ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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115 喧嘩を売るなら相応の覚悟が必要。覚悟がないならやめておけ

「ここから先はゼロしか通さん。お前たちはそこで待っていろ」

 

「断るわね。私は行くわよ」

 

キョウトの一員との会合の部屋の直前で案内の男から言われた命令を即座にカレンは否定した。口に出していないだけでマーヤも同意見だろう。

 

マーヤもカレンもキョウトを全面的に信じているわけではない。そんな中に、自分たちのリーダーを1人で差し出すなどあり得ないことだった。

 

男も無理筋は分かっていたのか、暫し考えると妥協案を提示する。

 

「では、紅月カレンだけだ。マーヤ・ディゼルはそこで待っていろ」

 

隠していた本名をあっさり看破されたことにマーヤは顔を顰めるが、驚きはない。キョウトの諜報力ならばこの程度は容易いだろう。

 

「良いだろう。早く案内しろ」

 

この辺りが折れ所だと考えたのかゼロはあっさりとその案を飲む。これ以上揉めても仕方ないという考えだ。

 

「良いの?別に言うこときく必要ないと思うけど?」

 

正面の男など、マーヤ1人で制圧可能だ。押し通ることなど容易い。

 

「どの道、結果は同じだ。ここは相手の顔を立てようではないか」

 

「ゼロがそう言うなら良いけど」

 

カレンもいる以上、心配する必要もない。空気がおかしければその時は強行突破すれば良いのだから。

 

「では、何かあるまではここで待機していろ。カレン。行くぞ」

 

そうして、カレンとゼロはキョウトの重鎮が待つ部屋へと向かう。その姿を見送るが、ここで呆然と待っている気は毛頭ない。何かの兆候を感じやすい場所に移動するために行動を開始する。

 

だが

 

「何のつもり?」

 

「それはこちらのセリフだ、マーヤ・ディゼル。動かずに居てもらおうか」

 

明らかに見張りにしては多すぎる人数がマーヤの周りを取り囲む。どう考えても尋常ではない。

 

「黒の騎士団と戦争でもする気?」

 

だとしたら、愚かにも程がある。笑うのはブリタニア軍くらいだろう。

 

「そんなつもりはない。だが、それはそちらの動き次第だ」

 

「舐められたものね」

 

マーヤは冷たく笑う。容姿が整っているため、その笑みは通常であれば顔を赤くするもののはずだが正面に対峙する者たちは何故か背中に汗をかく。

 

「今まで暗殺ばかりで正面から戦ったことなんてないでしょう?教えてあげるわ…戦闘ってものを」

 

マーヤは笑ったまま構える。見た目に騙されてはいけない。彼女はあのコーネリアとの戦いでも生き延びた黒の騎士団No.2の実力者。

 

「わかった時には死んでるかもしれないけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると中は思ったよりも相当広く、周囲には部下と思われる者たちが一定数立っていた。

ゼロ達を呼んだキョウトの重鎮と思われる者は几帳で姿が見えなかったが、声からすると男に感じられた。

 

その男は姿を見せるでもなく、そのまま話しかけた。

 

「初めましてになるなゼロ。私は吉野。会うことができて何よりだよ」

 

「吉野公。確か、キョウト六家の中でも末席の方でしたかな?」

 

流石にゼロのあからさまな挑発に乗ることはしない。しかし、声に若干の苛立ちを含めながら言葉を返す。

 

「どうやら、誤解があるようだな。六家の中に差などない。全員が日本のためを思って動いているだけだ」

 

「左様ですか」

 

大切なのは自分の保身だろうという返答は胸に秘めながら、ゼロは当たり障りのない回答を返す。差など無いのであれば、わざわざ吉野1人がゼロに会う必要などない。キョウトの中でも、自分が優位に立ちたいという思惑が見え見えだった。

 

会話の流れが一段落ついたのを見計らって吉野は本題に入る。

 

「ゼロ。私は君に資金面で協力したいと思っている」

 

「光栄ですな」

 

社交辞令をゼロは返す。テロリストである以上、金などいくらあっても困らない。金をくれるというのであればありがたく受け取るに決まっている。

 

「君ほどの人物はそう居ない。日本のためを思えば、君に協力するのは当たり前だ。しかし、協力するにはお互いの信頼は必須。そうだろう?」

 

「そんなことはないでしょう。損得で繋がる関係などいくらでもある」

 

「残念だが私は古い人間でね。付き合いには信頼が必要だと思っている」

 

そこまで言うと吉野は声に力を入れる。

 

「共に信頼し合おうではないか。信頼の証に貴様の顔を私に見せよ」

 

「メリットがありませんな。貴方には私しかいないかもしれませんが、私には他の選択肢が無数にある」

 

ゼロは自分の価値を知っている。今のゼロにならば金を払うスポンサーはいくらでもいる。特に、吉野に拘る必要など全くない。

 

「状況がわかっているのかゼロ。君に選択肢はない」

 

周囲の黒服が一斉にゼロを取り囲む。カレンはすぐさまゼロの前に立とうとするが

 

「動くな、紅月カレン」

 

そんなカレンの背中に黒服の男が銃を押し付ける。その姿を見て吉野は口を開く。

 

「ゼロ。この女が余程大切らしいな。この女を殺されたくなければ、私に従え。念の為に言っておくが、外で待たせておいた女の助けを期待しても無駄だぞ。別部隊が向かっているからな」

 

部下がカレンに銃を押し付けている傍ら、吉野は薄く声に出して笑う。事前の調査で紅月カレンがゼロのお気に入りなのだということはわかっている。であればこそ、そのお気に入りの命に関わることであればゼロとて無視はできない。それを踏まえての笑いだった。

 

しかし、追い込まれているはずのゼロの様子は何も変わらない。むしろ、追い込まれているのは吉野の方だと言わんばかりに口を開く。

 

「解放戦線が滅んでケツに火がついているようですな。影でしか動かない貴方達がわざわざ安全地帯から飛び出してこようとは」

 

解放戦線が滅んで日本の情勢は一変した。最早、ブリタニアへの対抗勢力は黒の騎士団のみ。これがクロヴィスの時世ならば、弱小レジスタンスを育てるという道もなかったわけではなかったろうが、相手はコーネリア。中途半端な勢力など相手にもならない。

 

だが、解放戦線と異なり、黒の騎士団の手綱をキョウトは握れていない。

 

もちろん、財力は圧倒的なのだがそれだけで黒の騎士団が言うことを聞くはずがない。黒の騎士団の勢力を配下に納めるには金銭面の支援以外の何かが必要だった。

 

その何かをキョウトは持っていない。逆に言えば、それを持てれば一気にキョウトの中でも抜きん出た権力を持つことが可能になる。

 

その何かはゼロの正体。片瀬が死んだ今となっては紅月カレンと藤堂鏡志朗、桐島彰しか知り得ない黒の騎士団の秘密中の秘密。その秘密さえ握れば、ゼロの弱みになるのは明白。それが吉野の狙いだった。

 

しかし、この状態で藤堂と彰まで敵に回すことは危険過ぎる。消去法でカレンを人質にするのが最も合理的と考えたのだろう。

 

そんなことなどルルーシュには丸わかりだ。そんな丸わかりな理由であからさまな行動に出る吉野の底をルルーシュは感じ取った。

 

「つまらんな」

 

「何だと…!?」

 

「つまらんと言ったんだ」

 

ゼロはため息を吐くように吐き捨てる。事実、ゼロの胸中にはそれだけが占められていた。保身に囚われた凡庸な権力者。別にそれは日本人もブリタニアも変わらない。井の中の蛙とはこのことだ。お山の大将に余程興味があるらしい。

 

「その脅しに何の意味がある?だからお前は小物なんだ」

 

吉野は黒の騎士団を敵に回せない。であればこそ、ゼロの最側近であるカレンを殺せるわけがない。殺せば報復されるのは明白だ。

 

「き、貴様!見てわからんか!貴様の側近の命は私が握っているのだぞ!」

 

それしか言えることがないらしい。というより、そもそもこの男は勘違いをしている。

 

「その前提が間違っている」

 

直後、銃を押し付けられていたカレンは隙をついて肘鉄を喰らわせる。そのまま倒れ落ちそうな男の頭を膝と膝で挟み込む。成す術なく、男は地に倒れた。

 

「こいつを殺したいならナイトメアでも持ってこい」

 

「女の子にそんなこと言う?」

 

「心配でもして欲しかったか?」

 

「余計なお世話ね」

 

べーと舌を出してゼロと話しているカレンを見て慌てたのは吉野である。元々が小心者だ。こんな予想外の展開にされて慌てないはずがない。

 

「き、貴様ら!囲まれている状態で逃げられると思うな!」

 

「誰が囲まれてるんだ?」

 

爆発音が部屋を支配する。吉野は慌てていたが、ゼロとカレンからすれば遅いくらいだ。爆発を起こしたマーヤは当たり前のように悠然とその場に現れる。

 

「随分と派手な登場だな」

 

「そこそこ強かったから。まあ、この間のコーネリア軍と比べたら紙みたいなものだったけど」

 

「流石にコーネリアと比べたら可哀想でしょ」

 

包囲の一角を崩したマーヤのおかげで、ただでさえ青ざめていた吉野の顔が更に青くなる。

 

「お、おい!貴様ら早く行け!ゼロ以外は殺してかまわん!」

 

その言葉に部下たちは慌ててゼロ達へと拳銃を向けるが、それよりも早く側面からマシンガンの乱射が炸裂する。

 

「黒の騎士団とは敵対しない方針のはず。キョウトの指針を忘れたか?」

 

「き、貴様は…日向アキト!」

 

マシンガンを片手に現れたアキトは何も言わずにゼロ達のそばに立つ。どちらの側に着いたのかは明らかだ。

 

「日向アキト!貴様、キョウトに大恩ある身でありながら何ということを!」

 

「勘違いしているようだが、俺は肥えた保身豚に恩などない」

 

アキトは変わらない。アキトはぶれない。アキトが仕えたいと思ったのはこの世でたった2人だけ。

 

「今の俺が仕えているのは、かぐや様だけだ」

 

「ならば、纏めて殺すだけ!ナイトメアを持ってこい!」

 

部下の中でもリーダー格と思われる者が命令するが、いつまで経ってもナイトメアは現れない。

代わりに現れたのは長髪の麒麟児と部下の女。

 

「無粋だな。せっかく剣と剣で戦っているのだ。そこに機械を加えるな」

 

「星刻…!?日本の内政に口を出す気か…!?」

 

「口など出さんさ。出す必要もない。どちらが勝つかなど分かりきっているからな」

 

「それとも手助けを望みますか?ゼロ」

 

「無用だ。私も忙しい身なのだが…まあ、良い」

 

ゼロの言葉にカレンが、マーヤが、アキトが揃って前に出て構える。

 

「お前の言う日本など30秒もあれば終わるだろう」

 

 

 

 

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