ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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GWも終わってしまいました。明日からの仕事を頑張りましょう!


14 大切なのはどんな時も自分を失わないこと

『では、カレン選手。くじを引いて下さい』

 

物凄く憂鬱である。

 

カレンは物凄く気が進まなかった。

 

何故なら、絶対にまともなデートになるはずがないということが経験的に分かるからだ。

 

『カレン選手。早くして下さーい』

 

どの面を下げて言うのだろうか。

 

自分が早くくじを引きたくない元凶がそんなことをほざいていると思わず拳を握ってしまう。

 

苛立ちを吐き出すようにカレンはため息をはく。文句はあるが、やるしかない。

 

諦めたようにカレンはくじの場所へと進んでいく。

 

(ニーナが動物園か……となると、私はどこよ?遊園地?美術館?)

 

そこはかとなく、どころか、果てしなく不安な気持ちに教われながらカレンはくじを引く。

 

そこに書かれたカレンとルルーシュのデート場所は

 

『ラブ○テル』

 

会場で地面が震えるほどの歓声が沸き上がる。

 

『さて。では、行ってもらいましょうか』

 

「「ちょっと待て、グオラァ!!」」

 

あまりに予想外の展開にカレンとルルーシュは顔を赤くして抗議の声を上げる。

 

『待ちません。所定の場所について下さい』

 

「行くわけないでしょうが!ニーナは動物園っていう全年齢対象の場所なのに、何で私だけR18の場所でデートしなきゃいけないのよ!どんな羞恥プレイよ!親が見てんのよ!」

 

『そりゃ、引いたあなたの責任でしょう。私は一切関知していません』

 

「くじの中にこんなもん入れた段階で関知しまくってるって言ってんのよ、ゴラァ!!!」

 

『はい。あなたは自分の学校でのキャラを思い出しましょうね。地が出まくってますよー。自重して下さいね』

 

「……あいつ、何時か殺してやる」

 

「その時は俺も呼べ。喜んで協力しよう」

 

カレンとルルーシュが彰の殺人計画を練っているにも関わらず、当の本人は淡々と司会を続けていく。

 

『さーて、興味が深いですね。どんなデートになるのでしょうか。まずルルーシュとカレンがどんなプレイを演じてくれるのか!熊さんはどのように感じていますか?』

 

『ルルーシュが受けなのか、攻めなのか。それが問題なんだ』

 

「「あの名言をこんな場面に引用するな!!」」

 

『特別ゲストの仁美さん。どう思いますか?』

 

「何!?わざわざ仁美さんを呼んだのか!?」

 

『そうですね……カレン選手は幼い頃から男勝りの部分はありましたけど、いざという時には積極的になれない乙女な部分もありましたから、なかなか事態は進展しないかもしれませんね』

 

「ねぇ、自分が何を言っているのか分かってんの!?あなた親でしょ!?娘がこんなことになってんのを見て止めないわけ!?」

 

『あんなこと言ってますけど、どうなんですか仁美さん?』

 

『今の私は仁美でも親でもありません。ゲストです。とりあえず、観客の一人として生で見た上で録画を4Kテレビでじっくりと見るつもりです』

 

「楽しんでるだろ!高画質テレビをこのためだけに買うほど気合いを入れてるだろ!」

 

『ルルーシュ様。わざわざ、このために私にボーナスを下さり、ありがとうございます……』

 

「誰がこんなことのためにボーナスを渡すか!」

 

『さあさあ、時間がなくなりますよ?早く行って下さい』

 

「「う……」」

 

大歓声の中、ラブ○テルと書かれた看板がある建物の下に立つルルーシュとカレン。

 

二人の顔は面白いくらいに真っ赤である。

 

こんなに奇跡的な展開になるとは流石に思っていなかった桐島は着ぐるみの中で爆笑していた。

 

『さあ、ではスタートです!』

 

そんな中ミレイの掛け声でデートは始まる。

 

同時に歓声が止んだ。

 

ナレーションもなくなり、無音がルルーシュとカレンを包む。

 

驚くほどに静かだ。二人に聞こえるのは自らの心臓の音だけだった。

 

そんな静寂を打ち破るかのように声が響いた。

 

「「いや、ふざけろよ!!」」

 

『はい?何を言ってるんですか、あなたたちは?』

 

これ以上ないほど顔を赤くしたルルーシュとカレンは全力でナレーションに突っ込んだが、ナレーションは冷静に返す。

 

「お前は何でこんな時だけふざけないんだ!?ふざけろよ!全力で邪魔をしに来い!」

 

「そうよ!!何かボケなさいよ!何か恥ずかしくなってくるじゃない!」

 

自分達のデートの時だけ何も邪魔しに来ないどころか、声もかけないナレーションに恥ずかしさからかルルーシュとカレンは全力で要求をぶつける。

 

『いや、デートくらい自分達でして下さいよ』

 

「「お前が言うな!!」」

 

心からのルルーシュとカレンの突っ込みをナレーションが無視したため、再び二人を沈黙が包む。

 

時だけが過ぎていくが、二人の足は全く動いていない。

 

カレンは僅かに焦ってくる。ルルーシュには勝たなければいけない理由はないが、自分にはあるのだ。

 

シャーリーが相手ならば、勝ちを譲ることも考えたが、ニーナが相手では勝ちを譲る理由もない。

 

(な、何よこんなの。今までの戦いに比べたら大して危険もないじゃない。わ、私がアレを開いて、ル、ルルーシュのアレを私のアレに、アレするだけでしょ?か、簡単じゃない。お、女なら何時かは経験する訳だし?遅いか、早いかの違いだけで大したことないし……)

 

緊張と恥ずかしさで目を回し始めたカレンの様子を不安に感じ始めたルルーシュは落ち着くようにカレンに声をかける。

 

「おい、カレン。何を考えている?このまま黙って立っていれば良い。そうすれば、時間になって終わる。その後に俺がお前を選べばそれで解決だ。余計なことをする必要はない」

 

「そ、そうよね、ルルーシュ。分かっているわ」

 

目を回しながらカレンはルルーシュの方を向く。

 

「じゃ、じゃあ、まずはルルーシュから脱いで」

 

「何も分かっていないな!?おい、落ち着けカレン!俺たちがアクションを起こす必要はないんだ」

 

「だ、大丈夫よ。経験もないし、そういうのを見たことないけど人間である以上本能であんたのアレと私のアレは引きつけあうはずだから」

 

「そういう意味で言ったのではない!くっ、何てことだ肝心のカレンが緊張で我を失ってしまうとは!戦略を考え直す必要がある!」

 

言うや否や、ルルーシュは建物の中に侵入する。状況を暫く理解できていなかったカレンも慌ててルルーシュの跡を追う。

 

「何かカレンの足を止められるものは「待てぇ、ルルーシュ!」速い!?前々から人外だとは思っていたがここまでか!スザクを下手すれば超えているぞ!」

 

自分の周りにトンでもない逸材が集まっていることにルルーシュは驚いたが、全員問題を抱えているので両刃之剣だ。泣きたくなった。

 

しかし、泣き言を言っている場合ではない。このままでは自分の大切なものが失われてしまう可能性が高い。

 

「くっ!」

 

少しの間でも足を止められればと近くにあった建材を撒き散らし、進路を防いだ……が

 

「こんなもの!」

 

「何い!?」

 

足を止めるどころか減速もしないで腕の一振りで建材を吹き飛ばした。

 

「何だこの化物は!?」

 

「これが輻射波動だ!」

 

「絶対に違うだろ!こんな無茶苦茶で戦略をひっくり返すな!」

 

近づいてくる化物(カレン)との距離は見る見る内に縮まっていく。

 

藁にもすがる思いでルルーシュが辿り着いた部屋は

 

『ベッドルーム』

 

如何にもな場所にわざわざ自分から逃げ込んでしまった事実にルルーシュの思考は一瞬停止する。その隙をついて追い付いたカレンはルルーシュを持ち上げてベッドの上に放り投げる。

 

「うぉっ!?ま、待てカレン!お前は混乱しているだけだ!冷静になれ、まずは水でも」

 

「だ、大丈夫よ、ルルーシュ。痛いのは最初だけだって言うし。し、暫くすれば、き、気持ち良くなるはずだから」

 

「だからそういう意味ではない!くっ、こ、これは本格的にまずい、どうすれば」

 

自分の貞操の危機が迫っているルルーシュは今までの人生で始めてというくらいに頭を回し始める。

 

しかし、ルルーシュが考えている間もカレンは近づいていく。

 

(何とかしてカレンを止めなければ……しかし、どうやって……混乱を解くのは無理だ、だとすればこの勝負を終わらすしかない。しかしどうやって)

 

そう考えたときにルルーシュは、このゲームの趣旨を思い出した。

 

(このゲームの勝者は俺が決められる!ならば!)

 

カレンの腕がルルーシュを捉えた。同時にルルーシュが叫ぶ。

 

「おい、ナレーション!」

 

『はい?』

 

ルルーシュは今までで最大の声を出す。

 

「決勝の勝者はカレンだ!だから、ゲームを終わらせろ!俺はカレンを愛しているぞ!」

 

その言葉で照明が消える。その変化でカレンも冷静を取り戻した。

 

「え?何があったの?」

 

「やっと、正気に戻ったか……」

 

ルルーシュは頭を抱える。

 

『えー、誠に残念ですが勝者が決まってしまいました。ルルーシュに選ばれたのは

 

 

カレン・シュタットフェルトだーーー!!』

 

その放送に悲鳴と歓声が再び沸き上がる。

 

下らない、中身のない戦いはこうして幕を閉じた。

 




次回はおまけみたいな話ですね

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