ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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112 ありのままの自分と言いつつも、隠すところは隠す

目の前の写真から完全に目を逸らして、リョウとアヤノは心の底からこの時間が早く過ぎるように願い続けていた。

 

だが、目の前の修羅はそんなことを赦しはしない。ずいっと顔を近づけ、再度問いかける。

 

「で?この男のことをお前たちは知っているのか?」

 

「「知りません」」

 

リョウとアヤノは冷や汗を大量に流しながら、目の前の修羅の尋問に耐えている。

 

何でこんなことになったんだろう。2人は後悔しか無かった。

 

 

 

 

 

話は暫く前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど…つまり、君たちは依頼人がゼロだと知ってはいたが依頼内容が人命救助だったから受けたと…そういうことかな?」

 

「だから、そうだって言ってんだろうが!」

 

リョウたちはナリタの戦闘の件で取り調べを受けていた。ナイトメアの所持に、黒の騎士団との取引の疑惑。捕まる理由としては充分すぎた。

 

リョウの報告に取り調べをしていたギルフォードはしかめ面を浮かべる。

 

「ほとんど黒に近いが、君たちが行った救助活動で助かった命が多かったのも事実…どう、対処したものだろうな」

 

何とも微妙な事案である。行為自体は問題しかないが、それによって問題が生じたのかと問われれば何も発生していない。これが、法治国家であれば完全にアウトなのだろうが生憎と現在のブリタニアは完全なるトップダウン体制。良くも悪くも、コーネリアの判断が全ての基準となる。

 

「本来であれば死刑が手っ取り早いのだが」

 

「何恐ろしい事言ってんだ!推定無罪って言葉知らねぇのか!」

 

「普通にナイトメア所持している段階で有罪確定だと思うが」

 

「人命救助にしか使用してねぇだろうが!だから、お前らは税金泥棒って言われんだ!」

 

「言われた覚えなどないのだが!?と言うか貴様らの方は本当に税金払ってるのか?どう考えてもグレーゾーンの仕事だろう」

 

「お前らがちゃんと仕事しねぇからグレーゾーンの仕事が増えるんだろうが!テロリスト撲滅する前に、俺らの生活の貧困を撲滅しろ!金よこせ!」

 

「そうだー。金よこせー。働きたくなーい」

 

「最後の言葉で全部台無しだろうが!私だってこんな場所よりも姫様の隣に永久就職したい!」

 

「おい、こいつ本当はやばい奴なんじゃねぇのか!?」

 

さり気なく本音を暴露しているギルフォードにリョウのツッコミが入るが、誰も気になど止めない。

 

「と言うか何でお前みたいなのが俺たちの取り締まり担当してんだよ。偉いんだろ?変態性のせいで左遷されたか?」

 

「姫様の隣に居続けられるなら、左遷でも何でも受けるがそうではない。君たちの扱いが非常に際どいものになってるんだ」

 

「へえ、何で?」

 

今までさほど興味がなかったユキヤはボンヤリと話し合いを聞いていたが、気になる話題でもあったので尋ねてみた。

 

「ユーフェミア様がお前達の弁護に立つと仰っておられるのだ」

 

((第三皇女かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!))

 

もう嫌な予感しかしなかった。この展開であの天然ドS皇女が来たら、助けるつもりが自分たちの首が締まりかねない。

 

「だがユーフェミア様には急遽、別の用事が入った。ここにはいらっしゃらない」

 

ギルフォードの説明に、アヤノとリョウはほっと息を吐く。自分たちにとって最悪の展開は回避された。

 

「代わりに、コーネリア殿下がいらっしゃる」

 

((第二皇女かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!))

 

自分たちの最悪が塗り替えられるとは思ってもいなかった。天然ではなく、ストレートなドS皇女様だ。後ろ暗い仕事しかしていないリョウ達にとっては処刑宣告に等しい。

 

「ふざけんなぁぁぁぁ!何で俺らみたいな庶民が、総督に会わなきゃならねぇんだ!」

 

「そうだ!総督というのはそんなに暇じゃないだろ!他にしなきゃいけないことが山のようにあるはずだ!」

 

「確かに山のようにある。だが、それを差し引いても貴様らの方が優先順位が高かったというだけだ」

 

そんな空間に突然、凛とした声が響く。その言葉に、リョウたちの背筋はピンと伸びる。

 

扉を開き、入室した第二皇女ーコーネリアはギルフォードが空けた椅子に腰をかける。

 

「コーネリアだ。言うまでもなく、知っているとは思うがな」

 

「そ、それはもう…」

 

知りたくなくても勝手に耳に情報が入ってくる超ド級の有名人である。

 

「貴様らも言っていた通り、私は忙しい。よって、結論から言おう。今回の件で貴様らを罪には問わない」

 

「え、マジで!?流石は総督様!」

 

「コーネリア殿下!何ですかその優しさは!その優しさを私に向けてくださったことなどないのに!たまには私にもその優しさを感じさせてください!さあ!スタンバイオーケーです!」

 

ギルフォードはコーネリアに尻を向けて四つん這いになる。その尻にコーネリアは無言でサーベルを差し込んだ。血が吹き出すと同時に悲鳴もあげたが、この場の全員はそれを無視した。

 

「理由は幾つかあるが、主な理由は一つだ。言うまでもないだろう?」

 

「第三皇女様かな?」

 

コーネリアは否定も肯定もしないが、その反応だけで確定したようなものだ。

 

ユーフェミアの行動で助かった命が多かったのは事実だが、結果としてテロリストの疑いがある者たちと友人関係にあるという事実がブリタニアの内部に広まってしまった。

 

リョウたちのナリタでの行動は讃えられて然るべき行動であるので、ユーフェミアとしては友人で何が悪いと思うかもしれないが、それを利用してユーフェミアの評判を下げようと画策する者たちに格好の口実を与えてしまうことになる。

 

コーネリアとしてそれは是が非でも避けたい。だからこそ、如何にグレーゾーンであるとしてもリョウたちのナリタでの行動を罪には問えないのである。

 

「じ、じゃあ、問題ないようなんで俺たちはこの辺で」

 

「いや、お前たちにはもう一つ聞きたいことがある」

 

こんな危険な場所からさっさと逃げようとするリョウに、コーネリアは一枚の似顔絵を突きつける。その似顔絵は3人がとても良く知っているどこかの彰にそっくりだった。

 

「副総督の髪を全剃りした確実に抹殺すべきクズの似顔絵だ。お前たち、この男のことを知っているか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、話は現在へと戻る。

 

リョウたちは即座に彰を売ることを決める。だが、売ったとしても自分たちは救われるだろうか?救われないだろう。むしろ、自分たちを人質に彰を呼び出そうとするはずだ。そして、あのクズは迷いなく自分たちを捨てる。笑い者にすらするかもしれない。

 

であれば、答えは一つだ。

 

「いやあ、知らないですねぇ。誰なんですか、こいつ?」

 

しらばっくれる一択である。嘘をつくことに躊躇いはなかった。

 

「日本解放戦線の一員であることはわかっている。名前は不明だ。お前たち何でも屋をやっているのだろう?依頼などされたことはないか?」

 

依頼など何回もされているし、そもそも自分たちが日本に来たキッカケがこの男なのだがそれを口には出さない。出したら死ぬ。

 

「し、知りませんが解放戦線の一員なら今回の戦争で死んでいるんじゃ…?」

 

「かもしれん。だが、今の所死亡を確認できていない。今回の件に関して時効はない。ユフィの髪が完全に生え揃うまで奴の命を削り取るつもりだ」

 

土砂崩れで死んでいたとしても身体をバラバラにした上で冷凍保存して、晒し者にしてやるとドス黒く笑う第二皇女にリョウたちの冷や汗は止まらない。何故、あんなクズの尻拭いを自分たちがしなければいけないのだろうか。理不尽にも程がある。

 

「逆に考えてはどうでしょうか、総督様。今の状態を逆に利用するのです」

 

「ほう?具体的には?」

 

ユキヤは今の状態を前提にした上でこれからの行動を考えるべきだと提案した。確かに、亡くなった髪の毛を思い起こすよりも建設的な方法に思えなくもない。

 

「ダイハードの続編を作るとか」

 

「ハゲてるだけだろうが!」

 

キレ気味にコーネリアは反論した。共通点がハゲだけである。ナカトミビルに行けとでも言うのだろうか。

 

「もしくは、運び屋になるとか」

 

「ハゲてるだけだろうが!」

 

「いや、ハゲに届けの主演をやるとか」

 

「ハゲに届けって何だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ヅラでも届けろと言うのかぁぁぁぁぁぁ!」

 

「おい、貴様らいい加減にしろ!ハゲにハゲと言うなんてデリカシーがない!ハゲフェミア様のお気持ちを察して差し上げろ!」

 

「誰がハゲフェミアだ、貴様が1番無礼だろうがこの痴れ者がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

復活したギルフォードを鞘のフルスイングで部屋の外にまで吹き飛ばすと、鼻息荒く椅子へと着席する。

 

「困ったことだ。最近、部下までハゲィの悪口を言う輩が増えていてな。私も厳しく言ってはいるのだが」

 

「いや、総督様。貴方が言えてないです。貴方が間違えてます」

 

「それもこれもあの写真のゴミ男のせいだ!」

 

「いや、原因の大部分はそうだけどそれだけじゃないよね。貴方の陣営の人間性にも原因があるよね」

 

珍しく割と真っ当なユキヤのツッコミを無視して、コーネリアはため息を吐く。

 

「実際、ユフィのことを舐める連中というのは多くてな。経験がないお飾りの副総督が髪までお飾りになったとか影で言われている」

 

「はあ…経験がないのは事実でしょうからしょうがないのでは?」

 

完全な部外者だから言えることもあるのか割と盛大な暴露をするコーネリアにアヤノは無難な回答をする。

 

「それはそうだ。だが、下の者に舐められていては上の者として問題だ。どうしたものかな…」

 

「問題ありません、コーネリア総督」

 

「ユ、副総督か。どうした?用事があるとか言っていたが」

 

そんな中、突然ドアを開いて現れたユーフェミアにコーネリアは驚きながらも疑問を返す。

 

「大丈夫です。私なりに考えてみました。お飾りの副総督から脱却するにはまず髪のお飾りを止めるべきだと」

 

((いや、そこやめてもお飾りの副総督から脱却しないから!ただのハゲのお飾り副総督になるだけだから!))

 

リョウとアヤノは思いっきり突っ込みたかったが、場の空気を考えて思うだけに留めていた。

 

「い、いや、それはどうだろうな?」

 

コーネリアも汗を垂らしながらも、ユーフェミアの意見を否定する。実際、意味があるとはとてもではないが思えない。

 

「私がお飾りを止めることで勇気づけられる方もいると思うんです。苦しんでいるハゲの人達の希望になれればと」

 

((とんでもない所に希望見出しちゃってるよ!ハゲとして生きる覚悟固めちゃってるよ!))

 

「ま、待てユフィ!何か盛大に間違ってる気がするぞ!?」

 

「大丈夫です。既にハゲ連盟の方とお会いして支持は取り付けました」

 

((何も大丈夫じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!ハゲ連盟って何だぁぁぁぁぁぁ!!??))

 

「待ってくれユフィ!お願いだから待ってくれ!」

 

「お気になさらないでください総督。これから、撮影があるので行きますね」

 

伸ばしたコーネリアの手は空をきり、ユーフェミアはそのまま外に出てしまう。

 

残された場には沈黙が支配する。

 

何も言わず歯を食いしばっているコーネリアを見て、リョウ達は何も見なかったことにして席を立った。

 

「「「け、毛生え薬を買ってきます…」」」

 

 

 

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