「はあ!はあ!はあ!」
時間は夜になろうとしている。しかし、そんなことはどうでも良いと言わんばかりに、爆破テロで荒れ果てた現場の側をルルーシュは走り続ける。
「ルルーシュ様!」
「「ルルーシュ!!」」
「ルル!」
「咲夜子さん、会長、リヴァル、シャーリー!!ニーナ!ナナリーは、ナナリーは見つかりましたか!!」
折角の日曜日。ナナリーと一緒に出掛けていたルルーシュは幸せな一日を過ごすはずだった。
しかし突然起こったテロのパニックでルルーシュはナナリーと離ればなれになってしまった。
ルルーシュはナナリーを探そうとしたのだが、現れた警官に危ないからと現場から遠ざけられてしまった。
しかし、それで究極のシスコンであるルルーシュが諦めるはずもなく素早く警備の隙をついてナナリーを探し始めたのだが、一向に見つからず夜になってしまった。
帰りが遅いルルーシュとナナリーを心配した咲夜子はルルーシュに電話を掛けナナリーが行方不明になってしまったことを知った。
そして、自分もナナリーを探そうと屋敷を飛び出した咲夜子とその時偶然鉢合わせた生徒会メンバーも事情を聴き、一緒に探していた。
藁にもすがる思いが伝わる悲壮な表情で話しかけてくるルルーシュに対して言葉をかけることができずに下を向く。
その反応で察したルルーシュは再びナナリーを探し始めた。
それを見て慌てて全員でルルーシュを止めようとした。ルルーシュの顔色がとてつもなく悪くなっていたからだ。
「いけません、ルルーシュ様。このままでは、ルルーシュ様の体が持ちません。後は私が探しますからルルーシュ様は休んでいて下さい。」
「そうよ、ルルーシュ。ちょっとは休まないとあんたが壊れちゃうわよ」
「俺のことはどうでも良い!!」
普段ならば絶対に聞かないルルーシュの決死の怒鳴り声に近づいてきていたメンバーの足が止まる。
「ナナリーが!ナナリーがいなくなったんです!俺のことなんて気にしてないで早くナナリーを」
その時丁度ミレイの携帯が鳴り始めた。祖父からだと知り慌てて電話を取る。
「何、おじいちゃん。事情は話したでしょ?今はちょっと電話に出れる状況じゃ…え?…えー!?ナナリーから電話があった!?」
急展開に驚きを隠せない一同だが、驚くよりも前にミレイから電話を奪い取っていたルルーシュが話始める。
「すいません、会長失礼します!理事長!ナナリーは、ナナリーは、一体どこから電話を!?怪我は!?いくら電話をかけても出なかったのに一体どうやって電話を!?」
『落ち着け、ルルーシュ。一度に聞かれても答えられんわい。私も詳しいことは聞いとらん。ただ、親切な人に助けられてアッシュフォード学園まで運んでくれたらしくての。今は家で休んでおるそうじゃ。』
「そうですか。良かった…」
ホッとして気が抜けたのか思わずその場で座り込んでしまったルルーシュだが、一早く妹に会いたいという気持ちが勝ったのか即座に立ち上がる。
「では、俺はこのままアッシュフォードに戻ります。理事長ありがとうございました。では、これにて。お礼はまた後日させて頂きます。」
そう言うと電話を切り、お礼を言って会長に返し、鬼気迫る表情でリヴァルに迫った。
「リヴァル早くバイクを出せ!速度は最大限だ!お前が捕まっても構わん!」
「何言ってんだよ、お前!?お前が構わなくても俺が構うわ!!」
「ナナリーの無事を確認する。それが今の戦略の最優先事項だ。後のことはどうでも良い。」
「お前最低だな!?」
お互いに必死なのは分かるが、周りから見ればコントにしか映らない。
突然戻ってきた何時もの日常に見ていた女性陣は笑顔を浮かべていた。
~アッシュフォード学園~
「お兄様たちの居場所は分かったか?」
電話を掛け終えたナナリーに桐島は置いてあったルルーシュ家の晩飯を食べながら(当然、ナナリーの許可は取っていない)話しかける。
ナナリーを担ぎながら下水道から脱出し、家まで連れてきたまでは良かったが、家には誰も居なかった。
目が見えず、歩けない少女を1人残して帰るのも気が引けたので家の人が帰るまで居座ることにしたのだ。
「はい。お兄様や咲夜子さんの電話に繋がらなかったので理事長に。どうやら、皆で私のことを探してくれているそうです」
「まあ、あんな事件に巻き込まれたらな。これも旨そうだな。そりゃ、探しに行くだろ。旨いなぁ。愛されてる証だ。タレが効いてるんだな。良かったな。いやぁ、ウメェ」
「は、はい。あの…食べるか誉めるかどっちかにしてくれません?」
旨いんだから、しょうがない。いやはや、これを作ったやつの料理の腕は大したもんだな。
「いやはや、久し振りに旨いもん食ったな。後、ビールとかある?」
「ありませんし、あっても呑んじゃ駄目です!彰さん、未成年じゃないですか!」
大丈夫、大丈夫。問題ない。後もう少しで20だから。ここまでいけば誤差だから。
「たっく、頭が固いな。これだからお嬢様育ちは。てか、ランペルージって聞かないな。これでも結構知ってる方だと思うんだが。無名な貴族か?それにしちゃ、育ちが良さそうだけど」
「え?え…と…はい」
何さ、その反応。困った後に下向いちゃったよ。せめて、困ったように笑ってよ。突っ込めるから。
なーんか、事情があるみたいだな。今度調べてみるか。
まあ何にせよ、今一番大切なのは
「おーい、ナナリー。白ご飯とかあるか?スープがあるからぶっかけたいんだけど」
「まだ食べるんですか!?」
腹が減ってるんだから、しょうがない。
「あー、満足。満足」
「随分食べましたもんね。ふふっ。彰さん美味しそうに食べるから私も結構食べちゃいましたよ」
いやぁ、やっぱり人助けってするもんだよね。情けは人のためじゃないんだよ。
ここまで寛ぐともっとダラダラしたくなってくる。ダメもとで頼んでみようか。
「んじゃまあ、腹もふくれたし、匂いが気になるからシャワー浴びたいんだけど良いか?」
「勿論良いですよ。どうぞ」
何の問題もないかのようにナナリーが勧めてくる。
何て良い子なんだ。これは俺としてもサービスをせざるを得ない。さて、何をしてあげようか。
「よし、じゃあ、ナナリーも入ろうか」
「何でそうなるんですか!?」
顔を真っ赤にしながらナナリーが質問してくる。俺は何か不味いことを言ったか?
「何か問題あるのか?ナナリーも結構汚れてるから洗ってやろうと思ったんだが」
「その心遣いはありがたいのですが…あの…その…」
顔を赤くしてモジモジしながらボソボソと呟く。
なるほど、そういうことか。流石に俺も理解した。
しかし、これは大きな誤解だ。この誤解は解かなくてはならない。何だ?何を言えば誤解を解いて貰える?
頭の中に雷鳴が轟いた。これだ。ハッピーエンドへと至る道はこれだったのだ。
未だに顔を赤くしているナナリーの肩を掴み、真剣な顔で見て告げる。
「安心しろ、ナナリー。俺は貧乳には興味がない」
告げた瞬間俺は見事なアッパーで吹き飛ばされた。
「解せぬ。何故殴られた?」
「彰さんは一度デリカシーという言葉を調べた方が良いと思います」
ナナリーと二人で風呂に浸かりながら内容のない会話をする(名誉のために言っておくが、俺はタオルであそこを隠しているし、ナナリーはしまってあった水着を着ている。ナナリーはそれでも抵抗したが、汚れてる服を着続けるのも嫌だったのか渋々納得した。)
「そんな馬鹿な。俺ほどデリカシーを分かっている奴はいない」
「訂正します。彰さんはデリカシーを調べる前に自分のことを理解するのが先ですね」
心なしかナナリーの対応が冷たくなっている気がする。距離が近くなったんだな、きっと。
「さて、暖まったし髪でも洗ってやろうかな。プリンセス。お手を拝借」
「ありがとうございます。エスコートはしっかり頼みますね?」
照れてはいるが、なかなかの返しじゃないか。俺は笑いながらナナリーの手を掴み、抱き抱えながら風呂桶を出ようとするが、慣れていないので体勢を崩してしまった。
「任せて下さいって、ちょっ!?やばっ!?」
「えっ!?キャッ!!?」
危うくナナリーの頭がタイルに激突する所だったが俺の手で何とか回避した。しかし衝撃でナナリーは気を失ってしまった。
「いてて、おい、悪いな、ナナリー大丈夫か?」
返事がない。完全に気を失っているようだ。しょうがないこのまま起こして
「ナナリー!?ここにいるのか」
向こうに運ぶわけには行かないようだ。恐らく兄だと思われるメチャメチャイケメンのブリタニア人が風呂場に凄い勢いで入ってきた。
妹の無事を見て安心するかと思いきや信じられないものでも見たかのように立ち尽くし震えている。
何故こんなにも動揺しているのかと疑問に思い、冷静に今の状況を分析してみる。誤解を招くようなことはないはずだ。
~分析開始~
男の目の前には誰かが少しでも押せばランデブーしそうな距離にいる気を失っている水着姿の中学生。
しかもその男は全裸(転んだ拍子にタオルが飛んでしまった)
家にはさっきまで二人だけ。
~分析終了~
誤解しかしない状況だった。
どうする!!?何て言えば納得して貰える!?このままじゃ俺ロリコンであり、犯罪者じゃん!!
ナナリーを起こすか?いや、どう考えても今にもブチギレそうなこの兄がそれを待ってくれる訳がねぇ!!
泣きたくなってきた。
いや、俺にはまだ希望がある。パンドラの箱にも希望が残っていた。さっきはだめだったけど、今回なら
「ど、どーもお兄様はじめまして」
直後お兄様の怒声が屋敷内に響き渡った。
普通に考えたら次話で主人公殺されますね