「で?何するの?」
期待が底辺を割っているシャーリーは冷めた目で底辺の大人2人を見る。
「まあ、慌てんな。とりあえず前提から話そう。お前らは相手こそ違うが気になる異性がいる。だが、程度の違いはあるとしても上手くいっていない。違うか?」
「…それは、まあ…」
「違うとは言えないが…」
若干、顔を赤くしながらシャーリーとリヴァルは同意する。それを見て彰は満足そうに頷く。
「だろう?そういう時にどうするかという話だ。どうせ、お前らに任せてたら一生ウジウジして終わるだろうから俺たち大人が道を指し示してやろうというんだ。特にリヴァルはな」
「な、何で俺だけなんだよ!」
「シャーリーはそこそこ頑張ってるだろ。お前は何もやってねーじゃねぇか」
「ほう?軽そうに見えて本命には手を出せないタイプか」
「それだ。面倒臭いったらねぇよ」
「何も見てないのに、偉そうに…」
顔を更に赤くしてリヴァルはブツブツ言うが、彰はイブとして頻繁にその現場を見た上での発言である。言うわけにはいかないが。
「挙句の果てに別の人に興味があるように見せて、駆け引きをしようとしてやがる。テクニック覚えたって、基礎トレ欠かしてたら勝てるもんも勝てねーよ」
「それはそうかもしれないけど…オブラートがあっても良いんじゃないかなぁ?」
そう言うと、シャーリーは彰の発言がクリティカルヒットして恥ずかしそうに悶えているリヴァルを見る。だが、この世界にオブラートなど存在しないので無視される。
「なるほど…どうせ、相手には好意がバレてるとかいうオチだろう…貴様に足りないのは度胸だな」
「それはまあ、確かに」
「シャーリーに言われたくないんだけど!?」
「いや、そこは否定しきれないって言うか」
「度胸を持って行動すれば、満足のいく結果が出なくても誇りは保てる。事実、私は先程自分を信じて台に有り金を全て注ぎ込んで失ったが全く後悔していない」
「そこは後悔しなきゃダメだよね!?」
「シャーリーちゃん。誇りを持てれば人は何処でも輝けるんだ」
「誇りを待つ前に服を持ってて欲しかったなぁ…」
パンイチの大人の悲しい姿にシャーリーはボソリと呟く。
「まあ、色々言ったがそう言うことだ。お前は度胸を持つべきだ。なら、何をすれば良いのか分かるか?」
「ど、どうすれば良いんだ?」
彰はリヴァルの肩に手を置いて、笑顔で告げる。
「風俗に行こう」
「行くわけないでしょ!!」
真っ赤になったシャーリーに彰はぶん殴られる。
「何でだよ。童貞が度胸つけるならここしかねぇよ。別にリヴァルが良いなら良いだろ」
「1人で行ってなよ!未成年だよ、リヴァルは!?」
「そもそも俺が童貞で話を進めんなよ!?」
「いやいや、良いからそういうの。そんなヘタレみたいな恋愛観持ってる奴が童貞じゃないわけないだろ?」
「余計なお世話だ!」
「リヴァル君。私たち大人は余計なお節介を焼きたがるのさ」
「そんな問題より自分たちの問題見つめなよ!他人のこと気にしてる場合じゃないでしょ!?」
「若いな。ありのままの自分を受け入れられないとは」
「そこが大人の第一歩だ。良いか?ダメなところも全て含めて自分なんだ」
「正にその通りだ!誰かは知らんが良いことを言う」
そんな4人の所に、突然見知らぬ第三者の声が聞こえてくる。いや、シャーリーは聞き覚えがあった。こんな所で聞くなど予想もできない人物の声。
その人物である筋骨隆々のブリタニア人は全裸で堂々と告げる。
「ありのままの自分を曝け出すことが大人の男。そこに魅力が宿るのだ」
「貴方はせめてパンツを履いてください、ダールトン将軍!」
シャーリーは真っ赤な顔で、目の前の変態を視界に入れないように至って常識的な返答をする。
「久しぶりだな、シャーリーちゃん。学生がこんな場所をぶらついてるのは感心せんぞ」
「こんな所でアレをぶら下げてる貴方の方が感心しませんよダールトン将軍!貴方、ブリタニア軍人ですよね!?」
「え、ブリタニア軍人なの?」
目の前の変態が軍人と聞いて驚くが、直後ある事実に思い当たり即座に彰に耳打ちする。
「おい、彰!お前、逃げなくて良いのかよ!?」
「何で?」
「いや、お前テロリスト!」
「知らんな。今日は休日。今の俺は自由を愛する唯の男」
「知らねぇけど!?お前はそうでも向こうはそうじゃねぇんだよ!」
「向こうって何だよ、アレはただのブリタニア産のゴリラだろ」
「ブリタニア産のゴリラでも中身はブリタニア軍人なんだよ!」
「ん?そこのお前は…」
「ほら見ろバレた!」
「昨日のキャバクラで俺と一緒に追い出されたア・キラー君じゃないか」
「どんな関係だよ!?というか、偽名にもなってねぇ!?ていうか何で気付かれてないんだよ!?」
「落ち着けよ、リヴァル。大人は細かいことを気にしないのさ」
「お前は少しは気にしろ!」
実際、彰の顔はダールトンも当然認知はしているがまさかこんな所でパンイチになっているわけないという先入観があることに加えて、基本シリアス以外はアホであるダールトンは全く気付いていない。それで良いのだろうか…
「リヴァル君か。いかんな、若者が細かいことを気にしているようでは。大局的な視点で物事は考えなければいかん」
「大局的な視点で見た結果が全裸ってどうなんですかね…」
「アダムとイブを見ろ。ありのままの姿を体現しているだろう?」
「いや、アンタにイブは居ないから!アンタはタダの全裸のゴリラだから!」
「だが、少なくとも全裸という選択肢を取るという度胸はあった」
「何言ってんだお前!?」
「お前にその度胸はないだろうが。あるって言うなら、とりあえず全裸になってみろよ」
「なんねぇよ!?何でそうなる!?」
「男でそんなに服着てるの、此処ではお前だけだぞ。恥ずかしいな、早く脱げよ」
「変態しかこの場にいないからだよ!」
至って正論なのだが、男ではリヴァルを除けば全裸とパンイチしかこの場にいない。圧倒的な裸体率の高さだ。
「告白と一緒だぞ、リヴァル君。一度やれば世界が変わる」
「そうだな、リヴァル君。最初は抵抗があるのも分かる。だが、一度で良い。やってみたらどうだ?」
常識的に考えれば一度だろうが何だろうが公園で全裸という選択肢はない。
だが、空気というのは伝染するものだ。
普段であれば絶対にしないことでもノリと勢いと空気でしてしまうことはある。
「しょ、しょうがないな。一回だけだぞ?」
リヴァルは自分の服に手をかける。
「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
だが、直視しないようにした状態でシャーリーはリヴァルを殴り飛ばし、その行動を阻害する。
「私の友達にまで馬鹿なこと教えないでくれるかな!?手に負えなくなるから!?」
「大人の男の作法を教えてやろうと思っただけなんだが」
「うむ。問題はないと思うが」
「問題しかありませんよ!」
そのままシャーリーは彰達3人を正座させると、説教を開始する。
「あ、ごめん、ちょっと電話!」
しかし、電話が鳴ったことで説教は中断し、シャーリーは電話を取り出して誰かと会話をする。彰達も別に気に留めてはいなかったのだが
「…え」
電話を受けて暫くすると、シャーリーは顔面蒼白となる。
「ど、どうしたんだよシャーリー」
殴られた所を抑えながらリヴァルは心配してシャーリーに近寄るが、シャーリーは何でもないと否定する。
リヴァルは何でもないことは無いだろうと分かっていたが、それ以上詰め寄ることはできない。
そんなリヴァルから視線を外して、シャーリーは彰を見つめる。
「ねぇ、彰。帰り…送ってくれない?」
「んで?そろそろ良いんじゃね?何で俺にわざわざ送迎を頼んだんだ?電話と関係あるんだろ?」
2人きりになって暫く経ち、周りに人がいないことを確かめてから彰は問いかける。
今まで気丈に振る舞っていたシャーリーの表情がその言葉で静止する。
「お父さんが死んだかも知らないんだって…ナリタで」
「…そうか」
そこまで聞けば彰の脳裏にはシャーリーの父親の死因など一つしか浮かばない。
「解放戦線と黒の騎士団の土砂崩れに巻き込まれたかもって…教えて…彰…」
シャーリーは真剣な目で彰を見つめる。
「彰は関わってるの?」
「関わってないと言えば嘘になるな」
自分の組織がその場にいた以上、無関係とは言えない。
「じゃあ…その場にいたの…?」
「いたと言えばいたな…事が終わった後になるが…すまん…間に合わなかった」
その場に彰がいて何とかなったかと聞かれれば疑問だが、謝ることしかできない。
「何で彰が謝るの…?いなかったんでしょ?」
彰の謝罪にシャーリーは泣き笑いの表情を浮かべる。実際にシャーリーは安心していた。目の前の男を恨まなくて済んだことを。
「どんだけお人よしだよ」
「そんなんじゃないよ。私が彰を嫌いなりたくなかっただけ」
そう、これはシャーリーの勝手な望み。彰が自分の父の死に関わっているなど考えたくもなかった。
「ごめんね彰…」
彰が自分の父の死に関わっていないのであれば、その事に対して何かを言う権利をシャーリーは持ち得ない。
それ以前に、彰の方が遥かに辛い人生を送っている。
「彰はこんな思いを何回もしてるのに私は…」
産みの親に育ての親。彰は二度も失っている。それに比べれば自分の痛みなどなんて事もないだろう。そう思っての発言。
だが、シャーリーは全て勘違いしていると言わざるを得ない。
「阿呆か」
呆れたように彰は呟く。
「お前の悲しみはお前だけのもんだろ。他人と比べてどうすんだ」
そのまま、彰はぐしゃっとシャーリーの髪を混ぜる。
シャーリーはわっと声を出して抗議するが、無視して彰は続ける。
「辛い時は泣いて良いんだよ。その後は無理にでも笑っとけ。顔で笑えば人間なんて少しはマシな気分になるもんさ」
彰の言葉にシャーリーは無理矢理なのが丸わかりではあるが…笑顔を浮かべて彰の胸に顔をつける。
「優しく…しないでよ…」
泣きたくなる。慰めてくれた訳でもないのに…言ってしまえば、父の仇の仲間かもしれないのに…心の底から泣きたくなる。
「涙とか鼻水で汚れても知らないから…」
「大丈夫だ。服着てないから跡には残らん」
何処までもふざけてくれて。笑い話にしてくれて。そんな男の胸でシャーリーは泣き続けた。
泣き続けて、泣き続けて、涙声でふと漏らす。
「ルルじゃなくて…彰を好きになれば…良かったのに」
「おー、そーしろ、そーしろ。何なら今すぐそうしたって構わねぇ」
「そうやってすぐにふざけるけどさ…」
割と本気だったのだが、流石に空気を読んで黙っていることにした。
「彰を好きになれば…多分、怒ることなんてしょっちゅうだろうし、疲れることも多いだろうし、面倒臭いことだらけだろうし…」
「おい、ボロクソか」
「でも、居て欲しい時には側にいてくれて…一緒にいたら楽しくて…それだけで…良かったのになぁ…」
シャーリーは彰の手首を強く握る。
「それだけで…良かったのに…」
クソシリアスだけど、この男パンイチなんだよなぁ