ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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「マズイね」

 

「何がよ?」

 

スマホを弄りながら難しそうな顔をしているマーヤを横目に見ながら、カレンはナイトメアを点検している。

 

「決まってるでしょ。今の世論。黒の騎士団だけが悪者扱いされてる」

 

ブリタニアのプロパガンダにより、世論は「テロの被害者」への同情一色。

 

黒の騎士団は正義の味方どころか、「危険な犯罪集団」として描かれ始めていた。

 

「…まあ、しょうがないところもあるでしょ」

 

だが、カレンとしてはその意見に同意しづらい所がある。何せ、土砂崩しを発生させた実行犯だ。直接的な犯人ではなかったとしても、自分を庇っているようで収まりが悪い。

 

しかし、カレンの意見を無視してマーヤは続ける。

 

「……決めた。私、やる。一匹残らず、駆逐する」

 

「……え?今なんて言ったの? 何を駆逐するって?」

 

「決まってる。ブリタニアの情報操作だよ。あいつらは壁の向こうでふんぞり返って、自分たちが正義だと思い込んでる。だから、私がその壁を壊して、真実を突きつける。全世界に、私たちの『怒り』を配信して、アイツらの誤情報を駆逐する」

 

「駆逐ってそういう意味!? 」

 

カレンの困惑を無視して、マーヤはどこから持ってきたのか自撮り棒と、ビデオカメラを構えた。

 

「カレン。今の時代、銃より強いのは『バズ』だよ。私たちがトウキョウ・チューブで人気者になれば、大衆の意識は塗り替えられる。登録者数が百万を超えたとき、それがブリタニアを焼き尽くす炎になる。戦わなければ、勝てない」

 

「待ちなさいって! 思想が強すぎるのよ! っていうかテロ組織がそんな事していいの!?」

 

「アカウント名はもう作った。『【公式】黒の騎士団:自由への進撃チャンネル』これで、いける!」

 

「色んな意味で待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!何処も行けないけど!?何から自由になろうとしてんのアンタ!?」

 

「最初の企画はこれ。『【検証】ブリタニアの補給物資を奪って、全部キャンプファイヤーで燃やしてみた!』」

 

「いや、燃えるのアンタ!大炎上確定案件!」

 

カレンの叫びは、虚しく木霊した。しかし、全てを無視してマーヤは続ける。

 

「第一段階として、まずはインパクトが必要。カレン。脱ごう」

 

「脱ぐかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 何で私がそんな馬鹿なことに協力しないといけないのよ!!!」

 

「恥ずかしがらなくても良い。私も脱ぐから」

 

「いや、別にアンタも脱げば解決する問題じゃないから!一人で勝手に脱いでなさいよ!」

 

真っ赤になってカレンは完全拒否する。当たり前の話だ。

 

「その通り。今時そんな単純な考え方では、百万再生なんて夢のまた夢です」

 

聞き覚えのない男の声が、背後のドアから響いた。

 

「……誰!?」

 

カレンは今までのギャグの展開を捨て去り、ナイフに手をかける。

 

しかし、そこに立っていた無精髭を蓄えは金髪のブリタニア人の男は敵意のないことをアピールするかのように手を挙げる。

 

「失礼。私はディートハルト・リート。元ブリタニア・テレビのプロデューサーだ。だが、今の私は報道人ではない。真の『カオス』を描き出すための筆。ゼロという歴史的傑作を完成させるための、最前線の演出家だ!」

 

「はあ!?何言ってんのアンタ!?」

 

意味がわからない自己紹介にカレンはツッコミを入れるが、よくよく話しを聞いてみるとどうやらテレビ局の仕事を辞めて、黒の騎士団に新規加入したらしい。かなり物好き…というか、頭のネジが飛んだ男のようだ。

 

「その新入りが何のつもり?勝手に私たちの秘密会議に加わるなんて」

 

「いや、別に私は会議してるつもりなかったけど…」

 

マーヤは無許可で黒の騎士団幹部の会話を盗み聞きしていた男に警戒心を高める……が、カレンからするとあんな阿保な会話を聞かれても「どうぞご自由に」という気分だった。

 

「よろしいのですか? 私は元々報道の人間……つまり、どのようなものが視聴者に受けるかを熟知している。私を登用することでメリットはあるのでは?」

 

ディートハルトの不敵な言葉に、マーヤも思案に耽る。確かに、自分たちはこの手の工作には素人だ。専門家がいるに越したことは無かった。

 

「一理ある……でも、黒の騎士団は結果を証明してきた集団。あなたも役に立つことを示して」

 

「ふっ。試験……という訳ですか。良いでしょう!」

 

「ええ……」

 

謎の展開についていけないカレンだけが頬を引き攣らせる。何でこうなった。

 

「そもそも、安易に可愛い女の子が脱げばバズるなど考えが浅い。そんなもので今時再生回数は増加しない。大衆はもっと劇的な『落差』と『刺激』を求めている!」

 

「その通りだ!」

 

ディートハルトの言葉に、全霊の力で同意するかのように玉城がドアを蹴破って参戦した。

 

「どのタイミングで参加してんだアンタはぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何!? 暇なの玉城さん!」

 

呼ばれてもいないのに参加してきた玉城に、カレンのツッコミが炸裂する。

 

「専門家の意見が必要だと思ってな。その分野なら俺は黒の騎士団でも最強クラスの知識がある……損はさせねぇよ」

 

「いや、何も誇るところないから! ただのスケベな大人でしょうが!」

 

「ほほう。流石は歴戦の勇者の面持ちをしている。経験値も高いようだ」

 

「その経験値って役に立つの!? ただAV見てるだけよねこの人!?」

 

カレンの制止をスルーし、玉城は拳を握りしめて熱弁を振るう。

 

「舐めんな。当然だ。今時エロだけなら無料で見れるこの世の中……その中で人を惹きつけるのは何か? 決まってる! ストーリーだ!」

 

「その熱意で他の会議にも参加してくれません!?」

 

「パーフェクトです。私の言いたいことは全て言ってくれた」

 

「そうだろ? カレンが脱ぐだけじゃ足りねぇ。ストーリーの過程で、絶望的な状況の中でカレンが脱ぐから盛り上がるんだ!」

 

「いや、私、脱がないから!!」

 

カレンの怒声も、二人の自称プロフェッショナルには届かない。ディートハルトは鋭い目でマーヤを見つめた。

 

「百目木さん、そして玉城さん。最高の動画を撮りましょう。タイトルは……『潜入! 処刑寸前のレジスタンス女子を救ってみた!』。玉城さんには、非道なブリタニア拷問官を演じてもらう」

 

「おう! 任せろ! 俺、そういうの得意なんだよ!」

 

「得意な訳あるかぁぁぁぁぁぁぁ!!ただ、スケベなことしたいだけでしょうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

カレンのツッコミを無視して、撮影は強行された。

 

数時間後、トウキョウ・チューブに一本の動画がアップロードされた。

 

そこには、鎖に繋がれたマーヤと、その横で不気味な笑みを浮かべる半裸の玉城の姿があった。両者とも正体を隠すために目隠しをしている。

 

「へへへ……さあ、吐け! ゼロの隠れ家を言えば、命だけは助けてやるぜ!」

 

「……っ、絶対に言わない! ゼロは私たちの希望!私が守る!」

 

それだけは言えない。ゼロは日本解放の希望。それを守るのが自分の使命。マーヤはそう信じていた。

 

「へへへ…仕方ねぇな…じゃあ……お仕置きだぁ!」

 

玉城が調子に乗って、拘束されているマーヤの頬を指でニヤニヤと突っついた。

 

その瞬間だった。

 

ガシャァァァァァァァァン!!

 

凄まじい音と共に、マーヤの手首を縛っていた鎖が弾け飛んだ。演技のために緩めていたわけではない。文字通り、ただの腕力で引きちぎったのだ。

やっていることは人間の範疇になかった。

 

「え?」

 

玉城が固まった時には、すでにマーヤの右拳が彼の顔面に迫っていた。

 

「ブリタニアがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 私の顔に触るなぁぁぁぁ!!!」

 

ドォォォォォォォォォン!!

 

マーヤの全力が込められた右ストレートが、玉城の顔面にクリーンヒットした。

玉城はまるでゴムボールのように弾け飛び、壁に背中から激突した。

 

「ぶふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

壁にヒビが入るほどの衝撃。だが、マーヤの怒りはそれでは収まらない。

 

彼女は鎖を振り回しながら、壁にめり込んでいる玉城に向かって突撃した。

 

「ブリタニアは一匹残らず……! この世から!駆逐してやる!!!」

 

マーヤに迷いはない。まるで本当に殺意を抱いているかのように玉城に襲いかかる。

とてつもないリアリティだった。多分本気なんだろうけど。

 

「ぎゃあああああああああ! 待って! タイム! 百目鬼ちゃん、タンマァァァァァァァァ!!」

 

玉城は本気で悲鳴をあげているが、それで止まるマーヤではない。玉城が泣こうが喚うが攻撃は収まらない。

 

マーヤの怒濤の攻撃が、玉城の全身を襲う。それはもはや撮影ではなく、一方的な撲殺刑だった。

 

チャット欄では「凄い!本物みたい!」「最近の映像技術すげぇな!」等という言葉で溢れていた。

残念ながら加工ゼロの現実の映像である。

 

「……ディートハルト、これ、配信して大丈夫なの?」

 

カレンが、壁にめり込んだまま白目を剥いて痙攣しているほぼ全裸の玉城と、その横で「駆逐完了」と呟きながらカメラにピースサインを決めているマーヤを見ながら、引き攣った笑顔で尋ねた。

 

だが、ディートハルトは興奮のあまり耳に入っていない。自分の求めていたものはこれだったのだと気づいたからだ。

 

「素晴らしい……! これこそが本物のバイオレンス! これこそがカオスだ!!百目鬼さん!シメの挨拶を!」

 

ディートハルトの言葉で、マーヤはカメラを凝視し、右拳を左胸に強く当てた。

 

その姿は、狂気に満ちていながらも、どこか神々しさすら感じさせる。一種のカリスマがそこにあった。

血だらけの姿であることを除けば…だが。姿だけ見れば殺人鬼のそれである。

 

「気に入ってくださった方はチャンネル登録よろしくお願いします。その後は…自由のために! 黒の騎士団に、心臓を捧げよ!!!」

 

そのあまりのリアリティと激しさに、アップロードされた動画は狙い通りバズった。

 

百万人までは無理だったが、出だしとしては異例の成功だった。

 

だが、当然の如くルルーシュにバレてマーヤとディートハルトと玉城とカレンは怒られることになる。

 

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