ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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117 1人で生きていると思ってもいつの間にか色んな人と関わっているのが人生

話はゼロがキョウトに来る数日前に遡る。

 

「やはり腑に落ちませんね…」

 

かぐやは現在の状況を整理していたが、どうしても疑問が浮かんでしまう点がある。

 

「ゼロの正体の決め手の話ですか?」

 

アキトの言葉に、かぐやは静かに首を振る。

 

「いえ、違います。何故、ゼロ様はクロヴィスを殺したのか…という点です」

 

実際は殺してないのだが、流石にかぐやといえどもそれは予想できない。

 

「名をあげるためでは?」

 

「あり得ません。ゼロ様であれば他にも手段は無数にあります。そんな手段を取る必要はない。むしろ、クロヴィスを生かしておいてその間に戦力を整える…その方がゼロ様らしい戦略です」

 

ゼロの今までの戦略から見ると派手好きに見えて、意外と慎重な性格が垣間見える。そんな人間がわざわざ危険を犯してクロヴィスを殺すだろうか。あの時のゼロの仲間は精々、紅月カレンしか居なかったはずだ。あの彰でさえ、まだクロヴィスを殺すことに重点を置いていなかった。

 

「ゼロ様の戦略に奇策や奇襲が多いのは正攻法では勝てないからです。これは当然の話ですが、奇策は上手くいかなければ死ぬだけです。それでもやるのは?他に選択肢がないから…何故選択肢がないのか…ゼロ様にも避けようがない展開…もっと言えば予想外の展開だったから…?」

 

途中からほとんど独り言のように呟きながら、かぐやはゼロの思考をトレースする。ゼロの思考をトレースするなど、ほとんどの人間には不可能だ。だがかぐやは「ほとんど」の人間に該当しない。トレースを続けていると、かぐやの中で答えに近いものが見つかった。

 

「そうです…恐らく、クロヴィスを殺す展開はゼロ様の予定にもなかった…偶発的な事故だったのでは?」

 

「事故で皇族を殺せるとは思えませんが」

 

「事故と言っても色々あります。そもそも、毒ガス事件は紅月ナオトが起こしたものです。ゼロ様がそこにいること自体がアクシデントだった…いや、そこに行ったからこそゼロ様に成ったのでは…」

 

「ゼロに成った?」

 

「ええ…恐らくですが毒ガス事件によってゼロ様は誕生したのです。毒ガス事件がなければゼロ様は誕生しなかった…あそこで何があった…?」

 

恐らく詳細を知るのはその場にいたゼロと紅月カレンだけなのだろう。ゼロが彰でないのならば、彰も知っているのだろうが、口を割るとは思えない。

 

となれば、自分は事実から推測を組み立てていくしかない。

 

「アキト。貴方は毒ガスを見ましたか?」

 

「いえ。枢木スザクを救出した時にゼロが見せたダミーのものだけです」

 

「私もです。であれば、そもそも毒ガスなどあったかどうかすら疑わしい。毒ガスとは『ナニカ』を隠すための方便なのでは…?」

 

「だとすると、その『ナニカ』がその人間をゼロにしたという訳ですか」

 

「間違いないでしょう。そう考えるとクロヴィスを殺した理由にも納得がいきます。クロヴィスは『ナニカ』の詳細を知っていたんです。当然ですね。恐らく、『ナニカ』の詳細を発表させないために毒ガスという名目で軍隊を配備させたんですから」

 

「であれば、紅月ナオトも『ナニカ』の詳細を知っていた可能性がありますね。その『ナニカ』を得るためにあのテロを起こした」

 

「そればかりは本人に聞かなければ何とも。怪しい匂いを嗅ぎとって仕掛けただけかもしれませんし」

 

死んだという話は聞いているが、死体は見つかっていない。であれば、生きていても不思議ではない。決め手にかける以上、これ以上考えても仕方がない。

 

「とにかく、ゼロ様は毒ガス事件のシンジュクで偶然『ナニカ』を得た。その『ナニカ』を得たからこそゼロ様は革命を始めた。恐らく、事前に準備していた計画を早めてまで。それを口外させないためにクロヴィスを殺した…ええ、こう考えると筋が通りますね」

 

「しかし、その『ナニカ』が分からなければ机上の空論では?」

 

「その通りです。私も知らなければ、夢物語でこの話は終わらせていたでしょう。ですが、アキト…私達も人智を超えた超常のチカラについて知っているでしょう?」

 

かぐやとアキトの目が合う。そう、誰よりもアキトはそのチカラを知っている。不可能を可能とする超常のチカラを。

 

「ギアス…」

 

「ええ。今のところシン・ヒュウガ・ヴァインベルグにしか保持者の兆候は見られなかったようですが、レイラ様も保持者の可能性はある以上、ギアスとは先天的能力ではなく、後天的能力の可能性がある」

 

かぐやとレイラは裏で密かに同盟のようなものを結んでいるが、そこで最重要機密とされているのがギアスの研究である。

 

機密の全容を知っているのはかぐやとレイラのみであるため、彰はもちろん、桐原もクラウスも認識していない。

 

「それが毒ガスの正体…なるほど。確かにそうであれば、クロヴィスが正直に言えなかったとしても不思議ではありませんね」

 

完全にファンタジーの話であるため、正直に告白したら馬鹿と言われるか頭がおかしくなったと言われるかのどちらかだろう。そもそも、かぐやとレイラでさえもわかっていることは殆どない。わかっているのは以下だけだ。

 

①超能力染みたナニカで対象(もしくは自分)に何らかの影響を与えること

 

②後天的能力であること

 

③影響を受けたものは脳波に異常が見られること

 

上記の情報だけでは対策など取れるわけがないため、目下調査中という状況でしかなかった。しかし、ゼロがギアス保持者の可能性があるならば状況は一転する。

 

「何の証拠もありませんが、とりあえず、ゼロ様をギアス保持者だとして話を進めましょう。ゼロ様がギアス保持者であるなら、持っている能力を使わないなど愚の骨頂。あり得ません。すると、ゼロ様の奇跡にはギアスが大きく関わってくることになる」

 

「ゼロの奇跡は単純に情報収集能力と戦略構築力によるものでは?」

 

「ええ、それは否定しません。実際、ナリタの件はその最たるものでしょう」

 

ブリタニアのナリタ侵攻の情報収集と土砂崩れによる上方からの奇襲。こらは明らかにゼロの指揮官としての能力によるものだ。だが、それだけだとどうしても説明がしきれない部分が出てくる。

 

「でも、それだけではあり得ないんです。例えばスザク奪還の事件もそうです。あの時、ゼロ様はジェレミアの裏切りによって奪還に成功した…ですが、私がどのように調査をしてもジェレミアが裏切るとはどうしても思えないんです。皇族に忠誠を誓っている彼がどうしてあんな真似を」

 

「ゼロがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなら話は変わってくるのでは?」

 

「その場合、彼のその後の行動が矛盾します。彼は自分がした行動を認識していないという発言をしていたそうです。皇族に忠誠を誓う彼であるならば堂々と罪を認めた気がします」

 

「確かにその方が調査のイメージと重なりますね」

 

「ですから、ジェレミアが言っていることが実は真実なのではないでしょうか?本当に彼は自分がした行為を認識していなかった。何故なら、ゼロ様のギアスに操られていたから。…となるとゼロ様のギアスの能力も自ずと絞り込める」

 

ジェレミアの行動をまとめるとゼロのギアスの能力は以下となる。

 

① 対象に命令を聞かせること

 

② 対象にはその時の記憶がないこと

 

③ ギアスをかける条件があること

 

冷静にその3点だけを見れば破格の能力である。これならば、予定外だったとしてもクロヴィスを殺す理由には充分だ。

 

「③の根拠は何ですか?」

 

「ゼロ様がまだブリタニアを滅ぼせていないことです。もし、仮に③がないなら私たちがこんな風に考えることさえできません。私なら「自分に従え」と世界中に命令します」

 

「なるほど…あの馬鹿もそうするでしょうね。では、現在あのバカの周りでそういう人物がいないことから考えると仮にゼロがギアス保持者である場合、アイツがゼロである可能性は殆ど無くなりますね」

 

「ええ。その場合、あの人なら私やレイラ様にバレないように愛人の5、6人作っていても不思議ではありません」

 

その可能性に思い当たり、かぐやとアキトは冷や汗をかく。彰がそんなギアスを持ったと考えただけでゾッとする。間違いなく、世界は今以上のカオスとなりブリタニアと戦っている場合ではなくなるだろう。誰だか知らないが、アイツにギアスを与えてくれなくて本当に良かった。

 

無駄にC.C.が感謝された瞬間である。

 

「話を戻しましょう。つまり、ゼロ様のギアス能力は対象が至近距離にいないと効果を発動できないのだと思います。しかし、私は今度の会談でゼロ様と至近距離で会話をすることになる。私がギアスにかけられても不思議ではありません…となると…」

 

かぐやは真剣な目でアキトを見つめる。

 

「アキト。私の状態がおかしくなり、それが日本のためだと思われない行動を始めた場合、私の首を飛ばしなさい。レイラ様には最低限の説明はしておきます。貴方はその後、E.U.に逃げれば良い」

 

「死ぬおつもりですか?」

 

「言っているはずですよ、アキト。死ぬ覚悟は何時もしていると」

 

かぐやは日本のためなら部下に死を命じる。そのことに罪悪感は無い。だが、逆に自分がその立場に置かれたならばいつでも死ぬ覚悟はしていた。

 

「私よりもゼロ様の方が日本には必要です。そのゼロ様がギアス能力まで持っているのならば本当にブリタニアを滅ぼせる刃になる。私の命がその証明になるのなら上等でしょう」

 

「相変わらずですね…貴方は」

 

初めて会った時からこの少女はそうなのだ。日本に命を捧げる少女。一体、どれだけの人間がその真実を知っているのだろうか。表で笑顔でいるために、影でどれだけの努力をしているのか。優しさを押し殺して残酷な命令を下すその心中を。

 

自分も初めは温室育ちのお嬢様という認識でしかなかった。

 

彰に半ば強制的に連れて来られて対面するまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まあ。貴方が彰様の仰ってた死ぬために戦っているEUの傭兵さんですか?』

 

笑顔で割と酷いことを言う幼女はトテトテと自分の側に寄ってきて顔を覗き込む。

 

横で頷いている彰はくいっとアキトを指差す。

 

『そうです、そうです。死ぬこと考えてるくらい暇みたいだから、馬車馬のごとく利用しちゃって大丈夫なんで』

 

『死ぬ前にお前を殺しておくか』

 

『そうですね。では、お二人とも私のために死ぬまで働いてくれるということで』

 

『おい、彰。このお姫様ヤバいぞ』

 

『だからお前を連れて来たんだろ、アキト』

 

『アキトですか。では、アキト。何で貴方が死にたいのか聞きませんが、とりあえず死ぬ前に私のために働いてもらいますから』

 

死にたいくらい暇なんだから良いでしょう?とかぐやは笑顔でアキトを見る。

 

それを見てアキトの顔が少し引き攣る。隣の変人の紹介なのだから、変人なのは知っていたが予想通りだった。

 

だからと引き攣っているアキトを無視して、かぐやは続ける。

 

『その上で私が死ねと言ったら、死になさい。それまでは生きて、この世界を見続けなさい。貴方が思うよりも世界は面白い。貴方がそう言える世界を私は作ってみせます』

 

そう言って最後までかぐやは笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼いながらもかぐやは知っていた。世界がそんな面白いものだけではないと。世界は残酷なことの方が多いものだと。

そんなもの全部知っていて、それでもかぐやは笑うのだ。

 

少しでも、自分の周りの人達が笑っていられるように。

 

そんな彼女の笑顔を守るために、自分は彼女に仕えようと誓ったのだ。

 

「申し訳ありませんが、その命令だけは断らせていただきます」

 

アキトはかぐやの前で膝をつく。

 

「貴方が死んだら、誰が私に死ねと伝えるのですか」

 

その言葉にかぐやは驚いたように目を広げ…苦笑する。

 

「覚えていたんですか?そんな約束」

 

「それまでは生きることになってしまったので」

 

別に殺さなくても止める方法は幾らでもある。仮死状態にでもして眠り続けて貰えば良い。その間に、ギアスを解除する方法くらい見つかるだろう。

 

脳波に異常が出ることまでは分かっているのだ。であれば、その脳波の異常を正す方法くらい見つからなければおかしい。

 

「安心してください。散々、好きなように命令してくださったので私も好きなようにさせてもらいます。楽に死ねると思わないでください」

 

そこまで言うと、アキトは立ち上がり、何事もなかったかのように無表情でかぐやのそばに立つ。

 

自分の居場所は変わらないと示すかのように。

 

「厳しいですね…彰様も…アキトも…揃いも揃って」

 

かぐやは自分の発言を振り返り、バタッと倒れる。

 

「私だけ一抜けするなんて、都合良すぎますからねぇ」

 

その口元は少しだけ笑っていた。

 

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