ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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111 葬式には色々とルールがある

ナリタ決戦は黒の騎士団にも多くの犠牲を出した戦いとなった。

 

負けではなかったとはいえ、傷跡がなかったとはとても言えない内容だ。

 

その傷跡は残された者の多くを苦しめることになる。

 

黒の騎士団の初期メンバー杉山賢人もその傷跡の一つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如是我聞。一時仏。在舍衞国。祇樹給孤獨園。与大比丘衆。」

 

「す、杉山よぉ…」

 

黒の騎士団で行われている葬式で玉城は涙を流していた。長い付き合いの友を失ったのだ。当然の反応だ。

 

「前を向け玉城」

 

しかし、そんな玉城を南が叱責する。

 

「戦うということは殺される覚悟をすること。あいつにはその覚悟があったはずだ」

 

「ゼロの作戦が甘かったからだろうが!アイツを信じたせいでこんなことに!」

 

「あの追撃の土砂崩れを読んだやつなんて誰もいなかった。それに、ゼロだって自分の責任を認めて俺たちの答えを待ってくれてるじゃないか」

 

ナリタでの戦いは負けではなかったとはいえ、ルルーシュも責任を感じないわけではなかった。

 

なので、『私の責任は認める。私についていけないと思うものは組織を去れ。もしくは過半数が私を認めないというのであれば私が組織を去ろう』と言い残し、答えが出るまではと暫くは黒の騎士団の面々に顔を出してはいない。

 

カレンは猛反発したが、結束できない組織に未来はないとルルーシュに押し切られている。

 

「それでもよぉ…」

 

だが、理性として納得はしても感情はそうはいかない。玉城とて分かってはいるのだ。ゼロを責めてもどうにもならないことは。

 

玉城だけではない。この葬式に納得がいっていない者は他にもいた。

 

(いや、そもそも俺死んでないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??)

 

自身の葬式をドアの隙間から除いている杉山賢人のように。

 

杉谷は土砂崩れに巻き込まれかけた後、気を失っていたが死んではいない。何とか騎士団のアジトまで辿り着いたら自身の葬式が行われていたのである。絶叫も納得の理由だ。

 

(え、何これ!?何で俺の葬式が執り行われてんの!?これなんてイジメ!?)

 

「よさないか玉城!」

 

「扇…お前は…お前は悲しくないのかよ!」

 

「悲しいに決まってるだろ!」

 

扇だって悲しいに決まっている。仲間が死んで悲しくない者などいない。まあ、死んでないんだけど。

 

「俺だって多くの仲間を俺の指揮のせいで亡くした…だけど、だけどなぁ…俺たちはそれでも進んでいくしかないんだよ!」

 

俯くのは簡単だ。だが、それは自己憐憫に他ならない。報いたいと思うならば前を向くしかないのである。

 

「だからお前も前を向け玉城…杉山もあの世で応援してくれてるさ…」

 

「す、杉山ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

玉城は大粒の涙を流す。それを見た扇は涙を浮かべて玉城を抱きしめる。場の空気は悲しみに包まれている。だが、しかし

 

(だから俺死んでないんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!出てこれなくなる空気作るのやめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!)

 

見ている杉山としては気まずい以外の感情はない。だって、生きているのだから。死んでいないのだから。

 

「すまない…一つ良いだろうか?」

 

解放戦線を代表して葬式に来ていた藤堂はすっと手を挙げて発言する。

 

(奇跡の藤堂ぅぅぅぅぅぅ!頼む!この空気を何とかしてくれ!)

 

厳島の奇跡を産んだ藤堂であるならばこの空気も何とかしてくれる。杉山はそんな思いを持って見つめる。

 

「杉山とは誰なんだ?」

 

(まず、そこからぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

 

「藤堂さん…何言ってるんですか?」

 

呆れたようにマーヤはため息を吐く。葬式に来ているのに、その相手を知らないなど無礼にも程がある。

 

「杉山君は大野君の親友ですよ」

 

(それ、別の世界の杉山ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

「私は大野君派だったわね」

 

(今、言う必要あるのか井上!?)

 

「若いな、井上。杉山君の良さが分からないとは」

 

(お前も何で話を広げたC.C.!?)

 

何故か別の世界の話で盛り上がりかけている女性陣を驚愕の目で見つめる杉山。それはそうだろう。何せ、葬式と全く関係がない。

 

「あのね…葬式でそんな話をするんじゃないわよ」

 

そんな女性陣にカレンはため息を吐く。TPOと言うものがあるのだ。やって良いこととやってはいけないことがある。

 

(カレン!お前だけだよ味方は!)

 

「杉山さんが亡くなったのよ…今はあの人に冥福を祈る…時間」

 

そんな言葉の途中でカレンはドアの隙間で覗いている杉山と目が合う。

 

(良かったカレン!俺の生存を皆に伝えてくれ!)

 

「…」

 

カレンはゴシゴシと自分の目を擦る。だが、杉山の姿は消えない。見間違えではないと分かった次の瞬間

 

「あー、私は大野君と杉山君の映画が好きだったわね!」

 

(カレン!?)

 

全力で全てを見なかったことにした。あんなのに関わって良いことなど何もない。あれは幻覚だ。疲れているに違いない。カレンはそう判断した。

 

(私は何も見ていない…何も聞いていない…見ていない…聞いていない…見ていない…聞いていない…見ていない…聞いていない…見ていない…聞いていない…見ていない…聞いていない…)

 

一種の自己暗示なのではないかと思うほど、心の中で見ざる聞かざるを唱え続けているカレンを尻目に藤堂が意外だと声を漏らした。

 

「ほう?私が貰った手紙では永田の葬式と記載されていたが」

 

(これ、永田の葬式だったのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?)

 

「永田か…あいつの功績はデカかったよな」

 

「カレンの代わりに倒れたようなもんだからな…あいつがいなけりゃ俺たちの物語は始まってなかった…」

 

「惜しい人を亡くしました…」

 

カレンを除いた会場の全員が永田の死を悲しんでいる。マーヤに至っては薄らと涙を浮かべている。

 

(なんか俺より永田の方が哀しんでる人多いんだけどぉぉぉぉぉぉぉ!!??てか、マーヤは永田のこと知らないはずだけど!?)

 

「いや、永田の育てていたメタルグレイモンの葬式と記載されていた」

 

(永田の葬式ですらなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???)

 

「くそ…永田が死んじまったから食事を与えられなかったのか!」

 

「ウンコの掃除もできなかったから、不衛生な環境だったのもあるだろうな」

 

「何で誰も掃除をしてやらなかったんだよ!」

 

「懐かしいよな…ナオトのスカルグレイモンとの戦いは今でも伝説だ…」

 

「あの頃は出会ったらバトルが当たり前だったからな…」

 

(いや、そんなあの頃知らないけど!?お前ら、テロリストの活動中に何やってたんだ!)

 

「でも、そんなあの頃は戻らないのね…だって、メタルグレイモンはもう…」

 

「メ、メタルグレイモン!!」

 

(こいつらメタルグレイモンの何なの!?選ばれし子供達か何かなの!?)

 

「皆さん、諦めないでください!日本を取り戻せばメタルグレイモンも帰ってきます!だって、私達のデジヴァイスはまた戻ってきますから…」

 

(コイツに至ってはデジヴァイス所持者だったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??)

 

天井を見上げながら涙を浮かべているマーヤに杉山の内心の絶叫が炸裂する。心の声なので聞こえてはいないのだが。

 

「そうだよな…俺たちが忘れなければあの頃はいつだって返ってくる!」

 

「そうよ!だって、私たちは選ばれし大人だもん!」

 

(選ばれし大人って何だぁぁぁぁぁぁぁぁ!お前ら、誰にも選ばれてないよ!ただの馬鹿だよ!)

 

「へへ…もう一度やり直そうぜ!あの夏をな!」

 

「ブリタニアを滅ぼせば、あの夏だって返ってくるさ!」

 

(お前らが滅べぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!葬式で一体何の話で盛り上がってんだ!)

 

誰も自分の死について悲しむどころか話題にすらしてない展開に杉山は青筋を浮かべる。もうこいつら滅ぼすか。存在をなかったことにするか。

 

杉山がそんな物騒な思考に陥っていると、更にその杉山の後ろから声が響く。

 

「違うな。間違っているぞ黒の騎士団」

 

突然のバズーカによって吹き飛ばされる扉。扉とまとめて吹き飛ばされる杉山。しかし、誰もそれを見ていない。全員がその後ろを見ている。

 

「ゼ、ゼロ!お前なんで此処に!?」

 

「あの夏を取り戻す…そんな甘い決意で良いと思っているのか?」

 

「な、何だと?」

 

「そんなもので戻ってくるのは当時を知る者のみ。そんなものでは若い者はついてこない」

 

「そ、そうかもしれないが、俺たちにできることなんて…」

 

「確かにな。ここからブームになるのは奇跡が必要だろう」

 

だが、扇は忘れてしまったのだろうか。目の前の男が誰なのかを。

 

「しかし、忘れたか?私はゼロ!奇跡を起こす者だ!」

 

「ゼ、ゼロ!」

 

カレンを除いた全員の目に希望が戻る。そうだ、その奇跡の男に自分たちはついてきたのだ。

 

「今回の作戦は成功だったとは言い難い!だが、失敗ではない!コーネリアに確実な打撃を与えている!」

 

葬式の空気は興奮に染まる。最早、誰もゼロを疑う者はいない。

 

「約束通り日本もメタルグレイモンも取り戻す!私を信じてついてくる者はここにいるか!」

 

「ゼロ!ゼロ!ゼロ!」

 

葬式はゼロコール一色になった。最早、何のための集まりだったかを覚えているものも少ない。だが、ゼロに対する不信感は一掃された。それで良いじゃないか。黒の騎士団の結束は一段と強くなったのだから。この場にいるほとんど全員はそう考えていた。

 

そんな中、忘れられた杉山は吹き飛ばされた扉の下で挟まっていた。

 

流石に可哀想に思ったカレンは杉山の側にそっと座る。

 

「あの…杉山さん…デジモンペンデュラム…始めます?」

 

「絶対にやらない…」

 

 

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