきて吠えるじゃねぇかよ」
「キョウトから此処まで来たの?暇だね」
「言っとくけど、お前がいなくても私たちだけで何とかできてたんだからな…アキト」
「それだけ吠えられれば上等だな」
遅れてきたアレクサンダはリョウ達の前に立つと、アレクサンダにエッジを向ける。
「弱いものいじめは飽きただろう、吸血鬼。折角だ、駆除してやる」
「これはこれは…弟君じゃありませんかぁ」
日向アキト参戦。