ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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116 人は見かけによらないから外見で油断すると危険

「き、貴様ら動くな!他の者まで呼べば貴様らの制圧など容易いのだぞ!」

 

「やってみなさいよ」

 

吉野の言葉にもカレン達の足は止まらない。

 

「そうですね、貴方達の援軍が来るのが先か」

 

「俺たちがお前たちの首を取るのが早いか」

 

そこまで言うと、カレン達は加速する。キョウトの陣営は銃を撃とうとするが、撃つ前に全てアキトの銃弾に貫かれる。

 

妨害に合わないまま、カレンとマーヤが敵陣に踏み込むと勢いのまま一閃する。

 

余りの勢いにキョウト勢は慌てるがカレンたちには関係ない。慌てた集団など鴨でしかない。鴨の包囲を潜り抜けると、あっという間にカレンのナイフとマーヤの剣が吉野に向かって振り下ろされる。

 

「2人ともそこまでにしておけ」

 

しかし、2人の刃は吉野に刺さることなくゼロの言葉で静止した。吉野などゼロにとって路傍の石ころ以下の価値しかない。よって、殺すまでもないという意味しかなかったが故である。

 

星刻は妥当な結果を見て不敵に笑っているが、副官の香凛は顔に冷や汗をかいている。

 

「アキト殿はともかくあの2人まで…強いことは見ただけで分かりましたがここまでとは」

 

「ワクワクするだろう?」

 

「貴方のような変態と一緒にしないでください」

 

凡人には恐怖でしかない。戦闘を見るまでは忠犬と思っていたのだが認識違いにも程があった。

 

「獲物を噛みちぎる狼でしたね、あの2人は」

 

「狼?そんな可愛らしいものではないさ」

 

しかし、香凛の認識はまだ甘い。あの2人はそんな可愛い動物ではない。

 

「あの2人は自分の敵と認識したものは容赦なく粉砕する鬼と修羅だ。ゼロも大変だな。あの2人の手綱を握り続けるなど、ブリタニアを倒すよりも大変かもしれんぞ」

 

実際、ゼロは念の為にこの状況を打破するための策をいくつも用意していたのだが、それらの何一つとして使うことはなかった。アキトの助けがあったとはいえ策もなく正面衝突で多勢を粉砕した2人にドン引いていた。ブリタニアの白兜のパイロットも大概だが、コイツらは人類でないのかもしれないと思い始めていた。

 

そんな風に考えていたゼロの様子を勘違いしたのか吉野は几帳の向こう側で大声を上げる。

 

「そ、そうとも!分かっているようだな、ゼロ!私と手を取り合うことの重要さが!」

 

「いえ、私がやるよりも効果的かと思いましてね。そうでしょうー桐原卿」

 

そう言ったゼロが目を向けると、入り口には桐原とかぐやが控えていた。

 

「そうじゃな…ゼロよ、ここは儂等に任せてもらえるとありがたい」

 

「き、桐原卿…かぐや様まで…」

 

「あらあら…桐原。これは背信行為ではなくて?」

 

「そうですな…何らかの処罰を下さねばなりますまい」

 

桐原とかぐやの言葉に吉野は青白い顔のまま震える。自分の行為がキョウトの方針にそぐわないものであったことは明白であるが故にである。

しかし、吉野にも言い訳はあった。

 

「お、お待ちください!この事はかぐや様もご存知のはず!」

 

「人聞きの悪いことを言わないでください。私は『今日、ゼロ様がキョウトに来ること』を伝えただけです」

 

事実、かぐやが吉野に伝えたのはそれだけである。もちろん、吉野が短絡的な行動を起こすように誘導したのは事実だが、直接的な関与はしていない。

 

なお、他のキョウトの面々にも同じ種を撒いていたかぐやから見ればこの結果は多少拍子抜けである。保身バカどもを一掃できると考えていたのだが、流石にそこまでは期待しすぎであったらしい。念の為にアキトだけでなく、星刻達にもゼロ達の助けを依頼していたのに過剰戦力にも程があった。

 

「見苦しいな吉野。後ほど、沙汰は下す。下がっておれ」

 

その言葉に返すほどの余裕もなかったのか吉野は一目散にその場から逃げ出す。ゼロとしては追求しても良かったのだが、こんな小物に構っている暇は無かったので放置した。

 

「さて、ゼロ。身内の恥を晒して申し訳なかった」

 

「くくく。良いように利用しておいてその言い草はないでしょう」

 

「何のことかの?」

 

もちろん、桐原はそんなかぐやの仕掛けに気づいて放置していた。なので桐原も確信犯であることには間違いない。

 

「本題に入ろうか。ゼロよ。キョウトとしてお主を信用するには今の状況では流石に足りん。お前は信頼の証として何をする?」

 

吉野が言っていたことと被るが、桐原としてもこんな怪しげな仮面の男を無条件で信じることはできない。

 

ゼロとしてもキョウトの信認がなくてもテロを続けることはできるが、神輿がある方が助かることは間違いない。であればこそ、キョウトの中で随一の影響力を誇る桐原に正体を明かすことには一定の意味がある。だからこそ、原作でもゼロはそのような行動を取っていた。

 

「悪いが桐原翁。先約があるので断らせてもらう」

 

しかし、此処ではそうではない。

 

ゼロはそう言うと桐原の前を通り過ぎ、少し離れて立っているかぐやの前で止まった。

 

これが以前結ばれたアキトを介した契約。紅蓮を渡す代わりに、ゼロがキョウトの誰かに正体を明かすことになる場合、その誰かをかぐやにしろという契約。このことは桐原でさえ知らない、かぐやが単独で仕掛けたもの。だからこそ、今の状況を見て桐原も目を丸くするが、何らかの取り決めがあったことを察知して苦笑する。充分過ぎるほど知っていたつもりであったが、自身もまだこの幼女のことを侮っていたことが知れたからだ。

 

(やりおったな、小娘が)

 

これでかぐやはキョウトの中でも一定の力を持つことができる。あの黒の騎士団のゼロに招待を明かされたのだ。そうならない方がおかしい。

 

「これであの時の借りは帳消しですな」

 

そう言ってゼロはかぐやにしか見えないことを確認した上で仮面を脱ぐ。

 

自らの顔を明かしたルルーシュはかぐやと目を合わせるがーかぐやの顔に驚きは見られない。

 

「あまり驚きはないようですな」

 

「答え合わせのようなものでしたから」

 

原作ルルーシュと異なる点は様々なものがあるが、その一つにカレンがゼロの特別扱いを受けているという点がある。今回はその違いが問題となった。

 

ゼロの誕生は枢木スザクの処刑時と見られているが、これは真実とは異なる。正確に言えば、ゼロの誕生はシンジュクの毒ガス事件となるはずなのである。

 

何故なら、その毒ガスの事件の混乱でクロヴィスは死んだことになっているのだから、この事件にゼロが関わっていないはずがない。

 

更に問題となるのはこの事件の発端が紅月ナオトのグループだということだ。

 

ルルーシュどころか彰でさえも知らないことではあったが、実はかぐやを含むキョウトは紅月ナオトに目をつけていた。特にかぐやは今後彰が反逆する際の部下の候補として特に紅月ナオトをピックアップしていた。

 

だからこそ、あの毒ガス事件の首謀者を突き止めるのは簡単なことだった。

 

話を戻すが、この話を整理すると紅月ナオトが起こした事件でゼロは誕生し、ナオトの妹である紅月カレンを引き連れて枢木スザクを助け、紅月カレンだけが正体を知っているゼロという存在が黒の騎士団を建設したことになる。

 

つまり、ゼロに関わる全ての話に紅月、特にカレンが関わっているのだ。更に面白いことに、その紅月カレンはカレン・シュタットフェルトという名前で学校に通っているのだが、その学校でこの一年以内に彼氏ができたらしい。

 

その情報を得たかぐやは情報を完全に秘匿するため紅月ナオトが毒ガス事件に関わっていたと思われる証拠を完全に消した上に、紅月カレンかカレン・シュタットフェルトだと判断できてしまう情報を不審に思われない程度に修正した。更に、アキトだけにその彼氏の情報を調べさせることにしたが、その彼氏の写真を見た時はかぐやも流石に目を疑った。

 

何せその彼氏が自身も昔会ったことがあり、死んだことになっているブリタニアの皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだったのだから。

 

ここで偶然を信じるほどかぐやの頭はお花畑ではない。そんな偶然はあり得ない。だとすると、これは必然だ。ルルーシュがゼロであるとすればブリタニアへの憎しみも正体を隠していることにも説明がつく。

 

しかし、話をややこしくするのが桐島彰の存在だ。調べによると、彰もその時期にカレンと親しくなっている。であれば彰がゼロであり、ルルーシュは無関係ではないとしても協力者という推測も成り立つ。かぐやとしては、前者が当たりの気はしたが決め手には欠けた。

 

だからこそ、この対面はかぐやにとってゼロの正体を知るというよりも、ゼロがかぐやに顔を見せたという事実を桐原を含むキョウト六家に見せつけることに意味があった。

 

かぐやは能力も地位もあるがそれだけだ。実権など無いに等しい。キョウトの権力の源泉であるサクラダイトの利権にも解放戦線への影響力もかぐやは持っていない。家柄だけの幼女。それが周囲のかぐやへの印象だ。かぐや自身も油断させるために、そう見せている所はある。最も、彰や桐原は『とんでもねぇ幼女』と思っているので全員を騙せている訳ではないのだが。

 

そのかぐやにとってゼロと彰という2枚の切り札は絶対に手放せない存在だった。ゼロは新進気鋭の人物なので当然として、彰もキョウト自体から距離を置いている。自身の手札にするのに最適だった。

 

とは言え、「力を貸してください」などと簡単に言えるわけがない。ゼロや彰にメリットがない。メリットがない寄りかかるだけの協力など長続きはしない上に、裏切られたらその瞬間地に落ちる。そんな危険など犯せない。

 

だからこそ、かぐやは着々とゼロとの協力関係を築いていた。紅蓮という切り札まで渡したもそのためだ。ナイトメアの製造技術はブリタニアが独占している以上、ゼロとて簡単には用意できない。その上に、あの皇家のお墨付きが加わるのだ。ゼロのプラス要素としてはかなりのものと言える。

 

とは言え、そこまで考えているかぐやへの警戒度はルルーシュの中で凄まじいものとなっている。

下手をすれば、コーネリアにも匹敵するかもしれない。

 

(あまり使いたくはなかったが、致し方ない)

 

ルルーシュはかぐやにギアスをかけることを決める。元々、考慮していたことではあった。だがしかし、下手に使えばかぐやの様子がおかしいことにアキトや桐原が気付かないはずがない。ここでのギアスはルルーシュにとってもリスクがあるものであった。

 

しかし、そのリスクをかぐやへの警戒度が凌駕した。

 

自身の正体に気付いたのであれば、ナナリーの存在に気が付かないはずがない。であれば、ナナリーは今後の取引の材料になり得てしまう。それだけはルルーシュには許容できない。リスクを負ってでも、かぐやの口を封じる必要があった。

 

「ねぇ、ゼロ様」

 

ルルーシュはかぐやの言葉を聞き流しながら、ギアスを発動させる。ルルーシュの目が赤く染まる。

 

そのタイミングでかぐやは笑顔で口を開き、ルルーシュにしか聞こえない程度の音量で呟く。

 

「ギアスって知ってます?」

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