ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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113 やりたいことやれって言うのはやりたいこと見つけろってことだ

「キョウトに呼ばれたのは良いけどよ…何でお前は行かなかったんだよ、扇」

 

キョウトからの召集に応えて騎士団から向かったのはゼロとカレンとマーヤ。そこに扇の姿は無かった。いや、正確に言えばゼロからは呼ばれたのだが、扇は自身ではなくマーヤを行かせてくれるように頼んでいた。

 

「ん?ああ、少し考えたいことがあってな」

 

玉城からの質問に扇は苦笑で返す。隠しているわけではないが、これは自身が乗り越える壁だ。他人に判断を委ねる訳にはいかない。周囲に流されることが多い、自身では尚のこと。

 

「最近、何か考えてることが多いのは知ってるけどよ。しっかりしてくれよな。お前は俺たちの大将なんだからよ」

 

「大将はゼロだろう」

 

「そりゃ、そうだけどよ。やっぱり、扇グループだからな俺らは。俺らの大将はお前だぜ」

 

「それを言うなら、リーダーはナオトだろ。俺じゃない」

 

そう言うと扇はそっと席を立つ。

 

「おい、何処行くんだよ?」

 

「手紙さ。この間、俺の指揮のせいで死んだ人達の遺族に詫びなきゃいけないからな」

 

その扇の後ろ姿に静観して様子を見ていた南はため息を吐く。

 

「重症だな」

 

「ああ、ありゃダメだな。暫くは立ち直れねぇ感じがする」

 

玉城も頭を掻いて背もたれに寄りかかる。

 

「俺は扇のああいう所は好きだが、今回ばかりはそれが裏目に出ちまってるな」

 

「気にするな…とも言えんな。四聖剣にあんなこと言われたんじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

話は少し過去へと戻る。

 

四聖剣は藤堂からの指示で各地に散らされた優秀な解放戦線のメンバーをかき集める前に、一度騎士団のアジトに立ち寄っていた。一度認識合わせをするためもあるが、何より騎士団に今回のお礼とお詫びをするためということもあったためだ。

 

「扇殿。今回は迷惑をおかけして申し訳無かった」

 

「あ、いや、俺たちの方こそ申し訳ない。豪語しておきながら、助けられた者は少ない」

 

「それでも感謝する。その少数の者たちも貴殿達がいなければ生き残れはしなかったろう」

 

頭を下げた千葉に扇は動揺しながらも静止する。

 

基本的に小心者である扇が四聖剣等という昔であれば対面すらあり得ないビッグネームに頭を下げられるなど恐縮以外の感情が湧かない。

 

「代わりに俺たちは、彰君にはお世話になったから気にしないでくれ」

 

「申し訳わけない。殺しておきます」

 

「いや、感謝してるんだけど!?」

 

お世話という言葉が反語で自動翻訳されているらしい。日頃の苦労が偲ばれる。

 

「しかし、彰君は若いのに凄いな。カレンもそうだが、俺なんか全然で」

 

彰のおかげでゼロもカレンも助けられたと聞いていた扇は本人と対面したことは少ないが、数少ない話だけでも物凄い才能を持った若者だということがわかっていた。上澄みのエピソードだけを聞いているからこそ発生するバグである。

 

「才能意外何の取り柄もない男ですから比較しない方が良いかと」

 

才能をとったら唯のゴミクズ野郎と比較する意味がない。才能のプラス要素をそのための面で全て帳消しにしている男だ。

 

「そ、そうですか…千葉さん、せっかくだから聞いてもらっても良いですか?長くなるんだが」

 

千葉が無言で話を促すと扇は話出す。

 

元々、自分の親友が自分のチームを率いていたこと。

 

その親友が亡くなってしまって自分が代理のリーダーになったこと。

 

ナリタで自分の指揮で亡くしてしまった命があったこと等。

 

「しっかりしなきゃいけないとはわかってるんです。だが、どうしても慣れない。教えてくれないでしょうか?どうやって千葉さんは乗り越えたんですか?」

 

ナリタで自分の指揮によって亡くした者たちの存在に扇は苦悩していた。今まではゼロやナオトの指揮に従うだけだったので表面化しなかったが自分が指揮を取ることで現実を直視することになった。

 

ゼロが扇の指揮に責任を問うかと聞かれればそんなことはない。言い方は悪いが、ゼロは扇の指揮に何の期待もしていなかった。何の期待もしていないのだから犠牲が多かったところで失望も落胆もしない。むしろ、そんな状況にまで追い込んだ己の責のみを感じていた。周りも同様だ。扇を慕っている玉城達でさえ、扇の戦闘面の能力に期待しているものなどいない。

 

だが、扇自身は別だ。周りがどう思っていようと、自身が自身を責めているのだからどうしようもない。

 

だからこそ、扇は問いかけた。自身よりも才があり、自身よりも経験がある千葉にこの壁を乗り越える方法を聞きたかった。

 

「別に乗り越える必要なんて無いでしょう。嫌ならこんなことしなきゃ良い」

 

「え!?」

 

しかし、千葉からの返事は扇の斜め上の解答。乗り越えるのではなく、そもそも越えなければ良いという回答にもなっていない回答。

 

「驚くことないでしょう。もともと、教師になりたかったんですよね?そっちを目指す方が余程有意義だ。私には1人の子供を導くことさえできなかった」

 

本当の親も育ての親も亡くし、文字通り天涯孤独になった少年がいた。その少年は千葉に問いかけた。

 

『何で俺だけ生き残ってんだろうな』

 

その問いに千葉は答えた。

 

『さあな。私が知るか』

 

答えなど千葉は知らなかった。意味があるとでも言えば良かったのだろうか。両親たちのおかげとでも言えば良かったのだろうか。 

 

育ての親を殺した加害者の仲間でありながら、偽善者の面を被れば良かったのだろうか。今でも答えはわからない。

 

結果、今のような人殺しという禄でもない仕事しか教えることができなかった。

 

「し、しかし、日本を解放するためには」

 

扇の言葉を千葉は最後まで言わせない。

 

「どんな理由をつけようが、私たちがやってるのはただの人殺しだ」

 

殺される者にとっては理由など関係ない。命を奪った。結果としてあるのはそれだけだ。

 

「私に強制などできない。別にこの仕事を続けても良いでしょう。だが、慣れるなよ扇要」

 

千葉は扇から目を離さない。

 

「大義を名目にするな。楽になろうとするな。許されようとするな」

 

とあるブリタニア人の夫婦がいた。その夫婦は縁もゆかりもない日本人の子供を大切に育てていたそうだ。当然、日本人の虐殺になど加担したことはない。そんなブリタニア人の命を解放戦線は奪っている。千葉が知らないだけで他にも山のようにそんな例はあるのだろう。

 

そして、これからもそんなことは繰り返される。

 

「目を背けるなよ自分の罪から。その罪を直視しても成し遂げたい思いがあるなら…その時は戦場に立て」

 

そこまで言うと千葉は扇から目を逸らし、扇から背を向ける。

 

「すまん、私には綺麗事は言えない。恐らく、お前は悪くないと鼓舞するのが解放戦線としては正しいのだろう」

 

だが、それは言えない。人を殺すことの業を、罪を知る千葉にはそれは言えない。

 

「お前の良心は人としては正しい。だが、その業を背負うほどの理由が自分の中にないのならばお前はこんな仕事を続けるべきじゃない」

 

弱者を助ける。それを望むだけなら他にも道は無数にある。黒の騎士団にいなければできないことじゃない。

 

「誰かに合わせて道を決めるな。親友がどんな道を選ぼうともそれはお前の道じゃない」

 

そこまで言って遠ざかっていく背中に扇は何も言えなかった。

 

暫し、呆然とその場に立っていたがボソリと独り言のように呟く。

 

「格好悪いな…俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は現在に戻る。

 

キョウトに呼び出されたゼロとカレンとマーヤは与えられた部屋で会合の時を待っていた。

 

「キョウトに呼び出されたってのに…アンタたちは落ち着いてるわね…」

 

あのキョウトに呼び出されるレベルの組織になったことにカレンは少し有頂天になっていたが、ゼロ達からすれば至極当然のことであるので驚きはない。

 

「私たちの他に代わりがいないのだから当然だろう」

 

「むしろ、遅いくらいだと思うけど」

 

「…あっそ」

 

相変わらず鉄の心臓を待っている連中である。自身の反応が一般的であると思うのだが、この場では少数派になることにカレンは不満があった。

 

「失礼。少し良いだろうか」

 

そんな折、ゼロ達の部屋の扉が叩かれる。どうぞとカレンが言うと、そのドアが開かれた。

 

そこにいたのは美しい長い黒髪が特徴の美男子。歳は彰よりも少し上という感じだろうか。服装からすると、中華の人のようだが日本語もペラペラだ。

 

「黒の騎士団のゼロと側近の方々か。お噂は聞いている」

 

「失礼ですけど、貴方は?」

 

「失敬。その前にお近づきの印にこれを。君たちを新しい世界を作る同志と見込んだが故の特別品だ」

 

その男から渡された写真にゼロ達3人は目を移す。直後、3人とも時が止まる。

 

その写真には、バリエーション豊かな幼稚園くらいの女の子たちが写っていた。

 

「どうだ素晴らしいだろう?全員がこれからの未来を彩る一輪のバラのようだ」

 

「どんな世界作ろうとしてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ふごご!?」

 

偉そうに語っている男の顔面に写真を押し付けたカレンの左ストレートが炸裂する。

 

「カレン。こいつは殺そう。生きる価値がない」

 

ブリタニア男性以外に始めて向けるのではないかという冷たい目をマーヤは男に向ける。

 

「ま、待て!君たちは何かを勘違いしている!」

 

「勘違いって何が!?完全に事案だと思いますけど!?」

 

「違う!俺は小さき者を愛でているだけだ!」

 

「それがロリコンだって言ってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ふご!」

 

今度はカレンの右ストレートが炸裂する。まだ立てている段階で耐久性だけは認めて良いかもしれない。

 

「だから違う!ロリコンとは犯罪者のこと。俺は決して武士の道に背くことはしない!」

 

「その道ってどんな道!?変態道!?」

 

「変態ではない武士の道だ。そう。それは決して法を犯さない。だからこそ、対象に触れることなどない。ポルノなど論外だ!」

 

「変態にも変態としての矜持があったのね…」

 

「そうだ。犯罪者と一緒にするな。映像などなくてもイマジネーションが助けてくれる」

 

「どっちにしろ変態でしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ふごごご!?」

 

カレンのドロップキックには耐えきれなかったのか変態は反対側の壁まで吹き飛ばされる。それを指さして鼻息荒くカレンは問いかける。

 

「何なのあんた!?これ以上、変態はお呼びじゃないのよ!ロリコンはさっさと自分の国に帰れ!」

 

「だから何度も言っているだろう…俺はロリコンじゃない!星刻だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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