「大体ねぇ…あんたら、冷静になって考えてみなさいよ。ちょっとは落ち着きなさい」
「そうだ。あの彰が普通にデートなどしてると思うか?」
ナナリーと彰の後方から二人を見つめるルルーシュとリョウにカレンとアヤノは落ち着くように言う。
しかし、予想外にルルーシュは、怒り狂っている様子には見えない。ふう、とため息を吐く。
「冷静じゃなくなったわけじゃない」
「いや、どう考えても冷静に見えないんだけど」
だが、カレンから見れば怒りを圧し殺したようにしか見えないので、全く冷静に見えない。
「別に俺はあいつとナナリーが付き合ってるかどうかなんて最初からどうでも良かったのさ」
「は?」
意味が分からないことを突然話し出すルルーシュに、カレンは疑問符を浮かべる。
「俺にとっては、ナナリーの隣に俺以外の異性はいないという世界を壊したことが問題なのさ。こうなったら、俺も同じことをやるしかあるまいよ。世界を壊すしかあるまいよ」
「ねえ、ちょっとルル杉さん?あんたもしかしたら、あの人にキャラを寄せようと思ってるのかもしれないけど、それ無理だから。あんたとキャラが被り過ぎてて、似せるというかあんたが喋ってることとあんまり変わらないから」
完全に暴走しているルルーシュにカレンが呆れながら突っこみを入れる。この男、妹が結婚するとか言ったら、どうするつもりなのだろうか。
カレンにはとてもではないが、このシスコンが妹の結婚相手を祝福する姿が全くと言って良いほど、想像がつかない。それならば、「妹と結婚ができる世界を作るぞ!」と言い出し、日本解放に参加する方が余程想像しやすい。と言うか、そんな想像しか浮かばない。しかも、そんな考えにもう一人のシスコン(リョウ)と彰が協力する姿がありありと浮かぶ。そうなれば、新生日本は近親相姦で埋め尽くされる国家と成る。滅んだ方が良いかもしれない。
その考えをカレンは首を振って頭から追い出す。一応とはいえ、自分の彼氏がそんな姓犯罪者となってしまう未来など考えたくもない。
「しかし、あいつ建物に入ったきり出てこねぇな…おい、No.1。どうするんだ?」
カレンが自分の考えに耽っている間に、リョウがルルーシュに話しかける。
それを聞いたルルーシュは、自身の懐から携帯を取り出す。
「問題ない…おい、準備は完了か?」
『問題ないよ…さあ、始めようか…
血で血を洗うカーニバルを』
「「お前まで何やってんだ、ユキヤー!!」」
電話から聞こえた予想外の声にカレンとアヤノは声を荒らげる。
『何やってるって?復讐だよ』
フフフッと不気味にユキヤは笑う。ぶっちゃけ、少し怖い。
『あいつニートを好きなだけ扱き使ってくれたよ…あいつの頼みのせいで、この一ヶ月ほとんどずっと仕事だよ…ニートを怒らせたらどうなるか思い知らせる良い機会だ』
「いやまあ、可哀想な気もするけど、あんたニートでヒッキーなんだから時々なら良いんじゃない?」
「そうだな。家でダラダラしてるよりはずっと良い」
『へぇ。そんなこと言って良いんだ?アヤノ』
携帯越しにニヤリと笑うユキヤの顔が想像できて、アヤノの顔がひきつる。このニート一体何を言うつもりだ?
『彰に文句があるのはアヤノも同じでしょ?前から彰が持ってきてくれるって言ってたアノ本を勝手にブリタニア人にあげちゃったもんだから、こないだからずっと「わあーーーーーーーーーーー!!!」』
ユキヤに最後まで言わせず、顔を真っ赤にしたアヤノがルルーシュから携帯を奪い取り、奇声をあげる。
端で聞いていたカレンも余りの音量に耳を押さえる。
「うっさい!アヤノいきなりどうしたのよ!?」
親友の突然の奇行に訝しげの目を向ける。
だが、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに、携帯に向かって声を荒らげる。
「お、お、お、お、おま、おま、おま、おま、
お前ぇーーーーーーーーーーーーー!!!」
『あぶ!?ねぇ、突然大声出さないでよ。朝飯のラーメン溢す所だったじゃん』
「そ、そ、そんなこと知るかぁ!!な、な、な、な、な、何でユキヤがそのことを知って」
『甘いねぇアヤノ。電子の海は自由なんだよ』
その言葉に絶望の気分を感じながら、アヤノは必死に言い訳の言葉を並べる。
「ち、ち、ち、違う!アレは違うんだ!」
『いや、何が違うのさ』
「何もかも違う!私は男が好きだ!」
『いやまあ、そうだろうけど、そんなことカミングアウトされてもねぇ』
「だから、それが違う!そ、そういうことではなくてだな」
『別に隠さなくても趣味は勝手だし、良いでしょ。何にアヤノが興奮したり、感じたりしても、それはアヤノの自由なんだし。へぇ…アヤノもわりと過激な』
「今お前一体何を見ている!?く、こうなったら」
くるっと振り返り、壁際まで走り出す。いきなりの展開に見ていた三人は何も言わず、呆然と見ていると
「消え去れ、私の記憶ーーーー!!!」
「「アヤノ!?」」
ゴガシャンと音をたてながら、アヤノは自らの頭を壁に叩きつける。
リョウとカレンは流石に驚きの声をあげて、アヤノを取り押さえる。
「ど、どうしたんだよ、落ち着けアヤノ!」
「そ、そうよ、少し冷静に!」
「止めないでくれ、リョウ!カレン!私は一度人生をリセットしなければならない!あいつに会う前の!アレに出会う前の!キレイな私に戻るんだぁ!!」
「ねぇ、発言がヤバすぎるんだけど!?ちょっと大丈夫よね!?年齢制限がかかるようなことじゃないわよね!?」
『まあ、年齢制限はかけた方が良いかもね…ある意味で』
「何!?おい、ユキヤ!!一体お前らは何の話をして「聞くな!喋るな!」ごふぅ!?」
「リョウ!?」
「おい、俺の携帯だぞ!?」
発言の内容から、リョウはユキヤに内容を聞き出そうとしたのだが、そうはさせないとアヤノは足で携帯ごとリョウを地面に踏みつける。心なしか、満足そうに見えるリョウの顔は気のせいだと思いたい。
『だが残念。この携帯は特別製でね』
「なら、遥か彼方に吹き飛ばして」
「良いから落ち着け。その携帯は世界を壊すのに必要なんだ。お前の話など、どうでも良いから今はその携帯をだな「黙っていろ、シスコン!」そげぶ!?」
「ルル杉!?」
騒ぎを第三者の目で見ていたルルーシュも自らの携帯が壊されそうになったので、鎮静化しようと近寄ったが、一瞬でアヤノの右ストレートで吹き飛ばされた。哀れである。
「このまま、この携帯を『まあ、当然だけど、その携帯僕のじゃないし、壊された所で僕にはダメージなんか全然ないから別に良いんだけどね』……ウガァ!!!」
「アヤノ!?本当に落ち着きなさい、アヤノ!!駄目よ、そんなの!飛び降りたって人生にセーブポイントはないのよ!リスタートはできないのよ!」
「放せ、カレン!後生だから、放してくれぇ!」
「放すわけないでしょうが!?」
なお、踏みつけられたリョウが起きるまで、この騒ぎが続いたのは余談である。
原作との相違点とか書こうかなと思ったら、同じ所を見つける方が大変そうだったので、止めました笑